1995年発売
私立探偵のジョン・タナーは、大学の同窓会で二十五年ぶりに再会した親友のセス・ハートマンから一通の手紙を渡された。それは〈南部の誇り〉同盟と名乗る白人極右集団が、セスに宛てた死刑宣告状だった。現在チャールストンで弁護士をしているセスは、大学時代に公民権運動に参加したことを除けば、脅迫を受ける心当たりはまったくないという。なぜ彼らはセスを標的にするのか。背後関係を探りはじめたタナーは、セスの依頼人たちも同様の脅迫を受けていることを知る。やがて、狂信的な極右集団は、十字架を燃やすなどその脅迫手段をますますエスカレートさせてきた。
スーパー・ミュータントは、ついにローダンの旗艦『インターソラー』にその魔手をのばした。太陽系艦隊将校ホイブライン少佐を捕らえるや、その体内に必殺の罠をしかけ、ローダンのもとへと送り帰したのだ。胸さわぎをおぼえたローダンたちは、ホイブラインを惑星シシュターに降ろした。だが追尾していたコレッロの宇宙船も同星域に出現、ここに『インターソラー』とスーパー・ミュータントとの壮絶な死闘が開始された。
あらゆるものを螺旋として捉え、それを集め求める螺旋蒐集家は、新宿のとあるビルに、現実には存在しない螺旋階段を幻視した。肺を病む岩手の詩人は、北上高地の斜面に、彼にしか見えない巨大なオウム貝の幻を見た。それぞれの螺旋にひきこまれたふたりは、混沌の中でおのれの修羅と対峙する…ベストセラー作家、夢枕獏が仏教の宇宙観をもとに進化と宇宙の謎を解き明かした空前絶後の物語。第10回日本SF大賞受賞作。
人は、幸福せになれるのですか。野に咲く花は幸福せであろうか。-螺旋蒐集家と岩手の詩人、ふたつの孤独な魂から成る人間、アシュヴィンは、いくつもの問を胸に、果てしなく高い山を登りつづけていた。長い修羅の旅を経て、彼がその答にたどりついたとき、世界を驚嘆させるなにかが起きる…進化とは。宇宙とは。人間とは。究極の問に対する答を破天荒な構成と筆致で描きあげた、これは、天についての物語である。
17歳から18歳の少年と少女にとって夏は特別の季節だ。夏の間に、少年と少女は大人への第一歩を踏み出す。初めて自らの意思で理想の異性を意識することによって。-梅雨のあいま、本格的な夏、そして晩夏。それら夏の独特の時間の中で、ほとばしる少年と少女の繊細な官能性のすべてを、さわやかに、端正に表出した片岡義男の青春小説集。「私とキャッチ・ボールをしてください」「永遠に失われた」など清冽な7篇を収録。
バークの前に現われた女はベルと名乗った。圧倒的な肉体を持つストリッパーながら媚びを知らず、その心は無垢だった…ベルの手引きで、少女売春婦だけを次々と襲う〈幽霊ヴァン〉を片付けてくれという依頼を受けたバークは、暗黒街を探り始める。だが、逆に血に飢えた空手使いをおびき寄せてしまった。現代ハードボイルドの鬼才が描く、殺人鬼とバークの凄絶な対決。一途な女の哀しき純情が心打つ、シリーズ代表作。
殺された若い女性の部屋は、窓やドアが完全にロックされておりごていねいにもチェーンまで掛けられていた。この密室殺人解明に乗り出したのが八木沢警部補だった。八木沢は警視庁では変わり者と言われているが抜群の推理力を持っている。必死の捜査を嘲笑う様に次々と女性が殺されてゆく、そしてなぜかどの死体の側にも奥州平泉からの絵葉書が…。
会津藩士・山本覚馬は幕末において、天皇を推戴する三権分立、国民の能力に応じた税の賊課、人材の教育、貨幣制度の確立と製鉄・商資本の育成など、今日でも立派に通用する日本のあるべき姿を述べている。もし、明治時代からの日本がそうした国造りを進めたのならば、軍閥政府は生まれず、アメリカのような国家となり得たのではないか。しかし現実には、会津藩は戊辰戦争で敗れたため山本覚馬の考えが日の目を見ることはなかった…。物語は、安政6年(1859年),三人の若者が会津藩に招かれたことから始まる。軍事担当の荒井竜之介、技術担当の相原勇次郎、そして財務担当の名代左馬之介。三人の協力を得て、富国強兵を計り、強固な奥羽越列藩同盟をめざす…。幕末から維新にかけての激動の時代を新しい視点で描く、新シリーズ。
1997年、ナイトホークスにより、三たび、日本は核の洗礼を受けた。ルーズベルトとのトップ会談のため急遽渡米した武沢総理は謎の事故死を遂げ、日米激突の幕は切って落とされた。タイムワープした山本五十六率いる大和以下帝国連合艦隊は、ソロモンの海で米機動部隊との闘いを制する。狂気に包まれつつある日本は、自衛隊のイージス艦・最新鋭戦闘機と共にハワイ進攻を開始した。米側も旧在日米軍のミサイル巡洋艦・最新鋭戦闘機を擁して迎え撃つ準備は整った。しかも、海底にはソ連に貸し出した米原子力潜水艦シーウルフが…。覇はどちらに。また日本の狂気の炎のゆくえは。
2029年の日本。新進気鋭のベンチャー企業が開発した仮想戦記コンピュータゲーム『鋼鉄の嵐』は発売と同時に驚異的なベストセラーとなった。このゲームはユーザー自身による歴史上の人物への思念投射によって歴史を改変し、“架空の歴史”に関与できることがウリであった。だが…。未解明の物理現象が人知の及びもつかぬ時間と空間のかなたで勃発していた。2029年のゲームユーザーたちによる思念投射は、過去の人物に“天啓”という形でアクセスし、野放図に過去の歴史を改変し始めたのである。これが戦慄すべき結果を招こうとは…。
両親の死後、主人公・大里健也は女だけの一族、速水財閥のお屋敷に突如迎えられることになった。屋敷内唯一の男である主人公をめぐって姉妹たちやメイド・さよりなどの女たちに繰り広げられる誘惑に惑いつつも、この一族の不可思議な掟にのめり込んでいく…。インモラル美少女AVGの大ヒット作を、いち早く小説化。
「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。
とがった顎、不釣り合いなほど大きな目、そして細い指…。君の残像が気になり始めた頃、22歳の僕の周りは急に騒がしくなった-。不倫の果てに自殺騒ぎを起こした姉と、不倫がばれた親父、そしてこんな困った家族のためになぜか奔走する羽目になる僕。いつもと変わらぬはずの11月に起きた、つむじ風のような事件を描く青春ストーリー。
馬運車の中で藁にまみれた祐天寺スタリオンステーションのオーナー・祐天寺豪の死体が発見された。刑事の秋山左門は殺人事件として捜査に乗り出す。その頃左門の双子の兄であり、探偵の右京は事件の捜査を浮島香奈から依頼されていた。まったく性格の違う双子の兄弟がこの不可解な事件の謎に挑むのだが、事件は意外な方向へと進展していく…。冒険文庫初のミステリ小説。