出版社 : ベストセラ-ズ
日本陸軍のガダルカナルからの撤退で幕を閉じたソロモンの空海戦の後、アメリカは連合艦隊を追い求めていた。1947年11月、日本空母に初めて搭載されたカタパルトから機体が弾き出された。改造なった航空母艦・伊勢の誕生だった。姿を現わした連合艦隊はニューカレドニアの攻撃に成功した…。その頃、アメリカ軍内部では対立が激化していた。ニミッツを中心とする海軍とマッカーサーをいだく陸軍の対立である。ヒトラー大統領の焦燥は深まる…。日本に戻った伊勢を待ち受けていたのは、水平線の彼方から現われた1000機近い航空機の大編隊だった。それは再建なった全連合艦隊の新たなる姿だった。対米戦勝利を期待され、連合艦隊司令長官に就任した山口多聞が、日本の全勢力をつぎ込んだその勇姿を旗艦から見つめていた。
比島攻略戦がはじまって一ヵ月、作戦は暗礁に乗りあげていた。芳しくない戦況は陸海軍の齟齬を来たし、両者の溝は深まりつつあった。「陸軍はできるだけのことをしている…」「…海軍部としては動きかねますな」田中新一参謀本部第一部長と黒島亀人軍令部第一課長の互いに譲らぬ主張は連絡会議を紛糾させ、混迷をきわめた。「もうよかろう、今は駆け引きなどしているときではない」山本五十六軍令部総長の凛とした声が響き、軍令部が頭を下げることで陸海軍一触即発の危機はかろうじて避けられた。思わぬ内憂に野分礼二首相はため息をつくばかりであった。さらに新たなる敵が野分、そして日本の前に立ちふさがろうとしていた。
赤城、加賀、蒼龍、日本の誇る機動部隊がミッドウェーの波間に消える。ただ一隻、阿修羅の奮戦を続ける空母の命運も風前の灯火であった。「か、艦長はいるか…総員に退艦命令を…だ、出してくれ」空母座乗の第二航空戦隊司令官がもうろうとした表情で告げる。「うっ…おーい…俺の足を誰か羅針盤に…ううっ…縛れ。か、棺桶から流れ出したら…うっ…たまらんからな…た、たのむ…」かろうじてつぶやくと、重傷の司令官は意識を失った。「よーし今だ、司令官を運び出すんだ。いいか、しばらくは目を覚まさんよう安定剤を多めに打てと、軍医に言うんだぞ」艦長が大声で叫ぶ。司令官は屈強な男たちに担ぎ出されていった。時は流れ昭和19年10月、レイテ湾。九死に一生を得た男が大和に佇む。
昭和18年10月8日午前0時-アメリカによる一方的な対日最後通牒の期限が切れた。日米両国は、ついに戦争状態に突入した。開戦日の午前4時に、ハワイ・オアフ島の真珠湾基地30キロの海域で4隻の潜水艦が一斉に浮上した。それは、日本海軍の奇襲作戦を実行する秘密部隊=01遊撃隊の先遣隊だった。各艦から艦対地ミサイルが発射され、真珠湾基地は火焔地獄と化した…。同じ頃、角田覚治率いる遊撃隊本隊は、ミッドウェー北方200キロにあった。装甲空母「白鶴」より発進した70機の攻撃隊により、ミッドウェーのアメリカ航空勢力は壊滅…。米太平洋艦隊は無力化され、ルーズベルト大統領の焦りは強まる。さらに、ハワイに向かう大輸送船団に、日本潜水艦隊の雷撃が迫る。
CICに立つ米海軍の智将、レイモンド・スプルーアンス中将。日本艦隊を返り討ちにすべく、詳細な情報をもとに仮泊地を出航した米艦隊だが、スプルーアンスは奇襲攻撃に怯えていた。防御態勢も鉄壁、不安要素は何もないはずであった。ただ一点を残して…。彼を不安にさせているもの、それは日本軍の新型戦闘機の存在であった。米海軍の高度かつ緻密な情報収集能力をもってしても、“甦った零戦”こと烈風の存在は不明な点が多かった。さらなる調査と、ゼロを圧倒した二機一組の編隊を維持しアタックする戦術を戦闘機部隊に徹底することで、冷静沈着な将軍は、新たなる敵を仕留めるべく準備を開始した。かくして、日米機動部隊激突の刻が迫りつつあった-。
“ビッグY”に安らぎのときは訪れようとしなかった。1975年4月29日、南ベトナムの首都サイゴン沖-。長きにわたる泥沼の戦争はさらに深みを増し、多くの人々を苦しめていた。平和裡の解決を目指した和平協定は裏切りと謀略の末、アメリカが守り続けた南ベトナムをついに崩壊へと導いていく。ことここに至っては、アメリカにできることは一つしかなかった。「サイゴンが陥落する前に在南ベトナムの合衆国国民約1000名、南ベトナム政府の要人とその家族約6000名を救出、収容せよ」これが“ビッグY”こと「モンタナ」を含む第七艦隊が受けた最後の命令であった。今なお世界最大最強の45口径46センチ砲が上向き、発射準備をする。我らの「大和」が眠りにつく日は来るのか…。
息が洩れるような笑い声が御殿内にこだまする。ここは、天正10年6月2日早暁、京都四条西洞院本能寺。天下一統を目前にした織田信長切腹の間であった。「上様をここより脱出させたい」刃を握る信長を前に、歯の抜けた口で笑う奇妙な男が現われた。(こやつどこからはいってきた?)訝しむ信長に対しさらにつづけて、「海の向こうにお逃げなされ。堺湊にポルトガル船が待っています」と途方もない囁きをし、また奇怪な笑い声を上げた。なにかに憑かれたように無言でうなずいた信長の額に怪人の指が触れたとき、覇王の新たなる伝説がはじまった-。
大学生のシンヤは、通学定期をひろってくれた美しい女子高生、穂坂恵にひとめ惚れをしてしまう。内気なシンヤは告白できないまま恵の後を追い回し、朝の通学路、学校のトイレ、そして自宅の浴室まで、ナマの日常を次々とカメラに収めていく。通学途中、恵の親友である陽子に注意を受けたことから、シンヤの怒りが爆発し、凶暴なタクヤと冷酷なトウヤの別人格が出現。タクヤたちは陽子を凌辱し、恵を守ろうとする女の子たちを次々と襲う。次第に追い詰められていく恵。分裂した人格が求める、ゆがんだ愛の行方は…。人気ソフト会社「にくきゅう」が放つサスペンスADVの小説化。
時は退廃の風たちこめる大正末期。帝大生、蒲生鉄哉のもとにもたらされたアルバイトは財閥の総帥、北畠家での住み込みの仕事だった。不吉な死の匂いの漂う館には、夜な夜な縄で責めさいなまれる二人の美少女と淫蕩な未亡人、そして北畠家乗っ取りを謀る後見人が棲んでいた。娘たちの調教を強いられた鉄哉はみずからの命をかけて、彼女たちを救い出そうと決心するが…。陰謀と肉欲がうごめく長く暑い夏の日々のよどんだ均衡を破ったのは毒薬と銃声の饗宴だった。
昭和20年5月18日、サイパン島に地鳴りが響きわたる。米艦隊による艦砲射撃の凄まじき轟音であった。容赦のない鉄のスコールが日本軍に降りそそぐ。マリアナ諸島を守備する中部太平洋方面艦隊司令長官、山口多聞中将の顔色も冴えない。頼みの綱であった連合艦隊は、横須賀ですでに壊滅していた。孤立無援-それが、中部太平洋艦隊の置かれた状況であった。反撃もままならぬまま、同月21日未明、山口司令長官は唇を噛みしめ、サイパン島をあとにした。マリアナ諸島は米軍に制圧され、新たなる強兵の配備が開始された。それは、日本軍の誰も目にしたことのない、巨大な爆撃機であった。
モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死を遂げる-。その陰に策動するウィーン宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄に秘められたメッセージを解読。一七九一年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。85年度江戸川乱歩賞受賞作。
高校教師、矢沢はクラス委員の田村麻美を犯し、従順なメス奴隷におとしめることに成功した。麻美は復讐のため学内有数の美少女、佐伯由美子の誘拐を矢沢に持ちかける。そして夏休みがはじまり、ふたりは由美子を監禁しSM調教を開始する。暴行と凌辱の嵐の中、苦痛から快楽へと目覚めていく由美子。やがて、消えた由美子を追って親友平井美恵子が捜索をはじめるが…。「妖獣戦記」の広崎悠意がはなつ禁断のSMゲーム「虜」の小説化。
昭和20年8月15日、「大和」は夕日の中にその姿をとどめていた。降伏文書の調印を終えた2週間後、呉にも進駐軍が大挙して押し寄せ、旧海軍艦艇の接収作業が開始された。むろん「大和」も例外ではなかった。ミッドウェーをはじめ重要な戦局で常に勝利を収めた名将レイモンド・スプルアンスが太平洋艦隊への編入を強く望んだのである。米海軍は、「大和」を改修するとともに、操艦技術を習得させるために、旧乗組員たちを軍属扱いで乗艦させた。日米の乗員たちが手を携える、ようやく訪れた平和であった。が、安息の日々は長くは続かなかった。昭和25年6月25日未明、北朝鮮軍が韓国へ侵攻したのである。それは、新たなる「大和」の旅立ちとなった。
戊辰に始まった徳川幕府と薩長連合軍の戦いは、慶喜の意志を受けた榎本武揚が幕府艦隊を率いて脱走し針路を北に取り、北海道国を打ち立てたことで、日本を二つに割る大戦争となった。二度にわたる津軽海戦の結果、太政官軍が勝利を収め、両国は休戦条約を結んだ。分裂の危機を回避した日本に迫る新たなる危機-それは、北の猛獣ロシアの存在だった。1874年6月、樺太で監視につく男たちの目の前にロシアの装甲艦の姿があった。甲板にぎっしりとつまっていた兵はボートに分乗し、ついに上陸を開始した…。樺太からロシアを追い出すために開戦を決意した日本は、総力を結集し、北の海に向かう。対するロシアは、バルト海から最新鋭艦を回航した太平洋艦隊で日本に挑む。ついに、日本の命運を賭した壮絶なる艦隊決戦の幕が開く。
連合艦隊司令部が陸上から指揮をとる異例の事態で発令された作戦第一弾は、空母飛行機隊により米輸送船の強襲であった。ガダルカナル沖での日米の熾烈な攻防戦が始まる。米海軍の新鋭機F6Fの待ち伏せに遭い、緒戦は痛み分けとなった。再度、敵戦闘機を撃破すべく零戦隊が飛び立った直後、山本五十六連合艦隊司令長官に内地帰還の命令が届いた。超大鳳を核とする新機動部隊編制に山本の意見が必要とされたのである。山本は帰国すべく、急遽ラバウルを飛び立った。同じ頃、この緊急電報をキャッチしていた米空母ホーネットでは、山本機を撃墜すべく、80機のグラマンに出撃準備が命じられていた。日米の命運を分ける出来事が起きようとしていた。
敗色迫る昭和19年末-母港呉に向かってひた走る巨艦があった。日本海軍に残された最後の切り札、不沈空母「信濃」である。追いすがる米潜水艦の魔手からどうにか逃げのびた乗組員たちだったが、このとき成し遂げた偉業にまだ気づかずにいた。彼らは海軍の希望を守り通すことで、呉で待つもう一艦に奇跡とも呼ぶべき幸運をもたらしたのである。翌20年4月、連合艦隊最後の水上部隊に出撃命令が下された。もはや生還の望みなどない第二艦隊死出の旅立ちであった。しかし二艦隊旗艦、帝国海軍いや日本が誇った世界最大で最強の戦艦の行く末を、神のほかに何人が知りえたであろうか…。誰も知らない「大和」の新たなる歴史が始まろうとしていた。
国土は千々に分裂し、「律令(法律)」は失われ、悪鬼や化生の跳梁を押さえる道士の呪禁も効をなくした、奇しき乱世の物語。屈強な若武者から、か弱い少女に変成させられた「半神仙」の遍歴譚-。強硬な軍事国家「北漠」の中枢部で、現の範疇をこえた、邪悪な事件が起ころうとしている…。人頭蛇身の妖異な母、九連玄女が手操る運命の糸に引き寄せられ、シャーフは「北漠」の首都へおもむく。そして、軍人と魔女の集団がくり広げている権力闘争に巻き込まれる。血風が渦巻く争い直中には、迷宮に封じられた太古の邪神、やみくもに「世の秩序」を呪い、滅亡の「混沌」を欲する蚩尤がいる。幾多の人命を糧として、蚩尤は今にもよみがえろうとしている。はたしてシャーフは、蚩尤の復活を阻止することができるのだろうか。
2029年2月に発売された、仮想戦記コンピュータゲーム『鋼鉄の嵐』は爆発的なベストセラーとなった。これは、ユーザーのイメージを歴史上の登場人物に投影し、天啓を与えることで架空の歴史が展開されるというゲームだった。この「鋼鉄世界」というゲームの中の架空世界で展開されていた思念は、世界のあるべき姿を大きく変化させ、新たな歴史を作っていたのだ…。-1870年、明治3年3月、津軽海峡を4隻の艦隊が北に進んでいた。その太政官政府艦隊を率いるのは、坂本龍馬。待ち受けるのは、北海道国海軍。北の海で今まさに、壮絶なる艦隊戦の火ぶたが切って落とされようとしていた!戊辰に始まった徳川幕府と薩長連合軍の戦いは、慶喜の意志を受けた榎本武揚が幕府艦隊を率いて脱走し針路を北に取り、北海道国を打ち立てたことで、日本を二つに割る大戦争となっていたのだ。果たして、日本を待ち受ける未来は。