著者 : 中村彰彦
戦国の世、尾張の国に生まれた堀尾吉晴は、秀吉と出会い、頭角を現し、幾多の戦いに参加。信長からも「わが者ぞ」と呼ばれる存在となる。秀吉の軍師・竹中半兵衛、尼子家再興を目指す山中鹿之介らとの出会いを通して「治国平天下」を志す武人となった吉晴は、鳥取城、備中高松城などの戦いで、優れた交渉人としての活躍も見せる。歴史に埋もれた名将を描いた超大作!
信長の死後、覇権は秀吉が握ることとなった。秀吉麾下の堀尾吉晴は、ともに戦ってきた部将や、肉親の死に直面しながらも激動の時代を生きぬく。家康の天下を迎え、出雲・隠岐二十四万石に移封された吉晴は、宍道湖のほとりに松江城を築く。それは長く続いた戦国の世の終焉を意味するものだった…。今こそその人生に学びたい屈指の英傑の物語、ここに完結!
明治五年初冬、ざんぎり頭で妻を伴い、浅草蔵前の裏長屋に身を寄せた男がいた。新選組最後の隊長・相馬主殿が、流刑から赦免されてやってきたのだ。しかし文明開化の東京には、相馬に復讐を企む男が待っていたー。(表題作)その他、龍馬を斬ったとされる今井信郎のその後と暗殺の謎に迫る「近江屋に来た男」等、歴史の闇に埋もれた男たちに光を当てた珠玉の七編。
武田家滅亡前夜、甲州をかろうじて逃れた美貌の姫君は、凛然と生きた。信玄の五女として生まれた松姫は、若き日に織田信忠と婚約。長じてはその織田軍に追われて八王子へ移り、将軍家の若君の出産に立ち会う。その数奇な運命を描いた傑作歴史小説。
新選組三番隊長・斎藤一ー鳥羽伏見の敗戦後、会津藩に身を投じ、新政府軍と闘い抜いた彼は、明治になり、藤田五郎と名を改める。政府に抵抗を続ける旧会津藩士・高津仲三郎を助けるべくその跡を追い、東京警視庁に奉職しつつ、さらに西南戦争にまで参加した彼が見た「明治」という時代とは。幕末有数の剣士といわれ、時代の変化にも己の節を曲げずに強く生き抜いた男の軌跡を追う、本格歴史長編小説。
奇策で人心を掴み、壊滅状態の会津藩財政を、数々の殖産興業で立て直した田中玄宰をはじめ、名家ゆえに責任を取ることになった悲劇、才気ゆえ主君から遠ざけられた者など、戦国期から幕末にかけて、幕藩体制が確立する過程で、家中の舵取りを任されることになった六人の家老たちの人生を記した歴史小説短篇集。
朝敵とされた会津を救うため、秋月悌次郎は左遷の地より復帰、戊辰戦争の苦難が始まった…。後年、ラフカディオ・ハーンに「神のような人」と評されたサムライの物語。全一二〇〇枚、完結。新田次郎文学賞受賞作。
幕末の会津藩に、「日本一の学生」と呼ばれたサムライがいた。公用方として京で活躍する秋月悌次郎は、薩摩と結び長州排除に成功するも、直後、謎の左遷に遭う…。激動の時代を誠実に生きた文官を描く歴史長篇。新田次郎文学賞受賞作。
徳川安泰の基礎を固めた家光の陰には、機知に富んだひとりの老中がいた。松平伊豆守信綱、通称「知恵伊豆」は、徳川家に持ち込まれた無理難題を次々に解決する。島原の乱の鎮圧を始め、由井正雪謀叛を未然に防ぎ、川越藩主として野火止用水を完成させるなど、機知と行動力をいかんなく発揮した男の「逆転の発想」。
桶狭間の戦いで今川義元の首級を挙げた毛利新介と服部小平太。二人は信長に武功を認められ昇進を果たすが、その後、新介は織田家の家督を相続した信忠に、小平太は豊臣秀吉に仕え、別々の道を歩むことになった。二人の武将を待ち受ける数奇な運命と信長、秀吉の天下人への道のりを克明に辿った戦国歴史長篇。
幕末から明治を駆け抜けた新選組の中には、志を貫いた者もいれば、目先の利に惑わされ変節した者もいた。近藤勇の狙撃者・富山弥兵衛、討幕派との全ての戦いに奮闘した寡黙な巨漢・島田魁、謎の切腹を遂げた最後の新選組隊長・相馬主殿など、新選組隊士の光と影を新しい切り口で描いたアンソロジー。山内昌之氏との対談も収録。
会津藩滅亡に立ち会い、亡国の遺臣となった男は、逆風の時代をどう生きたのか。会津藩士・秋月悌次郎。そのサムライを、ラフカディオ・ハーンは「神のような人」と評した。朝敵となった会津のため、悌次郎は奔走する…。誠実に生きた文官の物語、完結。
新選組の伍長として幕末の動乱を戦い抜いた寡黙な巨漢・島田魁は、討幕派との全ての戦いに奔走する。ときに内部の軋轢に巻き込まれながらも、新選組を心から慈しみ、忠義を尽くし続けた男の苦悩と剣術にかける情熱、戦友・永倉新八との友情など波瀾万丈の生涯を史実に沿いながらありありと再現した長編剣豪小説。
江戸時代初期、二代将軍秀忠のご落胤として生まれた幸松は、信州高遠の保科家を継ぐ。やがて異母兄である三代将軍家光に引き立てられ、幕閣に於いて重きをなすに至る。会津へ転封となった後も、名利を求めず、傲ることなく、「足るを知る」こそ君主の道とした清しい生涯を、時に熱く、時に冷静に描く著者渾身の書。
千葉家四天王の一人と謳われた北辰一刀流の手練、森要蔵は飯野藩剣術師範として保科正益に仕えた。慶応三年、将軍徳川慶喜は大政を奉還、朝廷は諸侯に上京を命ずる。一方、慶喜から江戸退去を命じられた会津藩主・松平容保は全藩士を従え帰国、新政府との対決は必至であった。正益の腹違いの姉、照姫の身を案じた森は、朝命に応じ上洛した主君の立場を慮り、脱藩して会津へ向う…直木賞作家による時代小説集。
かれらも祖国のために戦ったのだからー。大正初め、徳島のドイツ人俘虜収容所では例のない寛容な処遇がなされた。日本人将兵・市民と俘虜との交歓を実現し、真のサムライと讃えられた会津人・松江豊寿。なぜ彼は陸軍の上層部に逆らっても信念を貫いたのか。国境を越える友愛を描いた直木賞受賞作。ほか二篇。
夫の修理と死に別れ寡婦となり、鶴ヶ城へ行けぬまま官軍兵士の暴虐にさらされた神保雪子を描く表題作。若松郊外涙橋の戦いに散った絶世の美女・中野竹子を描く『涙橋まで』。女だてらに銃を持ち籠城戦で戦った山本八重を描く『残す月影』。一八六八年の会津を舞台に織りなされる各々の人間模様。男と女の滅びの美を丹念な史実の発掘から見事に描きだす珠玉の六編。
江戸幕藩体制の危機管理はいかにしてなされたか。一揆、大火災、反乱、殺人…、数々の危機に、深慮と英断をもって対処した名君、会津藩主保科正之の実像に迫る、直木賞作家の傑作時代小説。