2023年5月発売
一九六六年のある寒い夜、ボルヘスは汽船の甲板に立ち、海に向けて一枚の硬貨を抛った。-『夜の潜水艦』僕は、この鍵はUSBメモリで、家はまだ完全な状態でこのメモリの中に保存されているだけなのだと想像した。-『竹峰寺鍵と碑の物語』奇妙なペンは、液状のオーロラで満たした試験管のようでもあった。-『彩筆伝承』僕の日常業務は雲の剪定やメンテナンス、広告の印刷、剪定所の運営維持だ。-『裁雲記』しなやかな始まり、雄大な続き、玄妙な転換、そして虚無の終わり。-『杜氏』変な感じがする、と彼女は言った。ちょっと感動するし、とても「ちゅんとする」ような気もする。-『李茵の湖』隕鉄は夜空の星屑だから、夜空そのものを煮つめた液体で焼き入れをしなければならない。-『尺波』彼の内心の聴覚はとても強く、楽譜を読みさえすれば音符の奥底に潜むイメージを見ることができた。-『音楽家』
日本でもっとも愛される作家、カート・ヴォネガットがニュートン、シェイクスピア、ヒトラー、アシモフなど、20人の故人+αに取材した架空インタビュー集。
誰も“透明な存在”になんかさせない。“幸せそうな若い女”を狙って刺され、SNSから消えた優里亜。向こうの世界にはいない、ラジオでリスナー投稿を読んでくれる大人気の歌手・恋恋。闘病ブログにきなくさい書籍化の話がきた友人の深南。こっちの世界の中川君が漫画で描く、同性愛で売り出されたアイドルデュオ。向こうの私はロンドンに住んでいて、こっちの私はー彼女たちが選んだ沈黙と言葉とは?新たなる桜庭文学が始まる。
19世紀のロンドン。スワンズビー社の辞書編纂者ウィンスワースは、日夜ひそかに架空の項目を挿入することで日々の憂いをはらしている。いっぽう現代のスワンズビー社では、インターンであるマロリーが辞書に紛れ込んだ嘘を探しだし取り除く仕事と格闘していたー。言葉の定義に執着しながら定義不可能な現実に振り回される、ふたりの辞書編纂者のひねくれた愛の物語。
人間がゾンビ化する「黒い病」のワクチンを村に届けるため、インテリ地方医師プラトン・イリイチ・ガーリンは吹雪をついて旅に出る。御者セキコフが操るソリ車にはヤマウズラのような小馬50頭がボンネットに収まる。小人の粉屋と豊満な妻、謎の透明物質でできたピラミッド状の麻薬装置、ホログラムを映しだすラジオ、身の丈6メートルにおよぶ巨人、三階建てほどの巨大な馬…吹き荒れる嵐のなか、二人はいつしか暗闇と吹雪の世界に迷いこむ。『青い脂』『氷三部作』『ロマン』『愛』など、現代文学のモンスターと称される作家随一の人気作!!!
古本屋で働いていると、絶版本を探してほしいというお客がたびたび現れる。何か月、あるいは何十年もかけて一冊の本を探す人もいる。そこで考えたのが「物語の蒐集」だ。長いあいだ本を探すのだから、そこには何らかの事情があるはず。これからお聞かせする話は、楽しいものもあれば、悲しいものもあるだろう。怖い話、シュールな話もある。ただひとつだけ言っておきたい。私たちの周りには、奇妙なことが想像以上に頻繁に起きていると。29冊の本と、それにまつわる本当にあった29の人生の物語。
乙女ゲームの主人公に転生したエスター。しかし、同じ転生者の悪役令嬢ブリジットを幸せにしたい!と、ゲーム完全無視で彼女の侍女になってしまう。サブキャラ幼馴染の護衛ヴィンスを巻き込み、主人公チートも駆使してお嬢様至上主義を貫くエスター。ブリジットも負けじとエスターを攻略キャラとくっつけようと画策するも、華麗にスルー。でもー「俺の関心ごとは、十六年前からお前だけだぞ」ヴィンスに設定破りな想いをぶつけられて!?
気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女アバターの姿で。周りは見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない!いくらSF技術があっても、資源が無ければ何も作れない。だと言うのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学のかの字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい!これは、超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語。
レスティア大陸の勢力図は、大きく塗り替えられた。これまではリフェリス王国と神都ディルアーゼルによって二分されていたが、今ではそのどちらも覇権から遠のき、突如現れた魔物の国に譲る形となった。領土を安定させたエステルドバロニアの王カロンだが、彼は頭を抱えていた。本来なら魔物の天敵であるはずの勇者スコラからのラブレターの山を前に。カロンは悩んだ末、スコラを城に招くことにしたのだがー。最弱の人間と、彼に付き従う魔物たちの物語、第5弾!
開戦の火蓋が切られた“聖戦”。魔導皇国は神聖ヴァイス王国の策により劣勢を強いられていた。戦線を押し上げるためアリシアと魔王・アルベルトが出陣する。しかし、戦場を駆けるアリシアの前に早くも敵将のイルミナが現れた!!
バスタードソードは中途半端な長さの剣だ。ショートソードと比べると幾分長く、細かい取り回しに苦労する。ロングソードと比較すればそのリーチはやや物足りず、打ち合いで勝つことは難しい。何でもできて、何にもできない。そんな中途半端なバスタードソードを愛用する俺、おっさんギルドマンのモングレルには夢があった。それは平和にだらだら生きること。やろうと思えばギフトを使って強い魔物も倒せるし、現代知識でこの異世界を一変させることさえできるだろう。だけど俺はそうしない。ギルドで適当に働き、料理や釣りに勤しみ…時に人の役に立てれば、それで充分なのさ。これは中途半端な適当男の、あまり冒険しない冒険譚。
バングラデシュ、ブータン、中国、ミャンマーに囲まれ、さまざまな文化や慣習が隣り合うヒマラヤの辺境。きわ立ってユニークなインド北東部から届いた、むかし霊たちが存在した頃のように語られる現代の寓話。女性たちが、物語の力をとりもどし、自分たちの物語を語りはじめる。