2021年発売
夢見る風俗嬢、童貞大学生、不妊の元主婦、ゲイを隠す夫、生きる希望を失くし集団自殺をした四人に訪れた奇跡ー。大阪の安アパート「詩名内荘」に住む四人の住人たちは、偶然にも時を同じくして取り返しのつかない“罪”を犯してしまう。生きる希望を失った四人は集団自殺を決行するが、何故か目を覚まし罪を犯す前に時が戻っていた。人生をやり直すチャンスを得た四人は、罪を犯さぬように行動するが、どこかで歯車が狂っていきー。犯罪×タイムループ×タイムリミットー閉塞感でがんじがらめのハイスピード群像劇。
「ねえ、秘密のアプリって知ってる?」 いつものように教室の片隅にいると、楽しそうな女子たちの噂話が聞こえてきた。 【過去を自由に変えられる】という夢のようなアプリ。 みんな噂話だとわかっているけど「あったらどうする?」と話題が絶えない。 もし僕だったらどんな過去を変えるだろう? きっと「僕を『普通』の人間にして下さい」こう願うかな……。 次の日、いつものように登校するとーー友人の三宮春乃が消えてしまっていた。 何故だかみんな春乃のことを憶えてないようだ。まるで元からいなかったみたいに。 「誰かが“アプリ”を使って、この世から春乃が存在した過去を消した?」 ーー秘密のアプリは夢なんか与えない。その日から噂は現実となり、僕たちの『普通』は壊れていった。
米女性作家によるリアルで残酷な法廷と恋愛 フロリダ州で起きた乳児焼死事件。放火の疑いをかけられた裁判の被告は、乳児の義理の姉である十代の少女だった。陪審員として7名の男女が集められるが、裁判期間中は郊外のモーテルに隔離、名前も伏せられ番号で呼ばれる。陪審員同士の個人的交流も固く禁じられていた。そんな中、老齢の夫を持つ50代のカメラマンC-2は、年下の解剖医と禁断の情事に身を投じていく。被告の運命を握る重責と正義に対する思い、女性としての焦燥や欲望の間で揺れるC-2の運命の歯車が狂い出す…。 M・フリーマン、D・キートン主演のヒット映画『眺めのいい部屋売ります』の原作著者が乾いた筆致で描く、リアルな法廷小説にして残酷な恋愛小説。
なぜ温暖化を阻止できなかったのか。 アメリカの地質学者が描く悪夢の2084年。 時は2084年。すでに世界は深刻な気候温暖化で危機に直面している。 21世紀初めの10年、20年間には深刻な影響が明らかだったのに、政治家や化石燃料推進派は科学的根拠を否定し続け、科学者の警告を握りつぶした。 2050年以降世界各地で未曽有の事態が進行し、2084年には人類は生存の危機に瀕している── 主人公の歴史記録の研究者(2012年生)が、なぜ温暖化を阻止できなかったのかという疑問を念頭に、世界各地の記者や学者の歴史証言を取材して執筆する形で綴られるディストピアSF小説。 *「あなたが生存を脅かす気候変動の不安で眠れないならば、ジェームズ・ローレンス・パウエルの『2084年報告書』を読むと、温暖化と闘って地球を救おうするリーダーを選ぶのに必死になるだろう」(マリ・クレール誌) *「実に怖い本だーー急いでしっかり行動しないとこうなる。そして本書にはどうやって変化を起こせるかの手がかりが満載であり、予言ではなく、フィクションである」(ニューヨークタイムズ紙ベストセラー著者ビル・マッキベン) *「未来からのこれらの報告はーー科学者、医師、司祭、大使、政治家、ツバルーー私に警告した。一日一日を無駄にできないことを教えてくれる。すべきことはたくさんある」(ジョージ・メイソン大学気候情報センター エドワード・マイバッハ) *「気候変動の甚大な影響が明らかな今、歴史家で優れた作家のジェームズ・パウエルは、切迫する潰滅的な気候変動を避けるために私たちがいま行動しなければ、恐ろしい地球規模の悪夢に直面することを伝える。本書を読んで変化を起こそう」ペンシルベニア州立大学教授マイケル・E・マン) 【目次】 第1部 旱魃と火災 第2部 洪水 第3部 海面上昇 第4部 氷 第5部 戦争 第6部 ファシズムと移住 第7部 健康 第8部 種 第9部 出口 第1部 旱魃と火災 第2部 洪水 第3部 海面上昇 第4部 氷 第5部 戦争 第6部 ファシズムと移住 第7部 健康 第8部 種 第9部 出口
日本古代の漢詩人たちの心の一端に触れながら楽しみ味わう、著者初めてのエッセイ集。日本漢詩の世界を旅することをお勧めする一国文学徒の著者が共感を込めて書き下ろした六篇。 悲哀の詩人ー石上乙麻呂ー 詩人天皇ー嵯峨天皇と小野岑守ー 一世風靡ー白居易詩の伝来ー 子を思うー菅原道真ー 栄華の御代にー『源氏物語』時代の詩人たちー 聖女(マドンナ)-傀儡無常ー
普通とちがうって、なんて大変なことなんだろう。友達がいて成績もそこそこな美雨は、昔から外見を母親や周囲にけなされ、目立たないように“普通”を演じていた。ある日、映研の部長・映人先輩にひとめぼれした美雨。見ているだけの恋のはずが、先輩から部活に誘われて世界が一変する。外見は抜群にいいけれど、自分の信念を貫きとおす一風変わった先輩とかかわるうちに、“新しい世界”があることに気づいていく。「君の雨がやむのを、ずっと待ってるー」勇気がもらえる感動の物語!
遥のことを、なぜ好きになったのか?自分でもよく分からなかった。強いて言うなら、全部が好きだった。一目惚れといえばそれだし、望んで好きになったわけじゃなかった。初めて出会った日から、徐々に、落ちるように、この想いが強まるほど、これが恋であると分かった。
姉妹で一緒にもふもふなモンスターが登場するVRゲームをプレイする姉のミレイと妹のれん。珍しいモンスター達と遊んでいるプレイ動画がバズり、姉妹はすっかり人気プレイヤーへと仲間入り。たくさんの可愛いもふもふ達と楽しく過ごしていたある日のこと。ゲーム攻略組で有名配信者のルルからコラボ配信のお誘いがやって来る。初めてのコラボでお互い緊張するれんとルル。だけど、れんはルルが連れて来た激レアなキツネさんに興味津々で!?さらにー「わたしもキツネさんとお友達になりたい!」というれんのお願いをきっかけに、姉妹とルルはキツネさんを探して雪山へ向かうことに。現実では病室から出られないれんは、初めて触る冷たくてふかふかな雪に大興奮!さっそく雪山を探検していると、キツネさんの親玉、九尾が目撃されたとの情報が…?テイムに配信に大活躍な姉妹のゆるもふゲームライフ、雪山からお届けする第2幕!
心を閉ざしていたハーフエルフの少女・ミゼラの傷を癒やし、錬金術の弟子として迎えることになったイツキ。そんなイツキたちが暮らすアインズヘイルの街では、毎年恒例の夏祭りが開催されていた。メイラに助力を請われたイツキは、夏祭りを盛り上げるため屋台を出すことに。元いた世界の知識を活かし、夏祭りの成功に一役買ったイツキたちは、メイラから協力のお礼として、高級リゾートビーチへと招待される。ウェンディやシロ、『紅い戦線』のみんなでビーチバレーをしたり、海水浴をしたりと、異世界初の海を満喫するイツキー。しかし、ここは異世界。海にも当然のごとく魔物が跋扈していた。もちろん、多数の触手を持った“あの魔物”もいてー!?スキルを駆使して美少女たちと送る賑やかな異世界スローライフ、第8幕!(願望)。
異世界へと召喚されたものの、未開の地に追放されてしまったキダン。彼が農場として地道に開拓を続けた土地は、ギフトと呼ばれる力“至高の担い手”と仲間達によって大きな発展を遂げていた。その傍ら、かねてよりキダンが進めていた、エルフが住まう森を再生させるための植林活動。その活動を、今なお森で暮らすエルフによって妨害されたという報告が舞い込んでくる。妨害活動を主導するのはハイエルフのエルエルエルエルシーー通称L4C。彼女は、「植林は森を人が支配しようとする不遜な行いである」と主張。さらには、魔王並みの実力を発揮できる森に立て籠もり、徹底抗戦の構えを見せていたー!そんなL4Cの説得に名乗りを上げたのは、元『雷雨の石削り団』二代目頭目にして、現皿焼き職人のエルフ・エルロンだった。自然主義のL4C説得のため、エルロンがとった秘策とはー!?未開の土地を賑やかな隣人達と開拓していく、異世界スローライフ、第10幕!
婚約破棄から始まる粛然たる復讐の物語 深い森に閉ざされた国ファーシタル。 その森を管理する精霊に仕えてきた公爵家の令嬢ディアは、幼い頃に家族を殺され、王家に保護されたのち第一王子リカルドと婚約する。 しかし、彼が他に愛する女性を得たことで婚約は解消される。 円満な婚約解消に思えたが、ディアは知っていた。 かねてより精霊との繋がりを危惧していた王家がこの婚約解消を機に、数日後の舞踏会で自身を手にかけることを。 そして自分の家族を殺したのが王家だということもーー。 全てを失いひとりぼっちで生きてきたディアは、最後に奪い続けてきた者達への復讐を決意する。 そんな彼女をずっと見ていたのは、美しく残忍な精霊ノイン。 彼こそディアの一族が仕えてきた精霊で、ディアが殺される理由だった。 気まぐれに現れるノインとともに、残されたわずかな日々を過ごすディアは、最後の舞踏会に向けて歩み始めるーー。
わたしは不眠と自分のこれまでの人生のかかわりを回想し、それはやがてひとつの決心のようなものを形作っていった。 そして、わたしはこれを書き始めることにしたのだ。 (本文より) 真面目で初々しく不器用で切ない。大事な思いのこもった、子どもが泣いているような小説だ。 --山下澄人 小説を書くというのは、人工的に無意識をつくることだと思う。事物に「もう半面」をつくるのである。 --千葉雅也
どんな攻めをも、はね返す石垣。 どんな守りをも、打ち破る鉄砲。 「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説! 越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。 幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。 匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。 秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。 一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。 大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開けるーー。 【プロフィール】 今村翔吾(いまむら・しょうご) 1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、同作で第7回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。2018年「童神」(刊行時『童の神』に改題)で第10回角川春樹小説賞を受賞、同作は第160回直木賞候補となった。『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。2020年『じんかん』で第11回山田風太郎賞を受賞、第163回直木賞候補となった。2021年、「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第6回吉川英治文庫賞を受賞。他の文庫書き下ろしシリーズに「くらまし屋稼業」がある。
日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに代わる国際大会の開催を画策していた。立教大学野球部出身で、体協の理事長・末弘の秘書を務める石崎は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく曲者ぞろいの面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チーム「ハワイ朝日」のマネージャー・澤山の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のアメリカ代表として参加してくれないか、という招請状だったー。
2023年、秋。北海道・札幌の葬儀場で道警捜査一課の生方吾郎は、久野麻美という女を張っていた。8日前に起きた殺人事件の被疑者である彼女は、葬儀場を出た後、警察の追尾を受けながらもその姿を消してしまう。女はどこへ逃げたのかー。札幌、旭川、釧路…捜査の網を次々とかわして北海道を脱出しようとする麻美。生方は所轄の駆け出し刑事である溝口直子とコンビを組み、麻美をどこまでも追う。手に汗握る逃走劇、その先に隠された思いもよらぬ真実とはー。
元神話学教授のチーズ職人の家に養子として迎えられた、難病のミミズ研究者の物語「闇夜、黒い大地と黒い山」。鳥の声を聴き取る自閉症の鳥類行動学者が、母の死をきっかけに聴力を失い、新たな言語を構築していく「人はいかにして言語を学ぶか」。植物状態にある恋人のツリークライマーに負い目を感じる主人公が、臨死体験を利用した治療法に身を委ねる「アイスシールドの森」。無差別殺人事件で妻を失った弁護士が、未完成の妻の小説に登場する絶滅種を追い求める「雲は高度二千メートルに」。海に惹きつけられた四人の男女が、絶滅したクロマグロを探す旅に出る「とこしえに受胎する女性」。中華商場で子どもたちを魅了した一羽の鷹と、その持ち主である叔父さんをめぐる追憶の物語「サシバ、ベンガル虎および七人の少年少女」。緩やかに連関しつつ紡がれる自然と人間の大いなる物語。現代台湾を代表する作家のネイチャーライティング・フィクション。
翻訳文学を求める熱心な編集者に告げておく。ピエール・マッコルランは、現代に復活させてしかるべき作家である。マッコルランを出す勇気と機略のある編集者がいたら、私はそのひとに敬意を表するだろう。--澁澤龍彦 アントナン・アルトー、レイモン・クノー、ボリス・ヴィアンらも熱愛してやまなかったフランスの小説家ピエール・マッコルラン。 奇妙で、ファンタスティックで、ユーモアに溢れるその傑作を集大成した、本邦初の3冊本選集がついに刊行。 第1回配本は、奇妙な笑い病のパンデミックがこの世を滅亡させる、世界終末論的疫病小説『黄色い笑い』。マルセル・シュネデールがマッコルランの最高傑作と絶賛したマンドラゴラ幻想小説『悪意』。長編2編を収録。ともに本邦初訳。