2009年発売
「撰ばれてあることの恍惚と不安と二つわれにあり」。ヴェルレエヌの詩で始まる「葉」、名家の六男に生まれ、乳母の手で甘やかに育てられた幼少期、伸びやかな少年期を、子供特有の自意識や狡さを交え描いた自伝的作品「思い出」、自らだけ助かった心中事件に材を得、その後過ごした療養所を舞台に描いた「道化の華」など、24〜27歳にかけて発表した15篇を収録。遺著のつもりで『晩年』と名付けた、第一創作集。
花筵問屋の主人庄兵衛は報恩講の席で、娘婿への相続を発表し、仕合せの中にいた。しかしその夜、店の蔵で、雇人が殺されたー「蔵の中」。中風の夫のために信心詣りを欠かさない袋物問屋のお房が落ちた罠ー「西蓮寺の参詣人」。穀物問屋大黒屋に出入りする厄介者留五郎が惨殺され、その死体には大八車の轍の跡があったー「大黒屋」。わずかな手がかりをもとに岡っ引きが真相に迫る、スリリングな時代短篇集。
元特攻隊員の木島を中心に、戦友だった七人は、無人島での戦闘訓練を終え、ついに暴力団大門組と黒幕政治家に戦いを挑んだ。手始めに大門組幹部を拉致し、数々の悪行や新聞記者殺害事件の真相を自白させ、さらには、内部抗争までも誘発させる。大門組も武力で反撃に出るが、それこそ木島たちが望んでいたことだった。老いに屈せず、自分の可能性を信じて闘う男たちの雄姿を描いた著者入魂の物語、ここに完結。
高校1年生の時に隣家に棲む男に拉致監禁された奈緒子。1か月にわたって弄ばれ続けた彼女は、男を殺害し辛うじて地獄から生還した。凄絶なトラウマを抱えたまま成長し、現在は不妊治療専門の医師として活躍する奈緒子だが、美貌の女医として評判の彼女のもう1つの顔、それはSMクラブに所属する売れっ子M嬢“セリカ”だった。過去と現在、サディスティックな欲望とマゾヒスティックな願望が交錯する、驚愕の問題作。
「B型になるくらいなら、死んだほうがマシよ!」。血液型性格占いが加熱し、特にB型人間への差別・偏見が広がる中、白血病患者の女性が骨髄移植を拒んだ。日本では最大にして最強の迷信となっている血液型性格分類に、岬美由紀、嵯峨敏也、一ノ瀬恵梨香が立ち向かう。彼女を救うため、「ないものをない」と証明する奇跡を起こせ。3大キャラクターが競演するクラシックシリーズ第11弾。『ブラッドタイプ』待望の文庫化。
「鬼芭阿諛子」なる人物が石川県の神社で宮司を務めている!?神社に急行した岬美由紀は、そこでかつての師であり宿敵であった阿諛子の母・友里佐知子の日記を入手する。その日記には、驚愕の昭和裏面史=友里の過去が記されていた!圧巻のスケールで描かれる激動の歴史。メフィスト・コンサルティング、ダビデ、マリオン・ベロガニアと友里の戦いが明らかになるクラシックシリーズ第12弾!すべての謎は今、白日の下に。
謎の神社には、境内に日本経済復興の鍵となる発明が隠されていた。しかし、それは国家転覆を企む鬼芭阿諛子の切り札だった!真実に一歩ずつ迫る岬美由紀に、復讐鬼と化した阿諛子が立ちはだかるー。美由紀は千里眼の宿命に決着をつけるべく、恒星天球教との最後の戦いに向かっていく!著者渾身のエンタテインメント巨編が待望の完全版で登場。息もつかせぬ展開で描かれたクラシックシリーズ、ついに完結。
松浦静山の下屋敷に飯炊き女として潜入した織江は、ついに静山の密貿易と野心の証拠をつかんだ。だが、これを提出すれば静山ばかりか、夫の彦馬にも破滅が訪れてしまう。くノ一としての義理と、妻としての人情。その板ばさみに悩む織江を、お庭番の頭領・川村真一郎がじわじわと追いつめていく。窮地に陥った織江に、くノ一の先輩でもある母が忠告した言葉。それは驚くべきものだった。人気作家の絶好調シリーズ第4弾。
私立大学で教鞭をとり、犯罪被害者救済活動を続けてきた大原奈津子は、衆議院統一補欠選挙への出馬を決める。そんな折、元犯罪者のプライバシーを侵害するビラを撒いて騒ぎを起こしていた団体「凶悪犯罪抑止連合会」から推薦状が届いた。戸惑う奈津子は元刑事の平澤栄治に相談する。抑止連の正体を突き止めるべく栄治の捜査が始まった。第5回『このミス』大賞優秀賞受賞作の文庫化。
ある大きな戦争で崩壊した近未来世界。金も居場所もなくなった元戦闘員の三人組が、偶然、手に入れたオンボロ戦艦「銀鼠号」で海賊稼業を始めることになった。用心深く情に篤い灰汁、冷静沈着で陽気な可児、短気であくどい鼻裂。勢い込む三人だったが、戦艦は超低スピード、肝心の機関砲が使えない…。プロペラ巨人、泥豚、雲人間など未知なる生物が次々現れるシーナのドキドキ海洋大冒険SF。
時は明治。琉球の下級士族の家に生まれた富名腰義珍は、生来の病弱を克服するために門外不出の秘伝であった唐手を学びはじめる。ひたすら同じ型を練り続ける日々の中で義珍の心身は強靱になり、修行にのめり込んでいく。そして時は移り、教育者となった義珍は、唐手を青少年の育成に役立て、古伝の精神を本土に普及させることを決意する。琉球秘伝の「唐手」を極め、本土に「空手」を伝えた男の生涯。
帽子デザイナーの木之内冬子は、28歳で子宮摘出の手術を受けた。かつての愛人で有名建築家の貴志祐一郎とよりを戻すが、女としての魅力をなくしてしまったのではないかと煩悶する。やがて、別れを決意するが…。店の顧客である教授夫人との同性愛体験、貴志の部下からの求愛など、様々な愛の経験を通じて女としての歓びを取り戻していく。限りなき性の悦楽と女性再生への葛藤を描いた異色の大作。おとなの恋愛小説コレクション第3弾。
宿題、勉強ああ嫌だ…机にむかうフリをしながら現実逃避のためにページを繰った少年は、いつの間にか物語の主人公として大海原にこぎだすはめに。そこは奇妙でハチャメチャな別世界。元の世界に戻るためには、物語の中を逃げ続ける作者を捕まえなければ!退屈な日常をがらりと変える豊かな空想の世界。大人から子どもまで、読み始めたらとまらない奇想天外なファンタジーが新装版で復刊。
命運を賭けた決戦に大敗し、満身創痍となった艦隊を敵本拠星系から無事に脱出させたギアリー大佐。次々と策を用いて敵の裏をかきながら故郷をめざす途中、シュトラー星系で捕虜収容所を発見、救出に成功した!だが、その捕虜のなかには、ギアリー同様“伝説の英雄”と讃えられるファルコ大佐がいた。野心家の彼は艦長たちを扇動し、39隻の艦をひきいて艦隊を離脱、一路故郷の宙域をめざすが、そこには怖るべき敵の罠がー。
人面魔獣事件で重傷を負ったジョウには長期の治療が必要だった。その入院生活もようやく終わろうとした頃、病床のジョウは不可解な襲撃を受ける。それは暗黒邪神教事件以来消息を絶っていたクリスからの死の挑戦状だった。エスパーの国、神聖アスタロート王国をうちたてた美しき魔王は、銀河系の新たな支配者となることを宣言し、全人類の滅亡を予言してきたのだ!わずかな手懸りからジョウたちは捜査を開始するのだが。
アビーは故郷の南アフリカ-差別と呪術の国-を離れ、アメリカ人の男性と結婚し、常夏のハワイへ移住した。雨漏りする車庫や不親切な隣人たちに悩まされながらも、夫と甘えん坊の愛娘とともに平穏な暮らしを営んでいた。しかしそれは、束の間の幸せに過ぎなかった。友人に預けていた娘が、空飛ぶ凧を追いかけ路上に飛び出すまでの。アビーは娘を失い絶望の底をさまよった。救いはどこにもないように感じていた。だが、生まれ育ったケープタウンへの旅が、神秘的なアフリカの大地の鼓動が、彼女の人生を甦らせる。感動のデビュー長篇。
無人島に理想郷を築こうとした宗教組織が集団失踪した。そこで何が起こったのか?教団の足跡を取材中の女性フォト・ジャーナリストが発見した不可解な異物。そして彼女の周囲で起こり始める異変。数学者が、教団の教義から数学的に導き出した殺人連鎖とは何か?消滅したはずの教団は?カルト、廃墟、暗号、パラドックスなど、謎の迷宮の暗路に潜む真実を、数学論理が解き明かす、本格論理ミステリ。
遺伝子管理局が統括する12基の知性機械によって繁栄していた人類文明が、キルケー・ウイルスの蔓延によって滅びてから250年。25世紀半ばの中央アジアでは、疫病が各土地で風土病と化し、人々の移動を著しく制限していた。イスラム系のマフディ教団とロシア系の中央アジア共和国が微妙な均衡を保つ天大山系で、旧世界の科学技術を保持するミカイリー一族は、半世紀にわたってマフディ教団と共存してきた。だが、教団の勢力争いにより、次期当主候補の一人であるミルザは、重大な秘密をもつ少女フェレシュテとその母マルヤムとともに、中央アジア共和国へと亡命する。一方、もう一人の当主候補レズヴァーンを擁立した教団幹部のアリアンはミルザらの逃亡を機にミカイリー一族を処刑、XXYのレズヴァーンを“妻”として教団の実権を掌握するのだったが…。『グアルディア』『ラ・イストリア』に続くHISTORIAシリーズ待望の第3作。
中央アジア共和国イリ軍管区の保護下にあるフェレシュテは、精鋭部隊の少女リューダの護衛の下、辺境のクルジャから北部の町へ移送されることになった。だが道中の2人を、マフディ教団の実権を奪取したレズヴァーンと配下の殺戮機械パリーサが襲撃、フェレシュテは連れ去られ、リューダは瀕死の重傷を負う。そんなリューダを救ったのは、西方から侵入してきた騎馬民族カザークの首領ゼキであった。教団の女信徒たちを自爆テロリストに仕立て上げ、共和国との永続的な準戦時体制を維持しようとするレズヴァーンに対し、イリ軍管区司令官ユスフはゼキとの同盟を締結、共和国からの独立を画策していた。古えの知性機械ミカイールに一度だけアクセスできる“階梯”たるフェレシュテをめぐり、複雑にからみあう各陣営の思惑は、中央アジアを大いなる動乱へと導いていく…『グアルディア』を凌駕する近未来の英雄叙事詩ついに完結。