2010年発売
わたしの名前はエヴァン・ディレイニー。職業はとりあえず作家。一応、弁護士資格あり。彼氏?ものすごくハンサム。その自慢の彼ジェシーと、彼の親友をひき逃げした男が3年ぶりに姿を現した。憎いそいつを警察に突き出そうとあちこち探っていくうちに、ほかにも人が殺されて、とんでもない企みが浮き彫りになり…。エドガー賞受賞も納得のサスペンス・シリーズ。
物語としての『三国志演義』は、いかに作られたのか。正史『三国志』に基づいた史実と、フィクションを交えた叙述のスタイルを分析する。さらに唐代以前から明清代にいたる『演義』の成立事情、謎につつまれた作者羅貫中の人物像、関羽・劉備・張飛ら登場人物のキャラクターの変遷など、奥深い作品世界を案内する。後半では、『演義』の研究にも大きな影響を与えた民間伝承『花関索伝』、明清代の書坊による出版戦争、『演義』に反映された正統論や五行思想など、物語の背後にある文化や世界観も描き出す。本「増補版」では、初版から十七年を経た研究の進展を随所に反映させるとともに、日本と韓国における『演義』受容の様相を第九章として新たに加えた。
真実は奇なり、愛は変なり。世にヘンアイの種はつきまじ。ギャルが漂着した孤島にはイケメン男子だけが住んでいた…「彼氏島」、体の中にブリザード吹き荒れる空虚を持つ少女の哀しみ…「スペシャリスト」、会ったこともない友人の妹への妄想愛を育む独身老人の物語…「妹」-など。新たに発掘された11編の“変愛高濃度・現代英米文学”。
この感覚は、決して悟られてはならない。人には言えない歪みを抱きながら戦前〜戦後の日本をひとり生きた女性を描く表題作のほか、ラスト一頁で彼岸と此岸の境を鮮やかに越える「巻鶴トサカの一週間」など、名手・皆川博子の傑作短篇七篇を収録。
ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてええんよー。城山家の、男ばかり六人兄弟の五番目のハァちゃん。感受性が豊かなあまり、幼稚園の先生が辞めると聞いては泣き、童謡に出てくるどんぐりの行方を案じては泣いてしまう。家族に見守られ、友人たちと野山を駆け巡って、力強く成長してゆく過程を瑞々しく描く。心理学者・河合隼雄の遺作となった、せつなく温かな自伝的小説。
棟居刑事は出張先の四国霊場・遍路宿で元区役所吏員の野田と相部屋になる。彼は現役時代に世話をした行路病者やホームレスの遺書を、遺族に届ける旅をしていた。その日所持していた遺書の主は、新宿中央公園で就眠中を襲われ死亡したホームレスだった。娘のために買い、身につけていたネックレスが死亡時に紛失していたという。そのネックレスが、東京で起きたコンビニ強盗事件の防犯カメラに映っていた(表題作)。切ない余韻が美しい叙情推理の傑作全九篇。
葬式帰りの中年男女四人が、居酒屋で何やら話し込んでいる。彼らは高校時代、文芸部のメンバーだった。同じ文芸部員が亡くなり、四人宛てに彼の小説原稿が遺されたからだ。しかしなぜ…(「楽園を追われて」)。ある共通イメージが連鎖して、意識の底に眠る謎めいた記憶を呼び覚ます奇妙な味わいの表題作など全14編。ジャンルを超越した色とりどりの物語世界を堪能できる秀逸な短編集。
東京から高知県庁へと赴任した薬事課長・小杉。地元薬品業界の悪質な官民癒着に立ち向かう彼を、利害で結ばれた濃密な人間関係の壁が阻む。一方で美貌の人妻・晃子との秘密の恋が、小杉をのみこむ。南国の熱気、情念に満ちた女たち、闇を抱えた男たち、そして突然の死ー。高知を舞台にした後年の自伝小説群に連なる、情感あふれる筆致が冴える。著者若き日の、謎を孕んだ恋愛小説。
「野球って、こうやって、誰かと誰かを結び付けてくれるものなんだね」忘れがたい面影とともに、あのときの私がよみがえる…。大切に抱えていた想いが、時空を超えて解き放たれるときー。男と女、友と友、親と子を、人と人をつなぐ人生の一瞬。秘めた想いは、今も胸を熱くする。過ぎて返らぬ思い出は、いつも私のうちに生きている。謎に満ちた心の軌跡をこまやかに辿る短編集。
傭兵王・シャムシ=アダドの虜囚となったシャズ。地獄の苦しみに苛まれる彼女を救うべくアッシュールの王宮に侵入したナムルの前に、傭兵王の娘・エレールが立ちはだかる。神の力を裡に秘めたふたり。互いに譲れぬ想い。共に生きることは出来ない世界で、血塗れの闘いの果てに立っている者はー。
近年急増する若年性アルツハイマー病で敬愛する叔母を亡くした“三十五歳・独身・失業中”の長山歩美。その死に疑問を抱いた大学病院の主治医・佐野将彦。叔母の死と重なるように発生した同病患者を狙った毒入り飲料殺人事件。叔母ももしかしたら犯人に狙われていたのでは…?二人の疑問が重なり、真相を探るあいだにもインターネット上に犯行声明が告知され、連続殺人は繰り返されていく。はたして二人は犯人を突き止めることができるのか?予測不能の衝撃のラストが見逃せない。『感染』の仙川環が送る大ヒット医療ミステリーシリーズ第五弾ついに登場。
享保年間は将軍・徳川吉宗のもと緊縮財政による改革が進むと同時に、心中が流行した時代でもあった。その数の多さに業を煮やした幕府は、享保七年に“心中”の語を厳禁し、“相対死”と記すことを命じるとともに、心中した男女の遺体を切り捨てるという苛烈な処分に踏み切った。目安箱改め方の竜巻誠十郎は、幕府転覆を企む尾張藩の陰謀を阻止したが重傷を負う。瀕死の彼を看病してくれたのは、髪結いの女主人・おたかだった。そのおたかの縁者が心中の濡れ衣を着せられ殺害されたことを知った誠十郎は真相解明に乗り出す。大好評シリーズ、新機軸の第五弾。
婚約破棄された上、リストラに遭い、不幸のどん底にいた氏家譲は、中学時代の友人武蔵と十年ぶりに再会する。「よう、久しブリ照り!」武蔵に愛人の「相手をしてやってほしい」と頼まれた譲は、愛人のあらぬ誤解(ロリコン疑惑)からインチキ臭い神社へ連れていかれ、そこでどういうわけか中学時代の同級生・藤原たまりに遭遇。さらには、武蔵がステキに胡散臭く経営している会社「ハピネス計画」で働きはじめ…。怪しいけどどこか憎めない人物たちに巻き込まれ振り回されつづける譲に、やがて小さなハピネスが。元気が湧く長編小説。
友人を助けた代償に職を失った剣道の達人・石川義信は、娘・雪乃とともに岡山を離れ、各地を流れる。数年後、運良く倉敷の道場主の道が開けるが、彼を推挙したのは、義信に敗れて以来その生き方を改めた剣術家・前原一刀だった。その心持ちに打たれ、申し出を受けて一刀ともども青少年の教導に燃える義信。そんな石川道場には任侠に篤い男たちが次々と集まってくる!一方、雪乃は瀕死の男を偶然助ける。だが、道場にしばらく世話になることになったその男・政次郎は、雲龍の刺青を背負うやくざであった。誠を尽くし、正義に命を賭ける男たちを描く痛快長編。