著者 : 深山咲
水害で愛する家族も家もすべてを一瞬にして失ったハリー。高級ホテルの客室係として働き始めた彼女を支えていたのは、いつか誠実な男性と温かな家庭をもちたいという夢だけだった。それなのに、私はなんて愚かだったのかしら?雇い主のホテル王クリスティアーノに誘惑されて一夜で妊娠。ベッドからもホテルからも追いだされ、独りぼっちで我が子を産み育てることになるなんて…。困窮に耐えきれず、すがるようにクリスティアーノを訪ねたハリーは、残酷な言葉に身を震わせた。「君と結婚する。だが愛するのは息子だけだ」
マリエッタはローマの画廊で働く画家の卵。下肢が不自由なため車椅子に頼る生活だが、懸命な努力を重ね、ようやく自活できるようになったことに誇りをもっている。ところが、その生活が悪質なストーカーによって脅かされ、妹の身を案じた兄が親友で警備会社CEOのニコに助けを求めた。屈強な体に鋭いブルーの目。マリエッタはなぜか彼が近くにいるだけで脈が乱れた。しかも強引に説得され、ニコが所有する島にしばらく匿われることになってしまう。大富豪と二人きりの生活は案の定、波瀾に満ちた幕開けで…。
ヘレナはロンドンの高級ホテルで、ある男性を待ち伏せしていた。レオ・ヴィンチェンティー大成功を収めたイタリア人富豪で、7年前、父親に仲を引き裂かれた初めての恋の相手。その彼が父の会社の乗っ取りを企んでいると知り、なんとか思いとどまるよう説得に来たのだ。だが再会したレオから逆に、予想外の取り引きを提案される。「僕の顧客の令嬢の前で恋人役を演じてくれるなら考えよう」愛の一片もない言葉に打ちのめされ、ヘレナは心の中で叫んだ。レオに伝えてしまいたいーあなたには息子がいたのよ、と。
昼夜を問わず身を粉にして働く孤児のレクシーは、ある日突然、傲慢なギリシア富豪ニコスに命じられた。大事な妹から不埒な恋人を引き離したい、巨額の報酬と引き換えにその役目を負うようにと。色気のかけらもない私に、妹の恋人を誘惑しろだなんて…。半ば脅されてギリシアの島へ連れ去られたレクシーは、ニコスの冷酷さにおびえながらも彼と強く惹かれあっていく。当初の目的も忘れて熱い夜を重ねるふたりだったが、彼は突然、取引相手の令嬢との婚約を発表して…。
別居して1年近く、ジョアンナは離婚について話し合うため、大富豪の夫マットの屋敷を訪ねた。彼への愛情などもう残っていないと思っていたのに、再会するなり、思いがけず胸の高鳴りを覚えたジョアンナは、自分を叱りつけた。騙されてはだめ。彼の酷い仕打ちを忘れたの?二人の話し合いはしだいに熱を帯び、抑圧された情熱が炎となった。翌朝、マットのベッドで目覚めたジョアンナは動揺して逃げだすが、やがてさらなる動揺が彼女を襲うー妊娠していたのだ。だが、時すでに遅し。マットは新天地へと旅立ち、連絡も途絶え…。
マギーは20年前、道端に捨てられているところを保護された。以来、里親のもとを転々とし、不遇な子供時代を過ごして成長した。ある夜、マギーが勤務先のコーヒーショップで床磨きをしていると、護衛たちを大勢引き連れた尊大な男性がいきなり入ってきて、コンスタンティン国王レザだと名乗り、マギーを鋭く見つめた。いったい何の騒ぎ?驚き怯える彼女にレザが厳かに口を開いた。マギーはじつは彼の隣国の、暗殺された国王夫妻の娘だというのだ。そして彼女を腕にかき抱くと、蠱惑的な笑みを浮かべ宣告した。「君は生まれたときに僕と婚約した。それが君の運命だ」
まもなく結婚式が始まるというのに、花嫁姿のミーナは泣いていた。花婿は、かっとなるとすぐに暴力を振る卑劣な男だが、借金を返すためには、彼と結婚する必要があるのだ。するとそこへ、見覚えのあるハンサムな男性が訪ねてきた。ネイト・ブランズウィックーホテル客室係のミーナが担当する、スイートルームに泊まる大富豪だった。彼はミーナの話を聞くと、驚くべき提案をした。「僕と結婚すればいい。決めるのは君だ」ミーナはネイトを信じて簡素な式を挙げ、彼の屋敷へ逃げ延びた。数カ月後、妊娠した彼女は夫の本心を知り、深く傷つくことに…。
空港で搭乗を待つウィローは、ハンサムな男性に声をかけられた。彼はダンテ・ディ・シオーネと名乗り、澄んだ青い瞳を輝かせると、顔を赤らめて戸惑うウィローの心を瞬時に開いて惹きつけ、去り際には大胆にキスまで奪って消えていった。私は夢でも見ているの?だがウィローの物思いはすぐにさめた。彼の鞄を取り違えて持ち帰ってしまったことに気づいたのだ。しかも驚いたことにダンテは名門一族の大富豪だとわかった。もしも彼が私の恋人として姉の結婚式に同席してくれたら、どんなに素敵だろう。1日だけでいい、お願いしてはだめかしら?
慈善事業を行う財団の代表を務めるアレグラは、余命わずかな最愛の祖父から、ある願いを託される。かつて手放した秘宝の箱を、砂漠の国ダル・アマンの国王から取り戻してほしいというのだ。アレグラは財団の調査という名目でなんとか国王ラヒムとの面会まで漕ぎつけるが、会うなり彼の男性的な魅力と圧倒的なオーラの虜になってしまう。このままではだめ。でもラヒムにどう切りだせばいいの?深夜、アレグラは偶然にも宮殿内で箱を見つけて歓喜するが、ふと人影に気づいて震えた。燃える目をしたラヒムが立っていた!
ジュリアは目覚めると病院にいた。事故に遭い昏睡していたのだ。ベッドの傍らには、見覚えのないハンサムな男性が立っている。彼はロスと名乗り、君の夫だと告げる。ようやくわかったのは、彼と出会って恋に落ち、結婚したこの3カ月の記憶を失ったこと。結婚するほど深く愛していたはずの人を、なぜ思い出せないの?記憶から消したいほどつらい出来事でもあったのかしら…。肝心なことを何も語らないロスに、ジュリアは苦悩を深めていく。ある日、偶然話に出たルーという女性の名に動揺する彼を見て、彼女は心を決めた。記憶も人生も、すべてかならず取り戻すわ。
ロクサーヌは母親を早くに亡くし、父親と乳母に育てられた。しつけは厳格で、ふたりの意に背くことは決して許されなかった。ある日、パーティに出かけたロクサーヌは視線を感じておののく。漆黒の髪に輝く黒い瞳。鷲を思わせるような威圧感。それがメキシコ人の大富豪フアンとの出会いだった。彼からディナーの誘いを受け、屋敷を訪れたロクサーヌは、すぐに後悔した。フアンは彼女を屋敷に閉じこめてしまったのだ。一夜を過ごした既成事実を作りあげてから、ロクサーヌの父に結婚を願い出るという彼の企みを聞かされた彼女は…。
パイパーは、ギリシア人実業家ゼフィールと親しい関係にある。ただし、二人が分かち合うのはベッドだけーそこに愛はないが、独身主義者のゼフィールは充分満足らしい。それなのに彼が「きみ以外の女とは寝ていない」などと言うので、パイパーは近ごろ、割り切れない想いを抱きはじめていた。でも危険を冒して愛を告白し、彼との友情を失いたくはない。想いを気取られまいと心に鍵をかけたパイパーは、「避妊具なしで愛し合いたい」と言われたときも拒めなかった。大きな代償を支払うことになるのはわかっていたはずなのに…。そう、パイパーは妊娠したのだ。愛してはくれない男性の子を。
彼女は病院のベッドに横たわり、緊張に苛まれていた。主治医の話から、自分がイヴという名前で、車の事故のせいで記憶喪失に陥っていることは既に知っていた。そして、妊娠していることも。これからお腹の子の父親であるギリシア人富豪に会うというのに、その顔さえ思い出せないなんて…。病室のドアが開き、恋人だというタロス・クセナキスが現れた。信じられないほどハンサムな男性だが、冷たい影を感じる。どうしても記憶を取り戻せない彼女を抱きしめ、タロスが言った。「もう決して君を放さない。きみは僕の妻になるんだ!」