2023年6月発売
そう、私はただの居候。 愛しの公爵の眼中にさえない……。 エレノアは14歳のとき、父の遺言で指名された後見人である、 ケンダル公爵ヒューに引き取られ、公爵邸で暮らしてきた。 年上の彼に密かな恋心を抱き、いつしか憧れは愛へと変わっていった。 それなのに今、ヒューはエレノアを早く“片づける”と口にして、 社交界デビューさせるという。結婚させて厄介払いしたいのだろう。 「私はおまえに手を出すほど恥知らずではない。 おまえの純潔を守るのが、わが務めだ」 彼にそう告げられ、エレノアはとっさに挑発的に反論した。 すると、ヒューは彼女を机に押し倒して唇を奪い、冷徹に言い放った! 「まるで食指が動かず、始める気にもならない」 エレノアにキスし、凍てつくような冷たい言葉で彼女を突き放したヒューは、翌日、社交界で評判の伯爵未亡人との婚約を決め……。エレノアの長年の想いは、実らぬまま枯れてしまうのでしょうか?『公爵の無垢な花嫁はまだ愛を知らない』(PHS-296)の関連作。
あなたの笑顔に、眼差しに、声に、 もう触れられなくなるなんて……。 3年前、逆境にいたところを、さる伯爵に救われて以来、 伯爵夫妻が主のグレイストーン城に身を寄せている19歳のキャサリン。 そこに集まったうら若き令嬢たちを前に、彼女は気後れしていた。 伯爵の弟で、キャサリンが唯一心を許せる幼なじみのジェフリーが今、 6人の花嫁候補と会うために、この城へ向かっているという。 令嬢たちのように着飾ってもいないし、気の利いた会話もできない彼女は 居たたまれず、以前いた修道院に今すぐ戻りたいとさえ願った。 でも、もう少し耐えよう。ジェフリーの顔を最後にもう一度見るまでは。 彼が結婚したら、キャサリンは修道誓願を立てるつもりだったーー 大好きなジェフリーの笑顔も、もう見納め。私は修道女になる……。 1年ぶりに会うジェフリーが花嫁候補たちと踊る姿を廊下から見つめるキャサリン。しかし、さらに彼女を苦しめたのは、ジェフリーからのお願いでした。「だれを妻にしたらいいか、きみに相談にのってほしい」大人気作家が描く、甘酸っぱくて切ない珠玉の名作!
「君が妊娠するなんて、あり得ない。少なくとも僕の子ではない」23年前、学生だったアビーは6歳年上のサムと恋におちて結婚したが、ほどなくして新しい命を身ごもったことを知らせると、彼は別の男との間にできた子供だろうと一方的に彼女を責めた。信じてくれない夫に深く傷つけられたアビーは離婚の道を選び、独りで娘を産んで、娘のために身を粉にして働いてきた。今、その娘が婚約し、両親揃って結婚式に出てほしいと言い始めたので、アビーは激しく動揺したー娘の幸せのためならなんでもしたいけれど、別れた冷たい夫と顔を合わせることだけは避けたい!だがある夜、以前より男らしく魅力を増したサムが目の前に現れ…。
昼間は秘書。午後5時からは恋人。 傲慢なボスとの、偽りの恋……。 秘書のアビーが高名な富豪弁護士グレイの下で働き始めて1年。 ボスは傲慢で実に扱いにくい反面、とても優秀で魅力的な男性だ。 そんな彼が求める秘書であろうと、アビーはしかつめらしい服に 眼鏡とひっつめ髪のスタイルで、まじめに働いてきた。 だがある日、ボスの予定帳に書かれた取引相手の名に、激しく動揺する。 二度と会いたくないと思っていた、卑劣で薄情な元恋人……。 やむをえずグレイに事情を話し、もうここにはいられないと告げると、 ボスは僕たちが公然と同棲すれば、相手は手出しできなくなると言う。 二人で寝食をともに……? 戸惑いを見せるアビーに、彼は釘を刺した。 「ベッドの心配なら無用だ。君は僕の好みじゃないから」 アビーは客用寝室を与えられ、グレイと一つ屋根の下で暮らし始めます。彼から、地味なスーツをやめ、髪を下ろして眼鏡も外すよう言われて従うことに。さらに、二人が恋人同士であることをまずは職場の人間に信じさせなければならないと、オフィスでキスを……。
生か、死か、死のない死か アメリカの大富豪ロス・ロックハートは、難病に冒された愛する妻の身体を凍結し、未来の医療に託そうと目論んでいた。 プロジェクトに巨額を投じる父に招かれ、中央アジアの地下研究施設を訪れた息子ジェフリーが見たものとは……? 科学技術の進歩は肉体の復活と人類の更新、永遠への到達を約束しうるのか。 そして愛は絶対零度の世界でも生き長らえるのか。 極限状況において人間の限界を問う、異色の恋愛小説。 人体凍結による永遠の生の獲得、ロシア・ウクライナ問題、隕石落下による大災害、惑星規模で頻発するカタストロフィ、世界の終わり、歴史の超越によるアセンション…… これは予言の書か、希望の書か、黙示録か? 『ポイント・オメガ』と『沈黙』を架橋する後期デリーロの新たなる傑作長編、ついに翻訳完成!! 第一部 チェリャビンスクの時代に アーティス・マーティノー 第二部 コンスタンティノフカの時代に 訳者あとがき
縄文期の“加曽利の犬”、トルコ・イスタンブールでの野犬大虐殺事件、小型化へのあくなき欲望…犬と人間との長きにわたる関係を考察しつつ、愛犬ポメラニアンとの17年の日々を描いた感動のフィクション!
悪魔のリリに与えられた『何もないところに部屋を作り出す能力』を使い、様々な女の子を監禁・調教してきた木島文雄。藤原舞を辱めた犯人捜しのために起こした陸上部女子の集団監禁は、世間では集団誘拐事件として騒がれつつも、文雄の活躍によって解決したことになり、さらには粕谷純一から黒沢美鈴を寝取ることに成功し、文雄は「監禁王」としての道を歩み続ける。そんな彼の次なる目標とはー。
未来からの手紙と最強の時空魔法で、運命を切り開け!! 己の立場を笠に着て生きてきた元『神童』の公爵令息・ヘルベルト。 傲慢さとその見た目から周囲に豚貴族と馬鹿にされてきたが、平民マーロンとの決闘を控えた前日、謎の手紙が目の前に現れる。 その手紙は二十年後の自分から送られてきたもので!? さらに、このままでは誰一人としてヘルベルトを認める者がいなくなる悲惨な未来が綴られていた! ーーだが、そこには希望も書き記されていた。ヘルベルトにはかつての大賢者が使った時空魔法の素質があること。 行動を変えれば周囲の人の見る目も変わること。 ヘルベルトはこれまでの行いを悔い改め、手紙のアドバイスを元に未来を変える行動を始める! まずは凋落の契機である、マーロンとの決闘に敗北する未来を変えることに。 特訓を経て迎えた決闘の日。 果たしてヘルベルトは勝利を掴み取り、未来を変えられるのかーー!? 人生やり直しファンタジー、ここに開幕!
花嫁修業で希少な才能開花!頑張る花嫁に、竜王陛下の溺愛は加速中!? 竜王カインに嫁ぐこととなった弱小国の姫ミレーユ。 求婚相手が違うという勘違いも解決し、二人は少しずつ距離を縮めていた。 早く結婚したいカインにより結婚式の準備も進められていたが、膨大な量の衣装制作や先代王の行方不明など問題は山積みだった。 一方、穏やかな時間を過ごすミレーユは、ドリスの誘いで術の検証を行うことに。 彼女曰く「石に魔力を込め、術を発動させられる」性質は、初代竜王の遺産である魔石に似ているという。 用意されたたくさんの石に順調に魔力を込めていくミレーユ。 最後に魔石に触れたところ、そこに刻まれた記憶が流れ込みーー、ミレーユは自身の術を理解し、能力を最大限使えるように! そんな中、祖国グリレスが崩壊の危機との情報がもたらされる。 さらには妹エミリアが嫁ぎ先に戻らず引きこもっているとも。 ずっとエミリアのことが気がかりだったミレーユは渋るカインを説得し、祖国へ足を運ぶことにするのだが……?
宿敵を前に夫婦の絆が試される!? 前世は伝説の魔女だった伯爵夫人ラム。 隣国の訪問中、転生していた弟子のエペに捕まってしまうが、シャールたちにより無事救出! しかし騒動の中でシャールに前世の正体がばれてしまう。 屋敷に帰ったラムが覚悟を決め、自身の口から真実を打ち明けたところ…… 「お前がお前であればなんでもいい」 と受け入れられーー!? そんな折、隣国視察の報告のために王宮へ召還されたラムたち。 そこには国王の他にモーター教の司教がおり、揃って無茶な要求を突き付けてくる。 その態度に怒ったラムは悪臭魔法で反撃! 今後は依頼を受けないことを宣言するーー! 帰宅後、他国への引っ越しを考えていると、再び王宮からの手紙が届く。 内容は教皇の訪問を祝う歓迎パーティーに招待するというもの。 怪しく思いつつも教皇のことが気になったラムはシャールとともに参加するのだが、そこにいたのはかつての三番弟子で……!?
私がトリップした先は中華風の異世界。 ワケあってこの世界から性知識が消えていて!? このままでは新たな子どもが生まれず大ピンチ! やむなく私が皇帝陛下の子作りの指南役に ……って私だって未経験──困りますっ!! 慣れぬ閨事に戸惑う純情陛下だったけれど いったん本能に目覚めたらケダモノ化! 「一日でも早く、お前との子が欲しいからな」 逞しすぎる巨根から熱い精を夜ごと注がれて──! ご懐妊待ったなしのハズが陰謀に巻き込まれ!? 絶倫陛下からたっぷり愛を浴びる妊活ノベル。
執筆期間15年のミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』の核となる小説、完全単行本化。 「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦がここに結実…! 遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいる。日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。無表情で帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで……。 謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。 『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。 【リバーシブル・カバー仕様】 恩田陸によるミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』作中で、幻の作家・飯合梓の唯一の著作として登場する『夜果つるところ』。 『鈍色〜』の核となる小説を完全単行本化した本書のカバー、恩田陸版/飯合梓版を自由にかけかえ可能なリバーシブル仕様でお届けします! 【著者略歴】 恩田陸(おんだ・りく) 1964年生まれ、宮城県出身。92年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作に選出された『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、17年『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞と本屋大賞を受賞。ミステリ、ホラー、SFなど、ジャンルを越えて多彩な執筆活動を展開する。他の著書に、『スキマワラシ』『灰の劇場』『薔薇のなかの蛇』『愚かな薔薇』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』など多数。
あなたを知ることは、あなたという人を選んだわたしを知ること。 多民族国家の生きた声を掬う在豪作家が贈る、力強くみずみずしい《越境青春小説》。 父の転勤にともない12歳でオーストラリアに移住し、現地の大学生となった安藤真人。憧れていたはずの演劇の道ではなく就職を選ぼうとしていたところ、デザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会い、人形劇の世界に誘われる。日本人としてのアイデンティティの問題に苦しんできた真人のように、「同じアルメニア人と結婚を」と刷り込まれてきたアビーもまた、出自について葛藤を抱えていた。互いを知りたい、相手に触れたい。しかし、境遇が似通うからこそ、抱える背景の微妙な差が、猛烈な「分かりあえなさ」を生み……。 話題の既刊『Masato』『Matt』につらなる、「アンドウマサト三部作」最終章! 【著者略歴】 岩城けい(いわき・けい) 1971年大阪府生まれ。大学卒業後、オーストラリアに渡り就職。2013年に『さようなら、オレンジ』で太宰治賞を受賞しデビュー。14年に同作で大江健三郎賞、17年に『Masato』で坪田譲治文学賞を受賞。他の著書に『ジャパン・トリップ』『Matt』『サンクチュアリ』『サウンド・ポスト』がある。
きっかけはファウルフライ。いったいなんの因果で、何事も起らない筈の世界にこうも様々な面倒が次から次に生れるのか。母に連れられていったお屋敷で、朱音と朱里という二人の神秘的な姉妹に出会った。母はなぜ「俺」を姉妹に会わせたのか。それは、母の姉である福子から聞いた、自分の出生にまつわる信じられないような秘密と、朱音たちの母の故郷である「流れる島」にまつわる悲しい神話に結びついていたー。
【恐怖の帝王、作家50周年を前に王道のSF巨弾が待望の邦訳!】 異能の少年少女を拉致する謎の機関〈研究所〉。 彼らは子供たちの超能力を利用して何を企図しているのか。 冷酷なるくびきから逃れるため、少年は知恵をめぐらせる。 ミネソタ州ミネアポリスに暮らす12歳の少年ルークは、両親こそごく平凡だが、優秀な子供の特待校に通う神童だ。彼にはちょっとした特殊能力があった。ふとしたときに、周りのごく小さな物品をふれることなく動かしてしまうのだ。と言っても、それは他人が気づくほどのことでもない。 一流大学MITの入学内定を勝ち取ったルークだが、ある夜、3人の不審な男女が眠る彼をかどわかす。目覚めたルークが見たのは、自分の部屋そっくりにしつらえられているが、何かが違う一室だった。扉の外は自宅とは似ても似つかぬ、古びた大きな施設。そこには様々な少年少女が拉致され、自室と似た部屋を与えられて戸惑いながら暮らしていた。 目的も知れぬこの〈研究所〉で、残忍なスタッフや医師に、気分の悪くなる注射や暴力的な検査を繰り返される少年少女たち。彼らの共通点は「テレキネシス」か「テレパシー」の超能力を持っていることだった。 ルークは黒人少女カリーシャ、反抗的な少年ニック、幼く泣き虫だが強いテレパシーをもつ男の子エイヴァリーらと知り合うが、一定期間検査を受けた子供はひとり、またひとりと〈研究所〉の別棟〈バックハーフ〉へ連れ去られ、決して帰ってこないのだった。ルークはこの不穏な施設からの逃亡計画を温めはじめるーー。
【恐怖の帝王、作家50周年を前に王道のSF巨弾が待望の邦訳!】 〈研究所〉を脱走したルークvs.冷酷女所長。 超能力少年少女vs.残忍スタッフたち。 ついに策謀の本性があらわになり、決戦が迫る。 部屋係モーリーンとエイヴァリー少年の助力でルークは〈研究所〉を逃れた。脱走に気づいた女所長ミセス・シグスビーは激怒し、自ら手下を率いて追跡する。元警官の流れ者ティムとルークが邂逅し、田舎町デュプレイで地獄のふたが開く! 一方〈研究所〉では、〈バックハーフ〉に送られたカリーシャ、ニックらがついにその企みの全貌を目にしていた。これ以上超能力を利用されつくして正気を失う前に、なんとかして逃れる方法はないのか。能力が開花したエイヴァリーを中心に、少年少女たちは立ちあがる。非情なスタッフたちとの戦いがはじまったーー。 『ファイアスターター』を彷彿させる超能力、『IT』ばりの少年少女たちの勇気。キングに影響を受けたと言われるドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の設定を逆オマージュしたかのような舞台で、キングにしか書けないキャラクターが、キングにしか書けない戦いを繰り広げ、物語はキング史上最大級のクライマックスへ。 恐怖の帝王の本領が炸裂するエンターテイメント、ここに極まる!
私はここに居て鳥を見ていよう。精霊のごとき高貴さと儚さを湛え、人間の脳を喰らい人語を解す怪奇なホムンクルス。奥深い山に位置する謎の神殿学校の、地下を流れる川に繋留された“時を超える舟”…全世界が鳥のとどまる一瞬の夢と現ずる、目眩く長篇幻想小説。シリーズ“教皇庁の使者”待望の第2作。