著者 : 小手鞠るい
アメリカ在住の日本人ノンフィクションライターが、引っ越し作業中にふと手にした一冊の本。それは50年前の世界的事件を追うことになる迷路の入り口だったー。半世紀前の1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ空港で起こった乱射テロ事件。起こしたのは3人の日本の若者たちだった。彼らはなぜ遠い異国の地でそんな事件を起こしたのか。それは崇高な使命感からだったのか、それとも別の残虐非道な目的からだったのか。そして、事件の首謀者・渡良瀬千尋が短い生涯で遺したものとは。正義と使命感に駆られた人間の「光と影」をリアルに描いた、渾身の長篇小説。
アメリカの8人の高校生が、原爆を肯定する側と否定する側にわかれ、討論をくりひろげる…。多くの読者から反響のあった『ある晴れた夏の朝』の英文版。世代と国境をこえて読んでほしい「戦争の歴史と記憶」を問う一冊。中学生から。
カタログ会社で働く35歳の編集者、妃斗美。婚約を破棄された過去を持つ彼女は、これからひとりで生きていくために、大きなものを買って、小さなものを拾った。手に入れたふたつの“幸福”は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。
彼女は消えない炎のような人だった。この美しい年上の人に、僕は恋をしたー。炎は消えてもその来歴は残る。ひとりの男の人生を根底から動かして、海の向こうへ、燃えさかる炎へと向かわせた、崇高なその行為とは。二人の間を流れた電流とは何だったのだろうかー。戦後の日本とヴェトナムを舞台に描かれた激しくも美しい物語。
1916年、既にアメリカに暮らす大原幹三郎のもとへ「写真花嫁」として嫁ぎ、佳乃は海を渡った。そこから全ては始まった。夢が叶うと言われる大地で日々を積み上げていく一家。彼らはやがて時代の激流に呑み込まれていく。日本人というルーツに苦しめられた祖母、捨てようとした母、惹かれる「私」-これまでの百年、そして今のこの世界の物語。
不思議な公園にぽつんと佇む優しい形をしたベンチ。きょうもここで待っている。あの人を。あなたをー見えない、歩けない、居場所がない、コミュニケーションができない。心の傷や生きづらさを抱えながらも、健気にしなやかに生きる愛すべき人々の「普通の」物語。
終戦直前、空襲の焼け跡から助け出された赤ん坊の茉莉江。彼女は10歳でアメリカに渡り、長じて報道写真家となった。激動の時代に翻弄されながらも運命を自ら切り拓いた一人の女性の生涯を通し、戦後日本とアメリカ、戦争と平和について問いかける、美しく骨太な物語。
DVに憑かれた冷酷な夫から逃げ出したわたしが、職場で偶然知り合った既婚者の彼。その導きで始まった密会のたわむれは、わたしを絶望の淵から救った。甘い官能に溺れるふたつの魂は、秘密の部屋を抜け、やがて緑滴る中米の地を目指す。生命が躍動する新世界で、わたしが望んだのは、しかし、欲して止まない彼の死だった。悪魔的に美しく、愛と見まごうほどに純粋な感情の行方。
西新宿のはずれのアットホームなホテル「リリーガーデン」。小説家のサナギ・高橋愛の取材に応じて、喜子が語り始めたのは、スーパー・コンシェルジュとしての活き活きした仕事ぶりと、その職を選んだ理由。ちょっとしたトラブルから大きなトラブルまで。お客さまからいただくさまざまな要望。そんなある日、思いもよらない人が訪ねてきた。喜子の胸に隠されていた秘密とは…?
イラストレーターとして着実にキャリアを積んでいる木の葉に、作家となったかつての恋人アラシから一篇の物語が届く。作品にこめられたものとは。遠い日の約束が果たされるとき、明らかになるのはー恋愛小説の名手が、時も距離も超える思いを描く、心ゆさぶる魂の愛の物語。
過ぎた恋を切なく思い出し、現在の恋に身を焦がす。ままならない思いに苦しみながらも、そこにもまた甘美な感覚が潜むのを発見するー甘いだけでも、苦いだけでもないのが恋。カクテルもまたしかり。さまざまなカクテルに寄せて、4人の男女の恋模様が描かれる物語。
優等生の悪女ー松下絵里子(28)スポーツ用品メーカー勤務。結婚も決まり、公私ともに充実の日々が始まるも…。懲りない悪女ー佐藤美鶴(34)小さなサンドイッチ店で働く主婦。元デパートの店員。献身的な夫がいながら過去の男に…。華麗なる悪女ー加賀美さとみ(53)セレクトショップ「トップ・シークレット」社長。欲望にどこまでも忠実な女性起業家。多少の犠牲は…。純情そうな悪女ー向井沙也香(21)セレクトショップ「トップ・シークレット」社員。さとみの下で働く新入社員。そこには絵里子の婚約者がいて…。正直に生きれば生きるほど、堕ちていくー。彼と同じ未来を見ていたはずなのに。彼女には僕の知らない別の顔がある。ままならない男と女の関係を、それぞれの視点で描いた、めくるめく長篇恋愛小説。
この長さが、クセになる。ハマってください。好評『10分間の官能小説集』第3集。 からだが時間を覚えてしまった。 月曜は清純系、火曜はギャル風。日ごとに別の女と寝ていた彼は、ある決意をする。「木曜の女」(乾くるみ)。カラオケルームの狭い個室で美緒に抱きついてきた売れない俳優、翔也は未経験で……。「男と女の夜のシナリオ」(内藤みか)。小説現代に好評掲載された名手10人の手になる「10分で読める」短編官能小説集。 内藤みか「男と女の夜のシナリオ」/南綾子「L町の男伝説」/小手鞠るい「愛のおけいこ」/乾くるみ「木曜の女」/草凪優「月に咲く花」/坂東眞砂子「ハレルヤ」/深志美由紀「裸のお姫様と召使いの話」/前川麻子「まなざし」/睦月影郎「祭の夜」/団鬼六「人生の黄昏に我、名器を想ふ」全10編。
最初の30分は「仕事」、残りの30分は「物語」。見知らぬ男と過ごす1時間。愉楽の波間を漂いながら泣く。「俺の話聞いてくれる?」客は私の胸に顔を埋める。からだから、涙に似た欲望のかたまりがわきだしてくるのはなぜ?ホスピスでのひそやかな逢い引き。からだ中が泣き出す。歌い出す。踊り出す。郊外に建つログハウス風のアパートの各部屋で繰り広げられる恋と官能を連作で描ききる。