2006年3月発売
子持ちの女将が切り盛りする料理屋に居候の安兵衛は、実は旗本の三男坊。気ままな暮らしぶりから、極楽とんぼと呼ばれているが、ひとたび剣を抜けば、遣い手に。義理人情に厚く、嫌と言えない安兵衛は、毎度持ち込まれる難題に奔走して…。
妻の死後、田舎に隠棲する傷心のアンドレイを甦らせたのはナターシャだった。だが若さゆえの過ちから少女は誘惑者の手に。苦境を救おうと奔走するピエールが冬空に見たのは、ナポレオンとの再対決を予感させる、巨大な一八一二年の彗星だった…。
時代は昭和へと移る。金五郎は若松市会議員となり、すでに押しも押されもしない貫禄の親分である。しかし波止場の近代化の陰に、吉田親分との因縁の対立は徐々に深まる。マンと彫青師お京、金五郎をめぐる女たちもしのぎを削る。明治から昭和戦前に至る北九州若松を舞台に展開するロマンティシズム溢れる波乱万丈の物語。完結。
母を惨殺されて天涯孤独になった乞食のシヲは、村一番の分限者の養女となった。「ぼっけえべっぴん」と賞されたシヲだが、シヲの娘・ふみ枝は似ても似つかぬ醜女で、さらにその娘・小夜子は男を狂わす妖艶な美少女、そして初潮をむかえたばかりの小夜子が産んだのは、もはや“人とは呼べぬ”ものだったー。「書いてはいけないものを、書いてしまった」作家・岩井志麻子にそう言わしめた、女という生き物の哀しみに臨界点まで迫る暗黒大河小説、ついに登場。
いわゆる普通の「不良」であったはずのオレはある日、高校の友人とともに“組織”の争いに巻き込まれる。どうやらオレの父親はヤクザだったのだ。敵か味方か、右手がハサミ状の化け物“ビリィ”が現れる時、すべてが“粉砕”される!?文藝賞受賞作。
失踪した猟犬捜しを生業とするアウトロー探偵・竜門卓の事務所に、盲導犬の行方をつきとめる仕事が舞いこんだ。相棒の猟犬ジョーとともに調査を進めるうちに、薄幸な、ひとりの目の不自由な少女のもとに行きつくが、やがて…(表題作)。限りなく優しい誇り高い男たちの人間模様を、無駄のない文体とハードボイルド・タッチで描いた、感動を呼ぶ珠玉の作品集。
家族を捨て、阿久津伸吉は失踪した。しかし、残された子供、麻美子と伸吾の元には、誕生日ごとに父からの手紙が届いた。十年が経ち、結婚を控えた麻美子を不幸が襲う。婚約者が死体で発見され、弟が容疑者として逮捕されたのだ。姉弟の直面した危機に、隠された父の驚くべき真実が明かされてゆく。完璧なミステリー仕立ての中に、人と人との強い絆を描く感動作。
人身事故のため、停車中の通勤電車内。男は網棚付近に漂う黒い靄のようなものを目撃する。他の誰も気づかないが、禍々しい気配を放つ何か…。やがてそれが男に向けて迫ってきたとき、彼を襲った身の毛もよだつ出来事とは?(表題作)実話怪談の名手でもある著者が描く、日常の隙間から立ち現れる怪異の数々!書下ろし作品を含む全八編を収録する。
「自分の帰る場所がわからない。待っている人など、どこにもいない」兄弟のように育った内田は自殺し、祖母も亡くなった。独り残された義国は高校の寮に入るが、二学期の始業式の日、級友が校舎から転落死し、疑惑の生徒は失踪した。さらに寮でのボヤ騒ぎと名門私立高校を猜疑と恐怖が覆う。生と死、愛と性、友情が複雑に交差した多感な青春を描く学園ミステリー。
青柳剣一郎と剣道場で同門だった浦里左源太は、陸奥の藩に仕え幸せな家庭を築いているはずだった。ところが左源太の零落した姿が江戸で散見され、首をざっくりと斬られた武士の死体が見つかる。それは絶命剣という恐るべき技で、左源太がまさに体得しようとしていたものだ。何故家族を捨て、刺客となって帰府したのか?風烈廻り与力の剣と人情が冴える傑作。
慶長三年、天下人・豊臣秀吉が歿し、時の流れは徳川家康のものとなった。仕官への誘いを辞し、古河公方氏姫と静かに暮らす風魔の頭領・風間小太郎は政権基盤を固める家康にとって最大の脅威であった。徳川忍び衆を率いる稀代の謀士・柳生又右衛門に、風魔狩りの命が下るー。氏姫を護るため、小太郎は古河の地を離れ徳川の本拠・江戸へ向かった!風魔の地・箱根山塊に風雲、急ー。勝利するのは剣の極意か?徒手空拳の技か?乱世の英雄を活写した痛快時代小説。
“窓際族”という会社に飼いならされた生活を送る哀川真也は、謎の美女・巨勢玲子との出逢いで運命が一変する。哀川は玲子から誘われ、借金地獄やストーカー被害などで苦しむ人々を救う組織「アネックス」に参加した。彼はその活動の中で生きることへの情熱を取り戻していった。だが、「アネックス」が某独裁国からの亡命少女を匿ったことで事態は急変、哀川はメンバー共々過酷な状況に陥っていくー。己に眠る野性を解き放ち、男は大切なものを守り抜くことができるのか。人間の本質に深く踏み込んだ森村ワールドの大河巨編。