1985年発売
猫猫
エミール七十三歳、マルグリット七十一歳。再婚同士の二人が式を挙げてから八年になるが、かれこれ四年前から言葉を交わすこともなくなった。相手の存在を痛いほど意識しながら互いに無視しあい、一つ屋根の下で際限のないゲームに飽かず興じる。理解しがたいようでいて妙に頷ける老夫婦の執念。屈折した愛と呼べなくもない二人の駆け引きは、夫が飼っていた猫の死に始まった。
シグニット号の死シグニット号の死
証券業界の大立者ハリスンの持ち船、シグニット号の船室は密室状態だった。ベッドではハリスン本人が死んでいる。死因は炭酸ガスによる中毒。ベッド脇のテーブルには、ガスの発生源となる塩酸入りデカンターと大理石の入ったボウルが載っていた。フレンチ首席警部の入念な捜査の結果、事件は自殺の線が濃厚になる。だが…。企業ミステリの先駆者でもあるクロフツ、渾身の力作!
残酷な方程式残酷な方程式
手違いで惑星基地から締めだされた探検隊の一員。融通の利かないロボットを言いくるめなければ命が危うい。彼のとった奇策とは?表題作ほか、気弱な男の突拍子もない人格改造術「コードルが玉ネギに、玉ネギがニンジンに」、大戦以後失われた文学の“記憶”を売る男と村人の交流を描く「記憶売り」など、黒いユーモアとセンチメントが交錯する、奇想作家シェクリーの佳作16編。
影をなくした男影をなくした男
「影をゆずってはいただけませんか?」謎の灰色服の男に乞われるままに、シュレミールは引き替えの“幸運の金袋”を受け取ったがー。大金持にはなったものの、影がないばっかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命をメルヘンタッチで描く。