2021年9月発売
栃木県北部の寒村の移住推進課に勤務する雨貝愛子は、新聞のPR記事を目にし、疑念と職務上の憤り、そしてわずかな期待をもって長野県にある多幸村を訪れた。村人は皆、一様に親切で愛想がよく、幸福そうに見える。しかし、夫と息子を事故で亡くした愛子にとって、移住するだけで幸せになるという話はとうてい納得できるものではない。幸福の理由を探している中で、村では不審な事故死が相次いだ。自身も疑われる中で、愛子はさらなる事件に巻き込まれる…。
1536年5月、王妃アン・ブーリンが斬首された。国王ヘンリー八世はジェーン・シーモアと結婚する。宮廷が落ち着いたと見えたそのとき、北部で王の改革を糾弾する大規模な反乱が勃発する。王の秘書官にして王璽尚書のトマス・クロムウェルは、反乱の鎮圧に、また、ヘンリー八世と教皇を支持するその娘メアリの和解に、奔走する。貧しい生まれから高位にのぼりつめた政治家クロムウェルの人生を描いた『ウルフ・ホール』『罪人を召し出せ』につづく三部作最終巻。
三番目の王妃ジェーン・シーモアは、ヘンリー八世が熱望する男児を産むものの、直後に世を去る。ふたたび国王の結婚問題に直面したクロムウェルは、国家の安定を支えるような縁組を整えようとするが…。諸外国の思惑と、貴族たちの陰謀が錯綜するなか、時に自問自答しながらも、彼は自らの信じる道を進んでいく。己の手腕だけを頼りに生きたトマス・クロムウェルの人生を、新たな視点で描いた傑作歴史小説三部作、ついに完結。
突然の事故をきっかけに、俺は人生のあらゆる瞬間に意識を移すことができるようになった。俺が叶えたいことはたったひとつ、子供のころに病院で出会った運命の少女のことだけだ…。自在に時を飛ぶ“時間の王”となった主人公の冒険と苦難を描く表題作、古代の蜀の都市・成都で、謎の女により不老不死にされた王が悠久の時をめぐる「成都往事」、店の名誉を守るため、三国時代の魏の曹操にラーメンを食べさせようとタイムトラベルした一行の奮闘を描く「三国献麺記」など、時間SFテーマの全七篇を収録。中国SFの超新星にして時間SFの名手が贈る、新時代の超絶エンタテインメント短篇集。
これは単なるSF小説ではありません。国際社会の現状に根ざした緻密なシミュレーションであり、深い洞察力に裏打ちされた人類の将来への指針です。人間とは何か?理想主義は利己主義に打ち克てるか?人類は未成熟な自らの科学技術による破滅を免れ、輝かしい未来を築き得るか?国境をなくして人類が一つにまとまり、恒久平和を実現することは可能か?この小説にはこれらの問題に対する幾つかの重要なヒントが示されています。
ネコ好きで気弱なツヨシとの結婚と同時に、子ネコ・トン子ちゃんとの生活が始まったモトコ。子供はできなかったが、スケちゃん・カクちゃんも加わって、二人は幸せに歳を重ねてきた。けれどトン子ちゃんも老いていき…(「子のない夫婦とネコ」)。「老いとペット」を明るく描く連作小説。
ドキュメンタリーディレクターの真宮勝吾は、癌で余命半年の芸人に意を決して提案する。「ここからなんとか子供を作りませんか?」だが、その芸人は無精子症だった…。それでも諦めずに、奇跡を起こそうとする物語。衝撃の男性不妊小説。
夫と義母から一方的に、理不尽な理由で別居を言い渡された真知子。その日を境に、一人息子の怜と離ればなれの生活が始まった。孤独な暮らしの中で、頭に浮かぶのは怜のことばかり…。そんな母と子が、長野の国立天文台で束の間の親子の時間を過ごす。そこで目にした天体が、二人の胸にもたらしたことはー。
三田由紀恵は病院勤務の看護師。幼い娘の育児と仕事の両立に限界を覚え、退職を決意した。クリスマスイブのきょうが勤務の最終日。夜勤の間は、夫の雅之が自宅で娘の面倒を見てくれている。だが、ラインのメッセージに返信はない。電話をかけても繋がらない。由紀恵は自分に執着していた不気味な患者を思いだし、胸騒ぎを覚える。由紀恵に看てもらうために、自らの身体を傷つけてくるほどで、病棟を移るたびに損傷箇所は増えていった。家族の絶望と狂気、そして再生を描いた戦慄のサスペンス。
胸ときめくオムライスに、夢の詰まったプリン。あの大食堂にはかつて、特別な記憶がやどっていた。創業40年以上の伝統を誇るマルヨシ百貨店に勤める美由起は、急な異動で最上階にある大食堂のマネージャーに就任することに。しかし、長年愛されていた大食堂は時代の変化とともに廃れ、存続の危機に瀕していた。その上、若社長が都会から連れてきたシェフの智子は、大食堂の味を否定し片つ端から変えてしまおうとする。美由起たち従業員は、古き良き大食堂の未来を守ることができるのか。一致団結の奮闘に胸が熱くなる、おいしさ満点の物語!
ある日、史哉は街で母を殺した男を目撃してしまう。15年前に母を刺殺した犯人が社会復帰していたのだった。史哉の中に、かつて捨て去ったはずの憎悪が甦るが、間もなくして告げられたのは、がんによる余命宣告。だが、このままでは死ねない。史哉は自分を縛りつける鎖を解き放ち、憎き男を殺すことを決意するが、彼には守らなければならない未来がある。最愛の妻のため、ボクシングの世界戦を控える兄のため、残された道は完全犯罪しかなかったー。
時翔のもとに届いた不思議な手紙。大正を生きる千代子が書いたものらしい。思いがけず始まった“文通”で距離を縮めるふたりだったがー応募総数2086作「夜遊びコンテストvol.2」大賞受賞作!
血に束縛され、戦国史上最悪と呼ばれた男の素顔とは。豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家一家を引き取る決意をする。幼い八郎の中に非凡さを見い出したが故である。やがて宇喜多家を再興し、荒れた備前南部に再びの安寧を与えてくれるのでは、と期待を寄せた。町家で育った八郎は孤独な内省の中で、商いの重要性に早くから気付く。武門の子でありながら、町や商人の暮らしに強く惹かれる。が、青年期に差し掛かる頃、町で出会った年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する。-八郎は、やがて武将・宇喜多直家となる。
宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。親族はおろか我が死でさえも、交渉の切り札に使う。世間でいう武士道などは、犬にでも呉れてやる。直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上・三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を磨り減らしながら戦い続ける。直家の生来の気弱さを知る、妻のお福。生涯の恩人となった商人・阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長…様々な人との関わりの中から、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。-人の縁で、世は永劫に回り続けていく。
あらゆる思惑が交錯し、儚い結末となった第五試合。次なる第六試合は、窮知の箱のメステルエクシル及び奈落の巣網のゼルジルガ。彼方の兵器を駆使するだけでなく、無限に再生し蘇るたびに己の死因を克服する最強のゴーレム。誰も全貌を掴めぬ伝説の諜報ギルド“黒曜の瞳”の面々と上覧開始前から謀略の糸を張り巡らす道化。無限の破壊と無数の謀略、果たして勝つのはー。そして、世界に潜在していた異形が姿を現すとき、修羅たちの戦いはさらなる混沌に包まれてゆく。全員が最強、全員が英雄、一人だけが勇者。「このライトノベルがすごい!2021」単行本・ノベルズ部門ダブル1位。
天下人の知識を持ち、20歳の体で異世界に転生した徳川家康。王女セラフィナを救ったことで、滅亡寸前のエルフ族が籠城する『エッダの森』の大将軍に任命されてしまう。小心者で節約家、敵が死ぬまで戦わずして待てばいい。およそ勇者らしからぬ思考の家康は、心配性ゆえ『エッダの森』を徳川幕府並みに改革していきー?家康が狸爺の時代は終わった!?超チートな若き家康と、天真爛漫なエルフの王女の、異世界統一ストーリー!
勇者刑とは、もっとも重大な刑罰である。大罪を犯し勇者刑に処された者は、勇者としての罰を与えられる。罰とは、突如として魔王軍を発生させる魔王現象の最前線で、魔物に殺されようとも蘇生され戦い続けなければならないというもの。数百年戦いを止めぬ狂戦士、史上最悪のコソ泥、詐欺師の政治犯、自称・国王のテロリスト、成功率ゼロの暗殺者など、全員が性格破綻者で構成される懲罰勇者部隊。彼らのリーダーであり、“女神殺し”の罪で自身も勇者刑に処された元聖騎士団長のザイロは、戦の最中に今まで存在を隠されていた“剣の女神”テオリッタと出会いー。「力を貸してくれ、これから俺たちは魔王を倒す」「その意気です。勝利の暁には頭をなでてくださいね」二人が契約を交わすとき、絶望に覆われた世界を変える儚くも熾烈な英雄の物語が幕を開ける。