2023年6月発売
不登校だったクラスメイト・蔵本隼都に突然余命わずかだと告げられた学級委員の山瀬萌々果。一見悩みもなく、友達からも好かれている印象の萌々果。けれど実は、両親からの圧力で家にも居場所がなく、学校でも無理していい子の仮面をかぶり息苦しい毎日を過ごしていた。そのせいか隼都に余命を告げられても「このまま死んでもいい」と思っていた。でも、謎めいた彼からの課題をこなしていくうちに、少しずつ彼女のなかでなにか変わっていき…。もっと彼のことを知りたい、生きたいーーそう願うようになっていた。でも無常にも三カ月後のその日が訪れて…。想い悩む少女と秘密を抱えた少年の青春ラブストーリー。
記憶の芸術家、ノーベル文学賞受賞後の第一作。 小さな偶然と大きな奇跡──忘却と想起を詰め込んだ、日本語版オリジナル編集の小説集。 眠れる記憶 ──僕は、街角でしか人が真に出会うことはあり得ないと長らく信じていた。 老齢を迎えた語り手が、六十年代を生きた自らの激動の青年期を振り返りながら、記憶の奥底に眠っていた女性たちとの出逢い、別れ、そして再会の思い出を想起する。ノーベル文学賞受賞後初の作品となる表題作。 隠顕インク ──この人生には空白がいくつかある。 パリから失踪した女性を捜し出すという任務を授かった主人公は、彼女が住んでいたと思われるアパルトマンで一冊の手帳を発見する。三十年後、自ら調査を再開して目撃者を追跡するのだが……。 眠れる記憶 隠顕インク
名探偵バーンズ × 吸血鬼伝説。 不可能犯罪ミステリのファンが望むものが、この1冊にみっしり詰まっている。 ーー作家 有栖川有栖 森深い田舎の小さな村・クレヴァレイはパニックに陥っていた。夜ごと目撃される謎のマントの怪人と、幽霊騒動。甦ったと噂される女の棺を検めるために納骨堂が暴かれた時、恐慌は頂点に達した。一年半前に死んだはずの女の亡骸は、最近まで生きていたように瑞々しかったのだ。 一方、ロンドンでは名探偵オーウェン・バーンズのもとに、ある老人の変死事件が持ち込まれる。彼は五年前の迷宮入り事件に関わっており、口封じに殺された可能性があるというのだ。それは、降霊術に熱中していた資産家の老女が密室で殺害された怪事件だった。 ふたつの事件はやがてひとりの男、クレヴァレイの住民たちから吸血鬼だと噂されるロシアからやって来た伯爵に収束しーー因習の村の謎めいた犯罪を美学探偵が解き明かす、シリーズ邦訳第5作! 1 結んだ細紐 2 マイケル・ドノヴァン神父 3 ヴァイオレット・ストラリング談義 4 死者たちの王国で 5 ユーカリの匂い 6 割れたボトル 7 助けを呼ぶ声 8 雨の晩 9 ミス・ジェイン・クリフ 10 鏡 11 二つの銀の弾丸 12 モード・シーモア 13 森のロマンス 14 テレンス・ヒル 15 呪われた池 16 嵐の夜 17 ラドヴィック伯爵 18 廊下の人影 19 糸車の話 20 大失態 21 吸血鬼 22 赤いスカーフ 23 旧知 24 ペテン師 25 カラスのいる麦畑 26 ドラキュラ談義再び 27 吸血鬼ハンター 28 ナロードニア・ヴォリア 29 ラドヴィックの釈明 30 月明かりの池 31 大いなるイワン 32 去り行くアン 33 オーウェンのひらめき 34 馬鹿騒ぎの一夜 35 ヴァイオレット・ストラリング殺し 36 消えたエレナ 37 布切れ 38 群衆の怒り 39 アキレスの冒険 40 サプライズゲスト 41 絞首台の影 42 女の直感 エピローグ
一発逆転を狙い闇バイトに走る男を襲うワナとは。日常の不穏さを描く作品集。空き巣に入った家で目を覚ました男。仲間は金と共に姿を消し、住人には顔を見られてしまった! いまや足枷となったその家で男は、不遇な過去を振り払うために包丁を握りーーさえない男の煩悶をリアルに描く表題作の他、訳も分からず妻に去られた夫や、海に消えた父を待つ娘など、様々な「隣の人生」を鋭く浮き彫りにする。
高瀬隼子氏推薦! 痴漢加害と介護のリアルを抉り出すブルドーザー小説集! 保険営業所に勤める藤原は、通勤電車で見かける少女に日々「元気」をもらっていた。ある日、同じ少女を盗撮する男との奇妙な交流が始まりーー。痴漢加害者の心理を容赦なく晒す表題作と、介護現場の暴力を克明に刻む新潮新人賞受賞作を収録。愚かさから目を背けたいのに一文字ごとに飲み込まれる、弩級の小説体験!
最良の離婚、請け負います! 家族はもっと、いろんな形があっていい。新時代のリーガル・エンタメ。夫のモラハラと浮気に耐えられなくなり家を飛び出した聡美が北鎌倉で出会ったのは、縁切寺の娘で弁護士の松岡紬。勢い込んで離婚相談をするも、思いがけないことを言われ……。上手に縁を切る方法、教えます。温かなヒューマンドラマにして、前を向く元気をもらえる、痛快リーガル小説。
十九年前、私たちは浮くようにそこに居た。実体験を元に描く慈しみの物語。彼らが女を商品のようにしか扱えないのと同じで、私は彼らを子供を産ませる男か身体を買う男に峻別することしかできなかったーー。十九年前の、デリヘル開業前夜の彼らとの記憶に導かれ、私はかつて暮らした歓楽街へ赴く。酷い匂いの青春はやがて、もうすぐ子供が産めなくなる私の、未来への祈りとなる。新たな代表作!
優しくしてくれる夫。でも、今夜、あなたは私を殺そうとしているでしょう? 15歳で結婚し、16歳で亡くなったと、わずかな記録しかイタリア史に残されていない主人公ルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチ。『ハムネット』でシェイクスピアの妻を鮮やかに蘇らせた著者が、政略結婚の末に早世した少女の「生」を力強く羽ばたかせる。スリリングな展開と大胆なラストで、イギリス文学史に残る傑作長篇小説。
第169回芥川賞候補作に選ばれた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。
志献官たちの心の内に秘められた、記憶の断片を描くオムニバスノベル 「君には、志献官になる力がある」 デッドマターから救われ、そう告げられる朔。 その言葉を信じ、志献官になることを決意するが……。 「結合男子」の志献官たちの過去に迫るオムニバスノベル集。 単行本には新規書き下ろし小説1作品に加え、イラスト担当のスオウ氏による描き下ろしカバーイラスト&各話挿絵を掲載。 著者:麻日 珱/永川成基 イラスト:スオウ
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われるーー。 コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのはーー。 哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。 プロローグ 第一章 “いつも“が消える 第二章 答えを知りたい 第三章 夏を迎え撃つ 第四章 星をつかまえる 第五章 近くて遠い 最終章 あなたに届け エピローグ
第1話「あの子はついてない」 母と共に庭付きの一軒家へ引っ越してきた中学生の茜里。妹の面倒を見ながら、新しい学校に馴染んでゆく茜里だが、家の中で奇妙なことが起こり始める。知らない髪の毛が落ちている。TVが勝手に消える。花壇に顔の形の染みが出来る。ささやかだが気になる出来事の連続に戸惑う茜里。ある夜カーテンを開けると、庭に見知らぬ男性の姿がーー。 第2話「その家には何もない」 不動産仲介会社に勤める朝見は、大学の先輩でフリーライターの高田に「曰わく付きの物件」を紹介して欲しいと頼まれる。次々に貸借人が入れ替わる家の話をしたところ、「内覧したい」という高田に押し切られて現地へ向かうことに。そこは最近まで中学生の娘と母親が暮らしていた庭付きの一軒家だった。 第3話「そこにはいない」 その家にはなぜ人が居つかないのか? 新たな住人をきっかけに、過去の「ある事件」が浮かび上がる。 第1話「あの子はついてない」 第2話「その家には何もない」 第3話「そこにはいない」
幸せを求める宿屋の下働きでΩのランティ。ある時、同僚が見窄らしい男を助けたら、後に騎士だとわかり玉の輿にのり、次は自分が騎士に見初められるのだと意気込む。 ある日、身なりは質素だが筋骨隆々な美丈夫・ガォルグを、身分を隠した騎士だと勘違いし、猛アプローチする。しかし結婚後にガォルグが正真正銘、木こりだと判明。だが前向きなランティは、「Ωでも幸せになれる」ことを証明するため、ガォルグと力を合わせて商売を始める。頑張り屋なランティに惹かれるガォルグだったが、何やら秘密があるようで…? ーーこれは努力家で真面目なΩが、勘違いから木こりと結婚して、幸せになるまでの物語。
突如として人類の敵である怪人が出現してから約一年。迷い込んだ研究施設から戦闘スーツを盗み出した穂村克己は、“黒騎士”として暗躍していた。自身を襲ってくる怪人を倒したり、時には怪人に襲われている人を助けたり。しかし所詮は盗んだ戦闘スーツで自由を謳歌し、怪人との戦闘で街を破壊する犯罪者。『正義の味方“ジャスティスクルセイダー”に敗れ、死を迎える』それが克己の思い描く黒騎士の最期。だったのだが……なぜかジャスティスクルセイダーに勧誘されることに!? 実は世間では黒騎士はダークヒーローとして人気者だった上に、衝撃の事実が明らかに!? 果たして黒騎士の運命はーー。自身をワルモノだと思い込む勘違い系ダークヒーローと、その熱狂的ファンによるドタバタコメディ、開幕!
無事ケットルの救出に成功した修太郎たち。楽園レジウリアでひと時の安息を得るなか、目覚めたケットルがパニックを起こし無作為に攻撃を始めた。彼女が再び意識を失う直前、修太郎に何かを手渡す。そこには“天使”がプレイヤーを虐殺する映像が収められていた。倒すべき敵を知り、修太郎がさらなる力を得るため天の塔へと挑むなか、目的を告げずエルロードが消えた。他の魔王からの不審も募り、ついにガララスが動き出す。一方、“紋章”ギルドを離れたワタルの前に、因縁のPKがあらわれてーー。デスゲーム世界に囚われた、ひとりの少年と仲間たちの成長冒険譚、信念の第6弾!
これが戦争だ。 今、世界で何が起きているのか。 数多の文学賞を受賞し、多くの小説家に影響を及ぼす日本文学界の異端児が戦時下の極限状況を活写する。 太平洋戦争。 寒村で起きた悲喜劇。 靜と綾。上槇ノ原で生まれた双子の姉妹には不思議な力が宿っていた。 天才的な頭脳と統率力を持つ靜。絶対に死なない綾。 そんな二人が成長したとき、太平洋戦争が勃発する。 食料が枯渇した村は強烈な飢えに襲われ、打開策として靜がとった行動は、長年対立してきた下槇ノ原への襲撃だった。 戦火の中、二人が人々を導く先は天国か地獄かーー。
いつか、笑って振り返られる時がくる 将来を嘱望された、愛する息子たちを突然襲った不運。 膨大な日記、メール、手紙を紐解き、真実を追い求めた母が綴った記録。 今の苦しみは、五年後の心のしなやかな強さとなって 今の怒りは、一年後にもっともっと前へ進むための追い風になって 確かに僕の中に息づいて、今も守り導いてくれるんだ だから、今日も自分の魂に祈る どうか、どうか どんな時でも、自分を見失わないように 今、心をかきむしる激しい嵐の中でも、堂々と飛び込めますように 今の全てに、感謝できる人間でい続けられますように どうか、どうか 今の苦しみが、いつか誰かを支える力になれますように (「風の記憶」より)
「ひゃっほー!!! 闇の炎様ー!!! 俺を抱いてくれー!!!」 世界中にはさまざまな色を持った闇の炎が存在している ヤミノ・ゴーマドは幼馴染の聖女が勇者と付き合っていることを知って絶望し、その中のひとつ、紫の闇の炎にその身を投げ死んだ……。 と、思っていたが、目が覚めると足元には頬がぷにっとしている裸の幼女がいた。 「パパ。おはよう」 紫の闇の炎との間にできた娘だと言う幼女にアメリアと名付け、彼の父親としての暮らしが始まるのだった。 さらに紫の闇の炎の化身でありアメリアの母である美しいヴィオレットの力を得たヤミノは毎日を幸せに過ごしながら家族の絆で様々な苦難を乗り越え成長していく。 そして世界を救うため、世界中の闇の炎たちと出会い……、つまりお嫁に迎えて子を持つことになるヤミノの壮大で心温まる冒険ファンタジー!
ロデリック・アレン警部をフューチャーしたミステリーシリーズの第14作。前半はアレン警部の妻トロイの視点でアンクレトン館の様子と事件の推移が描かれる。トロイは、館主ヘンリー卿の肖像画を描くために、館に滞在しているが、その間にさまざまな悪ふざけが起こり、それは肖像画にも及ぶ。激怒したヘンリー卿は、いたずら好きの孫娘の仕業と思い込み、彼の遺言に重大な変化が起こる。ところが、その後、ヘンリー卿は自室で死体となって発見される。ヘンリー卿の愛猫が事件解決の重要な手がかりになっているところなど、小粒のネタをピリッと効かせていて小気味よい。ヘンリー卿の殺害を企てた犯人の計画には、運命にもてあそばれるような箇所がいくつもあるが、そういった趣向は、シェークスピアの悲劇によく見られるもので、本作は「現代を舞台にした、シェークスピアの悲劇」とも言えるかもしれない。マーシュのベストとの呼び声も高い傑作! 幕が下りて/訳者あとがき
姉さんはブラックホール、 姉さんは倒れてくる木、 姉さんは海。 彼女がいなかったら、わたしは一人の人間ではない。 マン・ブッカー賞史上最年少候補となり、 シャーリイ・ジャクスンとスティーヴン・キングの 申し子と称賛された新鋭による、 一篇の詩のように忘れがたい物語 絵本作家の母に育てられた、9月生まれのセプテンバーと、翌年7月生まれのジュライ。内気で意志の弱いジュライは、貪欲で残忍な姉の支配下に置かれているが、二人の絆は他の誰も必要としないほど強いものだった。彼女たちは春先に学校で起きたある事件をきっかけに、オックスフォードから亡父が生まれ育った〈セトルハウス〉へと引っ越してきたが、それを機にジュライの中には奇妙な違和感が芽生える……最年少でブッカー賞候補となった俊英による、一編の詩のように忘れがたい物語。