1997年12月発売
女のくせにー若くして出世した涼子には、男たちの反感が集まっている。欲望を下敷きにした憎しみ。卑屈さの混じった好意。警察という男社会で、それでも必死に突っ張っている。そんな涼子が出会った謎の女。冷たい美貌と完璧な肉体を持ち、エレガントでいて野性的。可愛い女じゃない、硝煙と香水の似合う女たちが出会い、そして事件が起きたー。強がって生きている女のための物語。
山歩きの途中、男は偶然見かけた古い鉄塔の上に小屋を建てて、奇妙な空中生活を始めた。厳しい冬にも耐え、ようやく春が訪れたのだが…(『鉄塔のひと』)。ある秋の朝、庭先に一人の女がいた。まるで妻のようにふるまうのだが、まったく見覚えはない。しかも困ったことに、私には妻に関する記憶がなかった!(『妻』)。シーナ的発想が産んだ摩訶不思議な世界を描く短篇十連発。
雪のひとひらは、ある冬の日に生まれ、はるばるとこの世界に舞いおりてきました。それから丘を下り、川を流れ、風のまにまにあちこちと旅を続けて、ある日…愛する相手に出会いました。ひとりが二人に、二人がひとりに。あなたが私に、私があなたに。この時、人生の新たな喜びと悲しみが始まったのですー。永遠の愛の姿を描く珠玉のファンタジーを、美しい挿画でお届けします。
1994年1月17日、カリフォルニア大地震で父母を失ったルイス・クレインは三十年後、超一流の地震学者となっていた。日本の佐渡島で起きた大地震の予知に成功するなど、彼の理論は完成目前だったが、周囲ではイスラム国家の陰謀が渦巻いていた。やがてクレインは新たな大地震を予測。その規模は人類がまだ経験したことのないものだった…。
東京・東品川のスイミングコーチ・沼田信三は、メンバーのクラブホステス・杉野弘子に誘われ、肉体関係を持つようになる。半年ほどしたある日、沼田は弘子を通して大物政治家の変態的なセックスの相手をさせられる。金と妹への暴力をちらつかされて無理矢理、関係を続けさせられる沼田だったが、スキャンダルを逆手にとって、屈辱を強いた男たちに復讐を開始する。命を賭けた男の戦いと奇妙な愛の行方は。
博覧強記の鳥玄坊先生に師事する青山ヒロシは、始皇帝陵で「シュイ・フー」と名乗る謎の人物と出会う。「近いうちに時間が止まる。日本にいる鳥玄坊に同じ過ちを繰り返すな、と伝えよ」と男は告げる。その日を境に世界中から「極めて日本的な絞様」が出現し、太平洋にはこの世にありえない生物が、その姿を見せた。
黄金期パズラーの名作。4月13日正牛、おまえは死ぬー著名な外科医カッター博士に届いた不敵な犯行予告。あらゆる事態を想定して警護にあたったロード警部だが、その目の前で事件は起こった…。上空数千フィート、空の密室ともいうべき飛行機内で果たして何が起きたのか。
ペリーの率いるアメリカ艦隊の江戸進行を阻止しようとした浦賀奉行の乗った軍船が、その黒船に衝突され沈没した。その報告を聞いた幕閣と大名諸候は騒然となる。鎖国派の水戸斉昭や島津斉彬の提唱する黒船打払い方針に対し、開国派の井伊直弼や堀田正睦は明日でも下田に入港するロシア艦隊を利用すべきだと主張した。この抗争の中、一橋慶喜が幕府の軍船と船手組の指揮の委譲を申し出て、黒船との対決を計るが…。
イギリス軍の香港・啓徳飛行場がドイツのJu87により爆撃された。イギリスからの要請を受けた日本政府は蒼龍・飛龍の2隻の空母と駆逐艦4隻からなる南雲少将の第2連合航空戦隊を派遣した。そして、さらに陸軍の将兵の輸送にあたり、井上少将の第4艦隊も出撃する。2隻の空母には試験飛行半ばで実戦配備された双発の九試長距離戦闘機が2機搭載されていた。ドイツの新鋭機He112・Bf109対日本の鷲型戦闘機と九試戦闘機の空中戦。
新人公安調査官・真部和己は、先輩の美香とともにシャトル事故の現場に向かっていた。宇宙ステーションから護送された人間たちは墜落事故で全員死亡。だが遺体確認の取れない、三人の少女たちの死を、ある仮定から真部は信じられなかった。巡回ロボットのモノアイが不審人物を捉え攻撃する、Nobodyシステムを推進する警備会社NSSには、後ろ暗い噂がある。NSSを調査中の真部は、偶然にも見つけたーモエ、ユウカ、ドール、特殊能力をもち、風を操る宇宙育ちの三人の少女を。
政治犯Sが収監された刑務所は、凶悪犯専門の監獄だった。そこの更に最底部の独房舎では、囚人に対する極度の合法的リンチと重労働が課せられ、看守への絶対的服従を強いられる。異分子に対しての徹底的な自我の破壊、尊厳の否定が恒常化していた。果てしなく繰り返されるSへの攻撃。「正常」でいられること、自己と創作活動を守り保つための権力との凄絶な闘いの末に…。十二年におよぶ獄中生活のすべてを賭けた渾身の衝撃作。
すみきった夜気をふるわす天使の合唱、星をしるべに馬小屋をたずねあてた羊飼いや賢者たちの話は、牧歌的な美しいクリスマスを連想させる。しかしほんとのクリスマスは、ローマの圧政のもと、町はずれのかいば桶を産所とする、ヘロデ王の幼児虐殺の手も迫ってくる、暗い陰に彩られていた。ところがその暗さ、本来のクリスマスの暗さは、人々に深くいい知れぬ慰めと希望をもたらすのである。本書はわれわれの世紀末の現実のなかで、今、現に、この力がどのようにその慰めと希望を人々にもたらすかを描いて、見事である。
春団治刑事長こと岩切鍛治は、組織や規律だけを重んじる警察の体質に刃向かう大阪府警の一匹狼だ。彼を慕う若手刑事が市内で屋台を撤去しようとして暴力警官として告発された。その直後、告発した男が不可解な死を遂げる。事件にきな臭さを感じた岩切は単独捜査を開始!「刑事長」シリーズ興奮の第三弾。