小説むすび | 2022年4月発売

2022年4月発売

アドルムコ会全史アドルムコ会全史

第二回阿波しらさぎ文学賞受賞後、「小説すばる」等で活躍めざましい若手小説家・佐川恭一の顰蹙必至異色長編3編他を収録した、分厚い小説集を満を持して刊行いたします。 安月給の工場で働く男がかつて自ら考案したデタラメな宗教に翻弄されていく「アドルムコ会全史」、個人の幸福度を計測できるようになった社会の公務員たちの働きぶりを描く「パラダイス・シティ」、ひとりではガールズバーにもいけない小心者の男の心の内面を描く「ブライアンズタイム」の書き下ろし長編、他短編2編を収録。荒唐無稽な展開と不謹慎な冗談が固定観念を壊してくれると同時に心の暗部を照射する。 装画は『死都調布』『死都調布南米紀行』『死都調布ミステリーアメリカ』が支持を集める漫画家・斎藤潤一郎さんに怪しくもカッコよく描いていただきました。 吉村萬壱さん推薦! 「本書は世界の本膣を射抜くことで、読者のみならず作者自身の男根とした信粘を怒張することに性交している。」 この“顰蹙”は買っておいた方がいい。 ほとんど全ての人間が生きる中で抱えてしまう仄暗さや浅薄さをこそ、佐川恭一は徹底して書き続ける。そうして獲得した底抜けの悲哀と笑いは、私たちが生きる社会のままならなさを見事に描きだしてしまう。それは絶望なのか、希望であるのか。是非貴方の目で確かめてほしい。 (toi book店主・磯上竜也) 佐川恭一の作品は初めて読んだ。いったいどんな頭の構造をしているのだろう。完全におかしい人なのか、それとも真面目すぎて真っ直ぐすぎてやっぱりおかしい人なのか。こんなぶっ飛んだ作品は久しぶりだ。この次の展開がわかる読者を私は尊敬する!ってゆう展開がこれでもかと投入され、訳もわからず夢中になって、だんだん麻痺してきて、最終なんだかへらへらしながら読んでいた。無理やり毒に慣らされた感覚だ。読み終わった今は、毒が恋しい。(大垣書店イオンモールKYOTO店・辻香月) *目次* アドルムコ会全史 キムタク パラダイス・シティ 夏の日のリフレイン ブライアンズタイム アドルムコ会全史 キムタク パラダイス・シティ 夏の日のリフレイン ブライアンズタイム

三面椿三面椿

著者

柄戸正

発売日

2022年4月16日 発売

岩手県大船渡市末崎(まっさき)町の熊野神社には、推定樹齢1200年とも言われる日本最大級のヤブツバキが現存している。 元は、境内の三つの方角に植えられていて「三面椿」と言われていたが、今は1本だけになっている。 大船渡市が位置する岩手県沿岸南部は、リアス海岸が広がり目の前には黒潮と親潮がせめぎ合う世界三大漁場といわれるところだが、暖流の影響か冬でも雪が少なく温暖で、一帯にはヤブツバキが自生しており、ヤブツバキの北限ともいわれている地方である。 この物語の舞台は、奈良に大仏が建立されようとしていた天平十六年にまで遡る。 大仏の鍍金には大量の金が必要だが、その当時日本では金がとれないとされていた。 そのため、宮城県涌谷で初めて金が発見されたことは大変な慶事とされ、聖武天皇年号を天平感宝とするほどだった。大伴家持はこの慶事を「天皇(すめろき)の御代栄えむと東なるみちのくの山に金(くがね)花咲く」と歌に詠んだのは有名である。  以来東北各地で金が産出されたが、特にも岩手県大船渡市を中心とした気仙地方は、昭和18年まで産金が続けられるほどに埋蔵量が豊かで、16世紀までは世界最大級の産金量があったとされるほどであった。これらの金はその後、平泉の中尊寺金色堂に象徴される奥州藤原文化の全盛期を支えたともされている。 この物語は、奈良の大仏の鍍金に使う産金を求め紫香楽に住む青年・築麻呂(つきまろ)がみちのくの産金を求めて奥州へ、そして気仙の熊野神社に来る物語である。途中大地震による大波で海に落ち伊豆大島に流れ着くことから物語がはじまる。 大船渡に現存する日本最大最古とされるヤブツバキと日本で最大級の産金を誇った気仙の産金を二つの縦糸にした、壮大な歴史ロマンである。 一 大仏建立 二 船 出 三 大 島 四 安房国 五 多賀城 六 採 金 七 国守交代 八 産 金 九 三面椿

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