2014年6月発売
社会福祉の大胆な切り捨てで経済大国に返り咲いた近未来の日本。警察の経費削減で捜査を委託された元刑事の幸祐は、夏休み中の孫娘・愛芽と共に、老婆の死亡事件が起こった山奥の福祉施設を訪れる。単なる事故死で片づけるはずが、クセのある施設の人々と接するうちに幸祐の刑事根性が疼きだして…ノスタルジックな夏休みの情景に棄てられた人々の哀しみが滲む傑作ミステリ。
地方の支局で腐っていた記者が、やっと掴みかけたスクープ。でもその記事は、あの人の笑顔を曇らせてしまうかもしれない…。消えそうな命と、明日生まれる命。どちらを選ぶのか?超先端医療の闇を突くメディカル・サスペンス!
老いた海女、落魄のピアニスト、ライムポトスと裸婦、家に辿りついた異国の女…。房総半島の小さな街で何かを見つけ、あるいは別れを告げようとしている男と女たち。夕闇のテラス、シングルトーンの旋律…。歓楽の乏しい灯りが海辺を染める頃、ありえたかもしれない自分を想う。『脊梁山脈』で「戦後」を描き、大佛次郎賞に輝いた著者の「現代」小説。
太陽系全域に警報が鳴り響いた。「粛清者襲来!即応せよ。これは訓練にあらず!」ついに怖れていた粛清者の探査機がやってきたのだ。ただちに連邦宇宙軍は迎撃部隊を派遣する。だが、侵入してきたのはただの無人探査機ではなかった。強大な攻撃力を秘めた、二機で一組の強行偵察型探査機を粛清者は送りこんできたのだ!迎撃に向かった哨戒艇二隻はあっけなく撃破され、戦艦を含む即応艦隊が新たに派遣されるが…!?
ヤガを脱出しようとして捕らわれの身となったフロリーが、見知らぬ場所で目を覚ますーグイン・サーガ130巻『見知らぬ明日』はそんなシーンで幕を閉じました。そしてそれは栗本薫によるグイン・サーガの最後の場面でもありました。しかし今、途絶したその場所から物語が動きはじめます!“新しきミロク”に捕らわれたフロリーとヨナを救出すべく、スカールが、ブランが、イェライシャが、ヤガの神秘の深奥にいどむ!
坂巻正行は17歳の男子高校生。のんびり帰宅部の大人しい青年だが、彼には非線形人工知能学分野の権威である祖父がいた。祖父は現役引退後、研究所にこもって人間そっくりのAI搭載探偵ロボットを開発、依頼人に派遣するボランティアをおこなっていたのだ。ある日、3体の探偵ロボットがエラーを起こし、勝手に町に出て「探偵」活動を始めてしまった。半導体探偵マキナと正行のコンビは、あちこちで「捜査中」と思われる「探偵」たちを、見つけ出すことができるのだろうか?
コレッティ家のパーティでパパラッチに追われたテイラーは、広大な屋敷の庭園にある、生け垣の迷路に逃げ込んだ。そのいちばん奥で、彼女はルカ・コレッティと出会う。ひと目で惹かれ合ったふたりは熱いキスを交わすが、翌日、盗撮された写真がでかでかと新聞を飾ってしまう。-子役時代から、欲深いステージママの母親や、女優を食い物にする監督に利用され続けてきたテイラー。もう二度と誰にも騙されないと誓っていたのに、ゴージャスな御曹司ルカの誘惑にぽうっとなってしまったなんて。テイラーは醜聞を避けるため、“ルカは私の婚約者”と発表する。数時間後、驚きと怒りに燃えたルカが、真っ赤なフェラーリで追ってきた!
メイシーは、多忙な親友夫妻の息子コスチャを親代わりに育ててきた。だが夫妻は突然の事故で亡くなり、遺児の後見人が引き取りに現れる。アレクセイ・ラナエヴスキーと名乗る男はハンサムだが横柄で、メイシーを一瞥すると“子守りも支度をするように”と告げた。慌てて荷造りをし、シャワーを浴びてバスルームを飛び出すと、いらいらと待ちくたびれ、急かしにきたアレクセイにぶつかった。彼の目が見開かれ、タオル1枚に包まれた胸の上でぴたりと止まる。メイシーの体はかっと熱くなり、肌に残る水滴が一瞬で蒸発した。2人の視線が絡み合い…メイシーは子どもの声ではっと我に返った。いけない。彼はコスチャの後見人、わたしはただの子守りなのに。
21歳のルースは、親友宅で出会った寡黙な年上の男性、パトリック・ハーディにひと目で恋をした。思いきって話しかけてみたけれど、まったく相手にされない。遠い外国で暮らし、少しの間だけイギリスに帰国中という彼は、ルースのことなど、情事の相手も務ならないねんねだと思っているのだ。ところが、ある夜のできごとを境に、運命の輪が狂い始める。酔ったパトリックが、たまたま家族が不在だったルースの家に立ち寄り、そのまま一夜を過ごしたのだ…ルースのベッドで。数週間後、パトリックが外国へ発ってしまう日の直前、ルースは震えながら彼に告げた。あなたの赤ちゃんができたの、と。
レイラは母亡き後、横暴な義父に虐げられてきた。狭い部屋に閉じ込められ、食事もろくに与えられない。ビジネスの一環として、多額の金と引き替えに、見ず知らずの男との結婚を決められても、レイラは逆えなかった。結婚すれば、義父から逃げられる。誰とだってかまわない…。強欲で好色な老人を想像していたレイラは、現れた相手を見て驚いた。たくましくセクシーで、危険な雰囲気をたたえた男性。この人が、多国籍企業経営者ジョス・カーモディー私の夫なの?不覚にも胸がときめいたが、彼はレイラを蔑んだ目で見ている。“金の為なら、誰にでも身を委ねる女なんだろう”とでも言いたげに。
ベスは双子の妹の頼みに驚愕した。妹は実業家マーコスの秘書として高給を得ているが、社内不倫のあげく妊娠したうえ、出産が終わるまでベスに身代わりを務めてほしいというのだ。話を聞くかぎり、マーコスは社内恋愛すら許さないワンマンな社長だ。とはいえ、ただ一人の妹のためにできるだけのことはしてあげたい。妹になりすましたベスは、緊張しながら出勤した。そして初めてボスであるマーコスと対面し、息が止まりそうになった。傲慢さをにじませながらも、荒削りさがセクシーな男性。ぽうっと立ちつくすベスは、そのときは想像すらしなかったーマーコスと恋に落ち、運命の皮肉さを思い知らされることになるとは。
1年前、スペイン人の夫サヴの運転する車が衝突され、アイラは4歳の息子ケーシーを失った。その後、サヴは罪悪感から心を閉ざし、彼女に冷たい態度をとるようになっていった。背中を向け合って眠りにつく日々が続き、やがてアイラは離婚しかないと考えるようになる。そのために仕事への復帰を決める彼女だったが、皮肉にも、サヴと同じ職場を選ばざるをえなかった。仕事場では気さくで、魅力的で、部下からの信頼も厚い彼。妻の自分には見せてくれない顔、アイラの心はさらに沈み…。
半年前、結婚式当日に事故に巻きこまれ大怪我を負ったヴェロニカは、花婿に婚姻を無効にされたうえ、ごみのように捨てられた。不幸のどん底で脳裏に浮かんだのは、継父ハンクの優しい顔ーすがる思いで継父の暮らす家を訪れたヴェロニカを待っていたのは、父は半年前に亡くなったという、息子コールの言葉だった。16歳の頃、ヴェロニカはコールに熱い思いを寄せていたが、彼は父を煩わせる継妹をひどく疎んじていた。時を経て男らしさを増したコールに心を奪われそうになった瞬間、彼が蔑みもあらわに言い放った。「放蕩娘がついに帰ってきたか。どうせ父の遺産目当てだろう?」
“世界で最もセクシーな男性10人”の第3位として雑誌で紹介された大富豪デヴォンを、サラはうっとりと見つめた。このカフェで落ち合ったのは、彼から突然連絡を受けたからだった。でも、いったいどんな用件かしら。いぶかしがるサラに彼は座るなり切りだした。「君の妹に家宝を盗まれた。これが証拠だ」差し出されたスマートフォンの動画には、妹の姿が。ああ、まさか。彼は、妹を守りたければ自分の婚約者役を演じるようサラに迫った。低俗な記事のおかげで失った取引相手の信用を回復するには、王家の末裔ーカルレンブルク大公妃の孫娘サラが適任なのだと言って。あまりにも話が一方的だわ。そう反論しようとした彼女をデヴォンはいきなり抱き寄せ、唇を奪って…?!
カジノ王の億万長者の夫コンラッドと別居して3年。ジェインは夫を忘れたくて、悩んだすえ指輪をルーレットに賭けた。プロポーズされたときは幸せの絶頂にいたのに、結婚すると夫は、たびたび理由も告げず長期間家を空けた。私は愛されていないー残酷な事実に気づいて家を出たあの日。すべて忘れてしまえたら…。ルーレットが回り出し、息を詰めたそのときだった。コンラッド!ふらりと現れた夫の姿を見て、体がたちまち熱く反応したことにジェインは愕然とした。もううんざり。気分次第でふいに帰宅する暴君に求められるまま、ベッドの相手をするだけの妻なんて。そんな彼女の思いを見透かしたかのように、コンラッドはあざけった。「残りの人生を、僕とベッドを分かち合わずに過ごす覚悟があるのか?」
かつて男性に騙され、恋愛に臆病になっているスザンナ。懸命に仕事に打ち込み、ようやく周りから認められた矢先、新任の上司ハザードから罵声を浴びせられて呆然とする。私が前任の上司と不倫していたですって?ひどい勘違いよ!(『特別扱い』)。顔にあざのあるコレットは母親の再婚相手から疎まれ、召使いのようにこき使われて、惨めな日々を送っていた。だが、ある事故のせいであざは消え、別人のように生まれ変わる。そんな彼女の前に、冷酷なギリシア人富豪ルークが現れて…。(『悪魔のばら』)。
カーチャはイタリアへ向かう飛行機の中にいた。機体がふわりと揺れるたび、おなかに感じる羽ばたきは決して気のせいではなく、小さな命が息づいている証だ。わたしの赤ちゃん…。思わず胸が熱くなる。込み上げる思いをカーチャは慌てて打ち消した。情が移らないようにしなければ。私に母親になる資格はない。だから今、この子を委ねられるかどうか見極めるために、はるばる子どもの父親に会いに行くのだ。たった一夜だけをともにしたプレイボーイの外科医、ベネデット・メディチ伯爵のもとへ。