2006年9月発売
中国初の有人宇宙衛星・神舟5号打ち上げ成功の裏で、世界が度肝を抜くナノテク兵器・携帯型ミサイル誘導装置が開発されていた。その名は「光矢」。この極秘兵器が強奪され、中国当局の必死の探索の網の目ぬって、なんと、日本の女子高生の手に渡ってしまう…。フィクションが現実を先取りするか!今や、西欧に互して宇宙開発の優位に立ち始めた中国が、虎視耽々と狙うスペース覇権をテーマに描くサスペンス長編の傑作。
「きみといても楽しくない」。なぜ夫の心は自分から離れてしまったのか。エーヴァはヘンリックの気持ちをとりもどそうと必死だったー。ヨーナスという若者がいた。植物人間となってしまった恋人アンナを献身的に介護している。だが、その看病ぶりは常軌を逸しているようだー。ヘンリックに不倫の疑いを抱いたエーヴァは、憎悪の炎を燃やす。二組のカップルの葛藤が、ある晩思いがけない出会いを生み、そこから恐ろしい破局が始まる…。ベスト北欧推理小説賞受賞の実力派女性作家が、男女の心の奥底を緻密に描いて新境地を開くサイコサスペンス。
「あたし、怖いことが好きですわ」。そう微笑んで衣子はパリに旅立った。『美女と野獣』のラストシーンを瞼の裏に。機上から見る空のバラ色こそが明日の色だ、と信じるほどに無邪気なままー。文明開化の頃、横浜から単身渡仏した祖父・辰吉。家族の沸き立つ血脈が、彼女を人生の輪舞に駆り立てる。やがて訪れる激しい恋と、自らを翻弄する宿命の存在を、19歳の衣子はまだ知らない。
「Quelle beaut´e(何たる美だ)」。ロイックは妻の神秘と官能について思う。衣子は、夫の人生に影を落とす民族の歴史を知りたいと思う。差別や戦争の不条理を描こうと、彼女はドキュメンタリー映画の制作の道を選ぶ。パリ五月革命、プラハの春ー市民と国家体制が火花を散らす1968年の暮、衣子を待っていたのは生涯癒されない喪失だった。そして、15年が過ぎ…。著者渾身の自伝的小説。
浅草駒形町の船宿で船頭を生業にする小佐々銑十郎。二年前まで肥前大村藩の勘定方から近習を務めていたが、ひとつの失態が、実父であり筆頭家老の逆鱗に触れ、お役罷免となり勘当を言い渡された。妻子とも別れ、浪々の身となった銑十郎は、旧知の札差・大黒屋籐兵衛の計らいで下町に居を構え、籐兵衛が持ち込む萬請負をやっていた。家出人の連れ戻しや、町に巣食う無頼人を叩き出す見事な手腕を見せる銑十郎だったが、兄分の仇と恨む無宿人が、虎視耽々と彼の命を狙っていた…。
社会からドロップアウトした5人のおたく青年と、コスプレ喫茶のアイドル。彼らが裏秋葉原で出会ったとき、インターネットに革命を起こすeビジネスが生まれた。そしてネットの覇権を握ろうとする悪の帝王に、おたくの誇りをかけた戦いを挑む!TVドラマ、映画の原作としても話題の長篇青春電脳小説。
京都の旅館で中年女性が殺され、その知人が東京で殺された。双方の現場に残されていた「陰陽」の墨文字。連続殺人の狙いは何か?容疑者には、鉄壁のアリバイがある。そして、容疑者が参加した鎌倉・鶴岡八幡宮の流鏑馬神事で、「陰陽」のかけ声とともに起る驚くべき事件。十津川警部が大活躍する「祭り」シリーズ第四弾。
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
就職先の一流企業でも挫折感を味わった和恵は、夜の女として渋谷の街角に立つようになる。そこでひたすらに男を求め続けて娼婦に身を落としたユリコと再会する。「今に怪物を愛でる男が現れる。きっと、そいつはあたしたちを殺すわよ」。“怪物”へと変貌し、輝きを放ちながら破滅へと突き進む、女たちの魂の軌跡。
お文は身重を隠し、年末年始はかきいれ刻とお座敷を続けていた。所帯を持って裏店から一軒家へ移った伊三次だが、懐に余裕のないせいか、ふと侘しさを感じ、回向院の富突きに賭けてみる。お文の子は逆子とわかり心配事が増えた。伊三次を巡るわけありの人々の幸せを願わずにいられない、人気シリーズ第五弾。
ここはどこ?何のために?世界中から集められ、謎の“学校”で奇妙な犯人当てクイズを課される〈ぼくら〉。やがてひとりの新入生が〈学校〉にひそむ“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲うー。驚愕の結末と周到な伏線とに、読後、感嘆の吐息を漏らさない者はいないだろう。傑作ミステリー。
「わたしを助けて」。休暇で沖縄へ来た脚本家の前に、かつての恋人が現われる。彼女は「恋愛ドラマの教祖」と呼ばれる売れっ子脚本家となっていた。土曜ドラマのためのシナリオを二人で作り上げていく、息苦しいような四日間の後に…。じんわりとせつない恋の短篇集。他に遺作となった次回作プロットを収録。
バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が…。過酷な状況における人間の力強さをユーモラスに描いた傑作青春小説。
そこにあるのは胸躍る冒険物語、それとも恐怖に彩られた悪夢か。めくるめく夢と幻想の迷宮へようこそ…本格ミステリの俊英の初期から現在に至る傑作十編を精選!特別エッセイも併録したファン待望の非ミステリ・ノンシリーズの幻想怪奇作品集。
少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が日本中を巻き込んだー。絶対に捕まらないー。運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。『天使のナイフ』の薬丸岳が描く、欲望の闇の果て。江戸川乱歩賞受賞第一作。
確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達ー。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。
東京郊外のビル地下にあるバー“ざばずば”に集う男女5人。脳溢血で急逝した愛すべき酔いどれ作家・アール柱野を偲び、彼の馴染みの店で一晩語り明かそうという趣旨の会合だった。だが、突如身元不明の死体が目の前に転がり出たところから、5人に疑心暗鬼が生じる。殺人犯がこの中にいる!?翌朝まで鍵をかけられ外に出られぬ密室の中、緊張感は高まっていく。しかし5人には、それぞれ、出るに出られぬ「理由」があったのだ…。ミステリ界期待の大型新人が放つ傑作長編。