出版社 : ベストセラ-ズ
「大和が最後の砲撃をしたから、大日本帝国は勝ったんじゃないですか」防衛庁資料編纂室事務官、古柳は小さな男の子の声に窓の外へと目をやる。ゆりかもめから見える光景に思わず我が目を疑った。お台場にある「船の科学館」に見えるその偉容。-なんで大和がここに?日本が先の大戦に勝利したって…。庁内の資料室にある資料も変革した現実を如実に示していた。現実は、この資料の世界なのか、それともこれまで知られていた史実なのか。もはや本当の世界はどちらなのか区別がつかない中、彼は迷い込んだ異常な世界の行く末を見届けようと資料に没頭する。日本勝利のシナリオが現実にとって変わった世界で、幻の巨人飛行艇「零艇」が太平洋戦線を雄飛する-。
小学校6年生のマイケルは、思いどおりにならない現実に絶望して、こんな生活から抜け出したいと思っていた。そんなある日、彼は交通事故に遭ってしまい生死の境をさまよう。しかし彼は、夢の中で一人の天使に出会い、“本当の自分”が実現できる場所に戻るために生き返る。そして、7人の天使に会うべく、不思議な世界へと旅立つ-。
「対空目標、本艦到達まであと三十秒!」「くらま」艦内にアラームが響きわたり、乗員の叫び声がこだまする…。先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった艦橋。傍らでは豊田艦長が舵輪を握っている。中西要群司令は懊悩していた。(なぜトマホークが向かってくる?この時代にはなかった兵器なのに)我々以外にもタイムスリップした艦がいた、というのが幕僚たちの見解だ。妥当な結論ではあったが、それなら彼らの目的はいったいなんなのか。中西はやめていた煙草を急に吸いたくなった。昭和十九年十二月三日。六十年前の世界に迷い込んだ自衛艦は、昼下がりの陽光に照らされ、ルソン海峡を北上していた。感動の完結編。
昭和二十年初夏。愛知県各務原、海軍航空技術廠。(なぜ、今ごろレシプロ戦闘機などを開発したのか。あと数年もすれば、ジェット推進の戦闘機の時代になるというのに)次期戦闘機の飛行試験。坂井三郎は嘆息しながら、二機を見やった。一機は中島飛行機と陸軍共同開発の試製重戦、キ-84。もう一機は海軍と三菱重工の対抗馬、A7M2。(戦訓は一撃離脱が正しい戦法だと教えている-)上空は薄くたなびく雲を除けば、明るい青一色。坂井は“本日の相棒”に向かい歩き出すと、ふと空を見上げた。零戦の勇士、富岳、有人噴進機、震電計画…そして、新たなる大戦。
平成十三年十一月、米軍を後方支援すべく、第二護衛隊群はインド洋にいた。補給作業を順調に続けて十日あまり、突如、凄まじい閃光が彼らを襲う。その刹那、旗艦「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋を漂っていた。動揺する乗組員たち。群司令たる中西は、皆に窮余の選択を促した。決が出る-我々は旧日本軍と共同して米軍と戦う!大敗を喫したマリアナ沖海戦の逆転が、中西たちの双肩にかかった。激闘の末、辛勝に持ち込んだものの、小沢艦隊は搭載機の大半を失い、派遣艦隊も積んでいる最新兵器を多数費やした。が、中西たちの戦いは、まだ終わったわけではない。次なる戦場は、レイテ。史上最大の海戦が目前に迫りつつあった。時空を彷徨する派遣艦隊を待ち受ける試練の日々。好評のシリーズ第二巻。
上杉景虎との邂逅。直江兼続の胸中で懐かしさと苦さが交錯する。袂を分かって以来、景虎は兼続と彼の主である上杉景勝を恨み続けている。突然面会を申し入れてきたのには、何か裏があるというのか…。確か、景虎は会津征討へと北進する徳川勢の一角に名を連ねていたはず。「恨み骨髄の我らに何やらお話があるとか」年を経ても変わらない景虎の凛々しい目を、兼続は正面より見据えた。「内府が兵を退いておるぞ。早くせねば、三河狸が逃げおおせてしまうわ」久しぶりに聞いた景虎の第一声は、「またとない機会」を兼続に告げていた。(家康、逃げるでない。天下が欲しくば我らと一戦交えよ)兼続は逸る気持ちを目前の男に気づかれぬよう、両の拳を握り締めた。
回転を上げる蒸気タービン。「くらま」は船体を震わせ、岸壁を離れた。平成十四年十一月、テロ対策特別措置法による第一陣の旅立ちである。南下を続ける第二護衛隊群は、佐世保を出港して一週間後、シンガポールに寄港したのち、マラッカ海峡を抜けてインド洋へ出た。十二月二日、米艦艇に対する初の補給作業が開始され、最初の作業より十日余りが過ぎたある日-。「途切れるサイクルは短くなりますし、雑音もひどくなるばかりです」通信状態が芳しくない。群司令たる中西要海将補は、顔をしかめた。その直後、凄まじい閃光と震動が艦橋を襲った…。「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋にいた。時空を漂流する派遣艦隊を待ち受ける苛酷な運命。新シリーズ刊行開始。
荒木村重の謀反に乗じて摂津を脱走し、北条氏に庇護を求めて以来、岡崎三郎信康は伊豆韮山に厄介になっていた。ここは北条と武田の城が入り乱れる最前線。信康は小田原にとって体のいい盾である。そのころ、大久保忠世たちは信康の正室徳姫を武田方より奪還すべく、わずか二〇〇ほどの数も顧みず、二股城に寄せていた。-若殿、姫を取り返しましょうぞ。されば、次は…。三河の強情者たちが奮迅するは、信康のためだけではない。-失われし故郷を欲すればこそ。牡丹雪の舞い散る中、忠世は巨大な法螺貝を吹いた。それに続いて、異様な鬨の声が起こった。城が炎に包まれていく。人の一生は重荷を背負った遠き道。徳川の兵どもの終劇、とくとご覧あれ。
大正六年三月に誕生した超弩級戦艦、山城。竣工当時世界最大だった戦艦も、昭和の代では二線級となりつつあった。そんな老朽艦に三度目の“お色直し”を施すことが決まった。艤装委員長に就任したのは、松田千秋海軍大佐。彼は時代遅れとなった大艦巨砲主義を代表するエリートである。「大砲屋」から「航空屋」へと戦争の主導権が移る中、航空母艦を中心とする機動部隊が海戦の主役となり、巨砲を擁す戦艦群は、表舞台から去りゆく運命が待ち受けていた。劣勢に立たされた大砲好きの楽天家たちは、ロートル艦の大改装と、砲術のプロの組み合わせに妙な期待を抱いた。新たなる山城の生涯が始まろうとしていた…。
西暦一九四〇年秋。戦乱の渦が全地球を覆おうとする、その時…。世界は日英VS米独という奇怪な勢力構造によって統べられていた。英国本土航空戦に敗退したドイツ第三帝国総統兼州知事ヘスは、停滞状況を打破すべく、新鋭戦艦“ビスマルク”を米国本土へと回航させる。迎え撃つは“フッド”“ロドネー”そして“金剛”“陸奥”の戦艦部隊-。一年後、日英連合艦隊は総力をあげてハワイ真珠湾を奇襲した!一方、アイスランドを無血占領した米大西洋艦隊は一挙に南下を開始し、ここに第二次ジェットランド沖海戦の火蓋は切られたのである。混沌とした世界を裏で牛首る実業家ヒトラーは不気味に頬を歪めた。彼が胸中に秘めた世界を掌中にする策とは、いったい何か?大西洋に寧日なし!!大河架空戦記、待望の続刊、ここに登場。
連合艦隊司令長官に就任した山本五十六大将が断行した破格の人事。海軍伝統の先任序列制を無視し、山口多聞少将を第一航空艦隊のトップへと抜擢した。それは、特進人事をしぶる海軍省や軍令部を怒鳴りつけてまで行なった山本の快挙であった。欧州大戦への参戦をもくろむアメリカは、日米開戦を口火として、ヨーロッパを席巻するドイツへ宣戦布告するつもりでいる。満を持すルーズベルト大統領の狡猾な笑い顔。(向こうがその気であれば、開戦時期はこちらの機を逸してはならない)山本は唇を強く噛むと、駐米大使野村吉三郎の思慮深い顔を思い出した。彼よりもたらされた密書から、すべては始まったのである。新たな顔と新たな戦略で臨む「もう一つの太平洋戦争」の行く末は。
「一九三九年四月一日、ドイツ第三帝国、アメリカ合衆国に併合」平和バランスを崩壊させるこの歴史的な大事件に全世界は震撼した。総統兼州知事ヘス、米大統領ゲッペルスらによる世界征服遊戯の始まり。一投目の賽をしなやかに振る実業家ヒトラー。自由世界の雄、フランスは降伏し、パリは鉤十字の旗に蹂躙された。孤立するイギリスはかつての盟友、日本に援兵を請う。欧州に向けて出航する遣英義勇艦隊。率いるは小沢治三郎少将。エピソード3より遡ること二六〇年。日本人が選んだ亡国に直結する選択肢とは?すべてはここから始まった…。『新世界大戦』シリーズにおける第二次世界大戦の全貌を描く、大河架空戦記の冒頭を飾る真の第一巻、堂々の刊行開始。
(もはや開戦は避けられん。こんな時に、山本が逝ってしまうなんて)永野修身軍令部総長はため息をついた。一昨日未明にもたらされた訃報。山本五十六連合艦隊司令長官の突然の死に、永野は頭の整理がつかない。ハワイ作戦のような投機的なプランに軍令部はじめ反対意見も多かったが、永野個人としては山本に賭けてみよう、と思っていた矢先だった。未曾有の対米戦争を戦い抜くには、豪胆さと強い信念をあわせた持った男がリーダーでなければとても無理な話である。(及川は反対しているが、やはりあいつしかいない)「車を用意してくれ。そうだな、三時間、いや四時間ほど留守にする」一時間後、永野を乗せた武蔵野航空工業と書かれた看板の前にいた。「戦争はビジネスだ」-新たなる発想の架空戦記。待望のシリーズ開幕。
不倫カップルのような二人がとまり木に座ってこそこそやっている。ハリウッド女優もひれ伏す女の美貌に、男たちは目を奪われずにはいられない。「先生、タイヘイヨウセンソウのヘイワイジはウマクいくのでしょうか」「すべては『彼』しだいさ」男が煙草をくわえると、バーテンダーがライターの火を差し出す。「ドライ・マティニーを二つ。あっ、オリーブは…」抜いておきます、とバーテンダーは男にピースサインをして、離れた。「いよいよ明後日だね。大正十五年への旅」窓の外には「氷川丸」のイルミネーションがきらめいている。いや、たしか今年から船上レストランは「みかさ」に変わったはずだ。台風十四号が近づいている、となぜだか嬉しそうに話す客の声が聞こえた。