1993年11月発売
寛政年間、仕込杖と絵筆を手に肥後・人吉領へ分け入った朝霞桔梗之介は、追い剥ぎに襲われていた人妻・小春と従者・セツを助ける。平家落人の末裔が住む秘境「五家ノ庄」へ戻るという女二人に同道して、桔梗之介は山深きかの地を訪れた。だが、日を経ずして小春の家に伝わる平家三宝刀の一振りが何者かに盗まれ、村は大混乱に陥る。痛快時代小説。
スポーツライターを襲う事件の数々。私に送られてくるもの…、カミソリ、ウンコ、親愛なるファンレター。しかしある日届いたものを開けると、あっと驚く中身だった。スポーツというワンダーランドに繰りひろげられる、本当の物語の数々。
「ジョジョ」たち「スタンド」の戦士たちの旅は、ディオの本拠地・エジプトで、クライマックスを迎えようとしていた。肥沃なナイル川がもたらした、四千年という気が遠くなるような歴史と、果てなく広がる熱い砂の海を持つ国に、彼らの行く手を阻むものは?今明かされる、秘められた死闘。超人気漫画のノベライゼーション、ここに実現。
一年に一度開かれるドラフト会議ー。その裏ではペナントレース以上の過酷なドラマが繰りひろげられていた。有無をいわせぬ親会社からの指令、スカウト同士の熾烈な駆けひき、そして裏切り…。乱れ飛ぶ怪情報や思惑に、二人のエリート高校球児、木野原と久米田は運命を弄ばれる。高野連の規則を巧みに利用した裏工作とは?複雑に入り組んだ野球界の人間模様を描いた実録野球小説。
北山杉の茂る京都北郊の氷室で質素な身なりの十七、八歳の女性の死体が発見された。捜査本部の一員、魚津刑事は上司との折り合いが悪く、孤独な捜査と独自の勘で被害者の身元を探りだした。西沢奈々津は京都で就職しようとしていたが、その際すれ違った京都一のゼネコンの社長の連れと面識があるらしい-。魚津は相手がとても手に負えぬ大者がからんでいることから、かつて捜査合戦をして敗れた宮之原警部の登場を願わずにはいられなくなった。宮之原警部と魚津のコンビが明快な推理と積極的な行動で難事件を解決する書き下ろし長編旅情ミステリーの最高傑作。
名探偵・浅見光彦の母・雪江が四国霊場巡りの途中、交通事故で記憶を喪失した。二週間後、事故の加害者の久保彩奈が瀬戸大橋上で不可解な“自殺”を。記憶を取り戻した母の命令で高松を訪れた浅見は、彩奈の死の原因が、市主催の栗林公園の園遊会にあると推理した直後、彼女の兄が「ウラシマ・タロウノ・ホコ…」と謎の言葉を遺し殺害された。秋の讃岐路に浅見が掴んだ伝説の人物と意外な真相は。
鏑木兵庫は神田明神の境内を出たところで、侍達に追われる女に出くわした。行きがかりで7人の追手を斬り伏せ、女を助けたが、女は追われる理由について、一言も話さない。旗本か大名の侍女風で、背後に複雑な事情がありそうである。案の定、その女・津香と兵庫は次々の刺客に襲われた。刺客を放つは将軍家側用人・北多見若狭。兵庫の白刃が暴く大奥の確執。
江戸天保年間、平和が続き、爛熟が極まり、世の中が饐えた匂いをはなち始めた頃、闇に生き、悪に駆る六人の男たちがいた。河内山宗俊。片岡直次郎。金子市之丞。森田屋清蔵。くらやみの丑松。三千歳。人々は彼らに怯え、彼らを讃え、天保六花撰と呼んだー。時代を痛快に生きた男たちを描く、連作長編時代小説。
明治五年初冬、浅草蔵前の裏長屋の一室に、男が居を定めた。箱館五陵郭で降伏し、新島に終身刑で送られていたものの、思わぬ赦免状で江戸に移った相馬主計である。彼は常陸笠間藩を脱藩して新選組隊士となり、鳥羽伏見戦争後、各地を転戦、土方歳三の戦死後は新選組隊長を名のっていた。だが、先に逝った者たちを想いつつ日々を過ごそうとした主計には数奇なめぐりあわせが待っていたー。第十回日本エンタテインメント小説大賞を受賞した表題作をはじめ、歴史の闇に埋もれた志ある男たちの姿を描き出す気鋭の傑作歴史小説集。
セックスがらみの揉めごと解決屋・氷室凍馬のもとに、名門の誉れ高い薔薇百合女子学園理事長・新藤有美が訪ねてきた。その依頼とは、同校の生徒が麻薬欲しさにアルバイトで売春をしているという密告の真偽を確かめることであった。思念によって性感を刺激し、めくるめく快楽の波に乗せて人物を自在に操る淫導術。その奥義を極めている凍馬は、売春を名指しされた十六歳の美少女・松尾香苗を待ち伏せし、彼女の奔放なまでの欲望に超絶性技で応えてやる。だが、香苗は売春組織の実体を知らず、ある衝撃的事実のみを語った。
安政二年の秋、甲州身延山の盆割りのことから、津向の文吉と武井の安五郎との間に喧嘩が起ころうとしたとき、双方無事に丸く収めたのはいま売り出しの親分清水の次郎長であった。しかし、このために次郎長は凶状旅となり、大政・小政らの子分とも別れ、独り旅に発っていった。不運に見舞われた次郎長であった。兄弟分の見付の友蔵一家に草鞋をぬいだ次郎長は、そこで女房お蝶と子分の森の石松とに出会って驚いた。旅先で苦労する親分次郎長の苦境を救うべく、石松はかつて次郎長に恩を受けた保下田の久六を訪ねた。ところが、久六は次郎長召捕りに向かった。遠州森町生まれの片目の快男子森の石松の最期まで、ベテラン木屋進の筆で痛快な物語が展開する。
経済的に破産した高圧的な父親と、精神的に破綻した息子、失われた美しい母親。ローマからミラノへ向かう旅の中でたどられてゆくはかない思い出。その道中で、いまだに青春の残照から抜けきれずにいる三十歳の息子が、父親に対して試みる一世一代でささやかな復讐劇。
学校剣道に先行して道場剣道が主流をなした時代がかつてあった。東京・本郷にあった有信館は、神道無念流根岸信五郎の後継者となった中山博道がながく主宰した道場で、剣道・居合道・杖道、あわせて三道の範士だったかれの門下からは、明治(後期)・大正・昭和(前期)にわたって多くの俊秀が巣立ち、わが国の剣道界に一大剣脈を形成した。この有信館を舞台に、剣道に情熱をかけた有名無名の剣士たちの若き日のロマン。
昭和十一年秋、考古学への夢を捨てきれぬ貿易商・納屋南海男は、大南洋ラタク列島にあるヌク・アク島の調査を行ない、レポートをまとめ上げた。ところがふた月後、突然、海軍省から呼び出しを受け、高野五十六海軍中将より自分が極めて重大な国家機密に接触してしまったことを報らされて…。秘密基地の謎に迫る傑作中篇「紺碧島建設計画」、艦隊シリーズの思想的礎となった反戦SF「ポンラップ群島の平和」、『紺碧の艦隊』誕生の軌跡をたどる「荒巻義雄特別インタビュー」など超人気シリーズの魅力を満載。
記憶を一日に二日分ずつ忘れ蝶に食べられてしまった彼女は、二十歳の誕生日にすべての記憶を失なってしまう。しかも、それは明日なんだ。不思議な少年といっしょに帆立貝転送機に乗った私は、忘れ蝶をさがして記憶装置の迷宮へ。取り戻したのは彼女の?それとも私の記憶?俊英が放つ異色の長編作。
今日もメトロは、さまざまな恋人たちを乗せて、東京の地下を走るー。かき消されそうな小さなハート、デパートでデイト、わがままカップル・コンテスト、すれ違いの待ち合わせ、反対側のプラットホーム…など、二十六組の恋人たちが繰り広げる、ささやかで、ひめやかでちょっと過激なラブ・ストーリー。
現世と冥界を自在に往来し、西行、式子内親王、定家、則天武后、西脇順三郎たちとくりひろげる典雅な交歓と豊潤な性の陶酔。「大人のための残酷童話」の著者の奔放なイマジネーションが、時空を超えて媚薬の香りに満ちた世界へ読者を誘う。幻想とエロティシズムの妙味を融合させた異色の文芸連作二十一編。