2021年11月発売
「晋!お前のお父つあんやぞ。お前のお父つあんが、美代に子産ませよつたんやぞ。」あまり家業に熱心ではない近江商人の主人・藤村治右衛門と、正反対な性格の弟・真吾、そして、治右衛門の義子・晋。真吾が密かに心を寄せ、晋の母親がわりを務めていた女子衆の一人・美代が、治右衛門の子を死産し精神を病んでしまう。やがて真吾に結婚話が持ち上がったとき、断固として首を縦に振らない裏には、美代の一件によるわだかまりがあったー。商家に生まれた著者が、その体験から描く「商店もの」三部作の第一作にして、第1回芥川賞の候補にもなった名作。
小説家を目指す春樹。ミュージシャンを夢見る雪。そして、二人を見守る人たち。それぞれの哀しみを背負いながら、高校三年間、寄り添うように生きていく。ところが突如、平穏な日々に悲劇が訪れた。隠蔽、苦悩、決断の果てに待つ衝撃の結末とは?すべての答えは卒業式当日。私は、あなたの「爆弾」になるーカリスマアーティストが贈る小説×音楽の物語世界。
亡き夫に対して後悔を抱く女性と、人生の選択に迷いが生じる会社員。(『後立山連峰』)。失踪した仲間と、ともに登る仲間への、特別な思いを胸に秘める音大生。(『北アルプス表銀座』)。娘の夢を応援できない母親と、母を説得したい山岳部の女子大生。(『立山・剱岳』)。コロナ禍、三〇年ぶりの登山をかつての山仲間と報告し合う女性たち。(『武奈ヶ岳・安達太良山』)。日々の思いを噛み締めながら、一歩一歩、山を登る女たち。山頂から見える景色は、これから行くべき道を教えてくれる。
地下都市カヴェルナの人々は表情をもたない。彼らは“面”と呼ばれるつくられた表情を教わり大人になるのだ。そんなカヴェルナに住むチーズつくりの親方に拾われた幼子はネヴァフェルと名づけられ、一瞬たりともじっとしていられない好奇心のかたまりのような少女に育つ。どうしても外の世界を見たくて、ある日親方のもとを抜けだしたネヴァフェルは、カヴェルナ全体を揺るがす陰謀のただ中に放りこまれ…。
2022年本屋大賞2位 2021年本屋大賞2位『お探し物は図書室まで』の著者、新境地にして勝負作! メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画(エスキース)」。 日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいくーー。 二度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短篇。 ●一章 金魚とカワセミ メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは「期間限定の恋人」として付き合い始めるが……。 ●二章 東京タワーとアーツ・センター 30歳の額職人・空知は、淡々と仕事をこなす毎日に迷いを感じていた。そんなとき、「エスキース」というタイトルの絵画に出会い……。 ●三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。 ●四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて……。
大阪で七十年続く和菓子屋「凍滝」の二人姉妹、小梅とつぐみ。姉の小梅は店を継ぐため、毎日和菓子づくりに励む働き者。大学生の妹・つぐみは自由奔放。家業を古臭いと嫌っている。ある日、四十三年前に亡くなった曾祖母の魂が何故かつぐみの身体に乗り移り、「ある手紙をお父ちゃんの浮気相手から取り戻してほしい」と告げてきたーある和菓子屋の家族が織りなす、明治と令和を繋ぐ物語。
旅と人生社の藤原冬美は関修次郎と組み東北地方への取材旅行に向かった。二人は東武鉄道の特急「リバティ会津111号」の車中で平川敏生と遭遇した。この日、上野駅に到着した東北新幹線「なすの270号」の車内でキャリア官僚の土屋健治郎の遺体が発見された。容疑者として平川が浮上するが、決定的証拠を見いだせなかった十津川だが…!?
巨人・小びと・水妖・悪魔・精霊・人狼などのあやかしが日常に闖入し、人びとの運命を揺り動かす、印象的な物語の数々。『グリム童話集』と平行して兄弟が蒐集に明け暮れ、後の作家たちの創作の尽きせぬ源泉ともなった名著を、グリム兄弟自身の手跡確かな初版本をもとに新たに全訳。本編584話+補遺26話を完全収録し、訳註などの付録資料も充実。
研修期間を終え都内の大病院に就職した新米外科医・山川悠は、厳しくも充実した日々を過ごしていた。しかし、些細なミスをきっかけに好調な流れが滞りはじめていく。先輩医師や患者との関係に歪みが生じていくなか、手術が好きだという理由で志望した外科医としての在りかたに疑問を覚えた山川は…。リアルな医療現場と孤独な医師の生の葛藤を現役医師が描く、本格医療小説。
ある朝みつけた全く意味のわからない一枚のメモ。それは、私自身がすっかりその存在を忘れ去っていたインナーチャイルドからの挑戦状だったー。
ドジで臆病な一方で、高貴な血筋(?)と信じ、毅然と生きているつもりのにゃん太郎。どういう訳か、人間の言葉が理解できる摩訶不思議な猫なのです。飼い主とともに紡いだ悲喜こもごもの物語。
生徒会長に立候補し、見事に当選を果たした葵。だが、「生徒会って何する人たち?」と言われるなど周囲の風当たりは強めで、理想とは程遠かった。おまけに、一体感ゼロで訳ありなメンバーたち…。葵たちは数々のイベントを無事に乗りきることができるのか!?
大手広告代理店で働く恭平は、実家の弁当屋のピンチを知り食品製造業の世界へ。会社の将来と社員の幸せだけを考え、ひたすらに、がむしゃらに、前へ前へと走り続けた愚直な男の人生逆転物語。何歳になっても未熟者ー。子供や社員に期待するように自分自身の“成熟”に期待できないで、何の人生ぞ!
創作華道家の跡取りとして、生まれた時から将来を決められた人生。自分に流れる血を疎み、空虚な日々を送っていた朱里は、意を決して家を飛び出し、想いを寄せる「先生」を頼って食堂“もみじ”に転がり込んだ。食堂での仕事や、“卓球場”に集うわけありな仲間たちとの交流を通じて一歩ずつ自分の人生に向き合いはじめていく。しかし、そんな矢先に先生が消息を絶ってしまいー。
「命がけで鮨を握ろうという覚悟がある者だけ、ここに残れ。できない者には、退学を勧める」開口一番、城島先生は宣言した。僕たち鮨科一期生は震えあがったー。昭和六十三年春、大阪。世界に名だたる辻調理師専門学校、通称「辻調」に鮨科が新設された。岡山の平凡な豆腐屋の息子として育った僕、長谷川洋右は、どこか生半可な気持ちのまま鮨科に入学する。基本となる大根のかつら剥きさえ満足にこなせない落ちこぼれの僕に厳しくも辛抱強く教えてくれたのは、口下手で強面だが腕は一流、赤坂の名店仕込みの城島先生だった。尊敬すべき先生にはしかし、知られざる壮絶な来歴があった…。昭和最後の年。若者たちは、青春の全てを鮨に捧げたー世界的ガラス作家の鮮烈デビュー作!
サリーはテレビ画面を見て凍りついた。間違いない。エドワードだわ。彼は婚約間近の皇太子だった!けれど、5週間前は違ったー同じこのシンガポールの地で出会ったビジネスマンだったのに。サリーは出張中で、ホテルのプールで溺れかけたところを彼に助けられ、びしょ濡れで最上階のペントハウスに運ばれ、手厚い看護を受けた。あくまで紳士的に、優しく接してくれる美貌の彼に惹かれてしまい、彼も思いは同じで、一夜限りという同意のもと、情熱的な夜を過ごした。エドワードとサリー。ただ名前を教え合っただけで。でも今、再びこの地を訪れて彼の素性を知った。もう一度会って確かめたい。彼があのエドワードだと。おなかに宿る幼い命のことは伝えずに…。
厳格な継父に育てられたクレアは、おとなしく従順な娘だった。結婚相手までも継父に決められていたが、拒むすべはない。そんなある日、継妹がヨットクラブで出会った男性ベンを連れてきた。ハンサムでいかにも裕福そうな彼は、一流企業の社長だという。クレアと違って奔放な継妹には、お似合いの相手に見えた。ところが彼は継妹の恋人ではないらしく、クレアを無遠慮に見つめると、いきなり彼女の手を取って、脈打つ手首に唇を押しつけたのだ。初めて経験する熱いざわめき…。震える彼女に、ベンが言った。「君は、お父さんの決めた人と結婚することなどできないよ」クレアの中で眠っていた情熱が目覚め、恋に落ちた瞬間だった。
結婚式当日、スージーはウエディングドレス姿で逃げ出し、のぼった木から下りられずに低体温症になりかけていた。村の有力者の花嫁にならなければ、父の借金は帳消しにならない。でも暴力をふるわれて、結婚は無理だと気づいたのだ。彼女はスペイン人男性に救われ、彼の隠れ家で介抱された。男性は父の借金まで清算してくれ、スージーは驚く。なんと、彼はスペインでも屈指の富豪一族の長だったのだ!その富豪に婚約者になってほしいと頼まれ、彼女はさらに驚いた。彼も私をお金で買うつもりなの?元婚約者のように?
著名な会社のCEOで富豪のドゥアルテは琥珀の瞳のプレイボーイ。彼は何者かに撃たれたが一命を取り留めたー記憶を失いつつも。そんな彼の脳裏に焼きついているのは長い赤毛の女性の姿だった。真相の鍵を握っている彼女の居場所を突き止めなくては!ノーラは死んだはずのドゥアルテが目の前に現れ、茫然とした。命がけで愛した男性ーお腹にいる子供の父親だったから。込み上げる熱い想いもつかの間、彼の他人行儀な態度に凍りつく。記憶がないんだわ!そのとき強烈な痛みに襲われて破水し…。