2010年発売
ブッシュがイラクに宣告した「タイムアウト」が迫る頃、偶然知り合った男女が、渋谷のラブホテルであてどない時を過ごす「三月の5日間」。疲れ切ったフリーター夫婦に忍び寄る崩壊の予兆と無力感を、横たわる妻の饒舌な内面を通して描く「わたしの場所の複数」。人気劇団チェルフィッチュを率いる演劇界の新鋭が放つ、真に新しい初めての小説。第2回大江健三郎賞受賞作。
闘争と潜伏に明け暮れ、気がついたら二十年。活動家のおれも今や40歳。長い悪夢からようやく目覚めるが、まだ人生はたっぷり残っている。導かれるように向った京都で、おれは怪しげな神父・バンジャマンと出会い、長屋の教会に居候をはじめた。信じられるものは何もない。あるのは小さな自由だけ。あいつの不在を探しながら、おれは必死に生きてみる。共に響きあう二編を収めた傑作。
作り事は一切無用。ほんとうにあった怖い話だけを披露し合うという集まりに顔を出すようになった清兵衛は、いつしかその妖しい魅力に取り憑かれてゆく。やがて各々の身辺に奇妙な出来事が起こりはじめ、ひとり、またひとりと…。老境を迎えた男女の迷いと、人知の及ばぬ事件が絡み合う、哀愁味あふれる怪奇譚。
おとっつあんは、みんなのために命を懸けて火事を退治しに行くんだ…。おのれの命とひきかえに町を守った深川・南組三之組の火消し頭徳太郎。幼いときからその背中を見て育った息子の銑太郎は、やがて一人前の火消しへと成長していく。炎の恐怖と闘い、火消しに体を張る男たちの誇り高い姿を描いた、山本一力の真骨頂。
職を追われた悪徳刑事の夢。迷宮入りした幼女神隠し事件の解明に執念を燃やす老刑事。仕事に追われ息子を失った刑事の悔恨。三代続く名門警察一家に隠された闇。様々な事情を抱え、職を辞した刑事たちに訪れた“人生最後の事件”とは?刑事という特殊な職業の生態を迫真の筆致で描く警察小説短編集。
芦村節子は旅で訪れた奈良・唐招提寺の芳名帳に、外交官だった叔父・野上顕一郎の筆跡を見た。大戦末期に某中立国で亡くなった野上は独特な筆跡の持ち主で、記された名前こそ違うものの、よもや…?という思いが節子の胸をよぎる。節子の身内は誰も取り合わないが、野上の娘の恋人・添田彰一は、ある疑念をいだくのだった。
新聞記者・添田彰一は、恋人・野上久美子の父の生存を確かめるため、ひそかに調査を始める。口を閉ざす当時の関係者、京都のホテルでの発砲騒ぎ…次々と起きる不可解な事件にはいったい何が隠されているのか?停戦工作の裏事情と一外交官の肉親への絶ちがたい情愛が交錯する国際謀略ミステリーの傑作。
悲しみに暮れる彼女のもとに突如かかってきた電話の主は…愛する者への思いを静かに綴る「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」、ある医師を訪れた患者が語る鬼気迫る怪異譚「N」、猫を殺せと依頼された殺し屋を襲う恐怖の物語「魔性の猫」ほか全6篇を収録した最新短篇集。
アイドル好きのオタク大学生・乙島侑平は研究者の従兄から、美少女メイドロボット・キララのモニターを頼まれる。普段はどじっ娘メイドのキララだが、スイッチが入れば女王様キャラに大変身し頭脳も超明晰に。そんなキララが侑平の周辺で起る難事件をズバリ解決する。史上初の美少女メイドミステリー。
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。
「赤鬼」の綽名を持つ、南町奉行根岸肥前守のもとに、商いの評判が良かったもろこし屋の主人、幸右衛門が殺されたとの知らせが寄せられる。現場近くでは、「かのち」という書き付けを残して失踪した大店の若旦那が目撃されるが…。奇談集「耳袋」を記した根岸肥前守が、江戸の怪事件を解き明かす好評シリーズ、新展開の第一巻。
花嫁修業には目もくれなかった花世が源太郎と祝言をあげることに。源太郎も法律を学ぶ身で十分な収入がなく、不安を抱えていたー。表題作など全六篇。若い二人の門出を描く「明治のかわせみ」第三弾。
死せる禿鷹、生きるキャリアを走らす!史上最悪の悪徳警官が、死を賭して守った署内裏帳簿のコピー。それが、警察庁幹部によって葬り去られようとしていた。南米マフィアの復活と共に、血腥い暗闘の火蓋が切って落とされる。
ライアン・ビンガム。職業・凄腕リストラ請負人。ハンサムで女性には不自由したことがない。大手企業に雇われて余剰人員に引導を渡すため、全米を駆け巡る毎日。年間出張三二二日とあって、アパートメントも引き払い、飛行機の中とホテルが愛する我が家。もうすぐ今の会社と縁を切り、格上のコンサルティング会社に転職してキャリアアップする予定だ。だがその前にしておかなければならないのが会社の金で“グレートウエスト”航空のマイレージを百万マイル貯めること。あと六日、八つの都市を巡ればミッションは完成なのだが…。ジョージ・クルーニー主演映画『マイレージ、マイライフ』原作小説。
昭和の文芸に不滅の業績を残した山本周五郎。短篇の名手と評された周五郎の作品を、新たな視点で編纂した傑作選第一巻。隠し子をめぐる若侍の夫婦愛と友情を描いた表題作をはじめ「ひやめし物語」「いさましい話」「城中の霜」「枕を三度たたいた」「月の松山」「桑の木物語」の、武家ものの秀作七篇を収録した。周五郎の描く武士は、決して特殊な生を生きる人々でなく、愛し憎み、時に過ちを犯しつつも懸命にその生を全うしようとする。その姿は、文壇的栄誉を拒み、つねに読者に向き合おうとした周五郎の人生に似て、今も我々の胸を打つ。
吾郎が四年ぶりに、福岡から横浜に戻ってきたー!!横浜に帰ってきた吾郎は、三船東中に転入し、昔の仲間である小森たちと再会する。吾郎に出会い、野球のすばらしさを知った小森は中学でも野球を続け、キャプテンになっていた。しかし、山根率いる不良部員からのいやがらせにより多くの仲間が退部し、野球部はいまや廃部寸前の状態になっていた。野球部をたてなおそうと、小森は吾郎に野球部入部をすすめるが、なぜか吾郎はサッカー部に。福岡にいるあいだ、吾郎にいったい何が起こったのかー。累計二十万部ヒットの大人気シリーズ、待望の第三弾。