著者 : 西條奈加
狸穴屋は本日も大繁盛ーー。 祭りぎらい……浅草三社祭りが離婚の種に!? 三見の三義人……200年前、質屋に入れられたのは「海」だった 身代わり……訴えられたのはなんと、評定所のお偉方 夏椿……離婚を承知しない夫に嗅がせた妙薬とは? 初瀬屋の客……公事師の娘の頼みは、「客の後をつける」こと 証しの騙し絵……30年前に別れた夫が戻ってきたらしい。狙いは?
磨きをかけた悪の手管で、しぶしぶ善をなす、あの長屋の面々が帰ってきた! 表向きは善人ばかり、実は悪党揃いの善人長屋に、大事な根付を失くして憔悴するお内儀が訪ねてきた。加助の人助け癖がまた出たと嘆息する一同だったが、その根付がかつて江戸を騒がせた盗賊・白狐の持ち物とわかりーー。「白狐」「三枚の絵文」など六話を収録。粋な情けと謎解きで大向こうを唸らせる大人気シリーズ最新刊!
■第34回鮎川哲也賞選評、および第2回創元ミステリ短編賞選評&受賞作・歳内沙都「桜越しに空を撮る」掲載。■本邦初訳短編掲載などで贈る、特集「美しくも歪(ゆが)んだ世界へようこそー ジョン・コナリーの物語」。■気鋭による傑作読切 古矢永塔子「私たちの愛の巣」、嶋津輝「稲子のカフェー」掲載。■新野剛志が贈る、終戦まもない東京を活写する連作『粒と棘』、堂々の連載最終回ほか。
荒れ狂う海と未知の島、そして異国の民。ため息すら、一瞬たりとも許されないーー船大工を志すものの挫折し、水夫に鞍替えした和久郎は、屈託を抱えながらも廻船業に従事している。ある航海の折、船が難破してしまう。船乗りたちは大海原の真っ只中に漂う他ない。生還は絶望的な状況。だがそれは和久郎たちにとって、試練の始まりに過ぎなかった……。史実に残る海難事故を元に、直木賞作家が圧倒的迫力で描く海洋歴史冒険小説。
歴史小説家たちが紡ぐ時代の違う五つの物語が、あるひとつの「怪異」で繋がる。 読後に訪れるこの震えは、恐怖か、驚愕かーー? 異端にして傑作の歴史小説集、ここに誕生。 5つの「畏怖」が、この国の歴史を塗り替える 矢野 隆 有我 --鎌倉時代、壱岐。元寇に抗う男に訪れたある異常。 天野純希 死霊の山 --室町時代、近江比叡山。霊峰に現れた狐憑きの正体は。 西條奈加 土筆の指 --江戸時代初期 中部地方。墓の土饅頭から土筆が生え……。 蝉谷めぐ実 肉当て京伝 --江戸時代後期、江戸市中。山東京伝の妻は、自らを「人魚」だという。 澤田瞳子 ねむり猫 --江戸時代末期、大奥。城内に現れる不可思議な病。
江戸を舞台に、個性豊かな三人の婆たちの日常とその周りで起こる悲喜劇をコミカルに描く「女性の老後」をテーマにした長編小説。 名手宅の祐筆(文書や記録を取り扱う職)を得て静かな余生を過ごしたいお麓(ろく)は、おはぎ長屋という長屋に住んでいた。これで老後の安泰は約束されたと思い込んでいたが、その平穏な暮らしはわずか一年で終わりを迎えた。お菅(すげ)が越してくると、さらに半年後にはお修(しゅう)がやってきたのだ。二人の幼馴染はお麓の長屋を毎日欠かさず訪ねてきては、心底どうでもいい話をしゃべり散らす。 お麓はこの先、二人とうまくやっていけるのか。安穏に暮らすはずの余生はどうなってしまうのか。さらには、いろいろな事件に巻き込まれていき……。
【特集 「料理をつくる人」】 向日葵の少女 お蔦さんの神楽坂日記 西條奈加 ●相変わらず頼りになるお蔦さんと、さらに磨きのかかった望くんの料理の腕をご堪能ください 白い食卓 千早 茜 ●水族館で出会った女は、「お腹、すいていませんか」と私に声をかけ、弁当を差し出してきた メインディッシュを悪魔に 深緑野分 ●ニューヨークの料理人がつくる、悪魔を満足させるための至高の料理とは? 冷蔵庫で待ってる 秋永真琴 ●背伸びして買った憧れの食器に、自分のための手料理を盛りつけたくて 対岸の恋 織守きょうや ●上京後、姉のために料理をつくってきた俺。その姉の結婚披露宴の日、とある行動に出る…… 夏のキッチン 越谷オサム ●夏の午後、空腹に耐えかねたおれは、ひとりカレーを作る。俊英の爽やかな一編 【小説】 明治殺人法廷 芦辺 拓 ●十六歳の一家惨殺犯の弁護のため法廷に挑む迫丸。それは万に一つの勝ち目もない戦いだった 名探偵の有害性 桜庭一樹 ●名探偵のみならず、その助手にもあった〈有害性〉。衝撃を引きずったまま、夕暮たちは第五の事件現場へーー 特撮なんて見ない 澤村伊智 ●湯浅が提案した再撮影。そのシーンで、追加キャストの生徒が参加することになるが…… 粒と棘 少年の街 新野剛志 ●少年は浮浪児を農家に売る。それがかれらの幸せと信じてーー終戦後の東京で生きるひとびとを活写する連作 記憶の対位法 高田大介 ●神は彼を審したまい、彼の心根を知りたもうーー祖父の遺した「楽譜」の謎がジャンゴに与えた恩寵とは ディオニソス計画 宮内悠介 ●一九六八年、アフガニスタンで起きた二重密室殺人。密室を構成するのは周囲の視線と、銃痕のない宇宙服ーー クリスマス・イヴ フレッド・ヴァルガス 藤田真利子 訳 ●クリスマス……贈り物の夜、そして、暴力の夜。CWAインターナショナル・ダガー複数回受賞作家のクリスマス・ミステリ! 【コミック】 倍々の冒険 熊倉 献 ●「 祠に収めていた石を見つけてほしい」としゃべる蛇。そうすれば元の姿に戻れるというのだが……? 【特別企画】 〈日本推理作家協会賞・翻訳部門〉 応援メッセージ 【ESSAY】 私の小さな地図帖 山崎佳代子 装幀の森 柳川貴代 翻訳のはなし 谷垣暁美 乱視読者の読んだり見たり 若島 正 【COLUMN】 みすてりあーな・のーと 戸川安宣 ひみつのおやつ 中村あき 私の必需品 酉島伝法 【INTERVIEW 期待の新人】 麻宮 好 【INTERVIEW 注目の新刊】 宇佐美まこと 似鳥 鶏 町田そのこ 【訃報】 追悼 池 央耿 【BOOKREVIEW】
老舗糸問屋・嶋屋元当主の徳兵衛は、還暦を機に隠居暮らしを始めた。 風雅な余生を送るはずが、巣鴨の隠居家は孫の千代太が連れてきた子供たちで大にぎわい。 子供たちとその親の面倒にまで首を突っ込むうち、新たに組紐商いも始めることとなった。 商いに夢中の徳兵衛は、自分の家族に芽吹いた悶着の種に気が付かない。 やがて訪れた親子と夫婦の危機に、嶋屋一家はどう向き合う? 笑いあり涙ありの人情時代小説『隠居すごろく』、待望の続編! 一 めでたしの先 二 三つの縁談 三 商売気質 四 櫛の行方 五 のっぺらぼう 六 隠居おてだま
万両店の末弟、鷺之介が齢十一にして悩みがつきない原因とはーー。 時代小説の名手が描く、ホロリと泣かせる大江戸謎解き物語。 万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。かしましい三人の姉ーーお瀬己・お日和・お喜路のお喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。三拍子そろった三姉妹の傍にいるだけで、身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し……。そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。 ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、墓に置き忘れられていた櫛を発見する。その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだったーー。
武士から菓子職人に転身した変わり種の主、治兵衛。父を助ける出戻り娘、お永。看板娘の孫、お君。 親子三代で切り盛りする江戸麹町の評判の菓子舗「南星屋」には、味と人情に惹かれやって来るお客が列をなす。 麹町を大火が襲った夜以来、姿を見せなくなった気のいい渡り中間を案ずる一家だったが、ある日、思わぬところから消息が届き……。 「誰だって、石の衣は着ているもんさ。中の黒い餡を、見せねえようにな」 ほろりとやさしく切ない甘みで包む親子の情、夫婦の機微、言うに言えない胸のうち。 諸国の銘菓と人のいとなみを味わう直木賞作家の大人気シリーズ、最新刊! 〈収録作〉 饅頭くらべ 母子草 肉桂餅 初恋饅頭 うさぎ玉ほろほろ 石衣 願い笹 饅頭くらべ 母子草 肉桂餅 初恋饅頭 うさぎ玉ほろほろ 石衣 願い笹
少年は繰り返していた。空腹に耐えかねて、目の前にいる男の握り飯を奪う行為を何度も。それに気づいたとき、首だけの男と出会う。 その男は少年と同じく過去の記憶を無くしていた。侍だったと言うこと以外は。 彼らはなぜ、記憶を無くしているのか? 男はなぜ、首だけの姿になってしまっているのか? 第164回直木三十五賞を受賞した著者が、『千年鬼』(徳間文庫刊)に続いて贈る和風ファンタジー。 第一話 独楽の国 第二話 波鳥の国 第三話 碧青の国 第四話 雪意の国 第五話 消去の国 第六話 和茅国 第七話 波賀理の国
高校生の滝本望は、お蔦さんの愛称でご近所に親しまれる祖母と、神楽坂で暮らしている。その神楽坂では、万引きが多発しているというので商店街全体で警戒していた矢先のこと、和菓子店の主人が逃げる犯人に突き飛ばされて怪我をしてしまった!正義感に駆られる望と友人の洋平は、似顔絵を描いて犯人を捕まえようと思い立つが…。商店街を騒がせた出来事を描く「よろずを引くもの」を始め、書き下ろしを含む全七編を収録。粋と人情、そして美味しい手料理が味わえる大好評シリーズ、待望の最新作!
直木賞作家の新たな到達点! 江戸時代に九度蝦夷地に渡った実在の冒険家・最上徳内を描いた、壮大な歴史小説。 本当のアイヌの姿を、世に知らしめたいーー 時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、蝦夷地開発が計画されていた。 出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊に随行する。そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく……。 松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威、様々な困難にぶつかりながら、それでも北の大地へと向かった男を描いた著者渾身の長編小説!
祝言の翌日に、隠居の申し渡し⁉ 小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、相思相愛のお千瀬の生家、大店の仕出屋『逢見屋』にめでたく婿入り。誰もが羨む逆玉婚のつもりが…… 「鈴之助、今日からはおまえも、立場上は逢見屋の若主人です。ですが、それはあくまで建前のみ。何事も、最初が肝心ですからね。婿どのにも、しかと伝えておきます」 鈴之助の物問いたげな表情に応えてくれたのは、上座にいる義母のお寿佐であった。 「この逢見屋は代々、女が家を継ぎ、女将として店を差配してきました。つまり、ここにいる大女将と、女将の私、そして若女将のお千瀬が、いわばこの家の主人です」(本文より) 与えられた境遇を受け入れ、商いの切り盛りに思い悩むお千瀬を陰で支える鈴之助。 “婿どの”の秘めた矜持と揺るぎない家族愛は、やがて『逢見屋』に奇跡を呼び起こす……。
直木賞受賞後第一作 渾身の書き下ろし長篇。 小さな幸せが暮らしの糧になる。 当代一の人気作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。 作家の深い業にふり回されながらも己の道を切り開いていく。 横暴な舅(しゅうと)、病持ち・癇癪(かんしゃく)持ちの夫と姑(しゅうとめ)…… 修羅の家で見つけたお路の幸せとは? 「似たような日々の中に、小さな楽しみを見つける、それが大事です。 今日は煮物がよくできたとか、今年は柿の木がたんと実をつけたとか……。 そうそう、お幸(さち)が今日、初めて笑ったのですよ」(本文より)
「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」 江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。 青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張方をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。 裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったがーー(「はじめましょ」)ほか全六話。 生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。 【著者略歴】 西條奈加(さいじょう・なか) 1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノべル大賞を受賞し、デビュー。2012年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、2015年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。近著に『亥子ころころ』『せき越えぬ』『わかれ縁』などがある。
結婚して五年、定職にもつかず浮気と借金を繰り返す夫に絶望した絵乃は、身ひとつで家を飛び出し、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」に流れ着く。夫との離縁を望むも依頼できるだけの金を持たない彼女は、女将の機転で狸穴屋の手代として働くことに。果たして絵乃は一筋縄ではいかない依頼を解決しながら、念願の離縁を果たすことができるのか!?
可愛らしくもときに怖ろしい、江戸の猫が勢揃い! 守り神としての猫、事件を目撃する猫……いま読んでおきたい女性時代作家が描く珠玉のアンソロジー お店の守り神である木彫りの猫がなくなり、その行方を捜す「猫神さま」(西條奈加)、長屋で一番偉い猫の“サバ”が、夫婦の揉め事を解決する「包丁騒動」(田牧大和)、臆病な火消しの男へ按摩が与えた猫頭巾に込められた恐るべき謎「だるま猫」(宮部みゆき)など、愛らしくも摩訶不思議な存在である江戸の猫にまつわる短編六作を収録。 令和を代表する女性時代作家の共演による珠玉のアンソロジー。
人気女性作家による時代小説競演 己の腕で生き抜くおんな職人の矜持 真葛……京都の幕府直轄御薬園で働く女薬師 沙奈……亡き母の仕込みを継ぐ色酢の?造り職人 おりん……木肌の魅力に惹かれ根付職人に弟子入り 蕗……妹と峠の茶屋を切り盛りするそば打ち職人 市子……その身に霊を降ろす「口寄せ」を使う巫女 梅……身体のみならず心の凝りもときほぐす揉み屋 当代の人気女性作家が、己の生きる道を自らの 腕と業で切り開く女性職人の凛々しさを巧みな 筆致で活写した、傑作時代小説アンソロジー。 春雀二羽 澤田瞳子 藍の襷 志川節子 掌中ノ天 奥山景布子 姉妹茶屋 西條奈加 浮かれの蝶 小松エメル おもみいたします あさのあつこ