1996年6月21日発売
ニューヨーク・フィルを自在に操ってキラキラと輝いていた時代のバーンスタインの記録の復活であり、内容価格共にお買い得の1枚。作曲家らしく分類整理の行き届いた気持ちの良い演奏で、それ故に発売当初は評価されなかったものの、今でも実に新鮮。
通称「スコッチ」と呼ばれる第3番だが、ここでのレニーの演奏はどちらかというと濃厚な古酒(むろん日本酒の)の味わい。感情過多傾向が強いので趣味は分かれそうだ。「イタリア」は切れのいいリズムが炸裂する大熱演。ただ当時のニューヨークpo.の木管は荒削り。
バーンスタインは、アメリカの音楽家からヨーロッパ公認の音楽家に近づくに従って音楽が肉体性を失い、どんどん作り物めいていった。「火の鳥」の荒っぽいダイナミズムの魅力に較べて、「春の祭典」は、え? なんで? という瞬間にしばしば戸惑わされる。
ローマ3部作のうち、「祭」と「噴水」は、T.トーマスの演奏。「松」はバーンスタインの演奏。華麗で色彩的なレスピーギのオーケストレーションに対するアプローチが聴き比べられて面白い。オケもそれぞれ好演だが、特に、詩的な「松」に魅了される。
(1)はバーンスタインがモスクワで、同曲の演奏を作曲家に賞賛されたのと同じ年の録音。すっきりとした進行の中に強い緊張感をはらんだ、引き締まった演奏だ。(2)は快活な両端楽章と、古典的な要素を巧妙に取り入れた中間楽章とが鮮やかな対比を成している。
昔のようにあけっぴろげに音楽を謳歌したいような、さりとて神秘や情念にもハマッてみたいような、バーンスタインのこの時期の演奏には、そうした傾向のものが目につく。曲のテンポや持ち味に関係なく、揺れる(悩める?)男心が現れているのが特徴。
軽快なドライヴ感が心地よい「オルガン」は、サン=サーンスの“旨味”を十分に引き出した名演。ほかに交響詩「死の舞踏」などを収録。いずれも60年代前半の録音が中心だが、今聴いてもゴージャスなフィラデルフィア・サウンドが楽しめる。
1,000円でオーマンディとフィラデルフィアの「ロマンティック」を楽しむ。考えようによっては、いや深く考えなくてもこれはお得だ。彼らはこの曲をこんな風に演奏していたんだ、と考えるだけでもよい。豪華絢爛なブルックナーだが、辻褄はあっている。
リリー・クラウス57歳の録音(65年)。タッチが多少どたばたしているけれど、最近の演奏家に見られる、“完璧なタッチに神経を使う演奏家の意識が見えてしまううっとうしさ”がない。だから、聴く方も余分なことを意識せずに率直に音楽が楽しめる。
中村紘子がショパン・コンクールで第4位に入賞した5年後、コンクール本選と同じ指揮者ロヴィツキと録音したのが(1)。この協奏曲、そして(2)のソロ曲とともに、中村の強靱なタッチがきわだち、このピアニストらしい華やかな演奏スタイルによるショパン。
80年と84年に録音された、2枚のアルバムからの抜粋盤。テクニック的には全盛期のホセ・ルイスの、奔放でダイナミックな演奏が楽しめる。先に発売された円熟期の演奏で聴き比べるのも面白い。いずれにしても、これぞギターの醍醐味にほかならない。