2012年2月発売
雑誌「われらの時代」の編集者、若杉誠は、取材で名古屋と世界遺産・白川郷を訪れた。名古屋では新幹線の最先端技術を、白川郷では世界遺産の現状を取材したが、若杉には別の目的があった。白川郷に古くから伝わるがんの秘薬を入手することー。その薬をめぐって起きた殺人事件は、二〇二七年開業予定のリニア中央新幹線計画と、見えない糸でつながっていた。リニア新幹線=日本の「未来」と、世界遺産=守るべき日本の古き良き「過去」が、十津川警部の中で結びついていく。トラベル・ミステリーシリーズの最新刊。
一流会社勤務の夫の転勤に伴い、東京で憧れの社宅暮らしをスタートした音子。喜びも束の間、社宅内の人間関係に振り回されてゆく。一人息子・悟の教育問題、見栄と欺瞞に満ちた主婦同士の情報戦に追い詰められ、焦った音子は愚かな行動に出るがー痛烈な人間描写、現代のドラマが大迫力、傑作長編エンターテインメント。
広告代理店で働くシングルマザーの千晶は、会議出席のため、喘息の発作が起きた子供を家に残して出社、死なせてしまう。検察は千晶を起訴。市民から選ばれた裁判員は彼女をどう裁くのか?法曹関係者を徹底取材して裁判員制度をリアルに描いたリーガルサスペンス。NHKドラマ化でも評判となった話題作。
定年退職後のプラン作成には、ほぼ十年をかけた。全く新しい人生を始めるため、誰にも相談はしなかった。それまでに片をつけたい事が二つだけ残っている。あと六日ー地味な人生を送ってきた独身女性の意外な決断を描く表題作ほか、「目が乾くほど現実を見つめたい」オーバー40女性たちの心情が鮮やかな傑作短篇、全五篇。
働くばかりが能でなし、たまには羽も伸ばしたい。お役目の合間を縫って縄張り外の出羽に向かい、「おくのほそ道」の気分にひたろうとした十兵衛だったが、関八州をまたにかける盗賊一味と同じ道を辿ってしまったから、さあ大変。お馴染み桑山十兵衛が行く先々で珍妙な騒動に巻き込まれる、当代無二の捕物帖。シリーズ第七弾。
十五年前の出来事がきっかけで、歌手の夢を捨てたはずの女は、奇跡の歌声を持つ自らの娘に、再び夢の続きを見た。だが、娘のデビューと引き換えに封印したはずの過去を紐解いた代償が、やがて二人に迫る。思惑渦巻く芸能界と海に臨む鎌倉の料理宿を舞台に、心に空虚を抱えた女性の彷徨の行方を描く長編小説。
東京のエリートヤクザ桜井は、組の金一千万円とともに消えた部下を捜すため、北関東の田舎町を訪れた。彼を待っていたのは田舎ヤンキー、リストラ親父、引きこもり少年との死闘!物語の速すぎる展開、クールで乾きすぎたユーモアは、まさに現代版「仁義なき戦い」だ。トカジ史上燦然と輝くベスト1エンターテインメント。
父親が不倫の末に事故死した17歳の高校生・功刀鈴と、夫と親友に裏切られた34歳の女性歯科医・来野美那子。憎しみと悲しみによって過去の呪縛から逃れられない二人は出会い、心を焦がし、ただ素直に強く求めあうが…。年の離れた男と女が、激しくやさしい、どうしようもない愛を知る、著者渾身の恋愛小説。
宮本武蔵を心の師と仰ぐ香織と、日舞から剣道に転進した早苗。早苗が福岡に転校して離れた後も、良きライバルであり続けた二人。三年生になり、卒業後の進路が気になりだすが…。最後のインターハイで、決戦での対戦を目指す二人のゆくえ。剣道少女たちの青春エンターテインメント、堂々のクライマックス。
オリーブの木を買ってきた翌日、突然、消えた妻。跡を辿ろうとする夫は、2人の婚姻届すら提出されていなかった事実を知る。彼女は一体何者だったのか?そして、彼女の目的とは?表題作の「オリーブ」をはじめ、「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズの著者による、「大人の嘘」をモチーフにしたサスペンス作品集。
大正一三年三月、不世出の作家・安部公房生誕の二週間後に刊行された、実母ヨリミによる生涯唯一の小説。恋愛に至上の喜びを見いだす男女五人の愛憎劇は、やがて人間の本質へ迫るドラマへと一変していく。瑞々しい感性と深い洞察力、簡潔で凛乎たる文章ー資料的重要性もさることながら、文学性の極めて高い、二一世紀の今、さらなる輝きを放つ、幻の名作。
生涯で膨大な作品を残した室生犀星。大正から昭和初期にかけての著作の中から、結婚や家族を対象したもの、芥川龍之介を中心とした交遊関係に言及したもの、関東大震災を経験し生と死について触れたものを各章に分けて編纂。小説、詩歌のみならず、日記や書簡からも犀星の文学に対する姿勢や精神を読み解く作品集。
結城麻子・東京の呉服屋の一人娘「夫婦のつながりは、セックスだけじゃないでしょう?」×桐谷正隆・千桜の夫。婿養子だが野心家「俺は、今すぐにでもあんたを抱きとうてたまらんのや」、桐谷千桜・京都の葬儀社の社長令嬢「もう逃がさへん。あんたはうちの奴隷や」×小野田誠司・麻子の夫。ブライダル会社の営業「お願いだから、もう苛めないでくれ」。共犯関係は緊張を帯び、秘密の濃度は高まり、堕ちていくー身も心も焼き尽くすねじれた快楽の行方。恋ではない、愛ではなおさらないもっと身勝手で、もっと純粋な、何か。夫婦だからこそ言えない秘密がある。『ダブル・ファンタジー』を超える衝撃の官能の世界。
反ファシズム活動の理由で逮捕されたパヴェーゼ(一九〇八ー五〇)が南イタリアの僻村に流刑されたときの体験を色濃く映した自伝的小説。背後は峨々たる山々、眼前は渺々たるイオニア海。村人たちとの穏やかな交流の日々を背景に、流刑囚の孤独な暗い心の裡を描き出す。
姉の代わりに出演したテレビの心霊番組で、イタリア人エクソシストのジャンに突然プロポーズをされた刻子。初対面なのにいったいなぜ?しかも神父は結婚できないはずなのに!つきまとうジャンをどうにか撒いてその日は無事に帰宅したものの、なんと次の日、校門で待ち伏せされていて…!?美形でアニメオタクなエクソシストと、霊感女子高生の除霊ラブコメディ。
やりたいこと、夢、特になし。自慢は家事の腕前だけ。そんな佳人が背中を押されて始めたのは、見ず知らずの男女6人+管理人のタカ先生での共同生活。“シェアハウス小助川”という名前の医院を改築した大きな“家”でー。優しすぎて生きづらい、不器用な若者たちの成長を温かい視線で描ききった長編エンタメ。
“知恵伊豆”この賢者なくして「徳川の平和」はなかった。老臣たちの権謀を抑え、江戸城下の建設に腐心する松平信綱に最大の試練「島原の乱」が迫る。松本清張賞作家が為政者の真の勇気を問う意欲作。
東欧の元諜報部員、国連平和維持軍の被曝した兵士、ハンガリー動乱で対峙した二人の将軍、古びた建物を駆け抜ける不思議な風の歌…。ベルリンの壁崩壊以後、黄昏ゆくヨーロッパをさすらう記憶の物語。
富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。