1985年発売
●都筑道夫氏推薦ーー「この本をもっと若いうちに読んでいれば、結婚なんかしなかったのに。」 エミール七十三歳、マルグリット七十一歳。再婚同士だった二人が式を挙げて八年、会話が途絶えてから四年になる。相手の存在を痛いほど意識しながら互いに無視しあい、一つ屋根の下で際限のないゲームに飽かず興じる。理解しがたいようでいて妙に頷ける夫婦の執念。屈折した愛と呼べなくもない二人の駆け引きは、飼い猫の死に始まった。訳者あとがき=三輪秀彦
一人旅の女性が古書店で見つけた一冊の本。彼女がその本を手にした時、後鳥羽伝説の地を舞台にした殺人劇の幕は切って落とされた! 浮かび上がった意外な犯人とは。名探偵・浅見光彦の初登場作!
証券業界の大立者ハリスンの持ち船、シグニット号の船室は密室状態だった。ベッドではハリスン本人が死んでいる。死因は炭酸ガスによる中毒。ベッド脇のテーブルには、ガスの発生源となる塩酸入りデカンターと大理石の入ったボウルが載っていた。フレンチ首席警部の入念な捜査の結果、事件は自殺の線が濃厚になる。だが……。企業ミステリの先駆者でもあるクロフツ、渾身の力作! 解説=紀田順一郎
手違いで惑星基地から締めだされた探検隊の一員。融通の利かないロボットを言いくるめなければ命が危うい。彼のとった奇策とは?表題作ほか、気弱な男の突拍子もない人格改造術「コードルが玉ネギに、玉ネギがニンジンに」、大戦以後失われた文学の“記憶”を売る男と村人の交流を描く「記憶売り」など、黒いユーモアとセンチメントが交錯する、奇想作家シェクリーの佳作16編。
「影をゆずってはいただけませんか?」謎の灰色服の男に乞われるままに、シュレミールは引き替えの“幸運の金袋”を受け取ったがー。大金持にはなったものの、影がないばっかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命をメルヘンタッチで描く。