1987年発売
歓喜、悲嘆、憎悪。時には生や死さえも溶解しのみつくす、灼熱の太陽、永遠の海。日々の暮しに遠い神話の世界がまざりあう物語の時間。禁忌と宥恕に包まれた、懐しい戒律の宇宙を、内から発せられる不思議な響きで語りあげた、美しくて残酷な南の島の物語。
1年前、あろうことか、ゴーテは殺人事件をもみ消していた。場所は、彼が一時的に指揮をとるよう命じられたヴィガトポーア警察署。そして、加害者は、ゴーテが敬愛するケルカー副監察長官だった。あまりにも怠惰な警官に腹を立てた長官がインク壷を投げつけたところ、当り所が悪くて相手が死んでしまったのだ。が、目撃者のいないのを幸い、警察の将来のためとゴーテは長官を説得し、溺死に見せかけるため、二人で死体を湖に沈めた。その“溺死”事件に疑問が投げかけられたのは、10カ月後のことだった。水泳の達人だった兄が溺死するはずないという、被害者の妹の訴えがきっかけだった。こうしてゴーテは警察本部長に呼ばれ、査問委員会にかけられることになったのだ。…人間味あふれる東洋の探偵ガネシ・ゴーテが最大の危機を迎える話題のシリーズ最新作!
テフローダーの罠に落ち、捕虜となったグッキー、トロト、ノワールは、ようやく《クレスト3》に帰還した。だがテフローダーはその3人の複製を作ろうとしているのだ。それを阻止すべくロータン一行はデュプリケーター艦の追跡を開始し、ついに艦を捕捉した。そのとき複製を完成したテフローダーたちは、何体もの複製を《クレスト3》に次々と送りこんできた!
木星の第3衛星ガニメデー太陽系最大の衛星に、いま、人類の本格的な植民がはじまる。宇宙船メイフラワー号にガニメデ植民団の一員として乗船したビル・ラーマーは、期待と興奮で胸がいっぱいだった。人口過密と食糧危機にあえぐ地球にとって、ガニメデ植民はその唯一の解決策なのだ。だがメイフラワー号の6千人もの植民団を一度に受け入れるには、ガニメデ植民地はあまりに小さすぎた。ビルの思惑に反してガニメデでの生活は、まず自分の土地を獲得することからはじまった…。ガニメデの厳しい自然環境を舞台に、1人の多感な少年の成長を瑞々しく描きあげる傑作SF!
赤道上を地球の自転と同じ速さで動き、そのため同じ地点の上に永遠に止まっている同期衛星や宇宙ステーション。天体力学の法則によって物体が空に静止していられるものなら、そこからケーブルを地上にたらし、地球と宇宙空間とを結ぶエレベーターができないものだろうか?4万キロにおよぶ〈宇宙エレベーター〉-この壮大な夢を胸に、地球建設公社の技術部長ヴァニーヴァー・モーガンは、赤道上に浮かぶ美しい島国、タブロバニーへとやってきたのだが…。自らの夢の実現に向かって突き進む天才科学者の姿を見事に描く、巨匠クラークのヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞作!
〈十四の滝〉の向こうには何もない。なぜなら、そこが世界の涯てだから。森と河を中心とする、原始的かつ平和な暮らしを営む人々はそう信じていた。少女カイレオールただ一人をのぞいては。世界は〈屏風岩〉で始まり〈十四の滝〉で終わってしまうほどちっぽけなものなの?それじゃ、世界ってどんな形?河はどこへ流れて行くの?いつしかこれらの疑問を抑えきれなくなったカイレオールは、古来の習慣に従って婚約したにもかかわらず、ついに河を下る禁断の旅に出るが…。〈イルスの竪琴〉三部作の著者が五年ぶりに発表したファンタジイ。
眉目秀麗な盲目聾唖の戦士タリオンの超人的剣技。サーカス団の団長フォルタの巧妙な戦術。2人の味方を得たレヴィ王女率いる熱帯の小国センペカは帝国軍百万の猛攻によく耐えていた。しかし圧倒的劣勢は否めず、いまやセンペカに残された希望は悪を破る力を秘めたフォントベラの剣のみ。しかし曲折の後にタリオンの手に帰した神剣は、未だタリオンの支配を受けつけない。かくて神剣を自在に操る術を学ぶべく、タリオンは修行の途につくのだった。訪ねるは霊峰に隠棲する老師スパドゥロス。果たしてセンペカ陥落前にタリオンの修行はなるのか!
ITT(国際テレフォン・アンド・テレポーテイション)94局はきょうも大忙し。目を離したすきに物質転送機にはいって行方不明になってしまった子供の母親からの捜索願い、ターミナルで詰まって実体化できない夫を心配する妻の問い合わせ、転送機で逃亡をはかった美術品泥棒を捉えてほしいという国際警察の依頼などを次々にさばいていくオペレーターだったが…。表題作他、未開惑星ケイトン派出警察署のカスガ警視と助手のビッパの二人組みが、バラバラ殺人事件の謎に挑む「ベター・ハーフ?」など、アイディアあふれる7篇を収録する処女短篇集。
村はずれの呪われた土地で、長年住む人もなく、朽ちはてている石造りの屋敷ウィンターレスト。この屋敷に“よそ者”の買い手が現われてから、村では不思議なことがつぎつぎに起こりはじめた。人びとは幻の嵐や大地震や火事に戸惑い、若い女性は異常な妊娠におびえる。そんなある日、ウィンターレストから村の住民たちにティー・パーティの招待状が届けられ、地獄の家は恐怖の口を開けるのだった!-アメリカ・モダンホラーの第一人者がおくる戦慄のホラー長篇。
英国の情報機関に属するわたしは、CIAのマン少佐と共にサハラ砂漠に派遣された。ソ連の科学者ベークフ教授を亡命させるためだ。教授は西側の科学情報漏洩の秘密を握っていると見られていた。武装ヘリの攻撃をかいくぐり、熱砂の亡命作戦は成功。意外な漏洩ルートの存在が浮かびあがる!巨匠がスパイ衛星時代に生きる現場工作員の姿を鮮烈に描く。
新任の犯罪捜査部長ニムロド・フロストがレストレイドに命じたのは、なんとも不可解な事件の捜査だった。なぜか60歳以上の老人ばかりが次々に殺されていくのだ。ガス灯のロンドンから霧に覆われたコーンウォールの荒地へ、さらには煤煙のたちこめる紡績都市マンチェスターへー。レストレイドは姿なき殺人者を追い、隠密捜査を続ける。はたして殺人者の狙いは何か?やがて、殺された老人たちをつなぐ糸が見えはじめるが…。犯罪とロマンの香り豊かな時代、19世紀末のイギリスを舞台に、レストレイド警部の新たな冒険を描く、著者会心の第2弾。
ええっ、エリザベスが、あの大金持ちのニコラス・モローと、デートですって!ねぇねぇ、それってひょっとして、浮気じゃない?やっだァ、トッドは知らないの?もしもバレたらどうなるのかしら…それに、ニコラスには、ジェシカもすっかりお熱だったじゃない。ジェシカはニコラスのほうも、自分に気があると思いこんでるのよ。たいへん。ジェシカがこのことを知ったら、どうなるかしら?ひょっとしたら、これって、大事件になるかもね。
エイプリル・カイルがパトリシア・アトリイの店を去った!ニューヨークへ出て、パトリシアに事情をきいたスペンサーは、エイプリルを連れ戻そうとして失敗する。彼女はジュリアード音楽院の黒人学生ロバート・ランボウに夢中になっていて、スペンサーの言うことをきこうともしない。ランボウの周辺を洗うと彼は何人もの女たちと行き来していた。女たちの一人ジンジャーの話からしても彼がぽん引きであることは間違いなかった。しかし、なすすべもなくスペンサーはボストンへ戻ってしまう。すると売春婦ジンジャー殺さるの報が入り、今度は本当にエイプリルも姿を消してしまった…。エイプリルの行方を追って巨大な悪に立ち向かうスペンサー。『儀式』の続篇。好調シリーズ第13作!
美貌のシンガーソングライター・堀河優美から恋人・国夫を奪った交通事故。残された形見はたった1枚の楽譜だけだった。「シャドウゲーム」というその曲を自作のLPに収録するため、作曲者を探して優美は恋人の故郷名古屋へ向かった。しかし、手がかりとなる人物は国夫と同時期に怪死していた。奇妙な符号ー。「国夫の死は偶然ではなかったの?」真相を知ろうと焦る優美に電話のベルが鳴った。「早く東京へ帰れ!」。楽譜に隠された謎とは何か?そして優美を追う男“死に神”とは誰なのか?事件は意外な方向へ向った!
私は公安調査官、加下千里。言うまでもなく仮の名だ。加下は影である。麻薬組織の捜査を始めたところ、思わぬことからニセ札偽造団のシッポをつかんだ。この半年あまり、米ドルのニセ札が出回り、一味の正体がつかめずにいたのだ。私はなんとか偽造団に潜り込むことに成功した。そして組織の女たちを巧みに操りながら、次々に密輸ルートをあばいていく…。長篇サスペンス。