1999年発売
ギル・エヴァンス楽団、トニー・ウィリアムスのライフ・タイムなど多彩なキャリアを持つギタリストが初めてリーダーを務めた、本人いわく「これがファースト・アルバム」の78年作。派手さはないが一つ一つの音色に気を配っての丁寧なプレイが光る。
カウント・ベイシー楽団にも在籍したサックス奏者が80年に制作したアルバムの初のCD化。トミー・フラナガン(P)やジミー・コブ(DS)などの名手が脇を固め、ベテランらしい余裕と歌心あふれるプレイを展開。地味ながら、聴き応えは十分。★
アリンとバリー・ハリスの共演盤。いかにも白人らしいキメの細かいヴォーカルが独特の安堵感を与え、そこに絡み付くピアノも見事にフィットしている。この名演に耳を傾けていると思わず時間の経過も忘れる。ゆとりの中に豊饒な味わいを発見。
クインテットによる76年録音。まろやかな中音から切れのある高音までよく歌うソロを聴かせる(1)、軽快なテンポに乗せ、哀愁漂うフレーズが連続する(4)、高速ソロでまとめる(5)と、ノートの技が楽しめる。適度に品よく、リラックスしたアンサンブルも魅力。
ドロ・コーカーは数多いバップ・ピアニストの中でも地味な存在ではあるが、バド・パウエルの流れを汲む正統派。アート・ペッパー以外は前日録音の初リーダー作と同じ顔ぶれで、息の合ったサウンドを聴かせる。(3)でのドラム・ソロも本作のハイライト。
名前のとおり“ヴェニス流の解釈”とはこれだ! とばかりの過激な演奏を期待すると肩透かしを食う手堅い演奏。通奏低音がほとんど聴こえず響きたっぷりの不思議なバランス。87年結成のグループというが、ソリストのクレジットもなく、やはり不思議なCD。
キャロルばりのコスチュームに身を包み、各地で爆音を轟かせているギターウルフのメジャー第2弾は、彼らの十八番ともいえるラウドでスピード感あふれるロックンロールのオンパレード。クルマを運転しながら聴けば、アクセルに力が入るハズ。★
ワルターがその晩年に完成したステレオによる唯一のベートーヴェン交響曲全集の分売CD。2曲ともワルター2度目の録音。気品漂う美しい演奏で、しかもその底にはしたたかな精神力を窺うことができる。ことに「運命」での緊張の持続力は驚異的。
ワルターの演奏には常に清楚な精神性のようなものが宿っている。思い入れとか野心とかがなく、スッと耳に入ってくる。端正な響きと肩の力のぬけた表現で刻みこまれる晴朗にして健全なベートーヴェンである。「田園」の原点ともいうべき演奏だ。
晩年のワルターらしく、温かく余裕を持って進んで行くが、音楽そのものはそれほど老けた感じはなく、意外に若々しく瑞々しい。新リマスターの音は以前より細身で堅くなっているが、がらりと印象を変えるほどではない。オリジナル・ジャケット。
新しい復刻技術を使った再発盤。音は随分変わった。弦はきつめだが管は輝きを増した。残響部分もすっきりした。全般に音の輪郭が際立ち、ダイナミックレンジが広がった。その結果ワルターへの印象が変わってしまった。意外にめりはりがきいて男性的だ。