2023年3月発売
「人食い鮫ヴォイド」が死の直前に産み落とした遺産ー“カナデ”がついにその姿を現した。カナデはサメとは思えない驚異的な知能と戦闘力で己の存在を狙うテロ組織『カリュブディス』の敵を次々と喰い殺していったが、人間の域を遥かに超えた強さを持つ女傭兵・イルヴァとの激闘の末に敗北する。瀕死の重傷を負い、海に流されたカナデ。しかし、流れ着いた先でのある少女との邂逅により、物語は一気に動き出す。己の正体は希望か災厄か。その答えを求め、最凶は捕食し進化するー。『デュラララ!!』『バッカーノ!』著者・成田良悟が放つ究極の“サメ”エンタテインメント小説、ついに完結!
不祥事で弁護士資格を剥奪された上水流涼子は、IQ140の貴山をアシスタントに、探偵エージェントを運営している。今回持ち込まれた案件も、謎の積み荷を載せた車の捜索、親権トラブル、心を閉ざした女子大生の救済などいずれも一筋縄ではいかない難題ばかりで…。
初代怪盗フラヌールが盗んだ1冊の書物。豪華絢爛。異形で異質。再現不可能。金箔製の繊細を極めた書物が、2代目怪盗フラヌールこと、あるき野道足のターゲットだ。しかし、返すべき製作者とその妻が何者かに殺されていたことが判明し、名探偵・涙沢虎春花と待葉椎警部補がフラヌールを追う。怪盗フラヌールの返却行程の行きつく先は?
「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する…。表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「奇食のダボハゼ」をおさめた短編集。
三年前のバイク事故で右眼を失明した警察官の尾崎冴子は、訪れた事故現場でフラッシュバックのようにその一部始終を目撃する。以来、尾崎の右眼は三年前の光景を映すようになった。それを知った署長の深澤は、尾崎の信頼する弓削警部補と共に、未解決一家四人殺害事件の再捜査に乗り出すが…第9回新潮ミステリー大賞受賞作。
東京都久慈見町で幻の高級ワイン「クジミ」を飲んだ11人が死亡。居合わせたマヤの相棒・代官山も意識不明の重体に。ワインには新型の農薬が混入されていた。マヤは愛する(?)代官山を奪われた怨念を胸に、ドラマかぶれの熱血刑事・天神弥太郎と共に捜査に乗り出す。果たしてこれは無差別殺人か怨恨か。大人気ユーモアミステリー、待望の最新刊!
少ない降水量にもかかわらず、雨により埼玉県の黒部山で土砂崩れが発生した。一人が行方不明になるなか、瓦礫からは不法投棄された産業廃棄物が大量に発見される。県警は事件と判断、捜査一課の奈良健市も捜査に加わる。捜査本部は崩落発生地の所有者特定に着手。すると、意外な人物の名があがった。それは迷宮入りさせてしまった十六年前の殺人事件で、奈良が犯人だと確信し、逮捕直前まで迫った因縁の相手なのだが…。産廃の闇に消えた二つの命。遺族と向き合う刑事が執念の捜査で掴むのは真実?冤罪?警察小説のヒットメーカーが満を持して放つ、傑作ヒューマンミステリー!
帝国騎士団に所属していたアッシュは順風満帆な人生を送っていた。しかし婚約者である貴族のお嬢様から婚約解消を言い渡され、さらには年下上司からは婚約者に赤ちゃんプレイを強要したという偽りの噂を流されてしまう。こうして騎士団をクビになり、灰色の人生へと転落してしまったアッシュ。「そうだな…外国にでも行こうかな」全てが嫌になったアッシュはそう思い立った。ダンジョンの資源を利用して急成長を続けるローズベル王国、その西部にある第二ダンジョン都市でダンジョン内の魔物を狩る者…ダンジョン狩人として新たな人生をスタートすることにした。魔導具に囲まれた豊かな暮らし、ライバルとの再会、初めてのダンジョン攻略。帝国騎士団時代に鍛え上げた圧倒的実力を発揮するアッシュは徐々にローズベル王国での名声を獲得していく。すべては灰色の人生をひっくり返すために。…一方、アッシュのいなくなった帝国騎士団では一人の後輩・ウルカが目の色を変えて彼を追いかけようとしているのだった。
“親愛なるイーストン”と書いて、ペイトンは日記に突っ伏した。5年前、彼女は見知らぬ洗練された実業家にひと目で心を奪われた。彼から部屋に誘われたときは夢を見ているのかと疑ったけれど、裕福なお金持ちと田舎娘の関係が長続きするとは思えなかった。でもまさか、自分が双子の男の子を身ごもるとは。愚かで無責任だった母のせいで、子どもたちは父を知らずに育っている。いつか会えるというはかない希望を胸に、ペイトンは双子のことや自分の気持ちを日記に綴りつづけていた。ところが、千載一遇のチャンスが訪れてイーストンに再会できたとき、彼から子どもとの時間を奪った罪悪感で、ペイトンは怖じ気づいて…。
ハリエットはやむなき事情から人工授精で匿名者の子を身ごもり、人里離れた浜辺を一人で歩いているときに産気づいてしまった。たまたま通りかかった外科医の男性に救われるも、母子ともに命の危険にさらされた状況で意識が混濁し、彼女はそのときのことを覚えていなかったー命の恩人であるそのハンサムなドクターの顔さえも。彼は駆けつけた救急隊に母子を託し、名乗りもせずに立ち去った。2年後、ハリエットは看護師として復帰し、同僚に温かく迎えられるが、ただ一人、新しい外科医長のパトリックだけはつらくあたるのだった。いったいどうして、彼は私にこんなにも辛辣なの…?
ベッツィーは丘の上に立つオークの木の下で、人知れず泣いていた。人生でたった一度の社交シーズンに失敗したあと、野心家の母に命じられた、恥ずべき玉の輿作戦にも失敗した。さる貴族にキスを迫ろうとしたところ、相手が既婚だとわかったのだ。親孝行と思って、望まぬことも頑張ってきたけれど、もう限界…。地べたに座りこんで涙を流す彼女に、声をかける者があった。隣の伯爵領を代理で管理しに来たという、たくましくハンサムな執事だ。そのジェームズに小作農の娘と間違えられ、ベッツィーはむっとするが、なぜか彼とは気安く話せて、いつしか涙は乾いていた。本当は、ジェームズは執事などではなく、由緒正しき子爵とも知らずー。
亡き父に代わり、男装して城を守っているジュリアナは、身も心も男になりきるために純潔を守り、修道女のように暮らしてきた。美しい貴婦人のガウンに袖も通さず、ささやかなレディの嗜みといえば、母が遺してくれた香りのよい石鹸をそっと使うことだけ…。ある夜、彼女は、何者かに襲われて深手を負った騎士を森で発見する。顔面蒼白で意識を失ったその男性を城に連れ帰り、寝ずの看病をするうち、ジュリアナは今まで感じたことのない、感じてはいけない興奮を覚えた。私が女であると強く思わせる、彼のたくましい体、ハンサムな容貌。いいえ、そんなことを考えちゃだめよ!彼は敵かもしれないのに!だが、目を覚ました彼の青く美しい瞳に、ジュリアナは心を奪われたー。