2005年10月発売
政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。人々の心をわし掴みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、弟の直観と呼応する。ひたひたと忍び寄る不穏と、青空を見上げる清々しさが共存する、圧倒的エンターテインメント。
もう、恋も愛もいらない。なくても寂しさも不便も感じない。ひとりで心穏やかに過ごせ、自分を完結させられる。早くそこに辿り着きたいー。恋愛なんて、ある年齢になれば卒業できると思っていた。けれど、やはりそうではないらしい。いつだって、人は誰かを求め、恋を待っている…。金沢、名古屋、東京で生きる祖母、母、娘たち三世代のゆれ動く恋と仕事、結婚。すべての世代の女性たちに贈る待望の恋愛長篇。
冬子29歳、ただいま妊娠9ヵ月。まごうことなき妊婦である。しかし十月十日を過ぎても子どもは産まれてこない。-個性的な女優が映画制作に先がけて初の小説に挑戦、不思議な傑作が誕生した。書き下ろし長篇450枚。
向こう見ずが信条のジャーナリスト志望の篤。怪しいバイトの潜入取材が縁で、警視庁のエリート、レオンと一月ほど前、恋人同士になったばかり…だが、またもや好奇心の虫が疼きだし、レオンのお仕置きエッチたっぷりの制止も振り切って、今度は新型ドラッグのネタを求め香港へ…。ところがまんまと密売組織のボスらしき男の罠にはまり、エロチックなメイドに変身させられ…!?書き下ろしリスキーラブ。
琉球王家最後の姫君が名門・井伊家に嫁いだ事から始まった彦根の名物行事「ブクブク茶会」。その行事に沖縄から参加した式香桜里は、幼い頃から「神の子」と言われる不思議な能力を秘めていた。数日後、彦根において香桜里の素性を執拗に探っていた不審な男が、琉球王国の聖地・斎場御嶽で死体となって発見される。事件究明の依頼を受けた浅見光彦は、急遽、沖縄へ。神秘の国に封印された悲劇の連鎖。美しき霊能者が抱いた儚き恋の行方。名探偵・浅見をも惑わす驚愕の真相とは。
マリー見かけは普通の少女だが、実は天国から地上へ「研修」にやってきた落ちこぼれ天使。ポチー黒犬の姿をしているが、その正体は地獄から「成績不良」で叩き出された悪魔。本来は正反対のはずの天使と悪魔が、なぜか一緒に人間界を旅することになった。そんなマリとポチが遭遇したのは、「動物が自殺する」という不思議な事件。飼い犬、物動園の虎、公園のウサギ…たくさんの動物たちが人間の目の前で「自殺」してしまうのだがー?天使と悪魔の名コンビが活躍する冒険ロマン・ミステリー、シリーズ第6弾。
「お母さん、殺されたのよ」-学校から帰ってきた美幸は、家で母が殺害されたことを知らされる。警察は第一発見者である父を疑うが、彼には確かなアリバイがあった。しかしその言動に不審を抱いた美幸は、VIP専用の調査機関“探偵倶楽部”に調査を依頼する。探偵の捜査の結果、明らかになった意外な真相とは?冷静かつ迅速。会員制調査機関“探偵倶楽部”が難事件を鮮やかに解決。
男はもうこりごりと思った私は、ついに念願の猫を飼うことにした。が、二匹のうちの一匹がどうしてもなつかない。表題作「秋の猫」。夫婦で犬を飼い始めたとたん、仕事は順調、夫は女をつくった。いざ離婚というときに、夫も私も犬の親権を主張して譲らない。「幸運の犬」ほか、犬や猫との交流をとおして、心を癒され、孤独の寂しさを埋めてゆく男女を描く、心温まる短編集。
バブル崩壊による銀行破綻に連座して逮捕され、すべてを失った元エリート・柏木雪雄。獄中で見る夢に、とうに捨て去った過去の「秘密」が甦ってくるのを感じ取る。秘密の鍵は幼い頃過ごした熱帯の中にある。出所した柏木は記憶にはない父親の像をたどってミンダナオ島のカリナンに向かった…。ベストセラー小説『プラハの春』の元外交官作家が鋭く問いかける、戦後日本人の「来し方」。
エンブリオーそれは受精後八週までの胎児。天才産婦人科医・岸川は、人為的に流産させたエンブリオを培養し臓器移植をするという、異常な「医療行為」に手を染めていた。優しい院長として患者に慕われる裏で、彼は法の盲点をつき、倫理を無視した試みを重ねる。彼が次に挑むのは、男性の妊娠実験…。神の領域に踏み込んだ先端医療はどこへ向かうのか。生命の尊厳を揺るがす衝撃の問題作。
「男性の妊娠」研究を国際学会で発表し、各国の賞賛を浴びた岸川。彼の高度な医療水準に、アメリカで不妊治療をビジネス展開する大企業が目をつける。最先端の技術と情報を盗むため、巨大組織が仕掛けた卑劣な罠。そして、それに対して岸川がとった恐るべき反撃策とは。岸川の持つ闇が徐々に暴走し始める…。生殖医療の暗部を鋭くえぐり、進みすぎた生命科学が犯す罪を描き出した戦慄の長編小説。
フランスの下宿の娘ミミ、学友・乃木希典、美術商ルネ・ウィナー、園芸家ヴィクトール・ルモワーヌ、高島北海自身、そして現代に生きる女性作家「私」から、語られる、植物を愛した画家の謎と真実。
明治維新の百年前、京洛の闇の中で倒幕運動が始まった。公家や武家がそれぞれの思惑を秘め動き出す。そしてついに数百年も対立してきた二派の忍者、静原冠者と八瀬童子の決戦の火蓋が切られた。