出版社 : 春陽堂書店
恐るべき第三の麻薬シンジケート出現か。世界一の金持ち国日本進出を企てる悪の野望をこれまで数次にわたって竜崎軍団を筆頭とする強力な日本警察はそのつど粉砕してきた。だが、ここに新たな勢力として中東数カ国にまたがる“黄金の三日月地帯”が出現した。湾岸戦争以後、職にあぶれた戦争プロの傭兵が送り込まれてくるのだ。災いは根から絶たねばならない。日本海に国籍不明の船が盛んに出没し、怪しい日本の漁船と接触しているとの情報が軍団にもたらされた。武器を持たない水上警察や海上保安庁の巡視船では手に負える相手ではない。いまこそ軍団の立ち上がるべきときがきた。陸では岩弾刑事部隊が、そして海では三四郎の快速魚雷艇が悪の根絶に猛進する。
新聞がバラバラ殺人事件を報じていた朝、探偵小説作家の星田は雑誌記者の津村を相手に、“完全なる犯罪”などというものはこの世に存在しないとの論陣を張って深夜に帰宅すると、「貴下の“完全なる犯罪”なしとの説に対し、人間の手により“完全なる犯罪”の計画を遂行する。充分の研究により犯人を突き止められよ」の文字通りの挑戦状が届けられていた。新潮社が昭和7年に刊行した全作書下ろしの『新作探偵小説全集』の付録として発行された『探偵クラブ』に連載された「殺人迷路」は、乱歩をはじめ10作家により書き継がれて本格物として結末づけられている!はたして“完全なる犯罪”は可能なのか…。他に、『講談倶楽部』昭和29年9月増刊号に一挙掲載の「悪霊物語」を併収した。
安政二年の秋、甲州身延山の盆割りのことから、津向の文吉と武井の安五郎との間に喧嘩が起ころうとしたとき、双方無事に丸く収めたのはいま売り出しの親分清水の次郎長であった。しかし、このために次郎長は凶状旅となり、大政・小政らの子分とも別れ、独り旅に発っていった。不運に見舞われた次郎長であった。兄弟分の見付の友蔵一家に草鞋をぬいだ次郎長は、そこで女房お蝶と子分の森の石松とに出会って驚いた。旅先で苦労する親分次郎長の苦境を救うべく、石松はかつて次郎長に恩を受けた保下田の久六を訪ねた。ところが、久六は次郎長召捕りに向かった。遠州森町生まれの片目の快男子森の石松の最期まで、ベテラン木屋進の筆で痛快な物語が展開する。
奥州藤原一族四代をテーマに描く名手風巻絃一の書下ろし本格歴史ロマンの傑作編。検非違使の志という職を捨て、京を脱出してきた神無木式部は、琵琶湖近くの鏡の宿場に泊まっていた。夜半、突然に起こった物音は、羽黒山の大天狗藤沢ノ入道一味の襲撃であったが、剣にすぐれた式部はたちまちにして入道一味を斬り倒してしまった。この事件で、式部は平泉屋敷を宰領する堀弥太郎吉次、通称金売り商人と呼ばれていた男の知遇を得た。天平二十一年、陸奥の国から黄金が出た。平泉は初代清衡以来、鎮守府将軍の三代秀衡と繁栄を続けた。源九郎義経も身を寄せ、式部と知り合うことになって…。
間宮林蔵以前、北辺の地を探検した山口鉄五郎・青島俊蔵・庵原弥六・佐藤玄六郎らの、北方四島から樺太(現サハリン)への想像を絶する決死の踏破行を資料により描く問題作。天明のころ、蝦夷地はまだまったくの未知・未開の地で、幕府から統治権を与えられていた松前藩ですら全領土の掌握は疑わしく、ましてや東蝦夷のもっと先の北方四島やウルップ島などの諸事情については、江戸にいては知る得べくもなかった。そこで、老中筆頭田沼主殿頭意次は北方経営の方針によってなされた北方事情調査であったが、幕閣の軋轢のうちに意次が失脚し、これら北辺探検隊の苦心もまたはかなく消失していった。全国民の関心事、“北方領土問題”にからめて一石を投ずる注目の本格歴史ロマン。
巨額脱税により逮捕されていたアメリカ麻薬界の大ボスであるランデスが、500万ドルの保釈金で仮出所、そのまま逃亡した。強力な護衛とともに日本に潜入したとの情報に、その命を狙ってさまざまな殺し屋集団が、そしてまた逮捕状を持った腕ききの賞金稼ぎたちがその跡を追ってきた。それらの中には二人の美人ハンターまで介在している。しかも、しばらく鳴りをひそめていた日本の暴力組織の北関総業が不気味な動きを見せ、ふたたび麻薬界を牛耳るべく暗躍しだした。こうなっては竜崎軍団も黙ってはおれない。アメリカの命知らず、中東からの暗殺団、北関総業一派と賞金稼ぎ、竜崎軍団の猛者たちが卍巴となって錯綜する。そのさなかで、快男児壇竜四郎を魅了した謎の美女とは。
夏休みの最後の数日を長野県下の親戚で過ごした矢車ユカは、クルマで東京へ帰る途中の軽井沢で、一人の女性を轢死させる寸前に危うく難を逃がれ、この女性を追っかけて白樺林の中から姿をみせたサングラスの男を、その特技の護身術でその場に叩きつけていた。京北女子大学二回生のユカは、鬼警部で知られた元警視庁刑事の祖父との二人暮らしで、幼少のころよりその祖父から指導を受けていたことで、護身術には特に長けたものがある。そんな矢車ユカが、この偶然の出会いが奇縁で、親友横芝真奈の兄でプレイボーイを自任する陽一にまつわる連続殺人事件の渦中にまき込まれることになって…。-キュートな女子大生探偵と、元鬼警部の祖父の名コンビで難事件に挑む好評シリーズ作。
恐るべき新麻薬クラックの急激な蔓延、竜崎軍団の血みどろの戦いははてしなく続く。日本進出をねらう麻薬密売組織は手を替え品を替えて、新たな思いがけない手段を駆使して挑んでくる。-深夜の銀行襲撃、軍団長の母堂誘拐、警察寮の爆破、庁内襲撃と、その荒っぽい手口にはこれまでとは違うものがある。そして、この二、三カ月の間に各地に急造された小規模だが多数の奇妙な薬品倉庫群には新たな巨大な力がバックに…。一方、政界乗っ取りを企む右翼の大物の名が浮かび上がった。万一、両者の目的がどこかで一致したらどうなるか。情況証拠は充分過ぎるほどだが、陰謀のしっぽを出さない。-“やられる前にやれ”軍団一流の無鉄砲なぶったたき作戦を猛者たちが展開する。
元禄四年の早春、天下の副将軍水戸黄門とお供の渥美格之進、佐々木助三郎の三人旅は、奥州路へと向かっていた。-おなじみ水戸黄門漫遊記を描く長編快作。奥州宇多郡中村六万石相馬大膳之亮の城下から、伊達領の一万八千石安房守宗良の領内へと老公の旅は続いていく。各地で老公の裁きによって事件は解決する。一ノ関への山中で三万石一ノ関田村右京太夫の家来脇田新三郎と出会い、真影一刀流牧主水之助の娘お梅との伯もとりもってやった。庄内村で出会った百姓吉右衛門の話から、酒井家の重臣田川新五左衛門の悪事をも老公はみごとに裁いてやった。奥州路の旅から江戸へ戻った三人旅は、次には東海道を京へ上ることになった。老公を待つ次なる事件とは…。
江戸城大奥で中〓@62E4夏乃が秘蔵する不思議な名器ー仲秋の名月の宵、月光に当てるとその表面に隠されているある秘密の文字が浮かぶという皿『満月丸』を奪わんと侵入した黒覆面黒装束の片目の怪人と、それを阻止せんとする白装束の美女と二匹の犬。るるとろろの忠犬二頭を従える美女は、上州安中三万石板倉伊勢守の娘美弥姫であった。数奇な運命の美弥姫は、実の父ー海の弥太郎が秘匿した十万両の謎を解かんと、仇敵竜巻権五右衛門一味と対立した。姫を助けて活躍するものに峠弦之丞があった。時に田沼意次が絶大なる権力を持つ時代であった。美弥姫の悲願ははたして成るか。-十万両と木曽川治水工事設計図の埋設場所の謎を秘めた名器をめぐる争奪の結果は。
江戸の金さんと呼ばれる金四郎は旗本三千石遠山左衛門尉景晋の嫡子と生まれながらも、弟に家督を譲るためにみずからは市井に隠れ住むべく、ふらりと巷へ出現していた。掏摸仲間に夜桜の姐御と呼ばれるお春は23歳の女盛りであった。そのお春と知り合った金さんは、共に浅草諏訪町の米問屋備州屋三左衛門が和蘭陀金貨を小判に吹替えている悪事の摘発に乗り出した。(第1話「夜桜懴悔」)。粋な美女、辰巳屋のお紺の家に居候を決め込んだ金さんは、橋の欄干にたたずむお店者らしい若者を助けてやった。若者は結城屋惣兵衛の手代新之助と名乗った。結城屋の娘お品とわりない仲になった新之助の危機を、金さんは救ってやることになった。(第2話「伝法恋暖簾」)。“金さん捕物帳”全11話。
お陰参りの集団で混雑する伊勢神宮参道に花吹雪のようにお札が舞った。打倒水野越前の不敵な文字を記したお札をまいた一団は、雲切十兵衛ひきいる雲切五人衆であった。捕り手に追われる雲切一党の美女千里のお虎の急場の難を救ってやった若侍は、岸波又四郎であった。次の集合場所に定められた尾張名古屋城の天守閣めざして、お虎と又四郎も名古屋へと急いだ。又四郎・伊織兄弟の幼き日、大坂城の金塊を江戸へ運ぶ宰領役を命じられた岸波半兵衛こそ兄弟の父であったが、宇津谷峠で盗賊団に襲われ、半兵衛は何者かの手で行方不明となった。孤児となった又四郎を養育してくれた恩人丸目洗心斎と名古屋で再会の又四郎は?黄金の行方をめぐって波瀾万丈の物語が展開する時代長編の快作。
警察庁の猛者軍団部屋にしかけられたバズーカ攻撃。神奈川県警への白昼の殴り込み。日本へ潜入した中南米系の麻薬組織を追って来日した大統領諮問委員会日本班チーフ・リタに千歳空港で襲いかかる殺し屋集団。敵はいずれも強力な武器を持つ凄腕で、しかも猛者軍団の脅威を知らぬ不敵の面々だ。おりしも、北海道日高地方の人も住まぬ大湿原地帯が何者かに買い占められ、4、5カ月前からその湿原の真ん中の絶海の孤島ともいうべき島に社員と称して何事かを画策する数十名の屈強の男たちが不穏な動きを示していた…。絶対に麻薬を日本に入れてはならない。新たな敵を相手に壮絶な活動が開始された。-ますます快調のおなじみ日本警察の精強部隊“竜崎軍団”の死闘を描くど迫力編。
伊沢理恵は新宿新都庁超高層ビル街の眺望の利くホテルのレストランでの恋人との豪華なディナーをすませた後、彼のマンションに移って週末の夜の楽しい一時を過ごしていた。そしてこの夜、理恵は恋人からプロポーズされたのだった。そんな幸せな理恵の気持ちを打ち砕くかのように突然、電話のベルが鳴り響いた。いや、なぜか理恵にはそう思えたのだった。はたして、意外やその電話が恋人の身にもたらしたものは…。彼は殺ってない、殺人の容疑をかけられた恋人の無実を信じる理恵は、姿なき真犯人を求めてその跡を追うことになった。そんな理恵を支えるのは恋人への愛のみであった。愛が告白された幸せな夜を引き裂いて若い2人に訪れた災厄とは。ラブ・サスペンス。
関ガ原の合戦で敗れたはずの石田三成が、白髪の老人として生きていた。玄南斎と名のる世捨て人の老人がそれであった。その玄南斎の子飼いの若者に、青十郎と影法師がいた。江戸神田連雀町の軍学者、張孔堂由井正雪と金井半兵衛の両人が玄南斎のもとを訪ねた。しかし、玄南斎には、正雪らの徳川幕府に対する反逆の企てに加わる気はなかった。江戸城内本丸の厳重な警戒網をくぐって天守閣に忍びこんだ影法師は、家康の木像の首を切ってすてた。影法師の行くえを探索する徳川方忍者の頭領は服部半蔵であった。影法師を恋する吉野屋芳左衛門の娘清野は、春日局に望まれて江戸城大奥へと連れ去られた。男子禁制の大奥へ不敵にも忍びこんだ影法師は、次々に中〓@62E4を犯していった…。
ユカ、ちょっと来てくれない。これから招かざる客と会わなきゃいけないんだけど、立ち会ってほしいんだ。というクラスメート浜島香名江の電話に二つ返事で彼女のマンションに駆けつけた矢車ユカだったが、ユカがそこで見たものはなんと首にビニール紐を巻きつけられて殺されている友人の無惨な姿だった。彼女の仇討ちにと犯人捜しに乗り出したユカの調査に、つぎつぎと明らかになっていく翔びすぎた友の思いもかけない乱れた私生活。そして、またもや殺人が…。いったい、だれが何のために?懸命の奔走に浮かび上がった複数の人物。しかし、彼らにはそれぞれに動かしがたいアリバイがあった…。-お茶目でキュートな女子大生探偵と元警視庁の鬼警部だった祖父の名コンビが惨劇に挑む。ユーモアタッチで描かれた若山三郎の好評シリーズ作、青春ミステリー第4弾。
天保4年の春のことであった。身延街道の1要地たる興津川に沿う小島の猫背山下の一本松に集まった織部熊太郎ら3人の武士が、鉄拐飛介という若者に松の根方を掘らせて取り出したものは。それこそは、200年の昔、寛永10年に埋められた月海老人の白髪の木乃伊であった。織部らに無人の塔に運ばれた月海老人の木乃伊は再生した。200年の昔、駿府城より運ばれた黄金の延棒15貫の秘宝はいずこへ?その埋没場所の秘密は月海老人の木乃伊によって握られていた。秘密の継承者猿丸柳斎の娘加代の乳房に月海の手により謎の文字が隠し彫りされた。加代の乳房に迫る悪人輩の魔手。かくて、加代を助けて美男旗本宗像宗太郎の活躍は…。-手に汗を握ぎる波乱万丈の物語。
名画盗難、その行方を追って、フランスはパリ警察の腕きき女警視ふたりが来日した。空港に着いた絵画はひとまず都心の大銀行の金庫に搬入され、そこで輸入主・銀行幹部・鑑定家・税関員立ち合いで検査が行われる。最近の贋作は本物とほとんど区別がつかない。女警視ふたりの来日の真の目的は…。彼女らを狙う正体不明の殺し屋の出現。一方、日本経由でアメリカに持ち込まれる大量の麻薬ルートを追って来日中のPSB(大統領諮問委員会)の美人捜査官リタ・グレイの身辺にも執拗な殺し屋の魔手が。そして、女警視ふたりとリタ・グレイの来日の目的がここで合致する。-日本警察界きっての猛者たちが、名画盗難のカラクリと巧妙な麻薬密輸の謎を暴く。
こんな男が日本にもいたのか…。切支丹の司祭オルガンティーノも舌を巻いた。“天下布武”の野望を抱いて、戦国の天下を震憾させた織田信長、“大うつけ”といわれるその奇矯な行ないの裏に、緻密な知略と大胆な決断、そして不敵な行動力を隠して、おのれの野望の構築を賭けて大乱戦国の世を駆け抜けた風雲児・織田信長とは一体いかなる男か。四周の強敵すべてを薙ぎ倒し、また中世的価値観のすべてをも打ち壊して新時代の出現を夢みつづけ、さらには海外への視点をも合わせ持ったこの超人的人物の全生涯を描いて、その魅力のすべてを追及するベテラン風巻絃一の書き下ろし時代長編作。