制作・出演 : シューマン
最高の音で楽しむために!
シューマンの協奏曲は早くもモルク2度目の録音となる。ヤンソンスとはドヴォルザークの協奏曲に続く共演だ。はつらつとして輝かしいなかにも、堂々として余裕すら感じさせる演奏を繰り広げている。
響きが切り立ってピアニスティックに情動を沸き立たせる形ではない。音色のきらめきを抑え、キメを、ふ、と抜いて音との距離を作ることで想いの行方を聴き手に預け、浪漫世界にじっくり誘い込む。あえて初版を使うなど、語り部ポリーニを印象づける練達の熟演。
最充実期のクーベリックが手兵バイエルン放送響と残したシューマン。ゆったりとしたテンポで進められるが、音楽が剛毅で折り目正しく、まったく弛緩しない。まさにドイツ音楽というべき演奏。オーケストラの渋めの音色も作品によく合っている。
クーベリックにとってのベスト・コンビネーションは、晩年に再会したチェコ・フィルでもなく、ミュンヘンのこのオケ以外にないと今さらのように確信される。古風で少々さびれた典雅さが古いドイツの空気感を表出させる、説得力あふれるシューマンは逸品。
これほど美しく自然に歌われた「詩人の恋」を聴いたことがあっただろうか。若々しい歌声と優しく寄り添うピアノがかもし出す情趣を何とたとえれば良いのだろう。詩人ハイネの言葉とシューマンの音楽が絶妙に調和したこの上ない歌唱として高く評価したい。★
クラリネットのメイエの秀逸な伴奏者として登場、プーランクでは自己のピアニスティックな本質を明らかにしてくれたル・サージュ。本作(96&2001年収録)のシューマン2枚組でも独自のピアニズムで気品と歌心があふれる独自の世界を構築。エスプリの極。
松本で我々の肺腑を突く見事なヴォツェックを演じた現代屈指のバリトン歌手ゲルネ。待望のシューマン歌曲集第3弾では、作曲家への深い共感が心を打つ。クララへの愛を歌い上げた「ミルテの花」からの数曲に聴ける慈しみには、胸が震えるほどの感動を覚える。★