1993年8月発売
山深い過疎の村に、時空を超えて現れた少年と犬。それが騒動の発端だった。山の自然を破壊し村を水没させるダムの建設をめぐって、奇妙な殺人事件が続く。村に住む老人、東京からやってきた若い新聞記者、二人を結ぶ運命の時間流とは-。SFタッチで描くニュー・サスペンス。
早春の小田原城祉公園で美女の刺殺体が発見された。遺留品を手がかりにたどり着いた岩手県の久慈で女の身元を掴んだルポライター浦上伸介の元に、女の母親が同一手口で殺害されたとの報せが入る。しかし、近親者の証言から浮かんだ二つの殺人の容疑者には、強固なアリバイが…。
全編これ二人の男女の電話の会話からなるおかしなおかしな「電話小説」。しかもこの電話は成人向けのいわゆる会員制セックス・テレフォン。二人は想像力の限りを尽くして自分たちが何に一番興奮するかを語り合う。昨年全米でベストセラーとなった本書のテーマはいわば、想像の世界の「究極のH」。
三上量子は心の悩みの相談に乗り、的確な見立てをして、独自の方法で治療にあたる臨床心理士。このほど、西新宿のビルに『三上量子カウンセリング・ルーム』を開業した。数日後、隣に『四方晴彦探偵事務所』がオープンした。この四方晴彦こそ、量子が三年前に離婚した元亭主だった。その量子のもとに記憶喪失の悩みを訴える阿川美砂江と名乗るクライアントが訪れる。その女性の悩みの相談に乗ったばかりに、量子と元亭主の四方探偵は思わぬ難事件に巻き込まれる羽目に陥る。
ある朝、ふと目にとまった〈俳優、死亡〉の記事-。俳優エリック・タールは、幼い僕を捨てて去っていった父だった…。死の謎を追ってさすらう少年アランが出会う、かつて父を愛した、そして父が愛した男たち。父の航跡をたどるうち、少年はいつしか悲しい愛のかけらを手にしていた…。
世界的ベストセラー、『フーコーの振り子』でテンプル騎士団の陰謀説を展開するエコに対抗して、著者はヨーロッパ・キリスト教文化の地下の一大思潮、“神秘主義”とこれを信奉する各教団の系譜について、その淵源から現代までのさまざまな変遷を詳細にたどり、エコの虚偽性を開示する。懐疑主義者エコをも懐疑にかけようとする。
心優しい筆致がうれしいミステリ界の人気者シャーロット・マクラウド、本書はそんな彼女が人生の哀歓をさりげなく謳った、軽妙多彩な短編集。セーラさえ知らないマックスの本業の実態とは…?爆笑編「帰り途」、マッドな科学者によるタイムマシン発明譚「時間誘拐」、哀しくも美しい不義の恋を描く「パタレイ夫人の恋人」など、いつでもどこでも楽しめる物語の玉手箱をどうぞ。
故国ガルキスで待つ父王の死を知らされたケリシュとフォロルキン。旅の途中でめぐりあった従妹のグエラスを加え、一行は、次なる魔人のもとへと旅を急ぐ。第四の魔人が待つ砦は、さまざまな罠が仕掛けられた奇怪な迷宮である。そして再びガルキス船に乗って海を渡り、どんな船も近寄れないという呪われた国〈死の王国〉ロアクへと向かうが?好評の異世界ファンタジイ第三弾。
実の姉・眉美と叔父の秘密の愛人関係を知った祐一は、ふたりの淫戯の道具として弄ばれ、そそりたつ肉棒を姉の秘唇に抉り込む。弟の肉棒を貪る眉美の可憐な菊門もまた叔父の肉棒に犯され、われを忘れる激しい絶頂に愛液は濁流となり滴りおちる。三人の肉の結合は果てしなく続く…。
戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靭さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
反乱、暗殺、裏切り、虐殺、謀略。栄耀栄華を極めた者は、明日は無残な敗者となったー。長屋王、平将門、千利休、田沼意次、坂本龍馬、西郷隆盛ら、時代の頂点で敗れ去った悲劇のヒーローたちの人間ドラマを、気鋭の時代小説作家が生き生きと描きだす。大和時代から明治維新まで、千三百年にわたるわが国の歴史を四十六の短編小説によって俯瞰する、新しい“日本通史”の試み。
経清・貞任の死により前九年の戦いは終わった。経清の妻結有は敵方の清原氏へ嫁がされ、清衡と改名した清丸は安倍氏の再興を心に誓う。さきの大戦から20年、清原真衡・清衡・家衡異父・異母兄弟の確執と源義家の陸奥守就任が、みちのくを再び炎に包む。北の覇者をめぐっての壮大なドラマは、黄金の都・平泉へ向けていよいよ動き始めた。
人類居住宙域と銀河系深部を結ぶゲイトウエイの開通から90年。人類は意欲的に銀河へ進出し、多くの船が新世界めざしてこの天空の水路を下っていったー。少女クローディの乗る〈チャリティ〉もそんな植民船の一つだった。だが航行中の同船は、空間を思いのままに破壊する獰猛な異星人スロッグに襲われる。逃げ場のない水路の中で、一行は生き延びることができるのか…。未知の試練に直面した少女の冒険を描く力作宇宙SF。
発見当初、惑星エピメテウスは自転していないとみなされ、人々は大量の放射線を浴びる昼側を避けて夜側にナイトサイド・シティを築いた。が、その後の調査で惑星の自転が判明。シティは遠からず昼側に移動し、居住不能となる運命だ。シティの片隅で探偵稼業をいとなむカーライルは、ある日依頼人からシティ買い占めの動きがあることを聞く。“夜明け”を間近にしていったいなぜ…。タフな女探偵が活躍するミステリSF。