著者 : 新井ひろみ
理学療法士のダイアナは、謎めいた依頼を受けた。イギリスの古城に隠遁する億万長者のもとで、住み込みの仕事があるという。雇用期間は無期限。リハビリの報酬は破格だが、守秘義務は絶対厳守ー気難しいご老人なのかしら?訝しみながらも彼女は受諾する。薄暗い城内に足を踏み入れると、冷たい声が響いた。「きみで4人目。2人目は2日でくびにした」氷河のような目の若き城主エドワードが、彼女を睨みつけていた。それでもダイアナは心身ともに傷ついた彼に寄り添い続け、やがてそれは熱い恋心へと変わっていく。そしてついにある夜、エドワードの誘惑に抗えず、純潔を捧げてしまうことに…。
国際的大企業に入社したソフィーは、その熱心な仕事ぶりで一目置かれる存在となった。でも最高財務責任者であるセクシーな上司、ヴァンの前ではそうはいかない。ある日、ヴァンの出張に同行したソフィーは、滞在先のホテルでハンサムな彼の黒い瞳に宿る、欲望の色に気づく。初めてヴァンが見せる男の顔。だめよ、彼に隙を見せては。ソフィーは二つの秘密を抱えていた。この会社に来た目的。そしてもう一つは…彼への秘やかな恋心。なのにあろうことか彼と結ばれてしまうなんて、予定外だわ!彼女は狼狽した。ヴァンが企業スパイと疑って近づいてきたとも知らず。
断るべきよ、だって絶対無理だわ…。兄のフィアンセ役を演じてほしいと、親友に懸願され、ジェンナは悩んでいた。なぜなら親友の兄で放蕩富豪と名高い、とてつもなくセクシーな大企業CEO、ドリュー・マドックスこそ、ジェンナが学生時代にひとめ惚れして以来、忘れられない男性だから。彼の緑の瞳に見つめられると、どんな女の子もたちまち虜になった。そんな彼と、いつもパーティの壁の花だった私が釣り合うわけないわ。でも結局、親友の頼みを断りきれず、ジェンナは承諾した。そしてドリューのオフィスで、彼と再会するー妖しく輝く彼の瞳。ロビーに押し寄せたカメラの前で、二人は熱いキスを交わして…!?
ジェリーは総合病院の看護師をしている。その日は、受け持ちの患者の一人が息を引き取った。仕事が終わったらまっすぐ帰って泣きたい気分だったが、親友の誕生日パーティーを欠席するわけにもいかない。だが彼女はそこでロロ・ヴァン・クリフに出会った。裕福でカリスマ性あふれるロロとひと目で惹かれ合い、じきに彼は仕事で外国に行ってしまうと知りながら、ジェリーは、愛のよすがとなる一夜を捧げた。数年後、幼な子を連れて、彼と運命の再会をするとは思いもせず。
海面が上昇し、陸の大部分が海に沈んだ2130年。マイラは小舟で島を転々としながら、生き別れの娘ロウを捜している。7年前、身重のマイラを置いて、夫は娘だけを連れて逃げた。あるとき、その娘が北の辺境で生きていることが判る。そこは武装集団の支配下にあり、年頃になった少女達は一斉に“繁殖船”に乗せられるのだという。マイラは一路北の果てへ向かったーすべてを賭け、娘を救うために。
アマンダの人生は、大実業家ジョシュ・ローソンに掌握されていた。亡き父が遺した会社も、現状は彼が支配している。アマンダが引き継ぐには、25歳になるか、結婚することが条件だから。今も、父親を失って傷ついた心を癒やすためにとローソン家の別荘へ強引に連れてこられ、胸に切なさがよみがえった。ここは15歳の頃、ジョシュと恋人の睦み合いを見てしまった場所…。そのときから、年上の彼への憧れを胸の中でひっそりと育ててきた。二人きりになるたび、アマンダはずっと夢みてきた瞬間を期待したが、距離が縮まるとなぜか、ジョシュは頑なに一線を引いた。「純潔は、夫となる男に捧げるべきだ」と言って。
目覚めたときトレヴァーは病院のベッドに横たわっていた。勤務する大使館を襲ったテロリストによる爆破ー親友をはじめ多くの人間が亡くなり、トレヴァーは数少ない生存者だった。しかし代償として左目を失い、絶望する日々のなか、彼は亡き親友が持っていた27通の手紙を目にする。そこにはカイラという女性からの愛に満ちた言葉が綴られていた。自分宛ではないとわかっているのに、その手紙はいつしかトレヴァーの心の支えになっていく。カイラに会いたいと願い、やがて退院したトレヴァーは彼女の住む町へ足を向けたが…。
「いいえ!先生とベッドを共にしたことなど一度もありません」恩師であるミゲルの離婚調停の証人台に立ったニッキーは、彼との関係を否定しつつも、いまにも胸が張り裂けそうだった。本当にミゲルの恋人だったら、どんなに嬉しかっただろう。いつか彼に抱かれる日を夢見てきたが、妹以上にはなれなかった。ついに離婚は成立し、ミゲルは独りになったものの、つきまとう痛みに耐えきれず、ニッキーは彼のもとを去った。すべてを忘れ、新たな人生を歩むためにーところがある日、突然ミゲルが彼女の前に姿を現した。
レディ・クレスウェルー白血病の疑い。61歳。近親者、チャールズ・クレスウェル教授…。「ああ、どうしてこんなことになるの」ジュディスはつぶやいた。勤務先の病院に、まさか彼の母親が入院しているなんて。1カ月の休暇から戻った看護師のジュディスは、書類を見て愕然とした。病室の巡回で、見舞いに来たチャールズと会いませんように。彼は休暇で滞在した湖水地方で会った、礼儀知らずの歴史学者。本の執筆に夢中で、わたしのことなど少しも気遣ってくれなかった。でも、彼の家の見事な庭を思い出すと、懐かしさに涙が出そうになる。ところが再会したチャールズは、意外な提案をして彼女を驚かせた。母親の専属看護師として、彼の家に来てくれないかというのだ。
エヴィーは人生に退屈していた。息子夫婦の勧めで75歳で老人ホームに入ったが、楽しみもなく単調な毎日。ついに耐えきれず一人ホームを飛びだした!美容院で髪型を変え、新しいベレー帽や服で変装し、スーツケースを手にアイルランドからイギリス、フランスへ。だが意気揚々と始めた冒険は、通行人からは老人扱い、強盗や嵐に遭い苦難の連続。それでもめげずに旅を続けたエヴィーが最後にたどりつく場所とは?
大企業を統括するロバート・キャノンは財界随一の切れ者と評判の男。そんな彼をある日思いがけない事態が襲った。傘下の企業から国家機密のプログラムが流出したのだ。FBIには任せておけず、ロバートはみずから捜査に乗りだすことに。容疑者のひとりは湖畔でマリーナを営むエヴィー。入手した不鮮明な写真を見る限りひどく野暮ったくて田舎くさい女だ。だがさっそく客を装って湖畔に近づいた彼の前に現れたのは、服こそ写真どおり冴えないものの、美しく魅惑的な女だった。ロバートは疼く欲望とともにある計画を思いつき…。その制裁は何よりも甘く、どこまでも冷酷でーロマンス史に燦然と輝く不朽の名作を、新装版で復刊!
ホープは18歳という若い身空で結婚したものの、妻を顧みない薄情な夫に悩まされ、やがて離婚にいたった。夫の浮気相手の親友だったことで、二重苦を味わった彼女の心の支えになったのは、夫の弟ガイだった。“ぼくは以前からきみを愛していた”というガイの言葉に接し、その慰めにすがるように、ホープは彼を受け入れてしまった。ふたりで虚空に愛を描いた、たった一度の週末…。12年後、一人娘を育てるホープの前に、ガイが兄の死を告げに現れた。故人の遺言で、彼女と娘はガイの瀟洒な館で暮らさねばならないという。ホープは青ざめたー娘の本当の父親はあなたなんて、今さら言えない!
各地を転々としながらその日暮らしを続けるクィン。里親からの虐待、孤独、人間不信。彼女の人生は試練の連続だったが、新天地ラスベガスへ向かうその道中でも、新たな試練がクィンを襲う。交通事故現場で少年を保護した直後、何者かの発砲を受けたのだ。しかし、瀕死で警察署に逃げ込んだ彼女は知らなかった。たくましい腕で抱きとめてくれた刑事が、かつて一人だけ心を許した少年ー20年前に同じ里親のもとで絆を結んだ、ニック・サルダーノであることを。あの頃の少年少女は、一人の男と女として、いま再び巡り逢った。
望むことすら許されなかった、貴方との未来。7年後の悲劇が、 止まってしまった二人の時を、ふたたび動かしはじめる……。 父の介護に明け暮れるタリアは、突然の訃報に驚いた。かつて将来を誓い合っ たボウイの父親が何者かの凶弾に倒れたという。7年前、スコットランドの血を 引く黒髪の恋人ボウイにプロポーズされ、タリアは幸せだった。だが時を同じ くして父がアルツハイマーを発症していることが判明。タリアはこれからの介 護の日々を思い、理由は告げぬまま断ったのだった。ボウイは町を去り、二人 の仲は終わった。だが父親の死の謎を解くためにボウイが帰郷した今、愛する 男性に別れを告げて以来止まっていたタリアの時間は、再び時を刻み始め……。
フィアのもとを、イタリア富豪のサントが訪ねてきた。フィアとサントの家には3代前からの確執があるが、3年前、二人は一度だけ夜をともに過ごしたことがある。その後サントはまったく連絡をくれなかったけれど、フィアは妊娠に気づき、一人で息子を育ててきたのだった。何も知らないサントは、彼の一族の事業拡大のため、フィアが息子と住む家を、土地ごと買いたいのだと言う。足元にまとわりついてきた幼子を慌てて隠そうとしていると、サントの顔色が変わったーそう、息子は彼にそっくりだった。彼が強ばった表情で言う。「土地を買うまでもない。結婚しよう」
十代の姉妹、サムとオリーは母を亡くし、オレゴンの田舎でテント暮らしをする父に引き取られた。ある夏の日、二人は近所の川に女性の死体が浮かんでいるのを見つける。すべての証拠は彼女らの父ー変人と周囲から疎まれる彼の犯行を物語っていた。無実を信じて危険な行動に出る姉と、多くを知っていながら口がきけない妹。そんな少女たちの背後に、狂気はひたひたと忍び寄っていた…。
グレイシラは、かつての執事ミレットを頼って、男爵邸を訪れた。継母の強要する結婚を承諾したあと婚約者が、彼女の愛人だと知ったからだ。父親には告白できない理由の家出ゆえ隠れがには用心しなければならない。ミレットは、十二年ぶりに帰国した今の主人ダミアン卿と顔を合わせない約束でグレイシラをかくまう。彼は昔、年上のリンマス公爵夫人と駆け落ちした悪名高い人物だった。しかし、グレイシラが偶然出会ったダミアン卿は、詩人のような紳士である。二人は人目を忍び、森の中で奇妙な逢瀬を続けてゆくが…。
ソリータは、イタリアから意を決してキャルヴァリー公爵の城を訪れた。かつて公爵が軍人だった頃命を救われた縁で、父の死後ソリータの後見人になっているからだ。しかし、ナポリの伯母に預けたまま公爵はその役目を忘れ果てていた。ソリータは、父の仇であるロシア人に深い憎しみを抱いていたが、あろうことか、当の公爵がロシアのさる皇女と深い関係にあった。その兄弟と共に、ソリータは城に滞在することになったが、偶然驚くべき秘密を耳にする…。