1995年発売
暴風雨に襲われたカンザス・シティ空港。乗客を乗せた最新鋭のハイテク旅客機が着陸に失敗、離陸を待っていた別の旅客機と衝突した。事故機には極右で知られる議員も乗っており、破壊工作の疑いもある。国家運輸安全委員会の主任調査官ウォーリングフォードは即座に現地に飛び、操縦ミス、天候など各方向から事故の分析を開始。だが原因究明に必要なヴォイス・レコーダーは、いくら探しても残骸から発見できなかった。
ハイテク機の操縦システムは強力な電磁波を受けると誤動作を起こす弱点があった。事故当時、現場には空軍の高性能レーダーがあったが、惨事直後、強引に持ち去られていた。このレーダーが事故の原因なのか。一方、ついに発見されたヴォイス・レコーダーにより、事故直前の機長と副操縦士の緊迫したやりとりが明らかになるが…。航空機事故の権威がハイテク化の進む民間航空の最前線に潜む危険を描破したベストセラー。
未解決の殺人事件の犠牲者は、生と死の間をさまよい、嘆き悲しんでいる-わたしにはそう見える。ローナ・ケプラーもその一人だった。十カ月前、彼女は死後二週間と思われる腐乱死体となって発見された。警察は殺人事件として捜査したものの、充分な証拠がつかめず、捜査を打ち切ってしまった。が、ローナの母親は娘が殺害されたと確信し、わたしに事件の再調査を依頼してきた。ローナの死後、差出人不明の、彼女が出演しているポルノのヴィデオテープが送られてきたという。調査が進むうち、次々とローナの不可解な面が明らかになってきた。極端な人嫌いにもかかわらず、深夜に男と出歩く癖があったこと。出所が分からない大金を所持していたこと。そして、密かに売春をしていたこと…謎めいた美女は、巧妙な殺人計画の犠牲となったのか。しかも、わたしの身辺にも、何者かの卑劣な罠が迫っていた。女探偵キンジー・ミルホーンの鋭い観察眼が、謎に包まれた事件の裏にある人間心理の暗部をえぐりだす。百万人に愛読されるミステリ界のトップ・シリーズ、待望の最新作。
三月の寒い夜、《ニューヨーク・タイムズ》の記者ムーアは、友人の精神科医クライズラーからの使いに叩き起こされた。呼び出された先は凄惨な殺人現場で、殺されたのは少年男娼。特異な手口の同様の犯行が、過去に何件も起こっていることが判明した。時に1896年。ニューヨーク市警の総監に任命されたばかりの、のちのアメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトは、この連続殺人事件解決のため、画期的な特別捜査班を設置した。「あらゆる人間の行動は、幼時の経験に左右される」という革新的な理論を唱える精神科医クライズラーを長とし、マンハッタンの犯罪社会にくわしい記者ムーア、市警初の女性職員サラなど、異色のメンバーが集まった。心理学を捜査に応用するなど、「殺人者は生まれつきのものだ」と信じられている社会にあっては異端そのものだったが、彼らは少年男娼を血祭りにあげる犯人の生い立ちを犯罪現場から推理し、混沌とした世紀末における異常殺人者の実像に迫っていく。だが、ある謎の勢力が彼らの捜査に妨害の手を伸ばしてきた…。世紀末のニューヨークを舞台にリアリテイとイマジネーションをみごとに融合させた、心理学的プロファイリングの事始めともいうべきサイコ・スリラー。
第三五代合衆国大統領、J・F・ケネディはホワイトハウスの大統領執務室へ側近たちを集めた。キューバと呼ばれる旧スペイン帝国領を支配している共産主義者が、ソ連との間に大規模な軍事援助協定を締結し、反応弾頭を備えた準中距離弾道弾を持ち込んだからだ。空爆か侵入か、東西両陣営に地獄の天使が微笑んでいる…1962年10月20日午前9時、悪魔の瞬間が始まった。その頃、東京では。…戦後最大の核危機を迎えた人類の現代史を検証、冷徹な筆致で分秒の緊迫場面を刻む佐藤大輔の超弩級新シリーズ第一作。
若者たちが立ち上がった、あの黄金の時代、青年はニューヨークの谷間に漂着した。無限の自由と、魂の孤独を生き抜いた60年代の青春…現代の若者に贈る、宮内勝典の初期代表作。現代青春文学の金字塔。
フロリダは風光明媚な島タンゴ・キー。この島に住む有名な弁護士が、ある日首なし死体となって発見された。第一発見者は美貌の妻、イヴ。その彼女を見て、殺人課の刑事アリーンは愕然とする。そこへ恋人でもある同僚のマーフィが現われた。彼もまた、呆然と立ちすくんでしまう。イヴは、いまは亡き彼の妻、モニカに瓜ふたつだったのだ…歪んだ愛と欲望渦巻く新シリーズ第一弾。
ヴァン・ヘルシングが斃れ、ドラキュラはついに英国全土を征服した。だがその治世下、吸血鬼の娼婦ばかり惨殺される事件が発生。諜報員ボウルガードは、闇の内閣の命を受け、「切り裂きジャック」追跡に乗りだす。一方、ドラキュラとは血統を異にする吸血鬼の美少女、ジュヌヴィエーヴもまた事件を追いはじめるが…いまひとつの世紀末。虚実ないまぜにして贈る、あの名作の総編。
二十世紀初頭のアルバニアの高地。この地域の人々の生活は、復讐を核とする古い掟によってすみずみまで支配されている。七十年前から連綿と繰りかえされてきた復讐により死を宣告された男と、彼を思う人妻との出会いと別れ。荒涼たる高地を舞台に、錯綜する生と死のイメージが織りなされる。