2019年2月22日発売
カタログ会社で働く35歳の編集者、妃斗美。婚約を破棄された過去を持つ彼女は、これからひとりで生きていくために、大きなものを買って、小さなものを拾った。手に入れたふたつの“幸福”は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。
独り暮らしの姑が亡くなり、住んでいたマンションを処分することになった。業者に頼むと高くつくからと、嫁である望登子はなんとか自分で遺品整理をしようとするが、あまりの物の多さに立ちすくむばかり。「安物買いの銭失い」だった姑を恨めしく思いながら、仕方なく片づけを始める。夫も手伝うようになったが、さすが親子、彼も捨てられないタイプで、望登子の負担は増えるばかりであるー。誰もが直面する問題をユーモラスに描いた長編小説。
連絡の途絶えた弟を捜しにサンタラ国を訪れた教師のリーガン。写真を手に尋ね歩く途中、バーで全身黒ずくめの男から、弟が婚礼間近の王女と消えたと聞かされて驚く。この男こそ、国王ジェイグだった!妹を奪われ激怒する彼の王宮にリーガンは囚われるが、ある取り引きを持ちかけられた。舞踏会に婚約者として同伴すれば、弟の罪は問わないというのだ。私を“婚約者”という名の罪人として扱うつもり?怯えながら引き受けたリーガンだったが、彼の男性的な魅力や、紳士的な心遣いに、思いがけず心を揺り動かされて…。
ソフィーは家を繁栄させるため、育てられた人形だった。政略結婚で人生が終わる前に、せめて情熱や愛を知りたい。一目で惹かれたシチリア富豪レンツォにバージンを捧げた結果、彼女はおなかに小さな命を宿した。しかし再会した彼はなぜか激怒していて、妊娠を言い出せず、ソフィーは親が決めた伯爵と結婚するしかないことに絶望する。チャペルに乗りこんだレンツォが、花嫁の彼女をさらうまでは。彼はソフィーを自分の城に閉じこめ、離婚を前提とした結婚と赤ん坊の親権を要求する。その目には彼女への憎悪しかなかった。
私があの気難しいCEOの秘書に採用されたの?フランチェスカは喜びと不安で胸がいっぱいになった。ハリソン・グラントは女性たちを虜にする甘い容姿とは裏腹に、些細なミスも許さない冷酷な仕事ぶりで知られている。密かにハリソンに焦がれるフランチェスカは、ボスに認められたくて懸命に働くが、労いの言葉一つなかった。やっぱり彼は私のことなんてなんとも思ってないのね。その矢先、重要な契約が整ったあとの高揚感のせいか、車内でハリソンに誘惑され、唇を許してしまった彼女は…。
王家に嫁ぐ姉の結婚式に出るため、王室専用機の搭乗ラウンジで案内を待っていたタムシンは、ギリシアの大富豪ザンとでくわし、絶句した。ウエイトレスをしていた店にザンがやってきたとき、彼のズボンにカクテルをこぼしてしまったことがあったのだ。気まずい再会にもかかわらず、結婚式後のパーティで彼と踊ると、瞬く間に官能に火がつき、その夜タムシンは純潔を捧げた…。それきり音信のとだえたザンが、3カ月後、彼女の前に現れた。大金と引き換えの契約結婚という、屈辱的な提案をたずさえて。
マディは10カ月前からイタリアの湖畔に立つ古城で働いている。あるとき、湖を半裸で泳ぐ男性にでくわした。たくましい体に思わず目が釘づけになっていると、それに気づいた相手から猛獣のごとく鋭い視線を向けられ、まるで何もかも見透かされているような気持ちになった。恥ずかしさでいっぱいの彼女にさらに追い打ちをかけるように、湖から上がってきた彼は、「眺めを楽しんだか?」ときいてきた。いたたまれなくなって城へ戻ったマディを、予期せぬ不運が襲うーめったに帰館しない城主のファルコーネ伯爵として紹介されたのが、あろうことか、湖で泳いでいたあの尊大な男性だったのだ!
エイミーはギリシアの島に、幼いわが子を連れてきた。恋人だった外科医ニコに子どもは欲しくないと言われ、別れて独りで産んで、看護師を続けながら育ててきただいじな息子だ。流産したと思っているニコは、その存在さえ知らない。これは、父親の顔も知らない子と学校でいじめられた息子に、パパはギリシアの人だと話し、その地でルーツを感じてもらう旅だった。まさか、そこでニコ本人と、偶然の再会を果たすとは思いもせずに。幼い心はただでさえ傷ついているのに、もしもまた拒絶されたら…。息子を守りたい一心で事実をひた隠しにするエイミーだったが、皮肉にも、9年ぶりに会うニコとわが子は、あまりにも生き写しでー
ケイトはこれから、未婚の母になろうとしていた。5カ月前、仕事で知り合ったセクシーな大富豪ショーンに迫られ、その魅力に屈して、いまだかつてない情熱と恍惚の一夜を過ごした。亡き夫への罪悪感から、新たな恋はしないと決めていたのに…。それに、ショーンは後腐れのない関係を好んだ。だから妊娠に気づいたとき、ケイトは覚悟を決めたのだー家庭など望まない彼には告げず、独りでこの子を育てていこう、と。ところがある日、他州に暮らすショーンがケイトの自宅に突然現れ、氷の瞳で彼女の腹のふくらみを見据えると、憤りの言葉を投げつけた!「妊娠しているのか?何かの冗談じゃないだろうな?」
新人のグウェンは仕事でどじを踏み、直属の上司であるリックに厳しく叱られて落ちこんだ。ここで働き始めたときから、魅力的な彼に惹かれているのだ。一方、リックは不器用なグウェンにいら立ちを覚えていた。地味で冴えない部下のことなど、意識する必要もないのだが。「ぼくは同僚とはデートしない主義だ」グウェンに向かってそう宣告し、規制線を張ったつもりの彼だったが、しかし、ふたりの関係はあるときを境に一変するーリックの独身上司がグウェンを気に入って花を贈ったと耳にするなり、なぜか怒りが沸き、リックの頭は彼女のことでいっぱいに…。
ひと月前に赴任してきたばかりの高校教師メアリーはある日、成績トップでありながら学校に来なくなった生徒の存在を知る。このまま放ってはおけず家庭訪問をすることにしたが、3月でも氷点下のこの地で、運悪く車が故障してしまい、あわや凍死という絶体絶命の危機に追いこまれた。するとそこに現れたのは、人狼を思わせる野性的な男性ー彼こそ、件の生徒を男手一つで育てる、ウルフ・マッケンジーだった。この命の恩人はみずからの体温でメアリーを温め、さらには、これまで一度も異性に興味を持たれなかった彼女の美しさに気づいた。欲望を隠さないウルフに圧倒されつつも、メアリーは歓びすら覚え…。
社交界の宝石と讃えられるエレンには、人に言えない秘密があった。4年前、異国で出会った魅惑的な少佐と情熱の赴くままに結婚し、ある誤解により蜜月の余熱も冷めやらぬうちに逃げだしていたのだ。心に深い傷を抱え、素性を偽って生きるエレンと今や公爵となったマックスー互いに裏切られたと思いこんだまま、ふたりは田舎町の舞踏会で思いがけない再会を果たす。怒れるマックスが彼女の家に押しかけ、正式な離婚を言い渡したとき、ふいに現れた愛くるしい男の子がまじまじと彼を見つめた。自分と同じ緑の瞳を見たとたん、マックスはさらなる怒りにうち震えた。「僕の跡継ぎは屋敷に引き取る。一緒に来るかどうかは君しだいだ」
次期公爵のジャックは“性悪女”を捜しに美術館へ出かけた。いとこをもてあそび、おじを強請ったその女は、商売女だというから、ひと目見ればそれとわかるだろう。美術館に着いた彼は、そこで官能的で優美な女性と出会い、心奪われた。だが別れ際、名を聞いて凍りつく。ミス・ボウズー目的の性悪女か!翌日、彼は動揺を隠して、彼女が働くナイトクラブへ向かった。地味な服装で机に向かうミス・ボウズは、商売女には見えない。実際、強請ったのは彼女、サリーではなくその妹だとわかり、ジャックはねじ伏せていた欲望をとうとう解き放って誘惑を仕掛けるーまさか自分が、サリーにとって初めての男になるとも思わずに。
ゾーイは事故死した姉夫婦の双子を引き取り、とある大富豪の屋敷で住み込みの家政婦の職を得た。そんな折、親友の娘の手術にかかる治療費をなんとか集めたくて、主の留守中に屋敷でチャリティパーティを開くことに。そこに現れた彫りの深い顔の男性を見て、ゾーイはどきりとする。実際に会うのは初めてだけれど、あのハンサムな男性こそ、主のイサンドロ!イサンドロは留守中に勝手にパーティが開かれていて唖然とした。その中心人物は新しい家政婦でーああ、彼女はなんと若く美しいのだろう。家政婦失格だが、彼女を愛人にしたい…。
ニーナのもとに、ある日、ゴージャスな男性が訪ねてきた。大富豪マルチェッロ家の長男マルク!ああ、ついに彼がやってきた。数カ月前、双子の妹が未婚のままマルクの弟アンドレの子を産んだ。だがアンドレは事故死。お金目当てだった妹は育児を放棄し、ニーナがやむなく姪を育てることにしたのだ。腹立ちまぎれに妹がマルチェッロ家に送りつけた写真を見て、マルクは弟の子だと確信したのだという。「君のように素行の悪い女に僕の姪を任せるわけにはいかない」私を妹と間違えているのね。でも、事実を話せば姪を奪われてしまう。仕方なく妹のふりを続けるニーナに、マルクはなんと結婚を申し込んだ!
サミは旅先のオーストリアで雪崩に巻き込まれた。暗闇の中、リックと名乗る男性と閉じ込められた彼女は、互いに励まし合い、残された命を燃やすようにして抱き合った。その後助け出されたサミは、彼が亡くなったことを知る。そして彼女のおなかには、新しい命が宿っていることも…。1年後。サミは幼い息子を連れ、イタリアのジェノヴァに降り立った。その地にいると聞いていた、リックの家族を訪ねるつもりだった。ところが現れたのは忘れもしない、愛を交わしたリック本人!彼が生きていたなんて…。感涙にむせぶ奇跡の再会も束の間、サミは彼の正体を知って愕然とする。なんですって、あなたが伯爵ー?
恋に破れ、傷心を癒やすため、ロビンはこの地に降り立っていた。空港を出た彼女は、ある老婦人の命を危ういところで助ける。すると、人に触れると未来が見えるという婦人が予言したのだ。「大きな悲しみがやってくる…でもそれは運命の相手のため」“相手”とは誰なのかをロビンが問うと、婦人はこう答えた。「もちろん、あなたの後ろにいる人よ」はっと振り返ると、そこに場違いなほど美しい男性を見出して、思わず見惚れた。かけがえのない存在になるのに、彼の、不治の病の弟との結婚を受け入れざるをえなくなるとも知らずに。
シオーナは不安げな面持ちで、義兄ジェイクの前に座った。16歳のときに母が再婚してから、憧れ続けた義兄だったが、その蜜月は、もう一人の義兄の死で終わってしまった。弟を誘惑し、シオーナが破滅へ導いたと信じ込んだジェイクに、誤解と嘘でねじ曲げられた真実は、決して届かないー蔑みに歪んだ瞳で、苦々しげにジェイクは切り出した。「誘惑する小悪魔め。だが、それも終わりだ。僕は結婚する」とりつく島もない突然の縁談に、シオーナは一瞬息をのみ…捨てきれないジェイクへの想いが砕け散るのをただ感じていた。