2023年6月発売
新人商社マンの井山は接待の席で囲碁好きの社長から盛んに囲碁を勧められ、徐々に囲碁の世界にのめり込んでいく。尋常ではない囲碁の実力を持つさゆりとの出会い、謎めいた囲碁サロン「爛柯」の人々、黒い扉の謎…。
アポリネール、ブルトン、レーモン・クノー、イヨネスコ、ボリス・ヴィアンら20世紀フランスの前衛作家たちに多大な影響を与えた、不条理の作家アルフレッド・ジャリー兵役体験における生と存在を夢幻的に描く『昼と夜』、催眠術によって新しい世界を創造しようとする『絶対の愛』の小説2篇を収録。
たった数ページで、あなたの日常が蝕まれる……恐怖の深淵を覗く物語21編! ホラー小説の旗手が贈る、戦慄の初ショート・ショート集 「得体が知れないからこそ怖く、面白い。」--野水伊織(声優) ◆「どパァん! ……って感じやねん、飛び降り自殺の音って」 自宅マンションからの飛び降り件数が異常に多い理由とは? (「名所」) ◆とある町の小学生たちは、夏休みにも登校するという。「かみさま」を作るために。 僕にはそれがどういう意味を持つのかはわからないが、先生も、親も、その親もずっと続けてきたからだーー。(「かみさまとにんげん」) ◆愚鈍なバイト仲間の人生相談に乗ることになったバイトリーダーの私。 善意で引き受けただけだったが、雲行きはどんどん怪しい方向へーーその衝撃の結末とは? (「さきのばし」) ほか
◆これは反則技などではありません。ミステリの名匠が繰り出した離れ業なのです!(山口雅也) 深夜一時、ジョン・サンダース医師は研究室を閉めた。今週中に、ある毒殺事件のための報告書を提出しなければならず、遅くまで顕微鏡を覗いていたのだ。頭をすっきりさせて帰ろうと、小雨の降りはじめた道を歩いていたサンダースは、十八世紀風の赤煉瓦造りの家のすぐ外に立つ街灯のそばに一人の若い女性がたたずみ、自分のことを見ているのに気づいた。ガス灯に照らされ、ただならぬ雰囲気を漂わせた女性は、サンダースを呼び止め、この建物の窓に明かりが灯った部屋に一緒に行ってほしいと懇願する。この女性に請われるまま、建物に入り、部屋に足を踏み入れたサンダースが目にしたのは、細長い食卓の周りを物いわぬまま囲み、蠟人形か剝製のように座った四人の人間であった。いずれも麻酔性毒物を飲んでいる症状が見られ、そのうちの三人にはまだ息はあったが、この部屋の住人であるフェリックス・ヘイは細身の刃で背中から刺されてすでに事切れていた。そして奇妙なことに、息のある三人のポケットやハンドバッグには、四つの時計、目覚まし時計のベルの仕掛け、凸レンズ、生石灰と燐の瓶などの品々が入っていた。事件の捜査を開始したロンドン警視庁のハンフリー・マスターズ首席警部は、奇妙な事件の解明のため、ヘンリー・メリヴェール卿を呼び寄せる。 【炉辺談話】 『五つの箱の死』(山口雅也) 五つの箱の死
爛熟の世紀末文学 マリオ・プラーツが『肉体と死と悪魔』において言及した数少ないスペイン作家バリェ=インクラン。W・B・イェイツやガルシア=ロルカを想起させる作品など、この世ならぬ場所へと誘う、17の短篇小説。頽廃の園へ。 神秘主義的なキリスト教と土俗的な民間信仰、背徳的な罪咎の宴ーー 高貴な輝きと隠遁の雰囲気を湛えた昏い廃園は、夢うつつに微睡みながら訪れる客人を待ちわびる。 「放しません。貴女は僕のもの、貴女の魂は僕のものです……肉体は欲しません、いずれ死がそれを奪いに来るでしょうから。」 ーー「我が姉アントニア」より 【目次】 フアン・キント 三賢王の礼拝 恐怖 夢の悲劇 ベアトリス 頭目 聖エレクトゥスのミサ 仮面の王 我が姉アントニア 神秘について 真夜中に 我が曾祖父 ロサリート 夢のコメディア ミロン・デ・ラ・アルノーヤ 手本 聖夜 フアン・キント 三賢王の礼拝 恐怖 夢の悲劇 ベアトリス 頭目 聖エレクトゥスのミサ 仮面の王 我が姉アントニア 神秘について 真夜中に 我が曾祖父 ロサリート 夢のコメディア ミロン・デ・ラ・アルノーヤ 手本 聖夜
戦後の合作隆盛期、娯楽小説の大家・山田風太郎参加作品集 合作探偵小説8作品+座談会2本を収録 荊木歓喜、神津恭介、明智小五郎ーー名探偵続々登場! 「白薔薇殺人事件」 香山滋/島田一男/山田風太郎/楠田匡介/岩田賛/高木彬光 「怪盗七面相」 島田一男/香住春吾/三橋一夫/高木彬光/武田武彦/島久平/山田風太郎 「十三の階段」 山田風太郎/島田一男/岡田鯱彦/高木彬光 「生きている影」 角田喜久雄/山田風太郎/大河内常平 「悪霊物語」 江戸川乱歩/角田喜久雄/山田風太郎 「寝台物語」 山田風太郎/摂津茂和/柴田錬三郎 「夜の皇太子」 山田風太郎/武田武彦/香住春吾/山村正夫/香山滋/大河内常平/高木彬光 「ノイローゼ」 山田風太郎/島田一男 【資料篇】 「座談会・探偵作家探偵小説を截る」 山田風太郎/水谷準/香山滋/大坪砂男/島田一男 「座談会・犯罪を語る」 山田風太郎/高木彬光/江戸川乱歩 編者解説ー日下三蔵 執筆者プロフィール
天使像が持つ木製のトランペットを吹き鳴らしたら、いったい何が起こるのか。幽霊を探索に深夜の教会に忍び込んだ2人の少年の冒険を描く「トランペット」。ある暑い夏の日、ロンドンの喫茶店で出会った中年男がべらべらと語り続ける同居女性の失踪話に薄気味悪さがにじむ「失踪」。銀行を馘になった若者が大金持ちの伯父御用達デパートの売場巡りに乗り出す「お好み三昧──風流小景」。エリザベス一世の時代に生まれ、350年の歳月を生きてきた老女の誕生日に、田舎のお屋敷に招かれた少女が受けた意外な提案とは……「アリスの代母さま」ほか全7篇を収録。 老人と幼い子供のみが垣間見る生と死の秘密、月下の幻想、辛辣なユーモアと軽妙なウィット。詩人ならではの繊細な描写に仄かな毒と戦慄がひそむ短篇の名手デ・ラ・メアの傑作を清新な新訳で贈る。挿絵=エドワード・ゴーリー。 失踪 トランペット 豚 ミス・ミラー お好み三昧ーー風流小景 アリスの代母さま 姫君 訳者あとがき
受難(パシヨン)を越えて、求めよ、自由をーー。 『熱源』で直木賞を受賞した著者による、新たな到達点! 禁教下における“最後の日本人司祭”となった小西マンショの人生を軸に、異文化同士の出会いと摩擦、争いの中での“希望”を描いた圧巻の歴史小説。 キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。キリシタンへの迫害から逃れてきた、小西家の遺臣らの世話になりながら成長していく彦七だったが、彼には小西家再興の重圧がのしかかっていく。キリスト教が禁じられ、信徒たちの不安が高まるなか、彦七はある重大な決断を下すのだが……。 “受難の時代”を生きる者たちの魂の叫びが刻まれた、著者渾身の長編小説。 ◎目次 序章 主の孫 第一章 天国の門 第二章 出日本 第三章 求めよ 第四章 走る群雲 第五章 受難(パシヨン) 終章 世の終わりまで
ベルギーの幻想世界が生み出したタイムトラベルSF。 鉄鋼卸売業者ギュスターヴ・ディウジュは、20年ぶりに再会した旧友からひとりの英国人を紹介される。《過去に働きかけ、起こった事実を変える》研究にいそしむ彼ハーヴィーの手になる装置によって、ディウジュは100年以上前の過去をーーナポレオンが「勝利」したワーテルローの戦場を目撃するが…… 古典的幻想文学・SF論「妖精物語からSFへ」でロジェ・カイヨワが言及し、日本では名のみ知られていたタイムトラベルSFの名品、待望の邦訳なる。
警察官による暴力や淫らな行為ー警視庁内で非違行為が相次ぐ。常時ではあり得ない不祥事の原因とは?事態の悪化をおそれた警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・富野輝彦は旧知のお祓い師・鬼龍光一を呼び出す。その結果、警視庁を守る結界が破られており、このままでは警察組織は崩壊するという。一方、富野は小松川署で傷害事件を起こした少年の送検に立ち会い、半グレ集団による少女売春の情報を掴む。一見無関係なふたつの出来事は、やがて奇妙に絡み合う…。
「彼女は実在してる。存在が不確かなだけで、ずっと僕の傍にいるんだ」 大学生の菊理現(くくり・うつつ)が思い出のダイスに触れた途端、長い黒髪に白いワンピースの美しい女性が見えるようになった。 現にしか見えない彼女はしかし、ずば抜けた推理力を持つ名探偵。 藍の花を握りしめて死んだ女性、宗教施設で血を流す大きな眼球のオブジェ。 二人に降りかかるすべての謎は解けている。 あとは、言葉を持たない「不実在探偵の推理」を推理するだけ。 水平思考を巡らせて、「はい」か「いいえ」の答えで真実にたどり着け。 ★絶賛の声、続々!★ こんな手があったか!水平思考ゲームとミステリを融合させる見事な魔法。 ーー我孫子武丸 謎解きはついに超シンプルかつ至高の領域へ達する!イエスorノー? ーー今村昌弘 この設定を「探偵」の形式(フォーマット)に落とし込むなんて……どうかしてます(誉め言葉) ーー井上真偽 とうとう名探偵が消えた。確かに名探偵は推理さえできれば、どんな形でもOK。しかしここまでやるとは。 ーー似鳥鶏 謎を解く思考回路を体験する、これは参加したくなるミステリーだ。 ーー友野詳 水平思考×名探偵、もうこの設定だけで勝ちです。 ーー織守きょうや 不可思議なのに論理的。AIとの対話を彷彿とさせる、現代ミステリの最先端! ーー秋口ぎぐる 名探偵の可能性をどこまで広げられるか、という問いの一つの答えである。不実在であるからこそ、この名探偵は遍在する。 ーー斜線堂有紀 不実在でありながら圧倒的な存在感を放つ探偵に、あなたはきっと魅了される。 ーー五十嵐律人
ミステリー界の最前線がわかる、日本推理作家協会公式年鑑。2022年に発表された短編ミステリーのなかから、プロの目で選び抜かれた珠玉の7作。第76回日本推理作家協会賞短編部門受賞作、西澤保彦「異分子の彼女」も収録!
両親の死の真相を探るため、引きこもり生活を脱し警察官を志した19歳の沖野修也。 警察学校在学中、ある能力を使って二件の未解決事件を解決に導いたが、推理遊び扱いされ組織からは嫌悪の目を向けられることになってしまう。 そうした人々の目は皆、暗がりの中で身構える猫のように赤く光って見える。それこそが、沖野の持つ「特質」だった。 ある日、単独行動の挙句、公安の捜査を邪魔したことで、沖野は副所長室に呼び出され聞きなれない部署への異動を命じられる。 「内閣府国際平和協力本部事務局分室 国際交流課二係」。 そこは人知れず、諜報、防諜を行う、スパイ組織だったーー。 日本を守る暗闘に巻き込まれた沖野は、闇に光る赤い目の数々と対峙していくことになるのだが……。 スパイ小説のシンギュラリティとなる記念碑的作品、ついに刊行。
自分だけの孤独を大切にしてください。 中学校のクラスに馴染めず、現実から妄想の世界に逃げがちな依子。彼女が頼れるのは 父と、幼い頃から一緒に育ってきた愛犬のトト、そしてたった一人の友人・さきだけだった。しかしクラス替えからしばらくして、さきは依子を避けるようになる。 どうして? なんで? 今までのようにさきと仲良くしたい依子だったが、新しい友達と一緒にいるさきは、話し掛けてもすぐに離れていってしまう。 いっぽう、クラスメイトの伊藤さんは、クラスでいちばん目立つグループに所属しながらも、誰にでも分け隔てなく接してくれる女の子。優等生タイプの子にも、オタクっぽい子にも、そして依子にも話し掛けてくれる。 そんな彼女を好ましく思う依子だったが、伊藤さんと同じグループのリーダー・濱中さんに苦手意識を抱いているため、自分から話し掛けることはできなかった。 その後、事態は伊藤さんのけがを契機に思わぬ展開を見せる。 【編集担当からのおすすめ情報】 本作の主要人物である依子は、人とコミュニケーションを取ることが不得意で、クラスでも浮いた存在です。話せる友人がいないこと、孤独でいること……。一見すると彼女には、「居場所」がないように思えるかもしれません。 しかしこの世は、不安なとき、孤独を感じたときに手を差し伸べてくれる人がいることだけが、必ずしも幸せとは限りません。孤独であったからこそ、掴めることもきっとあるはずです。 全6篇からなる連作短篇小説、ぜひご一読いただけたらと思います。そして「自分の、自分だけの孤独を大切にしてください」。
ジーンズに懸けた人々の百年にわたる物語。 鶴来恭蔵は、故郷の岡山県児島から浅草に来ていた。車夫の政次のアドバイスにより、憧れの竹久夢二に奇跡的に会うことができた。しかし翌日の大正十二年九月一日、関東大震災に遭遇。親を亡くした娘りょう、政次とでしばらく避難生活をしていた。りょうと児島に戻るという時に、政次からアメリカの救援物資にあったズボンを受け取る。生まれつき色覚に異常があった恭蔵だがズボンの藍色に魅せられ、国産ジーンズを作りたいと考えるようになる。 時代は進み、日本は太平洋戦争に突入し、鶴来家もその大きな波に巻き込まれた。 戦後、世の中が激動する中で鶴来の会社を支えたのは、りょうだった。そして、彼女も日本でジーンズを作るという恭蔵の夢を忘れてはいなかった。ある日、鶴来の家をひとりの男が訪ねてきた。恭蔵の思いは、途切れることなく繋がっていたーー。
明日が来るかもわからない日々を、生きていく。内戦が泥沼化していくミャンマー。雑誌記者として訪れた日本人・國分は、国の未来を担う若者が、終わらない戦いに身を投じている現状を目にする。一人の“外国人”としてできることは何かを考えさせられる、ノンフィクション小説。