2005年発売
「空の要塞・B17」の出現に衝撃を受けた帝国陸軍が、苦難の末に完成させた四発高速重爆があった。「火龍」である。機体の頑強さを利用し、対地対艦攻撃用に重火器を搭載した「空挺砲艦」は、改良型「三式重襲撃機」に至り脅威の進化を遂げた。この「超・空挺砲艦」は緊急出力1万馬力超のパワーが生む高速性と、戦闘機の火力では撃墜困難な重装甲で、敵重巡をも撃ち抜く火力を備えていた。「超・空挺砲艦」は、海軍の「特型陸攻」、反跳爆撃で対艦戦闘に猛威を振るう「火龍改」と並び、米空母機動部隊を攻撃し、多大な戦果を挙げる日本軍の航空戦力の要となった。米軍はこの「火龍一族」を殲滅すべく、急遽“火龍殺し”の「ガン・スリンガー」を開発した。B17の出力を強化し、大口径機関砲を多数搭載した空挺砲艦である。究極の進化を遂げた日米の「空の要塞」が激突、マリアナ沖で殲滅戦を繰り広げるが、最後に勝ち残るのは果たして…。
「-諸手をあげて、喜べよ」人類の最終存在、橙なる種・想影真心を伴って、「僕」こと“戯言遣い・いーちゃん”の前に「狐面の男」は現れる。バックノズル、ジェイルオルタナティブ…。“運命”の最悪の傍観者たる彼が唱える“世界の法則”は、この世の“真理”そのものなのか!?新青春エンタの決定版中の決定版、戯言シリーズ、その最終楽章となる『ネコソギラジカル』三部作、すべてが予測不可能な主題が激しく錯綜し旋律する、待望の中巻。
日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校5年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散のこの体験と歴史の非情は、愚哲少年にはかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未成年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か。 歴史の表面から消された樺太と、サハリンにおけるスターリン時代の朝鮮人の実存を、嘘泣き少年・愚哲の目をとおして奔出させた面白くて滑稽な、心を洗われる現代小説。 この現代小説こそ、大いなる人間の物語の復活である。 日本の植民地時代、樺太・真岡町まで流転していった一朝鮮人家族。愚哲は国民学校5年生のときに皇国少年として日本の敗戦を迎えるが、ソ連の侵攻後、一家はユダヤ人の協力を得て辛くもサハリンを脱出する。一族離散のこの体験と歴史の非情は、愚哲少年にはかり知れぬ罪意識を植えつける。在日朝鮮人としての自己形成がうまくいかぬこの未成年者と朝鮮戦争の勃発。戦後日本の、欺瞞と忘却の中で生きる愚哲の希望とは何か。
ローティーンの時期を経て成長した愚哲は、やがて札幌のある高校へ進学する。彼の特技は、失敗すること。けれども朝鮮戦争のあとさきに、哲学し行動するさまざまな友人や教師から生きる知恵をまなんで民族の自覚を目指すが、脆くも挫折していく。貧しい家庭の内部に渦巻く欲望と呪詛の根源を見据え、歴史の隠蔽と文化の掠奪を告示する重層的な文体。 「我輩は朝鮮人である」と初恋の人に告白する豚屋の息子、愚哲少年のみずみずしい思春期。 冷戦構造下の「戦後民主主義」の死角を「在日」の目をとおして検証し、戦後60年と未来を見つめようとする新しい知的営為。 ローティーンの時期を経て成長した愚哲は、やがて札幌のある高校へ進学する。彼の特技は、失敗すること。けれども朝鮮戦争のあとさきに、哲学し行動するさまざまな友人や教師から生きる知恵をまなんで民族の自覚を目指すが、脆くも挫折していく。貧しい家庭の内部に渦巻く欲望と呪詛の根源を見据え、歴史の隠蔽と文化の掠奪を告示する重層的な文体。労働する「愚哲」と「ぼく」との二人三脚は、日常生活と非現実の夢を紡ぎ、さり気ないユーモアとアイロニーの連続の中で展開されていく。地上に生きるすべての人へ、その眼差しは向かうが……。
進学校である松山東高校になんとか入学した悦子は、女子ボート部を設立し、初心者ばかりの仲間を集め、エネルギーをボートに注ぐ。「自分の居場所」を見つけ、張り切る悦子だったが、貧血と腰痛に見舞われ、大事な大会直前、ボートが漕げなくなってしまう。若さゆえの焦燥、挫折、淡い恋心・・・。「あの頃」を切ないまでに鮮烈に描く傑作青春小説。
16歳で家出した輝雅は、船員になり、米軍のLST(上陸用舟艇)で軍事物資を積んで東南アジア各地を航海し、ヴェトナム戦争前夜、激戦のハイフォン港へフランス軍の救助に向かう。船を降りて様々な職業を転々とする輝雅の胸には、いつしか「画家になりたい。ニューヨークへ行きたい」という願いがきざしていた…。『血と骨』を凌ぐスケールとダイナミズムで描く、戦後日本の不屈の青春。
孤独と寂寥、うつろい行く青春の日々の中、希望と未来のあったあのころ。「16歳の私」が19歳になるまでの間、工業団地に程近いアパートの一室「離れ部屋」に暮らし体験した様々な人間模様を回想したベストセラー小説。
江戸市中では押込みが続発していた。そんな折、三味線流しおきんの結び文が『かわせみ』へ届けられ、解決の糸口となる。表題作他、大名家の姫君の江戸見物を描いた名品「岸和田の姫」など七篇を収録。大川端の旅篭『かわせみ』の女主人るいと恋人の東吾、八丁堀同心・畝源三郎の名トリオがおくる人情捕物帳シリーズ、新装版第十二弾。
ミステリー界の大御所が、秩父の山荘で、十年ぶりの新作執筆に取りかかる。タイトルは『螺旋館の殺人』、本格推理ものだ。ある日、作家志望の若い女性が自らの作品を手に訪ねて来る。その後の原稿紛失、盗作疑惑…奇妙な事件の果てに待つものは?折原ミステリーの原点、精緻な多重トリックが冴える長篇。
ここではないどこかへ…。東京の日常に疲れ果てた有子は、編集者の仕事も恋人も捨てて上海留学を選ぶ。だが、心の空洞は埋まらない。そんな彼女のもとに、大伯父の幽霊が現れ、有子は、70年前、彼が上海で書き残した日記をひもとく。玉蘭の香りが現在と過去を結び、有子の何かが壊れ、何かが生れてくる…。
-おら、負けねえ。絶対いっぱしの男になってやる。ムクムクとわき起こる闘志のせいか、慣れない長旅のせいか、有二の額に汗が吹き出す。それを腕でグイッと拭うと、有二は眦を決して人波に飛び込んでいった。栃木の糞ガキ鈴木有二が、世界チャンピオン、ガッツ石松への一歩を踏み出す、まさしくその瞬間だった。貧しくひもじかった少年時代、無我夢中で突っ走った青春時代-いつも熱く一途に生きる男・ガッツ石松の半生を、いきいきと描き出した初の自伝小説。
香道家元の夫が殺された!芳しい烟りに秘められた謎とは!?フィールドワークとして近江・鳥居本を訪れた民俗学者の潤一郎は、父親を捜す美咲という女性と出会う。失踪前に父が「鳥居本へ帰りたい」と話していたのだという。しかしそこには父親の影はなかった。さらに「鳥居」とつく地名を捜すという美咲と別れて京都に向かった潤一郎は、ふとしたことから殺人事件に巻き込まれてしまう。殺されたのは有名な香道家元の夫で、史学科名誉教授。事件を調べはじめた潤一郎は、奥嵯峨で思いがけない事実を知る…。全く別と思われた失踪と殺人-ふたつの事件を結ぶのは謎の言葉“ホサハ”-。
美しい港町アデンを舞台に、恋も財も失った令嬢がある大金持ちの奇人の助力を得て、不幸のどん底から立ち直ろうと健気な大勝負に出る「銀山王」。生まれは貴なるも無銭無家の快男児・団金東次が如意棒片手に世界へ船出する、痛快活劇「世界武者修行」。世に聞こえたアラビアの航海王・乗船伯爵が問わず語りに語る摩訶不思議な冒険譚「魔島の奇跡」。血気盛んな明治の青少年から絶大なる支持を受けた冒険小説の祖による幻の傑作3編を収録。
圧倒的事実の<生と死>--8月9日に、すでに壊された<私>。死と共存する<私>は、古希を目前にして遍路の旅に出る。<私>の半生とは、いったい何であったのか……。生の意味を問う表題作のほか、1945年7月、世界最初の核実験が行われた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち《人間の原点》を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞作品。 ◎林京子ーー私は立ちすくんだ。地平線まで見渡せる荒野には風もない。風にそよぐ草もない。虫の音もない静まった荒野は自然でありながら、これほど不自然に硬直した自然はなかった。荒野は、原子爆弾の閃光をあびた日以来、沈黙し、君臨していたガラガラ蛇の生さえ受けつけなかった。大地は病んでいたのである。<「著者から読者へ」より>
予言者、野坂昭如の東京昨日今日明日。うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる14の断章。 東京小説 家庭篇 東京小説 純愛篇 東京小説 慈母篇 東京小説 友情篇 東京小説 ゼロ世代篇 東京小説 ぼくの町篇 東京小説 相姦篇 東京小説 尉と姥篇 東京小説 隅田川篇 東京小説 血縁篇 東京小説 ルーツ篇 東京小説 夢の島篇 東京小説 私篇 山椒媼