著者 : 井上荒野
著者23年ぶりの書き下ろし長篇恋愛小説 綾「私は初めて会った16年前から涼さんを愛し続けている」。涼「僕にかかわった者は、みんな死んでしまう。女も男も。僕が綾を愛しすぎているせいで」-- 音村綾(旧姓・上里)は30代半ば。現在は信州でペンション経営兼漫画家として活躍。夫・子ども・母と四人で暮している。 祥川涼。画家。40代後半。妻を失い、その後同棲していた女性とも別れ、現在は酒浸りの日々を送っている。 冒頭の「現在」では、綾のコミック発売記念サイン会のシーンの衝撃的事件から始まり、「1年前」「4年前」「8年前」「10年前」「12年前」「14年前」、そして二人が出会った「16年前」へと時をさかのぼり「現在」に戻る。謎とサスペンス、そしてストーカー小説の雰囲気も交えた〈究極の恋愛小説〉である。 この作品は、2001年に刊行された『もう切るわ』以来、23年ぶりの「書き下ろし」長篇!
結婚祝いに贈られたお揃いの鉄鍋。夫の元カノから譲り受けるホットプレート。クリスマスプレゼントのピザカッター…“食にまつわる道具”をめぐり、揺れ動く心を切り取った短編集。
短編の名手が、日常の隙間にひそむ「孤独」を描き出すー著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされてー「ぴぴぴーズ」。男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女はー「みみず」。刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまいー「刺繍の本棚」。女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうがー「錠剤F」。…ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!
照子と瑠衣はともに七十歳。ふたりにはずっと我慢していたことがあった。照子は妻を使用人のように扱う夫に。瑠衣は老人マンションでの、陰湿な嫌がらせやつまらぬ派閥争いに。我慢の限界に達したある日、瑠衣は照子に助けを求める。親友からのSOSに、照子は車で瑠衣のもとに駆けつける。その足で照子が向かった先は彼女の自宅ではなく、長野の山奥だった。新天地に来て、お金の心配を除き、ストレスのない暮らしを手に入れたふたり。照子と瑠衣は少しずつ自分の人生を取り戻していく。照子がこの地に来たのは、夫との暮らしを見限り、解放されるため。そしてもう一つ、照子には瑠衣に内緒の目的があったー。
愛って何なのかな?自分の幸せ以上に相手の幸せを願うことかなー。背の高いきれいな顔の彼は、愛する人を探しにここへ来た。海辺で、ピアノのそばで、病院で、列車の中で、湖のほとりで、彼は私たちをそっと守り、救ってくれた。大丈夫、会いたいと強く願えば、きっと会えるー。ハマった心も観てない人も胸躍るラブストーリー9篇。
二十五年ぶりに父親が戻ってきた。イタリア人の若い女と恋仲になり、家族を捨てて出ていった男が。娘たちは大人になり、妻にはすでに恋人がいるというのに。家族とは。夫婦とは。愛を問い直す長編小説。
この扉の向こうに、秘密を抱えた旅人たちがいる。豪華寝台列車「ななつ星」の旅から生まれた5編の物語と2つの随想。ゆっくりと流れる時間の中、人は、それまで口にしたことのない言葉を語りだす。
「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する三十六歳。近頃、何もかもうまくいかない。男性器も心も折れてしまい、おまけに仕事も絶不調ー通称“川の家”と呼ばれる高台にある家に住む、夫婦への立ち退き交渉が難航していたのだ。夫人によれば、立ち退きを強く拒否しているのは夫の方らしいのだが…。夫人の協力を得て交渉を続けるうちに、やがて思いもよらない事実が判明しー(表題作)。この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまでーままならぬ心と体を描いた美しくも不穏な、極上の10の物語。
離島へ移住を決めた芳朗と蕗子、そして夫妻の友人・野呂。人生の終盤で実現した共同生活の滑り出しは順調に見えるが、三人はそれぞれ不穏な秘密を抱えており…。おいそれとは帰れないこの場所で、彼らは何を目にし、何を知るのかー。
有夢と瑤子と海は幼馴染みの仲良し三人組。中学の合格祝いに買ってもらった自転車もお揃い、大好きなミュージシャンも同じリンド・リンディ。川沿いの街でずっと同じ風景を見ていくはずだった。だけどー。傷ついて、裏切って、追い詰められて…。大人には見えない、少女たちの孤独な魂にそっと寄り添う物語。
母が住み込みで管理人兼料理人を務める藤田一家の別荘を訪れた昌。一家と昌母娘の団らんはいつもの光景だったがこの夏は少し違っていた。十九年前にこの別荘で起こった事故の真相を昌が知ってしまったからだ。昌は一家に知られないようにふるまうが…(「時計」より)。ふいに浮かび上がる「死」の気配。そのとき炙り出される人間の姿とはー。直木賞作家が描く、傑作短編集。
夫に支配される人気作家・柚。先が見えない三流大学三回生の航大。二人はひょんなことから「綴り人の会」というサイトを介して、文通をはじめる。柚は「夫にDVを受けている専業主婦」を装い、航大は「エリート商社マン」だと偽ってー。便箋の上に書かれた偽りが、いつしか真実を孕んで、二人をくるわせていく。掻き立てられた情動が、やがて越えてはならない一線を踏み越えさせて…。緊迫の恋愛サスペンス!
小説家の父、美しい母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、“書くこと”と情愛によって貫かれた三人の“特別な関係”を長女である著者が描き切る、正真正銘の問題作。作家生活30周年記念作品。
「まさか本当に死ぬとは思わなかったの。びっくりしたわ」79歳の母が72歳の父を殺した、との連絡に姉弟3人が駆け付けた。母手製の筍ご飯を食べながら、身勝手で女性が絶えなかった父の、死体処理の相談を始めるー男女とは、家族とは何か。ある家族の半世紀を視点人物を替えて描いた、愛を巡る8つの物語。
佐野洋子の絵本『100万回生きたねこ』は、一九七七年に発売されて以来、今なお多くの人に読まれ続けている大ロングセラー。本書は、江國香織、谷川俊太郎をはじめとする十三人の作家や挿絵画家が、佐野洋子とこの絵本に敬意を込めて書き上げた短篇集。愛と死、生きることについて深く考えさせられる。