2020年10月発売
知ってる? 夜明けの直前が、一番暗いって。 「今の自分にできることなど何もないと思っていたけど、可能なことが一つある」 職場の人たちの理解に助けられながらも、月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗は、やる気がないように見える、転職してきたばかりの山添君に当たってしまう。 山添君は、パニック障害になり、生きがいも気力も失っていた。 互いに友情も恋も感じていないけれど、おせっかいな者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになるーー。 人生は思っていたより厳しいけれど、救いだってそこら中にある。 生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。 本屋大賞受賞後第一作。水鈴社創立初の単行本、渾身の書き下ろし。 『夜明けのすべて』刊行にあたって いつもは楽しい楽しいと小説を書いていた私が、立ち止まってはゆっくり書きました。 そのぶんいつまでも登場人物を見守っていたくなるかわいい作品になりました。 人生は想像より厳しくて、暗闇はそこら中に転がっていて、するりと舞い込んできたりします。でも、夜明けの向こうにある光を引っ張ってきてくれるものも、そこら中にきっとあるはずだと思いたいです。 いつも本が完成して思うことは、「楽しく読んでもらえることが一番だ」です。その思いは今回も変わりませんが、『夜明けのすべて』を読んでくださった方が、ほっとできる一瞬を味わってくださるのなら、明日を待ち遠しいと思っていただけるなら、幸いです。 瀬尾まいこ 【著者プロフィール】 1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2001年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞、2019年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。他の作品に『図書館の神様』『強運の持ち主』『優しい音楽』『あと少し、もう少し』『傑作はまだ』など多数。
デパ地下の和菓子屋「みつ屋」のアルバイト店員・アンちゃんが成人式を迎えます。大人になるには、まだ早すぎる気がするけど……。さらに深くなる和菓子の謎と、少しずつ経験を積むアンちゃんの日常が楽しい、大ヒットシリーズ第3弾。
大正時代、警視庁に「華族捜査局」が新設された。記念すべき初捜査、公爵で局長の周防院円香と、警部補の来見甲士郎は、九鬼梨伯爵家で起きた毒殺事件に取りかかる。動機は家督相続権争いと思われた矢先、円香たちの目の前には、第二の犠牲者の「生首」が現れ、鎌倉時代から語り継がれる九鬼梨家の「首なし村の呪い」が明らかにー。連続殺人犯の真の目的、そして決して暴いてはならならなかった“一族の秘密”とは…。
トラブルやたくらみに巻き込まれて、お人好しが右往左往。誤解も悪意も呑み込んで、奇妙な謎を解き明かせ!にぎやかでアイディアに満ちた、6つの短編ミステリ。大崎梢の傑作集!
東京都に実験的に設置された動物保護を目的とする“東京アニマルポリス”通称TAPは警察や動物愛護相談センターと協力しながら、日夜活動している。かつて動物看護師として働き、現在はTAPで精力的に活動する北川璃々。後輩の中島涼太や警察官の天野広大らとともに、公園でのペンキ弾事件、タレントの愛犬虐待疑惑、ペット誘拐事件、多頭飼育崩壊などを解決していくが、ついにはTAP存続に関わる事件がー。彼女らは、この危機にどう立ち向かうのか!?
長谷川祐子は、霊視の依頼で来た客から、悩んでいる若い夫婦を紹介された。夫婦の二人の幼い娘が車に撥ねられ、姉が亡くなったという。その後生き残った妹が変なことを言い出した。「あたし、鏡に映らない。きっと吸血鬼になったんだ」(「鳥は涙を流さない」)。霊が人の身体を離れるときに起こるさまざまなトラブルを解決するため、人知れず命までかける霊能者たちの活躍を、ときに優しく、ときにシニカルに、ときにユーモラスに活き活きと描く連作ホラー・ミステリーの傑作。
出版社に勤める定年間近の俺に、高校時代の恋人から39年ぶりに電話がきた。会ってみると、17歳の時未遂に終わった大阪から南紀白浜へのバイク旅行に、もう一度行かないかという誘いだった。謎めいた仕掛けからラストに至る鮮やかな大どんでん返し。生きるという厳粛な綱渡りをアクロバティックに決めた一大“人生絵巻”。
「俺は、同性愛者です」 高3のバスケ部エースがSNSでカミングアウト。彼の衝動は思わぬ波紋を広げ……。 ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る」の原作者、待望の最新作。 「登場するすべてのひとの気持ちが胸に迫って、読みながら必死に声援を送りました。たぶん誰もが、この小説のなかに「自分」の姿を見いだせるはずです。」三浦しをん氏推薦! 高3のバスケ部エース・塚森裕太は自分がゲイだとInstagramでカミングアウト。それがバズって有名に。 このカミングアウトが、同じ学校の隠れゲイの少年、娘がレズビアンではないかと疑う男性教師、塚森を追いかけるファンのJK、塚森を崇拝しているバスケ部の後輩へと変化をもたらしていく。そして塚森自身にも変化が表れ…。 作り上げてきた「自分」からログアウトしたら、「本当の自分」になれると思っていたーー痛みと希望が胸を刺す青春群像劇。
吹上町の夏が終わり、引きこもりの美鈴がミミのもとを訪れた。「部屋の中に子どもの霊がいるんだ。いつも夜になると出てくる」生も死も、過去も未来も溶け合う吹上町に、新たな風が巻き起こるー人智を超えた世界の理がしみじみと胸をうつ、大好評哲学ホラー。
福岡のクリニックで働く「頼れる助産師の白野さん」には、自分とは対照的に美しい妹がいる。佳織は真澄の誇りだったが、真澄には仲の良い妹にも言えない秘密があった……。駆け出しイラストレーター、結婚して白野姓になった主婦、二人の男の間で揺れる女子大生、繊細な小学生。「白野真澄」という同じ名前を持つ者の五者五様のわだかまりと秘密。生きるのに少し不器用で頑固な者たちをを優しい眼差しですくいあげる短編集。
思わぬ目撃者が現れ、妻殺しに問われた元プロ野球選手へ無罪判決が下された。有罪を確信していた捜査担当検事の華岡は、控訴を固く誓いながら裁判所を後にする。華岡は別件でその目撃者と再会することになる。目撃者の息子がマンションから墜落し、入院先の病院で死亡していたのだ。家族の依頼で息子を安楽死させた疑いが担当医にかかっていた。二つの事件を調査する華岡は意外な真実に辿りつくー。
神奈川県警管内で発見された腐乱死体が碌な捜査もされず自殺として処理された。不審に思った宮野が独自捜査をすると、その直後、何者かに襲われてしまう。鷺沼たちはカリスマ投資家の男に目を付けるが、その裏には政官界の巨大な権力が控えていた。
国民的グルメはどうやって生まれたのか!? その起源が、いま明らかになる。 前代未聞、熱々の大河ロマン小説! 第一部 餃子の女神降臨 首相暗殺に失敗した陸軍中尉のグンゾーは朝鮮半島にひん死の状態で流され、焼餃子を食べて生き長らえた。未体験の幸福感と美味ーーこの究極の食べ物を世に広めるのが新たな使命だと気づいたグンゾーは旅に出る。マンドゥ、蒸餃子、ボーズなど様々な餃子に中国大陸で出会い、仲間も増えていく。 第二部 戦後の餃子戦争 戦後、日本に帰還した仲間達は散り散りになるが、それぞれの究極を目指して餃子屋を開く。町中華の来香園、チェーン展開のミロク亭とシベリア食堂。戦後復興のさなか、三つ巴の熱き戦いが始まる。究極の餃子の秘密を綴ったグンゾーの手帳はどこへ消えたのか。そして、鍵を握るのは冷凍餃子ーー。
長年勤めた会社をやめた上村准のもとに姉から「認知症の父が失踪した」という報が入る。家族は父の不倫が原因でバラバラになっていた。父はどこはいったのか。互いを避けあっていた家族は父の失踪を機に傷つけあいながら、家族、そして自分自身を見つめ直しはじめる。「全裸監督」の脚本家が初めて書き下ろす家族小説。
明治五年(1872年)。武士身分の廃止に帯刀の禁止ーー近代化が進む明治の世は、武士という存在を置き去りにして進みつつあった。娘の野茉莉とともに京都に移り住んだ甚夜は、昼は蕎麦屋を営みながらも、夜は相も変わらず鬼退治を生業にしていた。新時代になったものの、鬼の討伐依頼は増え続けるばかり。その陰には、どうやら「マガツメ」なる存在がかかわっているようだが……。大人気和風ファンタジーシリーズの第五巻。切なくも美しい時代の徒花たちの物語。
企業経営者の適性診断をするセラピストのサリーナは、その日、ヴェネツィアの名門貴族の邸宅を訪れた。主に世界的複合企業を率いる実業家マテオ・クームー権力者らしく尊大で自信に満ちた彼は最も苦手なタイプのはず。なのに、にじむ威厳と色気に心は激しく乱れた。気づけばマテオ唇を奪われ、サリーナは陶然となった。その様子を録画されているとも知らず。やがてマテオは狼のようにほほえんで言い放った。「僕が何を要求するかー楽しむがいい」
床掃除に明け暮れていた私が、 一夜にしてプリンセスになるなんて。 父の死後、カシオペアは父が遺したホテルを相続したものの、 欲深い継母と義姉に奪い取られ、使用人同然に働かされていた。 ある冬の夜、温水プールで清掃をしていると、 ホテルに滞在中のヴェリーナ国の王子リースがやってきた。 陶然となったカシオペアは、思わず熱い抱擁に応えてしまう。 「この続きはぼくのスイートルームで。すぐに迎えに来る」 純潔を捧げる覚悟を決めて待ったが、彼が戻ることはなかった。 翌日、リースはホテルを買ったと告げ、結婚を申し込んできた。 王子様がなぜ急に私を花嫁に? カシオペアは狼狽するが……。 着実にファンを増やしている気鋭のダニー・コリンズが描くのは、『シンデレラ』を彷彿とさせるロイヤル・ロマンス。一夜にして王子の花嫁になることが決まったヒロイン。宮殿でのめくるめく新婚生活は、些細な誤解がもとで脆くも崩れ去り……。
かつて彼女はあまりに若く、 早熟な禁断の果実だった。 冬のバルセロナで、パーティの企画を手掛けるステイシーは、 兄の親友で、十代の頃片想いしていたルーカスと、 5年ぶりに鉢合わせした。恐ろしくハンサムなIT業界の寵児、 黒髪のスペイン人億万長者の彼にいまだに子供扱いされ、 ステイシーは動揺する。もう今は生意気な女学生じゃないのに。 イベントは大成功し、ルーカスにダンスに誘われた彼女は、 セクシーなシルクのドレスに身を包み、願った。 今夜こそ彼に純潔を捧げたい、と。 そんな彼女を、なぜか頑なにルーカスは拒絶して……。 独特のエロティックな熱度で描く物語がファンの心をとらえて離さないスーザン・スティーヴンス。憧れの忘れえぬスペイン富豪と再会した無垢なヒロインが、ついに大人の階段をのぼりはじめる情熱のストーリーです。やがて妊娠に気づいた彼女の決断とは?
むせ返るような野生の花の香は誘うーー 運命の人が待つ、遙かなる金の砂の王国へ。 亡き父への思慕を募らせ、彼が生涯愛した砂漠を訪れたローナ。 だが、オアシスに立つ父の家はすでに朽ち果て、廃墟と化していた。 茫然とするローナに追い討ちをかけるように、 とつぜん盗賊が現れ、襲いかかってきた。 と、妖しい光を瞳に宿した馬上の男がローナを救った。 きのう、砂占い師が予言した、黒い髪の男性との出会い。 私を追いかけ、私に触れるというその人は、彼のことなの? 不安に駆られ、町まで送ってほしいと懇願するローナをよそに、 男は彼女を連れ去ったーーあまりに熱く、甘美な砂の世界へ。 HQロマンスが誇る数々の逸作を厳選してお贈りする、伝説の名作選。宝塚歌劇団で舞台化されたことはあまりに有名な、知る人ぞ知る珠玉作です。ウィンズピアらしいクラシカルな雰囲気漂う、王道シークものをお楽しみください。