2002年3月発売
「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ二編を含む、趣向を凝らした十作を収録。『まどろみ消去』に続く第二短篇集。
「君たちはコストだ」。合併を目前に傲然と言い放ち、リストラを進める銀行の論理。MOF担として活躍していた同僚の非業の死をきっかけに、組織の中で歯ぎしりするだけだった行員たちが勇を鼓して立ち上がったとき、銀行に巣食う「巨悪」が牙を剥いた…。大手銀行の中枢を知る幹部行員が書いた、リアリティあふれる銀行小説。
独自の言語を設計する言語デザイナーの主人公は、奇妙な偶然から、これまでのものとはまったく構造の異なる言語に遭遇する。言語理解と人間の認識能力、そしてその未来を描いて第17回ハヤカワ・SFコンテストに入選した表題作をはじめとして、緻密な世界観に裏づけられた、名品8篇を収録。大反響をまきおこした、スペースオペラ「星界シリーズ」で、日本SFの新時代を切りひらく、森岡浩之のエッセンスを、ここに凝集。
僕の横に身を横たえた彼女はうっとりとして、官能的な唇を半開きにした。その唇を吸いながら、僕は果実のように丸みを帯びた胸の膨らみを掌で撫で回し、少しだけ乳首を摘んだ後、括れた腰から丸い尻の方に手を滑らせた…。-宮園貿易社長の未亡人からかかってきた一本の電話。高岡設計事務所所長の高岡は、吸い寄せられるように岬の突端に建つ瀟洒な別荘に向かった。そこに待っているのは愛なのか、罠なのか…。Mとはいったい何者なのか…。人気女優でもある作家の小川美那子が描くエロティック・サスペンス!ミステリと官能が同時に楽しめる一冊。
「指輪物語」を生んだ国、イギリスのSF評論家、名物プロデューサー、映画史研究家が総力を結集、原作から映画に至るまで縦横無尽にガイドした「最強の入門書」。この一冊で「壮大な物語」の全貌が明らかになる。
田舎から憧れと野心を抱き東京へと降り立つ終着駅・新宿。見知らぬ男女、宮地杏子、浅川真、軍司弘之は同じ電車で巡り会い、新宿駅へと降り立った。二年後、浅川が新宿の高層ホテルで殺害され、軍司も失踪してしまう。さらなる犯罪が起こる中、捜査陣がたどり着いた容疑者には、犯行時間に密室にいた完璧なアリバイがあった。捜査は難航を極めるが、意外なところに事件を解くカギがあった。五件の犯行が複雑に絡み合い、事件は二転三転としていく。展開の罠を見事に張り巡らした、著者の記念碑的作品。
時は一八八八年、大英帝国の首都ロンドン。「切り裂きジャック」と呼ばれる謎の殺人者による連続殺人事件が、街中を恐怖に陥れていた。医学留学生としてロンドンに滞在していた日本人・柏木は、友人でロンドン警視庁に所属する美青年・鷹原とともに、この事件と深く関わりを持つことになるー。二人の日本人青年の目を通じてヴィクトリア朝時代のロンドンを緻密に描き出し、絢爛豪華な物語が展開される。小説世界に浸る喜びを存分に堪能できる、重厚かつ品格に溢れた傑作ミステリー。
なぜか住人は独身女性ばかりというオンボロアパート、通称「縁切り荘」の住人、呉早智子が婚約した!しかしほどなくして当の相手が転落死してしまう。事件解決に乗り出した亜由美にも、恋人の谷山をめぐって思いがけず手強いライバルが現れて…!?一筋縄ではいかない女の心理を鋭く軽やかに描きだす表題作ほか、一億円の当たりくじをめぐってさまざまな人間の思惑が入り乱れる「花嫁と女神の微笑」を併録。
桜の花が咲くころ、新聞記者を休職中のぼくは一つ年上の女とある酒場で再会し、一夜をともにする。そして、数ヵ月後、酒場に再びぼくが訪れた時に聞いた噂は、二十八歳の彼女は妊娠しているというものだった。しかも彼女は行方不明。父親はぼくなのか?ならばなぜ彼女は妊娠していることをぼくに知らせないのか?教授、魅力的な夫人、十七歳の少女、風変わりな探偵。悲しみも夢も希望もある人々とめぐり会いながら、彼は彼女の行方を追うー。
小劇団「紅神楽」を主宰する女優・紅林ユリエの恋人で同居人のミケさんは料理の達人にして名探偵。どんなに難しい事件でも、とびきりの料理を作りながら、見事に解決してくれる。でも、そんなミケさん自身にも、誰にも明かせない秘密が…。ユーモラスで、ちょっとビターなミステリ連作集。文庫化に際して、新たに特別短編を加筆。さらに美味しくなった、スペシャル・メニューを召し上がれ。
定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、富士市では赤い巨人の噂に、榛名山では謎めいた狛犬に出迎えられ、やがて、日常世界が幻想地獄に変貌するー。鬼才が彩る妖しの幻想怪奇短篇集。