2002年11月発売
戦争で焼かれた村の海辺で、アーマン(オカヤドカリ)に棲みつかれた肉体を離れて海をみつめる男の魂に「帰れ」と訴えかける女の声は届くのか…。現在と過去が交錯する沖縄の風景から甦る戦争の記憶。表題作「魂込め」を含む6編を収録した沖縄文学の新たな担い手による、芥川賞受賞後初の短篇集。
人生には五つの部屋があるー知識の部屋、可能性の部屋、神の暗室、がらくた部屋、そして、できれば知らなかった方がよかったことのための部屋…「疑問とともに生きるよりも、答えと生きる方がずっとむずかしいこともある」愛とは?夫婦とは?そして家族の絆とは?18ヵ国語に訳された世界的ベストセラー小説。
妻として母として、セント・ジュードにある家で50年の歳月を過ごしてきたイーニッド・ランバートにとって、山積する不満はなかなか解消されない。介護や医療費のことが不安だし、長男の嫁との関係は悪化するばかりだ。夫のアルフレッドはすでに鉄道会社を退職している元技術者で、パーキンソン病を患って痴呆症が出始めている。子供たちは子供たちで、わが家を巣立ってから何年も戻ってこないまま。しかも、それぞれの生活は行きづまっていた。長男のゲイリーは地方銀行の部長で経済的には恵まれているが、妻子との関係が不調で鬱々とした日々を送っている。反抗的な次男のチップは大学で先鋭的な文学理論を講じていたが、女子学生と関係を持って辞職に追いやられ、破産寸前の状態。末っ子で一人娘のデニースは新進気鋭のシェフとして活躍しながらも、結婚や恋愛の面で波乱の連続だ。あらゆる期待を打ち砕かれていくイーニッドに残された望みは、家族の絆を取り戻すために、家族そろってわが家でクリスマスを祝うこと。かくして、家族の絆の修正(コレクションズ)は、最後のクリスマスの日に託されたが-。家族という私的な領域と、現代アメリカが直面している社会的領域とを、さまざまな手法を用いて巧みにリンクさせ、辛辣に、滑稽に、現代人にまつわる悲喜劇を紡ぎだす。全米図書賞に輝くベストセラー小説にして、21世紀初頭のアメリカ文学最大の話題作。
2001年秋、新世紀SF新人賞を受賞したばかりの作家・兜坂亮は、新興出版社ハイネマン書房の時野から、数学者・本間鉄太郎をモデルにした小説の執筆を依頼される。第2次大戦下のドイツで消息を絶った本間は、高次元多胞体理論なる独自の時空論に到達していたというのだ。取材をすすめる兜坂の周囲で、公安調査庁が不気味な活動を開始する。いっぽう1936年のドイツ、学術都市ノルンシュタットを訪れた若き日の本間は、何かに導かれるかのように、空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングに接近していくが…。「時空は、そして因果律は修復可能なのか?」-小松左京賞受賞作家が拓く時間SFの新地平。
土門岳人は警視庁捜査四課の暴力団係刑事だ。職階は警部補だが、四谷署刑事課勤務時代に誤認逮捕の責任を負わされてからというもの、傍若無人に生き抜いているため、未だに主任にもなっていない。しかし、凶暴な性格で、まるで協調性のない土門が警察に籍を置けるのは、有資格者たちの不正やスキャンダルの証拠を押さえているからだ。その、職場でも裏社会でも“狂犬刑事”と恐れられている土門の情報提供者のひとり、関東仁友会の首藤正邦理事が射殺されたという。半年以上も前から揉めていた奥州連合会の仕業なのか…。
この世でいちばんの謎、それは妻の心!?何かに駆り立てられるように家を飛び出した妻が、大学時代の5人の同級生に配信した、5つのショート・ミステリー。ささやかな日常に潜む小さな軋みが、人生の落とし穴に変わるとき。そこに浮かび上がるのは、見知らぬ妻の素顔…。松本清張賞の俊英が描く異色のラブ・ミステリー。
吟唱詩人アネイリンによる、いまも伝わるケルトの叙事詩『ゴドディン』。紀元六〇〇年のブリテンを舞台に、少年プロスパーの半生とともに、サトクリフが『ゴドディン』の世界を物語る。
彼女に貢いだあげく手ひどくフラれ、借金地獄に陥ったエリート・サラリーマンの泰正。追いつめられて駆け込んだ先はヤミ金融だ。…だがそこ、通称「村上銀行」の社長は、なんと中学・高校と同級生で、かつて誰よりも自分をイジメまくった男、瑞穂だった。ホストも真っ青の色男社長から借金返済の代わりに愛人になれと言われて押し倒されれば、気弱な泰正には抵抗する術もなく…。スリリング激ラブ書き下ろし。