著者 : 中路啓太
勝頼はなぜ圧倒的不利な戦いに挑んだのか? 果たして史上稀なる“愚将”だったのか? 令和の新解釈で再現する長篠・設楽原の戦い。武田軍敗北の知られざる真実とはーー。 愚将・勝頼による旧式の騎馬戦術 対 天才・信長による新式の鉄砲戦術 戦国史上最も有名な合戦のひとつ“長篠・設楽原の戦い”から、伝説と虚飾を廃し、ドキュメンタリー・タッチで、この戦いを問い直す。 合戦のリアルと、暗愚と嗤われた勝頼の真の素顔を描き出す渾身の歴史長篇
下鴨神社の森で暮らす漂泊の巫女、桔梗。京の権力者たちに請われるまま霊視した平将門の姿に彼女は心惹かれた。朝廷が「鬼」と恐れるような者でなく、善政を志す溌剌とした偉丈夫だったから。運命の悪戯で桔梗は坂東へ。やがて将門と出会い、その寵愛を一心に受ける。しかし満たされた時間は長くは続かない。桔梗は霊の目を通して気付く。側近の興世王が纏う不穏な影に将門が呑み込まれつつあることに……。
「エレアル」-パラオの言葉で、「明日」「未来」の意味。太平洋戦争さなかの昭和17年。日本統治下のパラオ・コロール島。小学校教員である宮口恒昭の長男・智也はある事件をきっかけに、パラオ人少年のシゲルと親友になった。だが、父の転勤で智也も隣島へ転校することに。二年が過ぎ偶然再会したふたりは喜び合うが、戦争の暗い影は、こののどかな南の島々にも迫っていたー。時は流れ、昭和63年末。パラオ共和国独立準備のため訪日したシゲルは、天皇の容体悪化が報じられる中、戦後すぐ消息が途絶えた宮口家の人々を捜しはじめるのだが…。日本人とパラオ人の歴史と心の交流、戦争の悲惨さ、そして日本人の未来を問う、感動長篇。
令和時代だからこそ書けた「昭和史小説」の決定版が誕生! 天皇とは、この国にとっていかなる存在か。 国家社会の融合体の中心である天皇とは、何と窮屈で、脆く、孤独なものかーー。 昭和天皇が、自ら政治的決定を下したのは「三度」。 二・二六事件の青年将校たちは、天皇のために行動している、との信念のもと蹶起し、鈴木貫太郎らを襲撃した。 ある憲兵は、蹶起軍こそが、反逆者だと憤った。 昭和天皇が、どのような思いを持っているのかを、国民それぞれが夢想し、それを大義名分としてぶつかり合い、昭和という「激動の時代」が作り上げられた。 『ゴー・ホーム・クイックリー』や『ミネルヴァとマルス 昭和の妖怪・岸信介』で近現代史を描き、永田町でも注目される中路啓太による「昭和天皇」にまつわる五つの短篇。 国民の想いに戸惑い、悩む、生身の天皇の姿!
激動の昭和で、常に権力の中枢にいた稀代の政治家・岸信介が目指したものとは? これからの日本を語り合うための、歴史ドキュメント小説! 昭和8年(1933)。商工省・臨時産業合理局事務官の岸信介は、組織の枠を超えて活躍していた。 人当たりがよく、話もうまい。上司にも女にも気に入られる岸は、末は次官や大臣にもなるのではないか、と目されていた。 国家運営の根幹は経済であり、列強と対峙していくには武力ではなく経済力が必要だと説く岸は、関東軍が支配する満洲に乗り込み産業発展に邁進、日産コンツェルンの満洲移転という奇手の実現を図る。 が、戦争は泥沼化してゆきーー。 きな臭い時代にこそ、文官の役割は重大だ。 マルス(武の神)ではなく、ミネルヴァ(文の神)こそが先頭に立たねばならない。 上巻目次 第一章 男の嫉妬 第二章 真っ白なカンヴァス 第三章 渡満 第四章 大事には金がかかる 第五章 矛盾の大陸 第六章 官僚から政治家へ 第七章 政変、また政変 第八章 情け無用の闘い 第九章 リターン・マッチ 第十章 フラッシュとモーニング 第十一章 最後通牒 第十二章 戦争指導 第十三章 喧嘩師の血 第十四章 巣鴨プリズン
巣鴨プリズンから生還し、政界に蘇った男の激闘ーー。 いまに連なる「昭和」に、何が起きたのか? 真の独立国家再建を目指した政治家・岸を通じて描く、渾身の歴史小説! A級戦犯容疑で投獄されたものの、不起訴処分で巣鴨プリズンから釈放された岸信介。 大国のエゴとエゴがぶつかり合う戦後世界において、岸は文人政治家として、日米安全保障条約の改定や、自主憲法の制定、二大政党制の実現を目指して動き出す。 だがそこには、途方もない困難が立ちはだかる。 アメリカの野望。マスメディアの批判。自宅まで押し寄せるデモ隊。党内外の争い。そして弟・佐藤栄作のもとで勢力を伸ばす田中角栄ーー。 昭和六十二年、満九十歳でこの世を去るまで政治の表裏に関わり、「昭和の妖怪」と呼ばれた男の波乱の生涯! 下巻 目次 第十五章 幽囚の日々 第十六章 鮪は巣鴨にかぎる 第十七章 主権回復 第十八章 大いなる挫折 第十九章 嘘も方便 第二十章 鳩山内閣誕生 第二十一章 両岸と呼ばれて 第二十二章 乃公出でずんば 第二十三章 宰相の座 第二十四章 躓き 第二十五章 昨日の敵 第二十六章 五月十九日 第二十七章 退陣 第二十八章 車夫馬丁の類 第二十九章 昭和の妖怪
ノンフィクション作家 保阪正康氏が絶賛! 昭和史の“静かな怪物”が、もう一人いた。 「この小説は、まさに“戦後史の岐路”を描いた一冊。現憲法は誰によって、どう作られたのか。占領する側、される側の闘いを再現させたドラマだ」 終戦直後の昭和二十一年の初め、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の方針に従い、国会内の委員会で政府試案をまとめたが、GHQは拒否。そればかりか、GHQ憲法草案を押し付けてきた。この案を翻訳し、日本の法律らしく形を整え、新憲法の下敷きにせよ、というのだ。 わずか二週間で翻訳にあたることになったのは、内閣法制局の佐藤達夫。吉田茂外相(当時)と話す機会を得た佐藤は、GHQ案の問題点をまくしたてる。それを聞いた吉田は、佐藤に言った。 「GHQは何の略だか知っているかね? ゴー・ホーム・クイックリーだ。『さっさと帰れ』だよ。総司令部が満足する憲法を早々に作っちまおうじゃないか。国の体制を整えるのは、独立を回復してからだ」 かつて司馬遼太郎は、『坂の上の雲』で、明治という時代の明暗と、近代国家誕生にかけた人々の姿を小説にした。 そして今、昭和史の分岐点を描いた小説が誕生した。
一九三〇年一月、日米英など五大海軍国によるロンドン海軍軍縮会議が始まろうとしている。随員を命じられた外務省情報部長・雑賀潤は、首席全権の若槻礼次郎らと日本を旅立った。だが、各国の利害が対立する外交交渉は難航の連続。その上、海軍軍令部は自らの主張に固執し、妥協案に対して拒絶の姿勢を崩さない。熾烈を極める状況の先に、雑賀は光明を見出せるか!?
ロンドンでの雑交渉を終え、全権団は帰国した。しかし、条約の内容を受け入れられない軍令部は、統帥権の独立を楯に批准に反抗。輿論は二分し、議会での論戦も混迷の一途を辿るばかり。土壇場での条約破棄を阻止するため、雑賀ら政府の面々は、軍人、枢密院、そして輿論に対して瀬戸際の攻防で対峙するー。史実の中に浮かぶドラマを、精緻かつ情熱的に描ききった傑作!
時は豊臣秀吉の天下統一前夜。肥後国田中城では村同士の諍いの末、岡本越後守と名乗る男の命が奪われんとしていた。だが、そこに突如秀吉軍が来襲。男は混乱に乗じて武器を取り応戦、九死に一生を得る。その戦いぶりにほれ込んだ敵将・加藤清正は、城主の姫を人質に取って越後守を軍門に降らせ、朝鮮の陣に従軍させるがー。
甲斐宗運、鳥井元忠、茶屋四郎次郎、北条氏康、片桐且元……。知られざる武将たちの凄絶な生きざま。大注目の作家陣がまったく新しい戦国時代を描く、書き下ろし&オリジナル歴史アンソロジー!
1930年1月、霧深きロンドン。米英仏伊、そして日本の五大海軍国によるロンドン海軍軍縮会議が始まろうとしていた。世界恐慌が吹き荒れ、緊縮財政と戦争回避が叫ばれているなかではあったが、各国それぞれの思惑と輿論を抱え、妥協点を見出すのは容易ではない。日本の全権団長は若槻礼次郎。随員には雑賀潤外務省情報部長がいた。難航を極める交渉の果て、雑賀は起死回生の案を捻り出すがー。誇り高き外交官の活躍と、統帥権干犯問題の複雑な経緯を、精緻かつ情熱的に描ききった、今こそ読まれるべき傑作。
時は関ヶ原の合戦直後。藤堂高虎家中にあっても、媚びずなびかず、「恥知らず」と罵られても、武名を上げることに命を燃やした渡辺勘兵衛。常識に抗い、乱世を生き抜く反骨と覚悟を交錯させて描く痛快戦国長編!
豊臣氏滅亡から十年。三代将軍家光と大御所秀忠の対立を背景に、天海、柳生宗矩、宮本武蔵、伊達政宗ら、欲に憑かれた者どもが死闘を繰り広げていた。彼らの狙いは、幕府転覆すら招く豊臣氏の遺宝“豊国神宝”。この醜い戦いのゆえに愛する人々を奪われたとき、若き剣客・木下右近もまた修羅の鬼となる決意をするー。豊国神宝とは何なのか?気鋭が描く大活劇。
秀吉の密命を受け、難攻不落と言われた三木城に、二人の男が忍び入った。片や、かつて主君に離反し「裏切り者」と呼ばれた涼山。片や、主家への忠誠に生きる寺本生死之介。二人はともに開城工作に暗躍する。やがて明らかになる涼山の真意とは。「三木の干殺し」を題材に、「正義」のあり方を問う本格戦国小説。
正徳の治で幕政を主導するのはまだ先のこと。五代将軍綱吉の世、若き日の新井伝蔵(白石)は浪人ながらも政への野心を燃やしていた。そんな中、二つの仕官話が舞い込む。願ってもない好機だが、眉間の「火字」が不穏にうずく。そこには九年前の事件の真相が隠されていた。小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
武士は負け様、死に様が肝心。他人の罪を被り、流人となって2年。元公用人・物集女蔵人は、命がけで島を抜け、江戸に舞い戻る。かつての主君・水野忠邦の過ちをただし、その本懐を遂げさせるために。武士の熱い魂を描く、書き下ろし本格時代小説。