著者 : 小池真理子
【現代文学の名手が贈る心理小説の白眉】 人生を狂わせるほどの秘密ではなかった。 ーーそのはずだった。 1989年5月、彩和と俊輔の結婚を祝う会が開かれた。 前の夫を若くして亡くし、必死で幼い娘を育ててきた彩和にとって、それは人生の安泰が約束された幸福な瞬間だった。 後に、俊輔の思わぬ一面を知ることになろうとは夢にも思わずーー。 綻びゆく人生における、僅かな安息。 不意におとずれる、密やかな邂逅。 廻り続ける「生」への不安を克明に描ききった、原稿1100枚に及ぶ傑作大長編。 【著者略歴】 小池真理子(こいけ・まりこ) 1952年東京都生まれ。1989年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。以後、95年『恋』で直木三十五賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、11年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞、21年に日本ミステリー文学大賞を受賞。 そのほか、『無伴奏』『瑠璃の海』『望みは何と訊かれたら』『神よ憐れみたまえ』など著書多数。
過ぎてみれば、全部、どうってことなかったーー 日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だというーー。 生と死、そして性を描き、人生を謳いあげる短編集。名手がつむぐ至高の7作。
怯え続けることが私の人生だった。 私は今も、彼女の亡霊から逃れることができないのだ。 1978年、悦子はアルバイト先のバーで、 舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。 特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。 しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、 予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。 千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、 彼女の亡霊が現れるようになりーー。
私の人生は何度も塗り替えられたーー。最愛の伴侶を看取るなか、十年の歳月をかけて紡がれた別離と再生の長篇小説。昭和三十八年、三井三池炭鉱の爆発と国鉄事故が同日に発生。「魔の土曜日」と言われたその夜、十二歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。なに不自由のない家庭に生まれ育ち、母ゆずりの美貌で音楽家をめざしていた百々子だが、事件は重く立ちはだかり、暗く歪んだ悪夢が待ち構えていた……。著者畢生の書下ろし大河ミステリ。
母の遺品整理のため実家に戻った邦彦は農道で般若の面をつけた女とすれ違うーー(「面」)。“この世のものではないもの”はいつも隣り合わせでそこにいる。甘美な恐怖が心奥をくすぐる6篇の幻想怪奇小説。
親子ほど年の違う妻子ある作家と愛し合っていた繭子。彼の突然の死から15年、孤独と寄り添いながら生きる彼女の前に、作家の息子を名乗る男性が現れる。かつての恋人に生き写しの彼は、繭子が封印していた記憶の扉を優しく開いていく。甘美で切ない大人の恋と、耽美で幻想的な世界を見事に融合させた極上の長編小説。
ぞわりとする、でも読まずにはいられないのが、人間のいやな部分に光をあてた「イヤミス」と言われるミステリー。 本書は、いま旬の女性ミステリー作家による、秀逸の「イヤミス」を集めたアンソロジー短篇集。 ある地方都市で起きた放火事件を通して、自意識過剰な人間の滑稽さを見つめた「石蕗南地区の放火」、過食に走った美人の姉と、姉に歪んだ優越感を覚える妹の姿が鬼気迫る「贅肉」。 また、事故死したはずの兄が生きているのではないかと疑いを抱いた妹の葛藤を描く「おたすけぶち」など、読んで心がざわつく、後味が悪い作品が勢ぞろい。 衝撃の結末を愉しみに、また隠れた逸品を発掘する喜びを味わいたい方におすすめの一冊。
才色兼備の姉と正反対の妹。美しい姉は、母の死、恋人との別離から拒食症になる。しかしその後、すさまじいほどの過食に走り、恐ろしく太り始める。父が亡くなってからは自室にこもり、一日中食べ続ける毎日。かつての面影はどこにも見られなくなった姉の世話をする妹に、様々な感情が生まれるー(「贅肉」)。平凡な人間の、ほんの少しの心の揺らぎが、加害者や被害者になったりする。そんな日常に潜む恐怖を描く傑作サスペンス集!
軽井沢にほど近い、別荘と住宅が混在する静かな森の一画。 2 匹の猫と暮らす59歳の幸村鏡子は、夫を亡くして以来、心身の不調に悩んでいた。意を決してクリニックを受診し、独身で年下の精神科医、高橋と出会う。少しずつ距離を縮め合い、幸福な時を紡ごうとしていた矢先、突然、高橋は鏡子の前から姿を消してしまった……。それぞれの孤独を生きる男女の心の揺れを描いた濃密な心理サスペンス。
名作短掌編を精選したアンソロジー「短編伝説」シリーズの掉尾を飾る一冊。今回のテーマは「別れ」。赤川次郎、浅田次郎、小川洋子、北方謙三ら錚々たるメンバーによる別離のドラマ。(解説/吉野仁)
澤登志夫、69歳。文芸編集者としてエネルギーに満ちた時代を送った。激しい恋愛の果てに妻子と別れ、痛恨の思いも皮肉に笑い飛ばして生きてきたー彼を崇拝する26歳の宮島樹里の存在が、澤の過去と現在を映し出す。プライド高く生きてきた男が余命を知って辿り着いた、荘厳な企み。この尊厳死は罪かー現代をゆさぶる傑作長編。
義母の葬式で男は思い出す。22年前に、義母の起こした事故のこと。義母を責めた自分のこと。そしてーー(「千日のマリア」)。会社に長文の手紙を送りつけてくる女。意を決して女の家を訪ねた男が見たものは(「修羅のあとさき」)。森に囲まれた土地で暮らして20年。引っ越しを間近に控えたその日、はじめて庭に現れた美しい琥珀色の生き物がいた(「テンと月」)。ほか、生と死、愛と性、男と女を見つめた珠玉の8篇。 義母の葬式で男は思い出す。22年前に、義母の起こした事故のこと。義母を責めた自分のこと。そしてーー(「千日のマリア」)。 会社に長文の手紙を送りつけてくる女。意を決して女の家を訪ねた男が見たものは(「修羅のあとさき」)。 森に囲まれた土地で暮らして20年。引っ越しを間近に控えたその日、はじめて庭に現れた美しい琥珀色の生き物がいた(「テンと月」)。 ほか、生と死、愛と性、男と女を見つめた珠玉の8篇。 過ぎし者の標 つづれ織り 落花生を食べる女 修羅のあとさき 常夜 テンと月 千日のマリア 凪の光
お風呂場から隣室で椅子に座っている女性の足が見えた遠い昔の記憶。その女の人は誰だったんだろう──。此の世に残した甘美な想いが恐怖に変わる幻想怪奇小説集、連続刊行第3弾!(解説/東雅夫)
日常の裏側に死者たちは佇む。生きていた時に抱いていた想念が幻となってこの世に残っている者たちを誘う。闇の中で死者たちが開く異界への扉。恐怖と官能を湛えた極上の幻想奇譚集。(解説/東雅夫)
生と死とエロスーー。著者の真骨頂! 刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め…。著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。 「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」の7編収録。 解説・千早茜
男を車で撥ねて死なせてしまった女。男が自分を証明する公的書類を一式持っていたことから、ふいにある企みを思いつく。「男の身代わりを立てればいい」と。彼女が目を付けたのは、記憶喪失の若いホームレスだった。突如、人生は大きなうねりに呑み込まれていく…。その先に待ち受けるのは、成功か破滅か。ページを繰る手が止まらない、傑作長編サスペンス!