2012年発売
目を上げると鏡の中の見知らぬ女が、自分をみつめているー。美容整形で、彫刻的美貌を手に入れた麗子。しかし葬り去ったはずの容貌は、心まで飼い馴らすことはできなかった。愛されることを渇望し、満たされない日々を生きる女の心に、ある日ともった恋心。想いを募らせ追いかけていった先の山荘で目にした衝撃の情景とは!?ともに一つになって闇の底に転落していこうとする男と女の倒錯した愛の形を描く、異色の恋愛小説。
ワンマン社長の独裁体制のもと、全国紙・東京経済産業新聞社は混迷を深めていた。ついには子会社の手形流出という仰天の事態が発生。架空発注で手形を乱発し裏金作りにあてていたのだ。バブル経済を煽ったとの批判を受けつつも、日本経済の発展を支えた誇りまでかなぐり捨てるのか?心ある新聞記者たちの、醜聞にまみれた経営陣との闘いが始まる!マスコミ経営の内実を暴き、報道の倫理と責任を鋭く問う、経済小説の真骨頂。
日本経済を牽引してきたとの自負を持つ、大手新聞社の東京経済産業新聞社に激震が走った。政官財を巻き込んだリクエストコスモス社未公開株事件に連座して、社長が引責辞任したのだ。しかしそれは、醜聞の始まりにすぎなかった。乱脈経営の末、バブル崩壊で破綻した名門商社が、マスコミ対策として、東経産新聞内部の協力者に巨額の金を支払っていたことが明らかになり…。第四権力の驕りと堕落を白日の下に曝す衝撃の問題作。
街で噂の占い師、その名は小梅。その正体は誰も知らず、謎に包まれていた…はずだったのに!!?小梅の目の前に突然現れたヤ○ザ(!?)みたいな芸能マネージャー、武元。なんと、小梅をスカウトしに来たらしい。『てめえ…、よし分かった、お前トランクに乗れ』「暴力反対!変態!」-最悪の出会い方をした二人。運命のいたずらか。タロット占いによって奇妙な恋は動き始め…予測不能な展開!衝撃の結末!伝説の占い師が唯一占えなかったものとは。
新人社員くんの何気ない仕草が不思議に気になる、先輩女子今井さんの心の揺れ動き(「日々の春」)。同棲女性に軽んじられながら、連れ子の守りを楕性で続ける工員青年に降った小さな出来事(「乳歯」)。故郷・長崎から転がり込んだ無職の兄が弟の心に蘇らせる、うち捨てられた離島の光景(表題作)などー、流れては消える人生の一瞬を鮮やかに切りとった、10の忘れられない物語。
目の前を悠然と流れる筑後川。だが台地に住む百姓にその恵みは届かず、人力で愚直に汲み続けるしかない。助左衛門は歳月をかけて地形を足で確かめながら、この大河を堰止め、稲田の渇水に苦しむ村に水を分配する大工事を構想した。その案に、類似した事情を抱える四ヵ村の庄屋たちも同心する。彼ら五庄屋の悲願は、久留米藩と周囲の村々に容れられるのかー。新田次郎文学賞受賞作。
ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。「水が来たぞ」。苦難の果てに叫び声は上がった。子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成されなかった。故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。
霧が立ちこめる街・霧津市の障害児学校に赴任した若き教師カン・インホは、信じ難い現実に直面する。無力な生徒をなぶる、鬼畜のごとき「教育者」たち。告発に立ち上がったインホたちを阻む「権力」の壁。果たして、子どもたちに救いの日は来るのかー。社会派作家・孔枝泳の渾身作。
空座町に現れた、仮面をつけた謎の女…。彼女をさまよう霊魂として成仏させようとしたドン・観音寺だったが、その出会いが観音寺を「十一番隊」、「群体の破面」、反乱を起こした「八代目剣八」、「死んだはずの十刃らしき男」の争いに巻きこむことに…!!黒崎一護が力を失った空白の期間を埋める、狭間の物語、前編。
痣城剣八、シエン、そしてピカロの目的は「仮面の女」ロカだった。彼らの前に立ちふさがる十一番隊。4者の戦いは渦を巻き、舞台は空座町へ…!!最新鋭の軍事兵器と斬魄刀が交差する戦火の中、ドン・観音寺はロカを守るため、石田雨竜と共に愛車「ジャンヌダルク」を駆る!成田良悟が描く、狭間の物語、後編。
国家権力に笑いで一泡吹かせたい!プラハの居酒屋に、作家、アナーキスト、建築家、画家、自称革命家などが集い新党を結成、政治維新を企てた。つきまとう私服刑事を出し抜き、密告者をオチョくり、徹底取材で対立候補をコキおろす。その演説にあのカフカも大笑いしたという伝説のユーモア・ノンフィクション小説を、名訳者・栗栖継が八年の歳月をかけてついに完成。
ふつうの人々の営むささやかな日常にも、心打たれる物語がひそんでいる。その一つ一つをていねいにすくい上げて紡いだ、美しく切ない作品集。妻殺しの容疑で起訴された友人の物語「尾瀬に死す」(TVドラマ化)ほか、ネットカフェ難民の男女の出会いを描いた表題作、はぐれカモメと放浪犬とおばあさんの物語など十四篇を収録。
この箱を開くことは、片手に顕微鏡、片手に望遠鏡を携え、短篇という名の王国を旅するのに等しいー「奇」「幻」「凄」「彗」、こだわりで選んだ16作品にそれぞれの解説エッセイを付けて、小川洋子の偏愛する小説世界を楽しむ究極の短篇アンソロジー。
海生は、23歳の新米の坊主。初めてお勤めをすることになった通夜の最中、棺の上に突然、裸足の女性が現れる。遺影と同じ顔をした彼女は、なんと死んだはずの女子大生だった。自分以外、誰の目にも見えない彼女を放っておけず、海生は寺での同居を提案する。だが次第に、彼女に心惹かれて…若い僧侶の成長を描く感動作。
典型的な幽霊屋敷ものから、悪趣味ギリギリの犯罪もの、秘術を上手く料理したミステリまで、奇才ゴーリーによる選りすぐりの怪奇小説アンソロジー。古典的名作「猿の手」(W.W.ジェイコブズ)、「信号手」(C.ディケンズ)も収録。すべての作品に「何か」を予想させる、かなり怖いゴーリーの描き下ろし挿絵付き決定版。
「ここは地の涯 シベリア奥地」日本を恐怖に陥れた殺人鬼を大追跡。「どんどん事を大きくして、君にも愉しませてあげるから」と警視庁の史上最強女王・薬師寺涼子警視は部下の泉田らを従え、シベリア出張。犯人が潜伏する秘密都市へと向かった。辿りついた先で見たのは、地獄としか思えぬ驚愕の光景と、世界を震撼させる兇悪な陰謀だった。人智を超えた敵の暴走を止めるべく、涼子は常識を超えた作戦で挑む。