2013年11月発売
元刑事が絞殺された。警視庁捜査一課の兎沢は、国家を揺るがす大事件の真相に元刑事が辿りついていたという糸口を掴むも邪魔が入る。立ちはだかったのは公安部の志水。兎沢に捜査のイロハを叩き込んだ所轄時代の先輩だった。事件の解決を泣ぐ刑事部と隠蔽を目論む公安部の争いが激化。組織の非情な論理が二人の絆を引き裂く…。胸打つ警察小説!
ダンテ“地獄篇”に秘められた暗号と象徴。人口過剰とマルサス主義、トランスヒューマニズム。小説『インフェルノ』に託された現代社会の問題とキーワードを、徹底解説!
吉原で、御大尽の肥前屋が亡くなった。持病などはなかったが、なぜか遺体の側には、宝相華の模様がはいった薬包が落ちていた。同心の省吾は、薬屋を調べ始めるが、薬包の中身の正体は分からない。そこで、植物に詳しい採薬使・佐平次の所へ相談を持ち込む。佐平次は、その頃花街で流行っていた、惚れ薬や性欲剤などではないかと推測して、花街にある薬屋などに、話を聞きに行くことに。そして、吉宗へ報告しに行った佐平次は、花街での四十〜五十代男性の“病死”が多発していることを知る。薬包の中身を調べていくうちに、「抜荷」の存在に気付いた佐平次が追うと、それは長崎奉行と繋がっていきー!?植物学のスペシャリスト、正体不明の『薬』に挑む!!新解釈時代ミステリ!!シリーズ最新作!
やさしいけど、ちょっとへたれな書店員・光にはもうひとつの顔があった。夜になると、「デビクロ通信」という謎のビラを、全力でボム(配布)するのだ。そんな光に、ある日、運命的な出来事が訪れるー。圧倒的な多幸感に包まれる、この冬読みたい、新感覚ラブストーリー。
いつも川で漁をするヨータ、ミツオ、ノリ子、ヤスヨたち。その日々を中心に少しづつ変わりゆく村のすがた、親たちの苦悩、別れの悲しみなどを水彩画のように描き出す。川の四季にきざまれる限りなくやさしい魂のふるさと。『四万十川』の作者が十六年ぶりにおくる新たなる名作。
20世紀の初頭、清が滅んで中華民国が成立した数年後、江南の仙陽で「黄石斎真報」なる画報が発行された。「黄石斎真報」は、地元の社会問題や事件のみならず、怪しげな話題も取り扱っている。記者の陸亜森、居候の黒蝙蝠らは、新人の林崇徳と奇妙な出来事を取材する過程で、その真相に近づいていく。それらは記事になると同時に、黒蝙蝠らに副収入をもたらしてもいた…記事以上に怪しい記者たちが縦横無尽に大活躍!痛快!中国歴史ミステリー!!
警視庁捜査一課の敏腕刑事だった江波淳史は、取り調べ中に容疑者が自殺したことで青梅警察署水根駐在所所長へと左遷された。亡くなった女性への自責の念から、江波が望んだ異動でもあった。駐在所の仕事と暮らしにも馴れ、山歩きを趣味とする江波は徐々に自らを取り戻していく。ある日、御前山でペットの犬がいなくなったという連絡があり、山に入った江波の見つけたトラバサミが山梨で起きた殺人事件とつながっていくー。異色の「山岳+警察」小説!
あの灼熱の夜の陰鬱な時間のことをあとから考えてみてわかったのだけれど、マリーとぼくは同時にセックスしていたのだった。ただし別々の相手とだが。その夜、マリーとぼくは同じ時刻に(略)、パリ市内の直線距離にして一キロも離れていないアパルトマンで、それぞれセックスをしていたのである。その夜、宵の内であれ、もっと夜が更けてからであれ、ぼくらが顔を合わせることになろうとは想像もできなかった。しかしそんな想像を超えた出来事が起こったのである。上品なエロティシズム、おしゃれなユーモア、かがやく生命力…「ぼく」が語る、彼女との大人な関係。いまフランスで最も重要な作家から届いた“本物の小説”。
もうすぐ還暦。だけど、まだまだ冒険したいし、恋もしたいー。友人の通夜で出会った未亡人の千春に惹かれてしまった弘一郎。「カレセン」だという二十代の亜紀子と心を通わせるバツイチの敏雄。同級生のマドンナに頼まれ、探偵の真似事をするはめになった憲幸。年齢を重ねても、決して尽きない悩みと欲望。枯れない男たちの姿を優しく洒脱に描き出す六つの名短編。
謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていたー。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始める…。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。
膝を痛め、サーカスの花形から事務職に転身し、やがて自伝を書き始めた「わたし」。どうしても誰かに見せたくなり、文芸誌編集長のオットセイに読ませるが…サーカスで女曲芸師と伝説の芸を成し遂げた娘の「トスカ」、その息子で動物園の人気者となった「クヌート」へと受け継がれる、生の哀しみときらめき。ホッキョクグマ三代の物語をユーモラスに描く、野間文芸賞受賞作。
悠木和には“謎”があった。小田桐、野田、望月が塾帰りに立ち寄るハンバーガーショップでの話題は、いつも彼女のこと。可愛いえくぼ、颯爽とした振る舞い、抜群の知性、あだ名付けの微妙なセンス、そして“謎”。「事件の匂いがする」-三人の前に史上最低の探偵が現れた!新潮文庫編集部を騒然とさせた美少女と三バカトリオによる、青春前夜の胸キュンおバカミステリの大大大傑作。
闇の黒猫。水際立った手口で大金を奪い去る盗賊は、いつしかその異名で呼ばれていたー。腕が立ち、情にも厚い定町廻り同心・朽木勘三郎と、彼に心服する岡っ引たちは、商家の盗難騒動、茶問屋跡取り息子失踪事件を鮮やかに解き、いよいよ江戸の闇夜に跋扈する「黒猫」の正体へと迫ってゆく…。文芸評論家・縄田一男氏に大器と絶賛された、野口卓、入魂の書き下ろし時代小説。
子供たちしか知らない秘密。岬の崖の下に石造りの家があって、魔法使いが「おもいで質屋」を営んでいた想い出を担保にお金を貸してくれるという。でも二十歳までに取り戻さないと想い出は返ってこない。中学生の里華は、魔法使いと出会ってすっかり仲良しになり、共に青春の季節を駆け抜けてゆく。やがて二十歳を迎えた時…。きらきらと胸を打つ、あの頃が蘇る魔法のストーリー。
初めて恋人との正月を迎える貫多。だが些細な行き違いから険悪な雰囲気になり、大晦日の夜ついに爆発する。二人の新生活に垂れ込める暗雲の行方はー『寒灯』。いくら邪険に扱っていようと、秋恵への気持ちは微塵も変わっていなかった。しかし暴言や暴力は続き、ついに彼女は去ってゆく。そのあとに残されたものはー『腐泥の果実』。他二篇を収録する私小説集、待望の文庫化。
最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ。明日またくる朝。浅漬ー。現実から目を逸らし、表層的なハッピー感に拘泥する表題作「ゴランノスポン」。自らの常識を振り翳す人間の暴力性を浮かび上がらせ、現実に存在する歪みを描く「一般の魔力」。現代と中世が書物を介し烈しく混ざり合う「楠木正成」他、秘蔵小説7編を収録。笑いと人間の闇が比例して深まる、傑作短編集。
京の錦市場で忽然と姿を消した桜子としげの消息は依然として知れないままであった。総兵衛は御堂に篭りひたすら思念を送り続ける。じりじりとした時間が過ぎていく中、総兵衛の奇計に薩摩の密偵が二人引っ掛かったのだが…。一方、江戸では、大黒屋へとつながる秘密の地下道を探り当てた元同心池辺三五郎が不穏な動きを見せ始めた。京と江戸、切迫する二つの危難、会心の第七巻。
都市伝説サイト「よろいち」に“おひとりさま”の怪情報が届く。夜道で「火を貸してくれ」と声を掛けられ、断ると身体に火をつけられるというもの。そんななか、火の気のない場所で女子高生の身体が燃える事件が!被害者は奇しくも事務所の社長・輝一の知人の教え子。そして単身調査に乗りだした恵は、輝一の意外な過去を知るのだが…。信頼の絆を失ったチーム、絶体絶命か!?
四国の山奥の村で、謎の連続老人失踪事件が発生した。容疑者となった父親の真実を探るべく、私は現場へと向う。だが、そこには歴史上最も凄惨な「人権蹂躙」の闇が立ち込めていた…。人間はどこまで残酷なのか。生きることに救いなどあるのか。長年の構想が結実した情念の巨編!血塗られた「差別」の狂気が、六十年の時を経ていま蘇るーノンフィクションの旗手が世に問う、慟哭の社会派ミステリー!