2009年5月発売
大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。
現役の作家のなかにも熱狂的なファンの少なくない、鬼才、久生十蘭の精粋を、おもに戦後に発表された短篇から厳選。世界短篇小説コンクールで第一席を獲得した「母子像」、幻想性豊かな「黄泉から」、戦争の記憶が鮮明な「蝶の絵」「復活祭」など、巧緻な構成と密度の高さが鮮烈な印象を残す全15篇。
断崖絶壁に建つ曰くつきの洋館。少女・砂波の父が購入するという。あまりにも怪しげなため、探りに行った彼女を待っていたのは甲高い悲鳴と、長い髪を振り乱し海を歩く者。いったいこれは?依頼を受けた美形の妖探偵達が調査に出向いた先で、陰惨な殺人事件が起きてしまうのだった。大人気シリーズ第12作。
ベルリンの壁が崩壊し、世界が冷戦終結に向けて動き始めた一九八九年暮れ、機甲師団の将軍が死体で発見された。場所はうらぶれたモーテル。重要な会議に向かう途中、なぜ片道五〇〇キロの寄り道をしてそんな所に行ったのか?続いて彼の妻が遠い自宅で、デルタ隊員が基地内で惨殺される。英国バリー賞最優秀長編賞受賞作。
世界各地の米軍警察指揮官が一斉に異動させられていた。パナマからノース・カロライナへ突然転属になったリーチャーもその一人だった。誰が、何のために?死んだ将軍が出席するはずだった秘密会議の議題がすべての鍵を握る。激変する時代の波にもまれる軍の指揮を離れ、リーチャーは真相を探り始める。英国バリー賞最優秀長編賞受賞作。
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていくー。三十代独身女性のキモ焼ける心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全五編。
世界が認めた名経営者盛田昭夫。町工場だった東京通信工業を皮切りに、テープレコーダー、トランジスタラジオなど常に時代の先頭を走り続け、ソニーを世界ブランドに成長させたその手腕。製品開発、アメリカ進出、商標裁判…笑顔で壁を次々に越えていく盛田の隣には、居並ぶ一騎当千の強者たちがいた。
南青山でのPRの仕事や、幼馴染み・フユちゃんと出かける金曜日の夜。充実しているはずの毎日に、なぜか励奈は何かが欠けているように感じていた。そんなとき間違い電話で偶然聞いた英語のメッセージが、思いがけなく新しい自分に出会う旅へ彼女を誘う。
情熱を込めた語り口は周囲の人を動かし、最前線を歩き回る行動力が、やがて“安かろう悪かろう”だった日本製品のイメージを払拭していった。財界人となってからもマーケットの創出に心を砕いた盛田昭夫。経営、販売、開発に関わるすべての人に、困難を乗り切る知恵と勇気をもたらすドキュメント小説1700枚。
出ていってやる、私は車に乗り込んだ/美しい老婆ミナミの運転に僕は命を預ける/愛犬ブランと最後のドライブ/二ヵ月前に出ていった透の愛車が部屋の前に/私は恋の終わる地点をめざし、アクセルをふんだ/いつものCD、だけど湧き上がる怒りと失望ー6人の人気作家が車をモチーフに描いた珠玉の恋愛小品集。
「現実とネットの関係は、銃を撃つのに似ている」。ネットの対戦ゲームで知り合った本間とみのり。初対面のその日、本間が打ち明けたのは、子どもの頃の忌まわしい記憶と父の遺した拳銃のことだった。二人を監視する自転車に乗った男。そして銃に残された種類の違う弾丸。急逝した著者が考えていた真相は。
道端で男に殴られていた女子大生美紀を拾ったバイク乗りの幸雄。奇妙な同居は幸雄が美紀に売春をさせたことで終わったかにみえたが…男女の不思議を描く表題作他、ストリップ劇場で理想の女を見つけた男が彼女を探して旅をする「ひと目だけでも」、会社を辞めた男が故郷で恋人の親友に会う「いつもの彼女、別な彼」等、感情を排した乾いた文章がなぜか通常の恋愛小説よりも深く胸に残る名品7篇を厳選。
背中から銃撃され、ホークが瀕死の重傷を負った。彼が護衛していた賭け屋一家も殺され、ホークは静かに復讐を誓う。しかし事件の背後には、襲撃の実行犯であるウクライナ・ギャングだけでなく、旧知のギャング、トニイ・マーカスをはじめ、様々な人物の思惑が絡み合っていた…スペンサーの協力のもと、ホークは真相を追い、復讐計画を練り上げていく。砕かれた誇りを取り戻す、ホークがホークであるための闘いが始まる。
傷を負ったのは、身体だけではない。心も深く傷ついていた…長い療養生活の後でようやく退院したレベッカは弁護士を辞め、故郷のキールナへ戻った。乞われて地元の特別検事の職に就いた彼女が立ち直りはじめた矢先、凍結した湖で女性の惨殺死体が発見され、またも事件に関わることになる。被害者の身辺を調べると、複雑な背景が浮かび上がってきたースウェーデン推理作家アカデミー賞を連続受賞した注目作家の最新作。
浮遊バクテリアが建物を侵蝕し、情報伝達物質により政府が国民統制する都市を舞台に、主人公と女友達の曖昧な一夜を描いた表題作、“野天人”だったという叔父の後妻をめぐる少女の回想「野天の人」、“町”に侵入してくる悪魔と戦う公社職員の挫折と希望「駆除する人々」ほか、期待の幻想小説作家による硬質にしてフェティッシュな7篇を収録。
広告代理店で働くシングルマザーの種本千晶は、社内でも将来を有望視されているディレクターだった。彼女には喘息で苦しむ保育園児がいたが、大切な会議に出席するため子供を家に置いて出社し、死なせてしまう。子供に傷などもあり、検察は千晶を「保護責任者遺棄致死罪」で起訴。有罪になれば、三年以上二十年以下の懲役刑となる。市民から選ばれた裁判員たちは、彼女をどのように裁くのか?そして読者の貴方は、有罪無罪どちらに手を挙げるか?法曹関係者もうならせたリーガルサスペンス。