2001年発売
妻に去られたナッシュに、突然20万ドルの遺産が転がり込んだ。すべてを捨てて目的のない旅に出た彼は、まる一年赤いサーブを駆ってアメリカ全土を回り、“十三ヵ月目に入って三日目”に謎の若者ポッツィと出会った。“望みのないものにしか興味の持てない”ナッシュと、博打の天才の若者が辿る数奇な運命。現代アメリカ文学の旗手が送る、理不尽な衝撃と虚脱感に満ちた物語。
伊丹の新酒を江戸に運ぶ新酒番船の一艘が難破。船頭の息子と知り合った「かわせみ」の面々が心配するなか、船頭が生還したとの知らせが…表題作など全七篇収録。「御宿かわせみ」シリーズ第26巻。
妊娠22週目の胎児の卵巣に存在する700万個の卵子。この生物学上の事実が、巨額の金をもたらすプロジェクトを生んだ。顕微鏡の中で繰り広げられる生命創出の一部始終。快感に打ち震える狂気の科学者。神を冒涜する所業に今、ひとりの日本人が立ち向かった。“朝倉恭介シリーズ”で日本のエンタテインメント界に新風を吹き込んだ楡周平が放つ、冒険サスペンス巨編。
俺、常巳22歳。平目によく似た顔をした年上の順子と同棲中。腕っぷしは滅法弱くて、底抜けのお人好し。自分でも嫌になるほど情けないチンピラだ。みんなには、向いていないから足を洗えと言われている。でも、伝説の男・腕斬り万治さんの出所を機に本物の男になろうと心に決めるが…。都会の片隅で健気に頑張るオチコボレの心温まる物語。ちょっぴりレトロで、何となく切ない人間賛歌。
頭の中に反響する声…それは、過去から運ばれてきた聞こえるはずのない「声」。ドメスティック・バイオレンスから逃れ新しい人生を歩きだした杏子の抱える闇が残留思念と共鳴したとき、時間の底に眠っていた冷たい真実が浮かび上がる!特殊な能力を持つが故の苦悩を静謐なタッチで描いた連作ミステリー。
スーパーヒーローが独裁者から世界を救う!いとこ同士のジョー・カヴァリエとサミー・クレイは、『スーパーマン』の登場で黄金期を迎えたコミック業界で名をあげようと野心を抱き、究極のヒーロー“エスケーピスト”を生みだした。ナチスの魔手が迫ったプラハからここニューヨークへ逃れてきたジョーの体験を投影したエスケーピストはたちまちアメリカじゅうを席巻し、二人は頂点を極める。物語作家のサミーと、卓越した画才を持つジョーは、性格は違うが気も合う最強のコンビだった。しかし非情な戦争が強い絆で結ばれた二人を引き裂き、彼らを別々の運命へと導く…。野心的なふたりの青年の波瀾万丈な人生をパワフルに描くピュリッツァー賞受賞作。
昭和三十年代初め、あらゆるタブーに挑戦し耽美と贅のかぎりを尽くした限定版豪華雑誌が話題となった。しかし、創刊から6号を数えて、雑誌『快楽殿』はあっさりと姿を消した。“幻の”といわれるゆえんである。盛岡でオンライン書店を営む矢城は、東北財界の重鎮・漆原より、『快楽殿』の6号を入手するよう依頼を受けた。数少ない手がかりを追う矢城を待ち受けていたのは、悪徳ブックハンターなど稀覯本を取り巻く闇の世界。そしてなによりも、『快楽殿』そのものが大いなるミステリーなのであった!傑作長編サスペンス。
高辻藍は専業主婦。商社に勤務する夫の司郎、中学生の長女・春菜と国分寺に暮らしている。おだやかに幸福を食んできたかにみえる一家。しかし、不妊に悩んだ末、第三者の精子提供により長女を出産したことは、夫婦だけの秘密だった。「家族」という砂の城に、互いの理想をひとつずつ積み上げてきた夫と妻。だが、結婚二十二年目の夏、その城に思いもよらぬかたちで亀裂が入った…。
孤独なピアニスト響子がかつての“恋人”透子に再会した。家族の温もりを求めてシングルマザーとなり赤ん坊の桐人を育てている透子に対して、変わらぬ情熱を抱きながらも子供の存在を受け容れられない響子。そんな三人の不安定な関係が、透子の突然の死によって崩壊した時、響子の前に謎の青年が現れた…。山本周五郎賞作家が新しい“家族”のかたちを問う、とびきり切ない愛の名品。
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じてー。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」少年は錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んでいく。世界中の人々の人生に大きな影響を与えてきた夢と勇気の物語。
「ぼくの鼻は、イヌの鼻!?」殺人者の襲撃に遭い、頭部を強打された後遺症で“匂い”を失った「ぼく」こと片桐稔は、その代わりに凄まじい“嗅覚”の世界を獲得する。この尋常ならざる異能を用いて、殺人者に殺された姉の仇を討つことはできるのか?「このミステリーがすごい!」2001年版第4位に輝いた傑作、ついにノベルス化。
巨大化した死蜘蛛が支配する二十五世紀の地球。覚醒した少年ナイアルは、蜘蛛に隷属することを拒み、「神秘のデルタ」へと旅立つ。そこは、獰猛な植物たちが血で血を洗う危険なエリアだった。学び、悟り、ナイアルは、過去に人類が到達し得なかった高みへと昇りつめる。コリン・ウィルソンの思想の核となる部分がすべて入った『スパイダー・ワールド』サーガ、第二巻。ナイアルの冒険の結末が終に明らかに。