出版社 : ベストセラ-ズ
“ビッグY”に安らぎのときは訪れようとしなかった。1975年4月29日、南ベトナムの首都サイゴン沖-。長きにわたる泥沼の戦争はさらに深みを増し、多くの人々を苦しめていた。平和裡の解決を目指した和平協定は裏切りと謀略の末、アメリカが守り続けた南ベトナムをついに崩壊へと導いていく。ことここに至っては、アメリカにできることは一つしかなかった。「サイゴンが陥落する前に在南ベトナムの合衆国国民約1000名、南ベトナム政府の要人とその家族約6000名を救出、収容せよ」これが“ビッグY”こと「モンタナ」を含む第七艦隊が受けた最後の命令であった。今なお世界最大最強の45口径46センチ砲が上向き、発射準備をする。我らの「大和」が眠りにつく日は来るのか…。
息が洩れるような笑い声が御殿内にこだまする。ここは、天正10年6月2日早暁、京都四条西洞院本能寺。天下一統を目前にした織田信長切腹の間であった。「上様をここより脱出させたい」刃を握る信長を前に、歯の抜けた口で笑う奇妙な男が現われた。(こやつどこからはいってきた?)訝しむ信長に対しさらにつづけて、「海の向こうにお逃げなされ。堺湊にポルトガル船が待っています」と途方もない囁きをし、また奇怪な笑い声を上げた。なにかに憑かれたように無言でうなずいた信長の額に怪人の指が触れたとき、覇王の新たなる伝説がはじまった-。
大学生のシンヤは、通学定期をひろってくれた美しい女子高生、穂坂恵にひとめ惚れをしてしまう。内気なシンヤは告白できないまま恵の後を追い回し、朝の通学路、学校のトイレ、そして自宅の浴室まで、ナマの日常を次々とカメラに収めていく。通学途中、恵の親友である陽子に注意を受けたことから、シンヤの怒りが爆発し、凶暴なタクヤと冷酷なトウヤの別人格が出現。タクヤたちは陽子を凌辱し、恵を守ろうとする女の子たちを次々と襲う。次第に追い詰められていく恵。分裂した人格が求める、ゆがんだ愛の行方は…。人気ソフト会社「にくきゅう」が放つサスペンスADVの小説化。
モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死を遂げる-。その陰に策動するウィーン宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄に秘められたメッセージを解読。一七九一年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。85年度江戸川乱歩賞受賞作。
高校教師、矢沢はクラス委員の田村麻美を犯し、従順なメス奴隷におとしめることに成功した。麻美は復讐のため学内有数の美少女、佐伯由美子の誘拐を矢沢に持ちかける。そして夏休みがはじまり、ふたりは由美子を監禁しSM調教を開始する。暴行と凌辱の嵐の中、苦痛から快楽へと目覚めていく由美子。やがて、消えた由美子を追って親友平井美恵子が捜索をはじめるが…。「妖獣戦記」の広崎悠意がはなつ禁断のSMゲーム「虜」の小説化。
昭和20年8月15日、「大和」は夕日の中にその姿をとどめていた。降伏文書の調印を終えた2週間後、呉にも進駐軍が大挙して押し寄せ、旧海軍艦艇の接収作業が開始された。むろん「大和」も例外ではなかった。ミッドウェーをはじめ重要な戦局で常に勝利を収めた名将レイモンド・スプルアンスが太平洋艦隊への編入を強く望んだのである。米海軍は、「大和」を改修するとともに、操艦技術を習得させるために、旧乗組員たちを軍属扱いで乗艦させた。日米の乗員たちが手を携える、ようやく訪れた平和であった。が、安息の日々は長くは続かなかった。昭和25年6月25日未明、北朝鮮軍が韓国へ侵攻したのである。それは、新たなる「大和」の旅立ちとなった。
戊辰に始まった徳川幕府と薩長連合軍の戦いは、慶喜の意志を受けた榎本武揚が幕府艦隊を率いて脱走し針路を北に取り、北海道国を打ち立てたことで、日本を二つに割る大戦争となった。二度にわたる津軽海戦の結果、太政官軍が勝利を収め、両国は休戦条約を結んだ。分裂の危機を回避した日本に迫る新たなる危機-それは、北の猛獣ロシアの存在だった。1874年6月、樺太で監視につく男たちの目の前にロシアの装甲艦の姿があった。甲板にぎっしりとつまっていた兵はボートに分乗し、ついに上陸を開始した…。樺太からロシアを追い出すために開戦を決意した日本は、総力を結集し、北の海に向かう。対するロシアは、バルト海から最新鋭艦を回航した太平洋艦隊で日本に挑む。ついに、日本の命運を賭した壮絶なる艦隊決戦の幕が開く。
連合艦隊司令部が陸上から指揮をとる異例の事態で発令された作戦第一弾は、空母飛行機隊により米輸送船の強襲であった。ガダルカナル沖での日米の熾烈な攻防戦が始まる。米海軍の新鋭機F6Fの待ち伏せに遭い、緒戦は痛み分けとなった。再度、敵戦闘機を撃破すべく零戦隊が飛び立った直後、山本五十六連合艦隊司令長官に内地帰還の命令が届いた。超大鳳を核とする新機動部隊編制に山本の意見が必要とされたのである。山本は帰国すべく、急遽ラバウルを飛び立った。同じ頃、この緊急電報をキャッチしていた米空母ホーネットでは、山本機を撃墜すべく、80機のグラマンに出撃準備が命じられていた。日米の命運を分ける出来事が起きようとしていた。
敗色迫る昭和19年末-母港呉に向かってひた走る巨艦があった。日本海軍に残された最後の切り札、不沈空母「信濃」である。追いすがる米潜水艦の魔手からどうにか逃げのびた乗組員たちだったが、このとき成し遂げた偉業にまだ気づかずにいた。彼らは海軍の希望を守り通すことで、呉で待つもう一艦に奇跡とも呼ぶべき幸運をもたらしたのである。翌20年4月、連合艦隊最後の水上部隊に出撃命令が下された。もはや生還の望みなどない第二艦隊死出の旅立ちであった。しかし二艦隊旗艦、帝国海軍いや日本が誇った世界最大で最強の戦艦の行く末を、神のほかに何人が知りえたであろうか…。誰も知らない「大和」の新たなる歴史が始まろうとしていた。
国土は千々に分裂し、「律令(法律)」は失われ、悪鬼や化生の跳梁を押さえる道士の呪禁も効をなくした、奇しき乱世の物語。屈強な若武者から、か弱い少女に変成させられた「半神仙」の遍歴譚-。強硬な軍事国家「北漠」の中枢部で、現の範疇をこえた、邪悪な事件が起ころうとしている…。人頭蛇身の妖異な母、九連玄女が手操る運命の糸に引き寄せられ、シャーフは「北漠」の首都へおもむく。そして、軍人と魔女の集団がくり広げている権力闘争に巻き込まれる。血風が渦巻く争い直中には、迷宮に封じられた太古の邪神、やみくもに「世の秩序」を呪い、滅亡の「混沌」を欲する蚩尤がいる。幾多の人命を糧として、蚩尤は今にもよみがえろうとしている。はたしてシャーフは、蚩尤の復活を阻止することができるのだろうか。
2029年2月に発売された、仮想戦記コンピュータゲーム『鋼鉄の嵐』は爆発的なベストセラーとなった。これは、ユーザーのイメージを歴史上の登場人物に投影し、天啓を与えることで架空の歴史が展開されるというゲームだった。この「鋼鉄世界」というゲームの中の架空世界で展開されていた思念は、世界のあるべき姿を大きく変化させ、新たな歴史を作っていたのだ…。-1870年、明治3年3月、津軽海峡を4隻の艦隊が北に進んでいた。その太政官政府艦隊を率いるのは、坂本龍馬。待ち受けるのは、北海道国海軍。北の海で今まさに、壮絶なる艦隊戦の火ぶたが切って落とされようとしていた!戊辰に始まった徳川幕府と薩長連合軍の戦いは、慶喜の意志を受けた榎本武揚が幕府艦隊を率いて脱走し針路を北に取り、北海道国を打ち立てたことで、日本を二つに割る大戦争となっていたのだ。果たして、日本を待ち受ける未来は。
昭和17年(1942)7月18日未明、マーシャル北方500キロ洋上-。クエゼリン基地から発進した水上機母艦千歳の零式水偵が米艦隊に撃墜された。日本海軍が回避に回避を重ねてきた、日米の衝突がこのとき現実のものとなった。ハワイ攻撃を直前で中止して、日米開戦を回避した山本五十六司令長官も、戦艦大和を旗艦として、急遽、中部太平洋での邀撃作戦のため出撃した。大和は、武蔵・長門・陸奥・伊勢・日向の砲戦部隊を引き連れ、米艦隊に向かった。前方には、金剛・比叡・棒名・霧島の高速戦艦部隊、そしてその左右に、軽巡神通指揮の第2水雷戦隊の駆逐艦16隻が力強く波を崩いて突進していた。駆逐艦には、日本海軍が誇る九三式酸素魚雷264本が装填されていた。山本長官は、飛龍・蒼龍の空母部隊「九七艦攻・九九艦爆・零戦搭載」で、米艦隊を奇襲し、その混乱に乗じて戦艦部隊との砲戦に持ち込もうとした。
敗色迫る昭和一九年五月、突如姿を現わした巨大航空戦艦華厳・雷峰。マリアナ諸島制圧をめざすスプルアンス大将の米高速航空艦隊を、みごとに撤退させるが、依然として戦況は苦しい。はたして、フィリピン奪回に燃えるマッカーサーの大船団が迫りくる。ニューギニア沖ビアク島海上を邁進するマッカーサー艦隊へ、遠州竜一郎長官は、決然と黎明の奇襲を仕かけた。至近距離で激突する烈風とF6F。天山隊は800キロ魚雷を空母群にはなち、彗星隊は250キロ爆弾をかかえ、米戦艦へ突入していく。わき立つ海面に軽巡ナッシュビル艦上でなすすべもなく震えるマッカーサー。退却をはじめた米艦隊に、緒戦は完勝の超機動航空艦隊だが…。フィリピン沖はさらに戦雲がたれこめる-。
はなやかに匂う大輪のボタンがしおれるように、三百年続いた「帝国」の寿命がつきた後の中華世界。国土は千々に分裂し、「律令(法律)」は失われ、悪鬼や化生の跳梁を押さえる道士の禁呪も効をなくした、何でもござれの妖しい時代の物語-。新興国家「迂漢」に反旗をひるがえす革命軍の青年首領、乱凌王は、妖異な母、九連玄女の戒めを受け、か弱い少女に変成させられる。そして、運命の糸がもつれるままに、迂漢の後宮におもむく。そこは、黄泉へとつながる怪異な世界だった。命の理はくずれ、生と死の境界が溶解した、トワイライトゾーンそのものだった。
日米開戦は、ルーズベルト米大統領の陰謀だった。昭和16年の夏、日本を第二次世界大戦に巻き込もうとしていたのは、それぞれの思惑のもと、アメリカだけでなく、イギリス、ドイツの列強国だった。イギリスは、日本参戦によるアメリカの対ドイツ参戦を望み、ドイツは、ドイツ軍正面のソ連軍の満州派遣を望んでいたのである。遂に日本は、右に行こうと、左に行こうと、戦争へのみちしかなくなった。閉ざされた戦争の嵐の中、ひたすら戦争突入を回避しようとしていた山本五十六連合艦隊司令長官も、米海軍の挑発で連合艦隊を出撃させた。しかし、海軍工廠で建造中の超戦艦はまだ完成していない。日米対決の行方を左右する、戦艦大和をはるかにしのぐ50センチ砲搭載の超戦艦の建造が急ピッチで進められていた。書下ろし長編戦記シミュレーション。
ロシア極東地区で発生したクーデターを逃れ、ウラジオストクを脱出した20隻ほどの艦隊が日本の領海をめざした。政府は負傷者を乗せた艦の受け入れを認めたが、新潟西港に接岸した駆逐艦は主砲を回転させ、日本の巡視船をとらえた。上陸を開始したロシア兵は機動隊を掃討、さらに新潟県庁・県警本部・新潟空港を乗っとり、数多くの人間を人質にとった。政府は自衛隊三軍に対して防衛出動を命じ、陸上自衛隊の縮小改編にともなって結成された第一空中機動団が戦場に向け飛び立つ。双方が実戦に突入した頃、柏崎刈羽原発をロシアのヘリが襲い、プルトニウムの奪取に成功。待ち受けていた潜水艦に移され、日本海のいずこへと消えていった。一方、首相官邸では総理が服毒自殺をはかり、政府は責任者不在となり、混迷の度を増していた…。大好評の軍事シミュレーション、いよいよ完結。