2008年5月発売
徳川の中期、将軍綱吉の時代。零落した公家の娘染子は侍女として大奥に出仕する。綱吉に見初められてその寵愛を受けるが、大奥に囚われるのを拒んだ染子は、重臣柳沢吉保の側室となり、綱吉の子を生す。二人の男との三つ巴の関係のなかで激しい恋情に身を焦がす染子。絢爛な元禄の歴史を背景に、権謀術数の渦中でも、志に燃え恋に心解き放つ女と男の、強靱な恋愛を描く長編小説。
元盛岡藩南部家の剣術師範、十時平蔵。深川にある道場の主におさまっているが、藩から追われた苦い過去があった。困った人を見ると、せっこ(お節介)を焼かずにはいられない平蔵は、今日も他人の恋路に首を突っ込み、上覧試合の手ほどきをし、花のお江戸を東奔西走する。中西派一刀流の秘技「おぼろ返し」を揮う剣の達人でもある心優しき道場主と、平蔵を取り巻く人々がおりなす、下町人情あふれる時代活劇。
人並みはずれた鋭い嗅覚を持つ薬師の硯杖は、薬草を取りに入った山で、忘れえぬ女性の香りと酷似した秘毛を見つけ、その持ち主を見つけ出すことを誓う。ところが、川開き夜、その秘毛をお守り代わりに入れていた財布を掏られてしまう。硯杖の着物に残された匂いを手がかりに探し出した犯人は、はちきれんばかりの若さと肉体を持った女掏りだった…。硯杖が己の魔羅を薬にした裏治療で、女たちの悲しみや不幸を癒していく好評時代官能シリーズ第2弾。
兄にも劣らない腕を持つ整形外科医の類は、その美貌で数多の男と関係をもっていた。快楽のための遊び相手には事欠かないが、本気の恋をしたことがなかった類。だが、兄の恋人・月島の元恋人であった真咲との出会いにより恋を…愛することを知る。今まで味わったことない感情に戸惑い、臆病に…そして真咲がまだ月島を忘れられずにいるのではないという疑惑をも…。淫靡に濡れたドクターエロス書き下ろし第2弾。
国際的ファッションモデルの鼎は休暇中のパリで、極秘データを巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれてしまう。鼎の窮地を救ったのは、数日前パーティーでいきなり彼の唇を奪った無礼な色男だった。スポンサーの一人であるその男、アンドレアは実はイタリアン・マフィアの首領で、体を代償に鼎を守ってやると約束。鼎は拉致に近い状態で、彼の広大な屋敷に匿われることに…。血の呪縛とめくるめく官能の罠書き下ろし。
ジャズ・ミュージシャンを目指す二十歳のジュンは、ナホトカに向かう船に乗った。モスクワ、ヘルシンキ、パリ、マドリッド…。時代の重さに苛立ちながら、音楽とセックスに浸る若者たち。彼らは自由と夢を荒野に求めて走り続ける。60年代の若者の冒険を描き、圧倒的な共感を呼んだ、五木寛之の代表作。
新しい先生は、口をきかんのじゃ…。舞台は戦争の傷跡の残る昭和三十年代、瀬戸内の葉名島。この小さな島の、生徒わずか七人の小学校に、北海道から代用教員がやってきた。口がきけない「機関車先生」。けれどもそれはかけがえのない出会いだった…。青年教師と島の人々との暖かな絆を描く、第七回柴田錬三郎賞受賞作。
70歳の今も真っ赤なカマロを走らせるグランマは、ガスステイションで働く孫の志郎の、ままならない恋の行方を静かに見つめる。ときに甘く、ときにほろ苦い、恋と人生の妙味が詰まった小説6粒。谷崎賞受賞。
将来を誓い合った男女に降りかかった突然の災難。だが、長い年月を経たのち、深い絆で結ばれたふたりに奇跡の刻が訪れたー極寒の二月に松前地方に吹く北北西の季節風「たば風」をモチーフとした表題作をはじめ、函館在住の著者が、幕末の蝦夷・松前藩を舞台に描いた、郷土愛あふれる六つの短篇集。
キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、“戦争の世紀=20世紀”を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。
ふと目覚めると、私は記憶を失っていた。同じベッドには、ゴムの仮面を破った全裸の男が眠っている…。ここはどこ?この男は誰?扉を開けると、意外にも外は雪。そして初老のサンタクロースが、私に手招きをしている!記憶喪失の女と謎の男の奇妙な同居生活、その果ての衝撃!傑作ミステリー長篇。
サラリーマンにとって会社人生は人事がすべてと言っても過言ではない。転籍人事にかちんと来た実力副社長、リストラを完遂した途端に自分の首を斬られた人事部長、合併銀行の派閥を背景にした熾烈な社長レースなど、「非情人事」を拝命した企業人の複雑な思いと行動を、鮮やかな筆致で描いた文庫オリジナル短篇集。
人生に行き詰まってしまった料理人・タカハシは、自殺の寸前、不思議なネズミたちに命を救われた。ネズミたちは世界で最も低い自殺率のメキシコには、人を死に誘う「憂鬱の砂嵐」を追い払う四つの宝があるという。宝探しの旅に出たタカハシがメキシコで知る驚愕の真実とは?色彩と味覚にあふれたスーパー・ファンタジー小説。
犯罪の謎解き、ワトスンとの友情物語、心理小説の醍醐味を楽しめ、19世紀末ー20世紀初頭イギリスの社会史・文化史も身につく教養文学としてのホームズ物語を精読する。
「は、花火を盗めだぁ〜?」田舎町に住むヤンチャでムチャな男子高校生と、町の駐在さんが“あいかわらず”繰り広げるイタズラ合戦。待望の第2巻は、グレート井上くんが駐在さんの奥さんの妹に恋したり、ケンカ上等かつ、ドスケべかつ、なぜか子供に人気のある西条が、いまだかつてないハートフルなイタズラ(むしろ犯罪!?)を持ちかけて…。同名映画の感動メインストーリー「花火盗人」の顛末と、大人気携帯サイト「モバゲータウン」での書きおろしサイドストーリー「ポップコーン戦線」を収録した、超スペシャルバージョン。
4年もの間ホテルにひきこもる、他者との肉体的接触を極度に嫌う、相対する人間の“金に対する想い”が様々な幻覚となって現れる-これらはネット上で「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式市場の値動きを予見し二百五十億円超の資産を築いた「ヒィ」の「症状」である。その彼のもとに、一枚の旧札が送られてきた。それこそが、捨て子だった「ヒィ」の本名が記された伊藤博文の千円札、失くしてしまった唯一の大事な宝物だった…。送り主は、投資ファンドの代表である沢谷という男。かつて「ヒィ」との仕手戦で屈辱的な大敗を喫していた。描いた絵図を台無しにした仇敵「ヒィ」に対して、巻き返しを図る沢谷は何を!?第39回メフィスト賞受賞作品。