ジャンル : ノンフィクション > 文庫(ノンフィクション)
大橋賢三は黒所高校二年生。周囲のものたちを見返すために、友人のカワボン、タクオ、山之上らとノイズ・バンドを結成する。一方、胸も大きく黒所高校一の美人と評判の山口美甘子もまた、学校では「くだらない人たち」に合わせてふるまっているが、心の中では、自分には人とは違う何かがあるはずだと思っていた。賢三は名画座での偶然の出会いから秘かに想いをよせていたが、美甘子は映画監督の大林森にスカウトされ女優になることを決意し、学校を去ってしまう…。-賢三、カワボン、タクオ、山之上、そして美甘子。いまそれぞれが立つ、夢と希望と愛と青春の交差点!大槻ケンヂが熱く挑む、自伝的大河小説、感涙の第2弾。
うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。
殺人。不正。容疑者の失踪ー。浅見光彦は、事件の背後に見え隠れするヤミ米市場の実態を追って、新潟そして山形県酒田市へ。だが、事件の重要な鍵を握る遠藤という老人が殺害され、竹村警部が捜査を続ける長野県でも新たな犠牲者が…。二大名探偵の行く先々で立ちはだかる食管制度の光と影。基幹農作物を巡る巨大な利権の正体とは?そして、日本の社会システムの根幹を揺るがす事件の結末は?「米神話」の崩壊を予見し、日本人の文化、生き方までを深く問うた内田文学の金字塔。
中江在は変わり者の父親と二人暮らし。高校入学後ほとんど単身赴任状態の父が在のためにお手伝いさんを雇い入れた。やってきた家政夫・赤羽江東寺はいたれりつくせりで変態でなければ文句なしのお手伝いさん。だが、過剰なスキンシップを図る東寺に在は戸惑いつつも、なぜか本気で拒絶できない。それどころか、過度のスキンシップを淋しさの裏返しと思いこみ、東寺をしあわせにしてやると決意するのだが。
明良は幼いころからまーくんが大好きで、何をするにもあとをついていっていた。大きくなって、呼び方がまーくんから政孝に変わるころ、明良の気持ちも幼なじみのものから変化してきた。だが、その気持ちを政孝に知られて今までの関係をこわしたくない明良は、だんだん政孝をさけるようになった。ところがある日、明良に黙って政孝が引っ越してしまった。ショックを受けた明良は結局、春から政孝と違う高校に通うことに。このまま政孝を忘れることができるのか!?そんな時、同窓会のハガキが舞い込んできて。
いつもの暮らしのそこここに、ひっそり開いた異世界への扉ー公園の砂場で拾った「雛型」との不思議なラブ・ストーリーを描く表題作ほか、奇妙で、ユーモラスで、どこか哀しい、四つの幻想譚。芥川賞作家の初めての短篇集。
ぶらりぶらりと歩きながら、語らいながら、静かにうつらうつらと時間が流れていく。鎌倉・稲村ガ崎を舞台に、父と息子、便利屋の兄と妹の日々…それぞれの時間と移りゆく季節を描く。平林たい子賞、谷崎潤一郎賞受賞の待望の文庫化。
アメリカのカルト教団教祖であり、人気ミュージシャンでもあるフィラードが来日した。彼を第三の存在として注目する彬の叔父、学の忠告でフィラードをマークした瀬名らだが、かえって彼に彬と菜津央をさらわれてしまった。瀬名を求めながらフィーラドに凌辱され苦しむ彬の前に、監禁されていたはずの菜津央が現れる。菜津央は彬を裏切り、瀬名を倒すと宣言するのだ。一方、彬たちを救うためフィラードがいるホテルへやって来た瀬名らは、菜津央と対決する。フィラードが知る、瀬名と彬をひきさく真実とは?シリーズますます快調。
徳川の治世、荒涼とした那須野ヶ原の夕暮れ、敵討ちの旅にあるお国と従者五平、虚無僧姿の敵友之丞、サスペンス性を帯びた三人の関係。単なる仇討劇に留まらず、人間の愛欲と悲哀が赤裸々に描かれた「お国と五平」ほか、二十四篇の戯曲作品のうち「恋を知る頃」「恐怖時代」「白狐の湯」「無明と愛染」の四篇を収める。
活動写真という夢の実現に奔走する吉之助は、俳優にしたてた混血の美少女グランドレンの肉体に翻弄され、映画こそが唯一の芸術であった筈が…。谷崎自らの映画制作体験を反映する「肉塊」、本牧の住まい、山手の家、忘れ得ぬ人々など追憶を創作の形にと、横浜時代の暮しぶりを回想した「港の人々」の二篇を収める。
朝、ゴミ出しに行った純輝はアパート前のゴミ集積所で、ゴミ袋に入って頭だけを出している男を発見。「俺を拾え」と命じられた純輝は気圧されて男を部屋に入れてしまい、ゴミ男・格に居着かれてしまう。拾ってくれたご主人さまに尽くすと言う格だが、強引で俺様でいて高校にも純輝の部屋からきちんと通うマイペースな格に純輝は生活をかき乱されてー。
花も鳥も風も月もー森羅万象が、お慕いしてやまぬ女院のお姿。なればこそ北面の勤めも捨て、浮島の俗世を出離した。笑む花を、歌う鳥を、物ぐるおしさもろともに、ひしと心に抱かんがために…。高貴なる世界に吹きかよう乱気流のさなか、権能・武力の現実とせめぎ合う“美”に身を置き通した行動の歌人。流麗雄偉なその生涯を、多彩な音色で唱いあげる交響絵巻。谷崎潤一郎賞受賞。
国姓爺鄭成功、幼名福松は、東アジアの海の実力者を父として、日本人田川氏の娘を母として、平戸に生まれた。七歳のとき福建泉州へと渡り、父のもとで成長、やがて南京の太学に学ぶ。折りしも李自成軍に首都北京を占領された明朝は滅亡、山海関を越えた満洲鉄騎軍は中国大陸制圧に向けて怒涛の南進を開始した。唐王隆武帝を奉じ、父とともに反清勢力を率いることになった若き英雄の運命は。
古墳の闇から復活した大津皇子の魂と藤原の郎女との交感。古代への憧憬を啓示して近代日本文学に最高の金字塔を樹立した「死者の書」、その創作契機を語る「山越しの阿弥陀像の画因」、さらに、高安長者伝説をもとに“伝説の表現形式として小説の形”で物語ったという「身毒丸」を加えた新編集版。
男女両性の長所から生命の芸術をクリエイトする「創造」、谷崎の府立一中時代の友人・大貫晶川をモデルに描く「亡友」と長篇「女人幻想」-器量よしとお洒落とで評判の兄妹。思春期を境により美しくなってゆく光子、女性的の美を羨みこだわり続ける由太郎は、女を騙すことばかり覚えて…。
無職の法学士斎藤と英子の贅沢な道行、ひと夏を共にした玉置は斎藤から英子を奪う「熱風に吹かれて」。自身の性の女性化を自覚しつつ女の奴隷となって破滅してゆく幸吉「捨てられる迄」。“天性の麗質”を楯に放蕩三昧、女から女へぬくぬくと生きるK「美男」。自信と誇りに輝いていた若き谷崎の面影が彷彿する作品三篇。
渋江抽斎(1805-58)は弘前の医官で考証学者であった。「武鑑」収集の途上で抽斎の名に遭遇し、心を惹かれた鴎外は、その事跡から交友関係、趣味、性格、家庭生活、子孫、親戚にいたるまでを克明に調べ、生きいきと描きだす。抽斎への熱い思いを淡々と記す鴎外の文章は見事というほかない。鴎外史伝ものの代表作。改版。
皇女となる者、齢十六にして受け継ぐべしー神世の時代より連綿と続く高貴なる一族、フィリス公爵家。フィリシア公国を治める公爵の居城では、古からの口伝に従い、今日十六歳の誕生日を迎えた美貌の第一公女ルカシオンに全ての秘密を知らしめる謎の儀式『継承式』が執り行われようとしていた。継承の間で祝詞を唱え準備を進める后妃と大婆。その時、余人の立ち入ることを許さぬこの神聖な空間に、不遜な笑みを浮んべた軍服の男が足を踏み入れてきた。