出版社 : 新潮社
「霊泉」を利用した温泉療養施設には、重い病に悩む客たちが遠方から大勢集まり逗留する。僧玄山はそこで書道教室を開きながら客たちの相談相手にもなっている。末期ガンの久美子は明るく振舞う人気者だが深い孤独を抱えたクリスチャン。しかし身寄りのない男を助けた久美子は玄山に自らの「罪」について衝撃的な告白をする。クリスチャンの女性と禅僧の出会い。現役僧侶による話題の芥川賞候補作。
SHIBUYA…それはイナカモン立入厳禁の超アーバン・タウン。上京十余年目にして、ついに渋谷デビューした池袋系小説家が幻視したものは?インターネットカフェ、西麻布ナイトクラブ、国際インテリ集合パーティー、最先端無国籍レストラン等々、テクノポリスを魔界に変える新文学の誕生。
イギリスの高貴なる趣味人にして美食家が、南仏プロヴァンスを舞台として語る四季折々にふさわしきメニューの数々、幼少の甘き思い出。ブリニのサワークリームとキャヴィア添え、仔羊のロースト、桃の赤ワイン漬け、そして幾多の種類を誇るキノコを忍ばせたオムレツ…その絢爛たるレシピのあとにあなたを待つものとは?英文学界・料理界を騒然とさせた問題作。ウィットブレッド処女長篇小説賞受賞。ベティー・トラスク賞受賞。ホーソーンデン賞受賞。ジュリア・チャイルド賞受賞。
「父よ逃げるな」戦争中特攻隊の中隊長だったわたしの父は生き残り、研究に戻ったが、ある日わたしの目の前から消えた。父の真実を知るためにわたしは四つの不思議な旅に出た。父に近づけば近づくほど戦争の亡霊が取り囲み、執拗に追えば追うほど官能の匂いをまとい始める。時間と空間を超えて父をつかまえることはできるのか。著者によっていつか書かれなければならなかった官能の匂いに満ちた父探しの物語。
ぼくが屠畜場で毎日ナイフを持って働いている理由?よし、説明してみよう!キツイ仕事ゆえ、午前中で終業だから、共働きの妻にも幼い息子にも都合がいい。ぼくの体質にも最適なんだ。しかし…各紙誌で話題、爽快な新潮新人賞受賞作。
祖父の営んでいた京の米屋の店先で、みずから命を絶った父-。「もどろきさん」、京都と滋賀県境の還来神社をめぐって、祖父・父・私、三代の記憶と現在が交錯する。さまざまな時代を生きた人びとの、語られなかった言葉、「デッド・レター」の行方は。
「一度会いに来るよ」死の床で夫がつぶやいた。一周忌を過ぎ、墓参に訪れた妻が目にしたものは-。夫婦の深い絆を描いた表題作「花あらし」。そのほか、一見穏やかな日常を微妙にずらしたところに見える「不思議」や「怖い」の世界を鮮やかに切り取った、12編の短篇集。
大泥棒にして人殺し?だのに「フランス文学史上最高の抒情詩人」と今なお讃えられる破天荒な男フランソワ・ヴィヨン。謎につつまれていたその生涯を現代に甦らせたピカレスクロマン。
僕は一体、何者なのか-帰る場所も仕事も失い、巷を彷徨する僕の顔はふと気付くと8歳の時生き別れた父そのものだった。破天荒な人生を歩み、妾だった母にさえ捨てられた父。DNAに巣食う放蕩の血脈を断ちきるため、父親探しの旅に出た僕が突き止めた「真実」とは…。衝撃の告白小説。
幕が上がった。スポットライトが私だけに注がれる。躰じゅうの細胞がにわかに蠢き出す…その日暮らしでおひねり命のドサ・シンガー、それが私。まっとうには生きられないけど、命がけでぶらぶらしてる。ときたま甘い夢も見たくなるけど、このデコボコ道も悪くないー歌に魅入られ、骨の髄まで俗に浸った食いつめ者の煌めき。ワイルドでキュート、そして最高にイノセントな小説誕生。
東洋の富の一大拠点・香港。その返還を前に、永い眠りから覚醒するかのように突如浮上した、返還に関する謎の密約。いつ、誰が締結し、誰を利するものなのかー。全焼したロンドンのスタジオから忽然と消えた機密文書をめぐる英・中・米・日の熾烈な争奪戦が、世紀末の北京でついにクライマックスを迎えるとき、いにしえの密約文書は果たして誰の手に落ち、何を開示するのか。
秋田杉の樹海から白骨死体で発見された男女。道ならぬ恋に落ちた二人の無理心中なのか。女の妹・直里と男の友人・勲は、その謎を探るうちに杉の建材をめぐる不審な動きを知る。同じ頃東京では新築マンションの入居者に杉花粉症に似た症状が現れ、マンションの床材の杉が原因だと判明する。秋田から運び出されたその杉材に隠された秘密とは。直里と勲が直面する驚愕の真実ー。
津村沙世子ーとある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
狷介な老大富豪、トロイ・フェランが高層ビルから飛び降りた。莫大な富、巨大なコングロマリット、三人の元妻とその子供たち、そして周到に準備された巧妙なトリックを残して。総資産は110億ドル!!しかも、相続人に指名されたのは所在不明、経歴不明の謎の女宣教師。天文学的な金額の遺産を狙って、借金だらけの親族、弁護士、使用人らが暗躍を始めるなか、フェラン・グループの顧問弁護士ジョシュア・スタフォードはひとりの男を起用する。アル中弁護士、ネイト・オライリー。ブラジルの奥地、電話も電気も道すらもない秘境で、果たしてネイトは彼女を捜し出せるのか。
拓也の父親は、家業の本屋がいのちである。北国酒田の商店街で地元に愛され営業を続けてきたが、新店舗ができた矢先、大火で二つの店舗が焼け落ちてしまう。人々の思惑と駆け引きが渦巻く中、書店と商店街の復興のため東奔西走する父。そして悪い仲間や深い友情の中で成長する拓也ー。被災者3300人に及んだ「酒田の大火」が炙り出す人情と青春の物語。